銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ(最終回)
2020.04.19

 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ(最終回)


IV


 ワープゲートから、次々と出現する艦艇。
「ウィンディーネを確認しました」
 オペレーターが紅潮しながら報告する。
「続いてドリアード、フェニックスと続いています」
 アレックス・ランドール配下の旧共和国同盟軍第八師団所属の精鋭艦隊が続々と登場し
つつあった。
 さらに第五師団所属、リデル・マーカー准将の第八艦隊以下、第十四艦隊、第二十一艦
隊も勢揃いした。
 アレックスの配下にあるアル・サフリエニ方面軍総勢六十万隻が勢揃いしたのである。

「ウィンディーネより入電」
「繋いでください」
 正面スクリーンに、ゴードン・オニール准将が出る。
「よお、待たせたな」
「お久しぶりです」
「つもる話は沢山あるが、アレックスが苦戦しているだろうから、先に行くよ」
「判りました。お気をつけて」
 総勢六十万隻に及ぶゴードン達の艦艇は、連邦遠征軍と交戦中のアレックス達の援軍と
して到着したのである。
 速やかに現場に向かう必要があったので、フランソワとは話し合ってる暇などなかった
のである。
「さて、我々は地上に戻りましょう」
 宇宙戦艦ではないミネルバは、援軍に参加することは不可能であるし、まだ地上での作
戦が残されている。
 偽情報だと気づいた駐留艦隊が、取ってひき返してくれば、ミネルバ一隻では太刀打ち
できない。


 海底秘密基地に戻ってきたミネルバ。
 レイチェルにワープゲート奪取作戦の報告をするフランソワ。
「お疲れ様でした。ミネルバの全員に四十八時間の休息を与えましょう」
「ありがとうございます。ですが、反攻作戦が始まったというのによろしいのですか?」
「大丈夫です。我々メビウスの新たなる作戦は、ランドール提督が連邦遠征軍を打ち負か
して、その勢いでトランターへ進撃を開始、そしてトランター降下作戦が始まってからで
す」
「それで四十八時間ですか……」
「まあ、ゆっくりと養生してください。眠れなくなる前にね」
「はい。判りました」
 フランソワは敬礼して、司令官室を後にした。
 一旦ミネルバに戻って、乗員に四十八時間の休息を取るように指示した。
 喜び勇んで、艦を降り始める乗員達。
 基地には艦内にはない多種多様の施設がある。
 食堂へ急ぐ者、レクレーション施設に向かう者、もちろん艦内の自分の部屋で寝る者も
いた。


 ミネルバを含むメビウス部隊の活躍は、まだまだこれからであるが、ひとまず物語を終
えよう。
 ミネルバの活躍は、銀河戦記/鳴動編の本編でお楽しみ下さい。


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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ Ⅲ
2020.04.12

 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ




 ワープゲートに近づくミネルバ。
「付近に艦隊は見当たりません」
「ウィング大佐の流した偽情報に、まんまと引っかかったようですね」
 レイチェル率いる情報部は、総督軍の統制コンピューターにハッカー攻撃を仕掛け、ラ
ンドール艦隊が接近中との偽情報を流したのである。厳重なセキュリティーに守られた軍
のコンピューターがゆえに、まさか侵入されているとは毛ほども疑っていなかったのであ
る。もちろん、闇の帝王とあだ名されるジュビロ・カービンが背後で動いていたことは、
知る由もない。
「しかし情報一つで、敵艦隊を動かすことができるなんて、さすがウィング大佐です」
「感心してないで、行動に移しましょう。コントロールセンターのドッグベイに接舷して
ください」
 ワープゲートは、ワープが行われるゲート部分と、ワープをコントロールする部分とで
構成されている。
「突撃部隊は接舷ベイに集合してください」
 ミネルバは、第八占領機甲部隊メビウス所属である。占領に携わる白兵戦用の精鋭部隊
も揃っている。
「接舷しました」
「突入せよ!」
 なだれ込むように白兵部隊が、コントロールセンターに突入した。
 センターにいるのは、ほとんどが科学・技術職員なので、占拠が容易かった。
「コントロールを奪取しました」
 突入部隊より連絡が入る。
「シャイニング基地へのワープゲートを繋いでください」
「了解しました」
 というところで、タルシエンにいるフランク・ガードナー少将に連絡を取る。
「おお、待っていたよ。早かったな」
 万事了解済みという風に答えるガードナー。
「トランターのワープゲートを奪取しました」
 一応報告するフランソワ。
「判った。既にシャイニングに三個艦隊を待機させている。ゲートが繋がり次第、そっち
へ転送する」
「お待ちしております」
 通信が切れた。
「我々は、このワープゲートを死守します」
「偽情報に惑わされた防衛艦隊が引き返すのが早いか、シャイニングからの援軍がワープ
してくるのが早いか。時間との競争ですね」
「それに地上からの追撃隊もあります」
 言うが早いか、
「急速接近する艦があります」
 オペレーターが警報を鳴らした。
「早速おいでなすったわね。総員戦闘配備!一旦ゲートから離間する」
 敵味方を識別する必要はない。メビウスには宇宙へ上がれるのは、このミネルバだけだ。
ゲートから離間するのは、接舷したままでは戦闘できないからだ。


 戦艦プルートの艦橋。
「ワープゲートに到着しました」
 正面スクリーンには、ワープゲートに接舷するミネルバがあった。
「遅かった。ゲートは敵の手に墜ちたようです」
「ミネルバが回頭して、艦首をこちら側に向けようとしています」
「原子レーザー砲を使うつもりだ。軸線上に入らないように気をつけろ」
 原子レーザ砲は、大気圏内ではエネルギー減衰が激しいが、宇宙空間に出れば百パーセ
ントの能力を引き出せる。ミネルバ級に搭載されていたのも、この宇宙に出ることを前提
としていたからだ。
「破壊力も射程も桁違いだ。こちらは長距離ミサイルで応戦しろ!」
 双方十分離れた距離からの戦闘ゆえに、相手に十分な損傷を与えることができない。

 やがて、ワープゲートが反応した。
 次々と艦艇が姿を現したのである。
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ Ⅱ
2020.04.05


 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ


II


 総督軍中央情報局。
「トランターに接近する艦隊があります」
「なに?どこの艦隊だ」
「総督軍ではありません。おそらく反乱軍かと思われます」
「接近艦隊の数、およそ七万隻。現在L5ラグランジュ点を通過中です」
「一個艦隊か。ワープゲートなしでここまで来るには、補給艦を連れてきているな。実質
戦艦五万隻というところだな」
「いかが致しますか?」
「無論迎撃に出る。留守を預かっている者として、猫の子一匹通したとあっちゃ責任問題
になる」
「猫……ですか」
「たとえだよ。行くぞ」
 と、防衛艦隊帰艦バトラスの駐留している宇宙港へと向かう司令官だった。
「トランターが空になりますが、よろしいのですか?」
「近づいているのは、ランドールの所の艦隊である可能性大だ。だとしたら、敵艦隊の数
倍以上の数で対処しなければ勝てない。これまでの経験からな」
「なるほど……」
「迎撃は、持てる兵力のすべてを出して当たるのがセオリーだ」
 首都星の防衛の役目を担っていた駐留艦隊が、接近する艦隊への迎撃のために、トラン
ターを出航した。

 その頃、リンゼー少佐の元へ、ミネルバが宇宙に上がったとの情報が寄せられた。
「ミネルバが宇宙へ飛んだだと?大気圏専用の空中戦艦じゃなかったのか……」
「詳しい仕様は、技術部でも解読できなかったということでしょう」
「共和国同盟の艦艇だろ、そこの技術部の誰も知らなかったのか?」
「はあ、何せミネルバ級はケースン研究所のとある人物が、艦体も運用システムもたった
一人で設計したらしいので、詳細仕様は彼の頭の中ということです」
「とある人物ってなんだよ」
「極秘情報で、名前も顔も誰も知らないそうです。誘拐や暗殺のターゲットにされないよ
うにでしょうね」
「とにかくだ!我々も宇宙へ上がるぞ!」
「宇宙ステーションに上がる連絡艇しかありませんが」
「ったく、主力の艦隊は銀河帝国遠征に出撃しているし、防御艦隊は敵艦隊接近の報を受
けて、迎撃にでている。首都防衛はガラ空じゃないか。そんな時に、ミネルバが宇宙に上
がるとは」
「何か関連がありそうですね」
「大有りだろうよ。もしかしたら陽動に掛かったのかもな」
「陽動ですか、ミネルバが?」
「いや、接近しているという敵艦隊の方だよ」
「敵艦隊が陽動?」

「運よく補修に出ていた戦艦プルートが残っていました」
「よし、艦長に会おう」
 早速乗艦許可を貰ってプルートの艦橋に上がって艦長と面会するリンゼー少佐。
「艦長のマーカス・ハルバート少佐です」
「ミネルバ討伐隊のゼナフィス・リンゼー少佐です」
「で、ご用命はいかに?」
「追っているミネルバが、この宇宙へ出てきました。そこで貴官の戦艦をお借りたい」
「パルチザンの旗艦であるミネルバを討つのは総督軍の使命。となれば従うしかないです
ね。よろしい、このプルートをお貸ししましょう」
「ありがたい」
 快く戦艦の指揮を譲ったハルバート少佐は、
「ミネルバを追いましょう」
 と言った後、
「艦長をリンゼー少佐に交代する」
 艦橋要員に伝達した。
 艦長席に座るリンゼー少佐、その両脇に立つ正副艦長。リンゼーの副官は、さらに後方
の位置に控えて立っていた。
「これよりミネルバの後を追う。機関始動、微速前進」
「機関始動」
「微速前進」
 ゆっくりと宇宙ステーションを出てゆくプルート。
「L4ラグランジュのワープゲートへ向かえ」
「進路ワープゲート」
 副官が復唱する。
「なぜワープゲートですか?」
 ハルバート少佐が尋ねる。
「ミネルバの航行システムは、磁力線に浮かぶように進む船のようなものです。つまり航
行できるのは、磁力密度の高い大気圏内と惑星周辺のみで、外宇宙には出られないのです。
惑星周辺で重要施設となれば……」
「ワープゲートということですね」
「現在、反乱軍接近との情報から防衛艦隊は迎撃に出て、ワープゲートは無防備です」
「急ぎましょう。全速前進でワープゲートへ向かえ!」
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ I
2020.03.29

 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ




 その後も、きびしい任務をこなしていたメビウス部隊のレイチェルの元に、ランドール
提督からの反攻作戦開始の連絡が入った。

『L4ラグランジュ点にある、ワープゲートを48時間以内に奪取せよ』

 という指令だった。
「これはまた難問を押し付けてきましたね」
 副官が驚きの声を上げる。
「反攻作戦にワープゲートが必要不可欠です」
「つまりシィニング基地にあるワープゲートを利用して、アル・サフリエニから一気に艦
隊を送り込めるというわけですね」
「その通りです」
「しかし、作戦遂行には宇宙に飛べる戦艦が必要ですが」
 メビウス部隊は、パルチザンとして内地で反乱を起こすのが主目的なので、宇宙戦艦は
なかった。
「あるわよ」
 耳を疑う副官だった。
「どこにあるんですか?」
「ほれ、そこにあるじゃないの」
 とレイチェルが指差したのは、サーフェイスとの戦闘で傷ついた艦を修理に戻って来て
いたミネルバだった。
「ミネルバ……?あれは大気圏専用の空中戦艦ではなかったのですか?」
「誰がそう言ったのですか?」
「ええ、いや……」
 うろたえる副官。
「一つ講義しましょうか」
「講義……ですか?」
「そもそもミネルバは、超伝導磁気浮上航行システムによって惑星磁気圏内を飛翔するこ
とのできる戦艦です」
「そう聞いております」
「さて磁気圏とは、どこからどこまでを言いますか?」
「磁気圏ですか……。ああそうか、判りました。磁気は大気圏内だけでなく、宇宙空間ま
で広がっており、磁束密度を無視すれば永遠の彼方まで続いています。重力と同じです
ね」
「よくできました。L4ラグランジュ点までは、十分な磁力密度があるということです」
「問題があるとしたら、真空に近い宇宙空間ということですが、水中に潜航できるくらい
ですから真空に対する気密性や耐圧性も高そうですね」
 管制室の窓から覗ける、ミネルバの整備状況を見つめながら、ランドール提督からの指
令をフランソワに伝える。

 ミネルバの艦橋にいるフランソワの元に、ランドール提督からの指令がレイチェル経由
して届いていた。
「というわけで、宇宙そらへ上がります」
 とフランソワが下令すると、
「やったあ!」
 オペレーター達が、小躍りして喜んだ。
 宇宙へ上がれば、憧れのランドール提督に会えるという期待感。
 新しい戦場への転進は、惑星上での戦いと違って、艦が撃沈されれば即死が待っている
という厳しい環境ではあるが、彼らの本来の主戦場は宇宙であったはずだ。
 士官学校を卒業して、志願してランドール艦隊へ配属されるのを希望したのだから。
 それが何の行きがかりか、パルチザン組織であるメビウス部隊配属となってしまった。
「修理、完了しました。いつでも出航できます」
 恒久班からの報告を受けて、
「ミネルバは、これよりワープゲート奪取作戦の任務を遂行する。全艦出航準備に入れ」
 フランソワが出撃命令を出す。
「全艦出航準備」
「ウィンザー大佐より連絡」
「繋いでください」
 正面スクリーンにレイチェルの姿が映し出された。
「今回の任務は、反攻作戦の天王山です。心して掛かるように」
「判っております。全精力を注いで任務遂行します。では、行って参ります」
 と返答して、ビシッと踵を合わせて敬礼する。
「気をつけて行ってらっしゃい」
 レイチェルも敬礼を返して見送る。
「出航準備、完了しました」
「よろしい、潜航開始」
「潜航開始!」
「メインタンク注水」
 基地内部の外界に通ずるプールに浮かぶミネルバが、ゆっくりと沈んでゆく。
「ハイドロジェット機関始動、微速前進!」
「ハイドロジェット機関始動!」
「微速前進!ようそろ」
 進入通路を潜航して進むミネルバの前方に壁が立ちはだかる。
「基地外壁ゲートをオープンせよ」
「外壁ゲートオープン」
 開いたゲートから、ミネルバが勇壮と出てくる。
「二十分このまま潜航を続ける」
 基地を出てすぐに海上に出れば、基地の位置を特定される危険を避けるために、しばら
く潜航を続けて基地から離れるようだ。
「二十分経過しました」
「浮上してください」
「浮上!」
「メインタンクブロー」
 やがて海上に姿を現すミネルバ。
「周囲に総督軍の艦艇は見当たりません」
 ベンソン副長が報告する。
「それでは、行きましょうか、宇宙そらへ」
「行きましょう!」
 ベンソン中尉も大乗り気であった。
「浮上システム始動!」
 やがて上空へ、さらに上空へと上昇するミネルバ。
「成層圏を通過します」
「各ブロックの耐圧扉を閉鎖」
 惑星大気圏と宇宙空間との境は明確にはないが、だいたい成層圏をもって境とするのが
一般的である。
「ハイドロイオンエンジン始動!」
 水中ではハイドロジェットとして活躍したエンジンであるが、宇宙空間ではイオンエン
ジンとしての両用可能となっている。
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス IX
2020.03.22

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス


IX


 リンゼー少佐のサーフェイスも、艦の修理を終えて造船所を出立したところであった。
「今度はどこに現れますかね」
「奴らが今一番欲しがっているものは何だと思う?」
「そうですね……やはり超伝導回路用のヘリウム4ですかね。宇宙空間と違って、この大気中
は消耗が激しいですから」
「それだな。となると一番近い供給プラントは?」
「マストドーヤです」
「よし!そこへ急行しろ」
「了解!」


 一足早くマストドーヤに到着したミネルバと補給艦は、ヘリウム4の補給を早速始めた。
 ほぼ半分ほどの補給を終えた頃、
「左舷七時の方向に大型戦艦接近中!」
「おいでなすったわね。何はなくとも補給艦の護衛です。砲弾一発、ミサイル一基たりとも当
てさせないで」
「了解しました」
「ここで決着をつけましょう。どちらかが撃沈されるまで戦い抜くのです」
 サーフェイスにいつまでも追い回されていたら身が休まらなかった。
 不幸にも先に撃沈されたら、後に残された部隊に命運をかける。
 再び激しい戦闘が開始された。


 厳しい表情のフランソワ。
 これ以上の損害を被るのは避けたかった。
「Z格納庫を開けて、アレを出してください」
 それを聞いて驚く副長。
「Z格納庫!最後の切り札を使うのですか?」
「最後の踏ん張りどころでしょう。今が使いどころだと思います」
「分かりました」
 副長がミサイル発射管室に伝える。
「発射管室、Z格納庫を開いて、次元誘導ミサイルを取り出せ!」
 次元誘導ミサイル。
 それは、フリード・ケースンが開発した極超単距離ワープミサイルだった。
 どうしようもないほどの苦境に陥った時のためにと、搭載された最後の切り札だった。
 もちろんミネルバ級の中でも1番艦であるミネルバにしか搭載されていない。
「次元誘導ミサイルを1番発射管に装填しろ!」
「重力探知機による目標着弾点を入力。機関部にセットオン!」
「セットしました!」
「発射体制完了」
「次元誘導ミサイル、発射!」
「発射します!」
 ミネルバ発射管から射出される次元誘導ミサイル。


 サーフェイス側では驚きの声が上がった。
 目の前に迫っていた大型のミサイルが、迎撃態勢に入ろうとする寸前に突然消えたのだから。
「ミサイルが消えました!」
「加速度計は!?」
「重力加速度計からも消えました!!」
 すべての計測器からミサイルの痕跡が消滅した。
「どこへ消えたのだ?」
 次の瞬間だった。
 激しい震動が艦橋を襲う。
「な、なんだ?報告しろ!」
「た、ただいま……」
 機関部から報告がなされる。
「超伝導磁気浮上システムに被弾!損害甚大です。浮上航行不能です!」
「なんだと!」
 地磁気に対しての浮力を失って、徐々に高度を下げてゆくサーフェイス。
「海に着水します!」
「総員何かに掴まれ!」
 激しい水飛沫を上げて、海上に着水する。


「サーフェース、海上に着水。機関部炎上のもよう」
 報告を受けて安堵する艦橋要員。
「見事、心臓部をぶち抜いたようです」
「間合いを取って、こちらも海上に降りましょう」
 静かに海に着水するミネルバ。
 双眼鏡を覗いて敵艦の動静を観察している。
「完全に沈黙したもようです」
「サーフェイスに、十分後に撃沈するからと、敵艦に総員退艦を進言してください」
 強大な戦力を相手に持たせておくわけにはいかなかった。今撃沈しておかなければ、回収・
修理して再戦してくる可能性を排除するためには、海の藻屑とする以外にはない。
 敵艦甲板上では、救命ボートが引っ張り出されて、サーフェイスの乗員が乗り込んでいる。
中には直接海に飛び込む者もいた。
「十分経過しました」
「艦首魚雷室に魚雷戦発令!」
「魚雷戦用意!」
「一発で十分でしょう」
 救命ボートが、サーフェイスから十分離れたところを見計らって、
「魚雷発射!」
 下令する。
「魚雷、発射します」
 ミネルバからサーフェイスへと続く海面上に、一条の軌跡が走る。
 魚雷が命中して、火柱が上がる。
 やがて大音響を上げて沈んでゆく。


 沈むサーフェースを遠巻きに見つめながら、
「やられましたね」
 救命ボート上の副官のミラーゼ・カンゼンスキー中尉が嘆いていた。
「ああ、ミネルバには幸運の女神がついているようだ」
ポチッとよろしく!

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