銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XIII
2019.08.11


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                XIII

 座席を動かして下を探す二人。
「あったぞ!」
「こっちもだ」
 取り出したサバイバルツールには、次のようなものが収められていた。
 非常用携帯食糧、浄水器、拳銃と弾丸1ケース、コンパス、発炎筒、サバイバルナイ
フ、断熱シートなどなど。
「食糧は当然として、こんな砂漠で浄水器が役に立つかよ。ミネラルウォーターくらい
入れとけよ」
「拳銃と弾丸は、獣を撃って食料にしろということだろうけど……。砂漠に獣がいるわ
きゃないだろが」
「いるのは毒蛇か昆虫くらいだぜ」
「まあ、自殺するのには役立つけどな」
「やめてよ、まだ死にたくないわよ」
「ほれ、断熱シートにくるまってろ。寒さよけになる」
 熱を遮断する不織布製のシートで、くるまっていれば体温の放射を少なくして、温か
く感じるというものである。
「うん」
 素直に答えて、断熱シートにくるまるサリー。
「我慢できなくなったら、ジャンと替わってもらうさ。どうせ今夜一晩だけの我慢だ。
明日には救援がくるさ」
「この新型を奪取するために、機動戦艦ミネルバがやってきたり、特殊工作部隊を潜入
させたりして、並々ならぬ戦力を投入している。新型を重要な戦略の一環として考えて
いる証拠だよ。だから必ず回収にくるさ」
「だといいんだけど……」

 ミネルバ会議室。
 カサンドラから収容された訓練生達が集合している。
 前方の教壇に立って、訓示する教官役の二人。
「君達は、このミネルバに自ら進んで乗り込んできたわけだが、このミネルバにおいて
も引き続き、実戦に即した訓練を行う予定だ。成績優秀な者は順次実戦徴用する。しか
し知っての通りに訓練機は一機もないし、君達パイロット候補生に搭乗してもらう実戦
機は限られている。全員に対して十分な訓練を施すことができない。そこで適正試験を
行って優秀な十名のみを選抜して、パイロット候補生とする。残りの者は、他の部門へ
の配置換えを行う」
 ここで、訓練生達にプリント用紙が配られた。
 タイトルには、配属希望表と書かれ、パイロット以下被服班、給食班、衛生班、工作
班、恒久処理(ダメコン)班、などの配属先名と、仕事の内容が書かれている。
 担当が入れ替わって説明を続ける。
「適正試験に合格する自信のない者は、パイロット以外の希望職種を記入して、明日午
後三時までに総務部室へ提出するように。第一志望から第三志望まであるから、良く考
えて記入するように。私からは以上だ」
 ここで女性士官に替わった。
「私は、皆さんの日常生活をお世話する担当です。何か相談事や心配事があったら、い
つでも気軽に相談して下さい。配属された部署がどうしても合わないなどで、配置換え
を希望する時も遠慮なく申してください。それでは、皆さんの宿坊を決めましょう。不
公平のないように、くじ引きで決めます。男女別々ですからね。前に出てくじを引いて
ください。男子は青い箱、女子は赤い箱です」
 ぞろぞろと前に出て男女別々のくじ箱に手を差し入れて、くじを引いている訓練生。
ワイワイガヤガヤとおしゃべりしながらなのは、まだまだ大人になりきれない子供だか
らだろう。実戦を知らず世間も知らない訓練生だった。
「くじに書かれた部屋番号は、後の壁に貼ってある艦内見取り図を見て、部屋の位置を
確認して下さい」
 ここで一旦解散となり、各自の宿坊へと向かうように指示が出た。もちろん宿坊以外
の場所への立ち入りは厳禁である。追って連絡があるまで宿坊から出ないようにとも。


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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XII
2019.08.04


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                XII

 バルモア基地の岸壁に強襲着陸したミネルバ。
 四方八方からの攻撃を受けているが、何とか善戦している。
 そこへモビルスーツ三機が走り込んでくる。発着デッキに飛び乗り、昇降機によって
艦内へと格納された。
 カサンドラの訓練生達もキースの班に誘導されて次々と乗り込んでいる。
「モビルスーツ格納完了しました」
「訓練生の収容も完了しています」
「よろしい。ただちに浮上して下さい。すみやかに撤収します」
 急速浮上して山越えしていくミネルバ。野砲大隊を軽く潰して砂漠へと進入した。
「シャーリー・サブリナをここへ呼んでください」
 早速シャーリーが呼ばれる。
 フランソワの前に出て敬礼するシャーリー。
「報告を」
「はっ。今回の作戦任務において、旧式モビルスーツ二機と新型一機とを奪取に成功し
ました。しかしながらもう一機の新型は、奪取に成功したものの、パイロットが操作ミ
スをしたのか、システムが暴走したのか、はるか彼方へと飛んで行ってしまいました。
この機体のパイロットは、実はカサンドラの訓練生です。本来乗り込む予定だったキャ
ンベル伍長が撃たれ、起動ディスクを受け取った訓練生が代わりに乗り込んでしまった
のです」
「なるほど、良く判りました。詳細報告書は後にして、下がって休みなさい」
「ありがとうございます。失礼します」
 再び敬礼して、踵を返して引き下がるシャーリー。
「新型モビルスーツの飛び去った軌跡を追跡できたか?」
「はい。追跡できております」
「発信機の方も、微かではありますが受信しております」
「よし! 新型は是が非でも回収せねばならない」

 その頃、アイク達の乗る新型モビルスーツは砂漠の真ん中に不時着し、岩にもたれか
かるようにしていた。
 コクピットの中で膨れっ面のサリー。計器類を調査しているジャン。そしてアイクは
というと、シートに深々と腰を沈め腕枕をして、ぼんやりと映像の消えたスクリーンを
眺めている。
 電力消費を倹約するために、必要最低限の機器だけを作動させていた。
「なんで墜落したのよ」
「しようがないだろう。ガス欠なんだから」
「動けないなら、歩いて近くの町へ避難しましょうよ」
「ここは砂漠のど真ん中だぜ。一番近くの町でも何百キロとあるんだ。途中で干からび
ちゃうよ。それに至る所が流砂になっていて、踏み込んだら最期、あっという間に砂の
中に沈んで窒息死だよ」
「寒いわ……」
「そうだな。外の気温は五度。夜明けには氷点下にまで下がるが、昼間になると今度は
灼熱地獄変わるさ」
「ヒーター入れてよ」
「だめだよ。エンジンが動いていないんだ。すぐにバッテリーがなくなるよ。遭難信号
を出す発信機のために電力を残しておかなくちゃ」
「……。ところでジャン。さっきから何をやってるの」
「こういう場合に備えて、大概サバイバルツールが装備されているはずなんだ。それが
どこにあるか調べているんだ」
「弾丸だって一発も積んでいないんだぜ。サバイバルツールだって積んでないんじゃな
いか?」
「いや、サバイバルツールは常備品として、出荷時点で積むからあるはずだ」
「でも撃墜されて、脱出シュートで緊急脱出したら使えないんじゃない?」
「脱出?」
 見合わせるアイクとジャン。
「そうか! 座席だ。座席の下だ」
 座席を動かして下を探す二人。


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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XI
2019.07.28


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 XI

 見合わせる三人。
 突然、大声を出して笑い転げる。
「何がおかしい」
「何がおかしいって……。ハイネだぜ、ハイネ」
「その筋骨隆々の身体で、ハイネはないだろう」
「俺は、シュワルチェネッガーかと思ったぜ」
「そうそう、女の子みたいな名前は似合わないわよ」
 怒り出すハイネ。
「俺のオヤジが付けた名前だ。しようがないだろ」
「しかしよお……」
 とまた笑い出すジャン。
 再び計器が鳴り出した。
「ほら、呼び出しよ」
「わかっている」
 無線機を操作すると、別のポップアップが画面が開いて、あの隊長が映し出された。
背後に複雑な計器類が並んでいるところから、モビルスーツのコクピットにいるらしい。
「おまえら、何をしている!」
「実は、例の二人組みのガキがモビルスーツに……」
 ハイネが弁解する。
「あらら、隊長さん、モビルスーツを運転できるの?」
「当然だ。残しておくのももったいないので、拝借することにした」
「いつの間に……」
 つい先ほどまで、ジープから機関銃を掃射していたはずである。臨機応変に行動する
実行力のある人物のようである。
「とにかく議論をしている暇はない。港まで突っ走れ! ミネルバが回収してくれる」
「了解」
 新型が二台と旧式が二台。
 機銃を装備している旧式が一斉掃射しながら突破口を開いていく。その後を新型が追
従する。
 しかしながら、アイクとジャンの機体は、「よっこらせ」という状態で、思うように
動かせないでいた。
「もう、何やっているのよ。どんどん引き離されていくじゃない」
「しようがねえだろ。新型だから、駆動系がまるで違うんだから」
「加速装置とかないの?」
「もう、じれったいわね」
 というと、手を伸ばして機器を手当たり次第に、押しまくった。
「ば、馬鹿。何をする!」
 突然、椅子に押しかけられるような加速を感じる一行。
「なんだ? どうしたんだ」
「知るかよ」
 サリーがスクリーンを指差しながら、
「見て、見て。これ、空を飛んでるんじゃない?」
 と叫んでいる。
「う、嘘だろ?」
 事実のようであった。
「こいつ、飛行タイプだったのか……」
「どこまで行くのよ」
「知るかよ。こいつに聞いてくれ」
 どんどん加速して上昇していく機体。
 操縦方法などまるで知らないのでなすがままだった。
 地上に残された隊長たち。
 呆然と見送っている。
 やがて雲の彼方へと消え去ってしまう。


ちなみに「ハイネ」という名は、ドイツで不通に男子の名前として使われている。
アニメ、「王室教師ハイネ」がありますね


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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ X
2019.07.21



 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 X

 カメラが作動して、目の前の様子が映し出された。
 ジープの荷台に設置された機銃を一斉掃射している隊長が映っている。
「やるなあ。あの隊長」
「感心している場合かよ。まだ動かせないのかよ。モビルスーツがすぐそこまで迫って
いるんだぞ」
「うるせえよ。まだだよ。そっちの武器の方こそ使えねえのかよ」
「今、確認してるさ。何だこりゃ?」
「どうした?」
「残弾数が0だよ。試運転中だったから、弾薬を積んでいないんだよ」
「使えねえなあ……」
 目前までモビルスーツが迫っていた。
 観念した時、もう一台の新型が体当たりして、モビルスーツを吹き飛ばした。
「すげえ馬力だ」
「これが新型の威力か」
「おっと、やっと動かせるぞ」
「気をつけろよ。こいつパワーがありすぎるからな」
「まかせろって」
 しかし足を前に振り上げた時、バランスを崩して倒れてしまう。
「何をやってる。言ったそばからこれだ。早く体勢を立て直せ」
「判ってるよ」
 その時、座席の後の方からあくびのような声がした。
「なんだ? 今の声は」
「知るかよ。おまえの後ろから聞こえたようだぞ」
 アイクが振り向いて見ると、女の子が眠たそうに目をこすっていた。
「あれ? ここはどこ?」
 とぼけた表情で、キョロキョロと見回していたが、
「ありゃりゃ、アイクとジャンじゃない。こんなところで何してるの?」
 自分の置かれている状況に、まだ気がついていない。
「サリー。おめえこそ、何してたんだよ」
「何してたと言われても……」
 サリーと呼ばれた女の子は、左手人差し指をこめかみに当て、首を傾げながら、
「グラウンド十週し終えて、モビルスーツ内に忘れ物したこと思い出して、コクピット
に入ったはいいけど、そのまま寝ちゃったみたい。
 と言って、ぺろりと舌を出した。
「コクピットに戻ってだと? おまえの乗っているの新型だぞ。どこをどう間違えれば、
自分の練習機と新型を間違えるんだよ」
「へえ? これ新型なの?」
「聞いてねえし……」
 呆れた表情のアイクとジャン。
 機器が鳴り出した。
「無線よ。出てみて」
「うるさいなあ……」
 無線機のスイッチを入れると、スクリーンに現れたのは、特殊部隊のテントで首根っ
こ掴まえられた、あの屈強な兵士だった。
「あー! おまえは、あん時の!」
「おまえら、そこで何をしている。ギルバートはどうした?」
「こいつに乗る予定だった奴は死んじまったぜ」
「おまえらがやったのか?」
「冗談じゃねえ。警備兵に撃たれたんだよ。そいつの代わりに乗ってやってるんだ」
「ちょっと待てよ……」
 ジャンが何事かを考えていたが、思い出したように、
「死んだ奴がギルバートってことは、おっさん……ハイネか?」
「そうだ!」
 憮然として答えるハイネ。

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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ IX
2019.07.14


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 IX

 夕闇に暮れるバルモア基地を格納庫へと突っ走っている特殊工作部隊。
 警備兵の姿が見られないのは、ミネルバ迎撃のために海岸へと応援に借り出されてい
るせいだろう。
 格納庫の扉を開けて潜入するが、
「何者だ!」
 庫内に残っていた警備兵に発見される。
 銃撃戦が開始され、わらわらと待機所から警備兵が飛び出してくる。
 そんな中、遅れてやってきた二つの影があった。
 アイクとジャンの二人であった。監視がいなくなったのを機に、どうにかしてロープ
を解いて、後を追ってきたのであろう。
 と、目の前にシャーリー隊長が、コンテナの影に身を隠しながら、銃撃戦を繰り広げ
ている場面に遭遇した。
「やあ、こんばんは」
 気楽に声を掛けるアイク。
「お、おまえ達!」
 目を丸くしているシャーリー隊長。
「どうやって解いた?」
「いやね、こいつは縄抜けの名人でね」
「そんな事はどうでもいい。宿舎に戻って寝てろ!」
「ここまで来て、それはないでしょう。手伝いますよ」
「そうそう。あの新型モビルスーツを奪取するんですよね」
 ちょこっとコンテナの影から顔を出して、庫内に据えられているモビルスーツを見上
げるジャン。
「危ない!」
 シャーリーが首根っこ掴んで引き戻す。銃弾が顔を出していた辺りに着弾する。間一
髪のところであった。
「ひえええ! 危ないなあ」
 格納庫のシャッターがゆっくりと開き始めた。
「まずい。奴ら、モビルスーツを駆り出してきた」
 膠着状態を打破するために、モビルスーツを使って強制排除するつもりのようだ。
「ハイネ! ギルバート! モビルスーツに乗り移れ、援護する」
 そう叫ぶと、コンテナの影から飛び出して、銃を乱射しながら庫内にあったジープに
向かって一目散に駆けていく。そしてその背後に隠れる。
 その間にも、名前を呼ばれた二人がモビルスーツに乗り移ろうとしていた。
 一人は乗り込みに成功するが、一人はコクピットに乗り込む寸前に銃撃に倒れて、コ
ンクリートの床に落下した。
 恐る恐る倒れた兵士に近寄るアイクとジャン。
 兵士は虫の息だった。
 そして震える手で、持っていたディスクを二人に差し出しながら、
「こ、これを……たのむ」
 そう言い残して事切れた。
 ディスクを手渡された二人は、しばし見つめ合っていたが、
「これ起動ディスクだろ?」
「たぶんな」
 モビルスーツを見上げ、やおら登りはじめた。
 そして無事にコクピットに潜り込むのに成功する。
「へえ、うまい具合に複座だぜ」
「うん。俺の方が操縦担当だな」
「こっちは機関担当ってところだ」
「ええと、ディスクの挿入口は……。あった。ここだ」
 起動ディスクを差し入れると、計器類が一斉に点灯し、ディスクを読み込みはじめた。
次々と計器類を操作して、起動の準備を進めていく二人。


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