梓の非日常
2021.01.14

梓の非日常
梓の日常/第三部はこちらです

只今、執筆中です(*^^)v
第二部/第八章・小笠原諸島事件新連載(毎金曜連載)

以下、ホームページ版から順次転載します。

新連載!
第二部 小笠原諸島事件 (一)(二)(三)(四)(五)(六)(七)(八)(九)(十)(十一)(十二)(十三)(十四)(十五)

梓の非日常 第一部

・序章・ 
・第一章 
・第二章 
・第三章 1011121314
・第四章 
・第五章 
・第六章 
・第七章 
・第八章 1011
・第九章 

第二部
・序章 
・第一章 
・第二章 

・第一章・生まれ変わり
・第二章・スケ番グループ(青竜会)
・第三章・ピクニックへの誘い
・第四章・スケ番再び(黒姫会)
・第五章・音楽教師走る
・第六章・ニューヨークにて
・第七章・正しい預金の降ろしかた
・第八章・太平洋孤島事件
・第九章・生命科学研究所
学園小説/梓 第二部
・序章・命つむぐ
・第一章・新たなる境遇
・第二章・宇宙へのいざない
・第三章・スパイ潜入!
・第四章・峠バトルとセーターと
・第五章・別荘にて
・第六章・沢渡家騒動?
・第七章・船上のクリスマス(1)-(6)


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あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 part-3
2021.01.13

あっと! ヴィーナス!!(51)


partー3

 そうこうするうちに、ポセイドーンが戻ってきた。
 その表情は暗く、打ちひしがれている。
「どうやら、負けたみたいね」
 愛ちゃんが弘美に囁く。
「そうだね」
 ポセイドーンは、玉座に着くなり
「負けたよ」
 と一言だけ呟いた。
 しばらく黙り込んでいたが、ぼそりと話し始めた。
「アテーナーは、オリーブの木を出してきたよ」
「石油、燃える水は出したんだろ?」
「ああ、だが負けた」
 うなだれているポセイドーン。
「明かりの燃料ならオリーブで十分だし、暖房用に燃える水を使いたくても設備がな……」
「ああ、ボイラーという燃焼専用のものが必要だからな」
「空飛ぶ機械や海に浮かぶ鉄の船も説明したのだが、皆一様に『なんのこと?』とばかりに首を傾げるばかりじゃった」
「そりゃそうだろう。飛行機や蒸気船が発明されたのは、18世紀以降だからな。古代ギリシャ・ローマ時代にはないものだ」
 オリーブの木は、古代ギリシャでは盛んに植樹されて、やがて地中海全域に広まった。
 食料としてだけでなく、明かり用の燃料、化粧品・薬品・石鹸の原料としても利用される。 酸化されにくく、常温で固まりにくい性質のため重宝された。
 スペインとイタリアだけで世界生産の半分以上を生産しており、食事の際にはたっぷりと使用されるのが常だ。
 国際連合旗にもデザインされている通りに、食品油としては断トツの有名度である。
「そっかあ……オリーブは当時としては、万能食品だったんだろうな」
「石油は食べられないものね」
 愛ちゃんが言う通り、古代ではまず生きるための食糧としての価値の方が大切だったのだろう。
「二番手アイテムとして、馬を出してみたんだが、やっぱりだめだったよ」
「済まなかったな。助けにならなくて」
「いや、気にするな」
「で、これから俺達をどうするつもりだ? ハーデースの元に返すのか?」
 肝心かなめのことを質問する弘美。
「それはない! ハーデースは嫁を貰ったんだ。それで十分だろ」
「じゃあ、地上を返して返してくれるのか?」
「まあ、待て。賭けに負けたので、別の頼みごとをしよう」
「まだあるのかよ」
「実はだな……賭けに負けてイライラしている時に、アテーナーの神殿でやっちまったんだよ」
「やっちまった?」
「ああ、こいつとな」
 と、メデューサを見つめる。
 頬を赤らめるメデューサ。
「まさか……?」
「ああ、そのまさかさ」
「それで、どうしろと?」
「神殿での情事を誰かに見られたらしいのだ。それをアテーナーに密告した者がいる。おそらく儂を憎んでいるデメーテルだと思う」
「デメーテル?」
「ああ、儂は気に入ってな、日頃から口説いていたのだが、雌馬に化けて逃げ回っていたのじゃが、この儂も牡馬に化けて近づいて、やっちまったんだ」
「やっちまった、って言葉が好きだな」
「以来儂を憎んで居る」
「そりゃ、誰だって憎むだろ」
「アテーナーは処女神だ。自分の神殿での情事に怒りまくっているらしいのだ」
「それで?」
「さて、ここからが本題だ。アテーナーはゼウスの娘だ。そして君は、ゼウスのお気に入りだ」
「つまり俺に、ゼウスに取り入って仲裁を頼んでくれというのか?」
「そうだ!」
「断ったら?」
「永遠にここからは出られないだろうな。何せ海の底だ、人間が脱出できるところじゃない」
「脅迫するのか?」
「こっちも必死なのだ。アテーナーを怒らせたら、何されるか分らんからな」
「アクアラングがあれば? 出られるぞ」
「タンクの中の空気はもうないだろ。それに水圧には耐えられない。あの亀はシェルターの効果を持っておったのだ」
「あの亀がか?」
「さてどうする? お主はともかく、そこの娘も永遠に出られないのだぞ」
 愛ちゃんを見つめる弘美。
 自分のせいで巻き込まれただけなのに……。
 彼女だけは助けたい。
「分かった。協力しよう」
「そうか、頼むぞ。ただし、そこの娘は人質として預かっておく」
「それはないだろう?」
「仲裁に成功しようが失敗しようがいいんだ。君がゼウスに交渉してくれれば、この娘を解放しよう」
「本当だな?」
「インディアン嘘つかない」
 またそれかよ。
 という言葉を飲み込む弘美。
 機嫌をそこねたら、元も子もなくなるかもしれない。
「分かった。ゼウスに会って交渉してやるよ」
「ありがたい! 今は、呉越同舟(ごえつどうしゅう)協力すべき時なのだ」
 ゼウスが無理難題を言ってくるのは明白であろう。
 弘美にとっては屈辱的な結果となるかもしれない。
 だが、愛ちゃんを解放するには、自分が犠牲になるしかないのだ。

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あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 part-2
2021.01.10

あっと! ヴィーナス!!(50)


partー2

 一行は無事に海底神殿へとたどり着いた。
 目の前に鎮座するのは、オリュンポス十二柱神のポセイドーンであった。
 甲斐甲斐しく世話をするのは、下半身が魚で上半身が人間の人魚だった。
「よくぞ参った。歓迎するぞ」
「……」
 水中で声の出せない弘美だった。
 それに気づいて、
「ああ、済まない。ちょっと、待て」
 すると足元から空気の泡が出てきて、弘美たちをスッポリと包んだ。
 息が出来るのを確認して、アクアラングの装備を外す。
 大きく深呼吸してから、
「おまえ誰だ! 乙姫じゃなさそうだな」
 弘美が一歩踏み出すと、空気の泡もその動きに合わせて移動する。
「海の王者にして、ゼウス様の兄君のポセイドーン様ですよ」
 ヴィーナスが耳打ちする。
「なるほど、さすがファイルーZに選ばれし娘だな。ゼウスやアポロンが血眼になって、探し当てようとするだけのことはある」
 弘美を見つめてポセイドーンが感心する。
「俺……じゃなくて、あたし。いやもう俺でいいや。俺達を連れて来たのはどういうこと??」
「心外だな。私が助け舟を出さなければ……」
「助け舟って、あの亀か?」
「途中で話の腰を折るでない!」
「悪かった。続けてくれ」
「私が助けなければ、今頃冥府魔道を当てもなく彷徨っていたであろうぞ」
「確かにそうかもな。一応感謝しておく」
「ハーデースは君たちを地上に戻すつもりなどなかったのだ。あちらこちらに罠を張り巡らして陥れる腹積もりなのは明白だった」
「そうだろうとは思っていたよ」
「万が一地上に戻れたとしても、その身体には蛆が這いまわり、腐臭漂うその姿はゾンビ。普通の人々が見れば、恐れおののき逃げ惑うだろう」
「げげっ!墓場桃太郎みたいだな。nyamazon prime video で第一話無料配信されてるぞ」
「儂に感謝するのだな」
「何の縁もゆかりもない俺達を、助けるのは魂胆があるのだろう?」
「そこまで勘ぐるのか?」
「まあね。神とはどういうものか少しずつ分かってきたつもりだ」
「ほほう。どういう具合にかね」
「人間を操り人形のようにして弄ぶのが喜びなのだろう?」
「ふむ、それはあるかも知れないな」
「で、当然。ハーデースみたく、何か頼み事でもあるのだろう」
「実はだな。儂は海を支配しているが、少しでも良いから大地が欲しくてな、とある地方を女神アテーナーと争っているのだ。人間に最も利益のあるものを創出した方の勝ちという賭けをしたのだよ」
「なるほど、それで知恵を貸してくれというのだな」
「早い話がその通り。長らく海底に住んで居ったのでな、地上の世界に疎いのだ。人間が何を欲しているのかを知りたい」
「そうだな……石油じゃね?」
「せきゆとな……? なんだそれは?」
「分かりやすく言えば『燃える水』単純に夜を照らす明かりとなるし、暖房の燃料にもなる」
「暖房か……ハイポコーストのことかな?」
 ハーポコーストとは、古代ローマで使われていたセントラルヒーティングの一種である。
「薪なんかよりも火力は高いし、工夫すれば煙も一切でない」
「それは便利そうだな」
「他にも、空を飛ぶ機械とか、海に浮かぶ鉄の船を動かす燃料となるんだが」
 目を丸くして聞いているポセイドーン。
「そんなことにも利用できるのか。大したものだな」

 それから事細かに石油の事を説明する弘美。
「あい分かった!アテーナーとの賭けに石油を持ち出してみよう」
「まあ、頑張れや」
「君達には、食事を提供しよう。儂がアテーナーに対面している間待っておれ!」
「食べたら二度と地上に戻れないとは言わないだろうな」
「それはない!」
 ということで、弘美たちを残して姿を消した。
 人魚が食事を運んできて、接待を始めた。
 目の前では、鯛やヒラメが舞い踊っているが、水族館でよくあるショーである。
「結局、俺達人質になっているということか?」
「アテーナーとの賭けに負けたら、あたし達どうなるのかしら?」
 愛ちゃんが心配そうにしている。
「ここに来なければ、今頃ハーデースの罠にハマってゾンビになってかも知れないんだ。今更、どうってことないだろ?」
「それはそうだけど……」

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あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 part-1
2021.01.08

あっと! ヴィーナス!!(49)


partー1

 弘美たちの目の前に広がるのは、水平線が果てしなく続く大海原。
「どうやら、冥府を出られたようだが……」
 弘美がぼそりと呟く。
「海ですね」
 現実を認められない愛君。
「来た道を戻っていたはずだよな」
「間違いない」
「では、なんで海に出ちゃうんだ?」
 本来なら、ローマ郊外の洞窟に出てくるはずだった。
 でなきゃ、冥府に引き戻されて化け物にされていたか……。
 海に出る要素は一つもない。
 戻るわけにはゆかず、悶々としていると、
「なんだあれは?」
 水平線の向こうから海面を泳いでくるものがあった。
 やがて近づいて来たのは、
「亀だ!」
 間違えようもない大亀だった。
 体長180センチメートルくらい。
 現世種で言えば、オサガメというところだろうか。
 背中に、箱が括り付けられていた。
 その箱を取り外して中を確認してみると、
「これって、アクアラングか?」
 空気ボンベ、レギュレーターセットなどの潜水用具一式が入っていた。 
「何かメモが入ってるわ」
 愛が気付いて読んでみると、
『この潜水用具を身に着けて、亀の背に乗ってください』
 という内容。
「亀の背に乗るって、浦島太郎かよ」
「そうみたいね」
「亀を助けた覚えはないが……」
「亀が二匹ということは、あたしと弘美ちゃんの二人だけ?」
「心配するな。我らは海の中でも平気だ。後ろから着いてゆく」
 という女神たちは、いつの間にか水着に着替えていた。
「何だよ、その恰好は?」
「決まっている。海の中に入るには、やはりこれじゃないか?」
 といいながら、モデルがとるようなポーズをしてみせる。
「あ、そ……神通力で着替えたのか」
「神様って、便利なんですね」
 もじもじとしていた愛ちゃんだったが、
「あの、わたしにも水着を頂けませんか?」
 思い切っておねだりしてみるのだった。
「かまわんぞ」
 ヴィーナスが指をパチンと鳴らすと、愛ちゃんの制服が水着に変わった。
「わあ!可愛い!!」
 フリル付きのワンピ水着だが、どうやら気に入ったようだ。
「おまえもどうだ?」
「あ、あたしはいいよ!」
 いきなり水着というのは困る!
 当然の反応であろう。
「遠慮するな!」
 というと、強引に弘美をビキニの水着姿に変えた。
 ちなみにビキニという名称は、1946年7月1日にビキニ環礁で行われた原爆実験に由来がある。7月5日にルイ・レアールという服飾家が、その小ささと周囲に与える破壊的威力を原爆にたとえて、ビキニと名付けたという。Wikipediaより
「なんで、愛ちゃんがワンピで、こっちはビキニなんだよ?」
「愛ちゃんは恥ずかしがりやだからね。よく似合ってるじゃないか」
「か、返せよ。あたしの服」
「大丈夫だ。元の世界に戻れば、ちゃんと返してあげるよ」
「秘密のポケットやらにしまっているのか?」
「ああ、便利なものだろう」
「弘美ちゃん。可愛いわよ」
 愛ちゃんから、お褒めの言葉を頂けば、無碍にもできない弘美だった。
「お伽噺ではこんな装備をしないで、海の中に入ったようだが……」
「そりゃまあ、作り話は現実とはかけ離れているからな」
 催促するようにゆっくりと海の方へと移動を始める大亀。
「おっと、乗り遅れたら冥府行き決定だぞ」
「乗りましょうよ。他に行く当てはないんだし」
「そうだな。乗るとしよう。目指すは竜宮城かな?」
 亀の背に乗る二人。
 やがて静かに海の中へと沈んでいく。

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あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 プロローグ
2021.01.06

あっと! ヴィーナス!!(48)


ポセイドンの陰謀

 ここは海底神殿、ギリシャ神話におけるオリュンポス十二神の一人、ポセイドンの居城である。
 最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る。海洋の全てを支配し、全大陸すらポセイドーンの力によって支えられている。
 なぜなら、大陸移動説で語られるように、地殻は対流するマントルの上に浮かんでいるからである。
 彼が怒り狂うと、強大な地震を引き起こして世界そのものを激しく揺さぶる。また、地下水の支配者でもあり、泉の守護神ともされる。

 玉座に腰を降ろし神の酒を飲みながら、TV中継を鑑賞している。
 天上界でもお馴染みの地上波デジタル放送である。
 海底神殿でも、海底ケーブルを引き込んで、視聴することができる。
 もちろん高速インターネット回線もある。
 リモコンを操作して、チャンネルを切り替えている。
「何か、もっと刺激的な内容の番組はないのか?」
 やがて、冥界チャンネルという番組になった。
 冥界にTVカメラを持ち込んで、生中継しているようだ。
「お? 冥界に人間が紛れ込んだのか?」
 その映像は、ハーデースの御前での弘美とヴィーナス達のものであった。

 音声も出ている。

『地上へは元来た道を戻るがよい。ただし、冥界から抜け出すまでの間、決して後
ろを振り返ってはならぬぞ!』
『振り返るなだと?どういうことだ??』
 しばし考え込む弘美。
 やがて、日本神話を思い出す。
『まさか、イザナギとイザナミの黄泉の国の物語か?』
『違うな』
『じゃあ、JOJO/ダイヤモンドは砕けないの岸辺露伴編『振り向いてはいけな
い小道』の怪、じゃないだろうな。振り向くと魂を持っていかれるっていうやつ』
『竪琴の名手オルペウスと妻エウリュディケーの物語は知ってるか?』
『知らん!』
『ギリシャ神話だよ……ともかく、振り返るなってことだ』
 和洋の違いはあれど、冥府に関するタブーというものは共通のものらしい。

「さて、彼らはどうなるかのお?」
 ポセイドンが呟くと、
「冥府から無事に脱出できたものはこれまでいません」
 と、側近にして愛人のメデューサが説明する。
 メデューサは美しい長髪に、宝石のように輝く目を持つ美貌の女神である。
 長姉ステンノー、次姉エウリュアレーとともに「ゴルゴン(ゴーゴン)三姉妹」の名前で呼ばれ、ポルキュスとその妹ケトの間に生まれた娘。
 ギリシャ語で「女王」「支配する女」という意味名であり、ギリシアの先住民族ペラスゴイ人の崇める女神(大地母神)であったと言う説が有力。
 都市の守護女神アテーナーの怒りを買って、恐ろしい怪物になる前の姿であった。

「生中継のようだが、彼らは撮影されていることに気付いていないのか?」
「たぶん、隠しカメラのようです」
「そうか……。ハーデースめ。余興のつもりのようだな」
 一部始終が中継されているのを知らない弘美たちの慌てぶりを笑って見ているというところ。
 いわゆる、どっきりカメラの一種。
「ふむ……。このまま、ハーデースの軍門に降るのも、癪に障るな」
「助け舟を出されてはいかがでしょうか?」
「ハーデースやアポローン、そしてゼウスに一泡吹かせるのも一興であるな」
「手配いたします」
「よろしく頼む」

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