銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ V
2019.06.16


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 V

 夕暮れとなり、電力ケーブル破壊工作に出ていた小隊が、無事に岩陰のテントに帰っ
てきた。
 副隊長が出迎えに出ていた。
「お帰りなさいませ。首尾はいかがでしたか?」
「うまくいったわ。作戦発動予定時刻に合わせて、無線起爆装置のスイッチを入れるだ
けだ」
「それは何よりです。敵基地の動きに変わりはありません」
「そうか……」
 テントの幕を、捲し上げて中に入る隊長。
「お待ちしていました。食事の用意は整っています」
 給仕班の兵士が待ち構えていた。
「よし、交代で食事にする。全員に伝えてくれ」
「判りました」
 副隊長がそばの兵士に目配せすると、納得したように指令の伝令に向かった。
「おい。例の二人をここへ連れて来い。食事を摂らせる」
「食事ですか?」
「捕虜にも食事をする権利はあるからな。捕虜の取り扱いに関する国際人権条約は遵守
されるべきだ」

 やがてテントに連行されてくる訓練生の二人。
「やい。いい加減に解きやがれ!」
 後手に縛られた手を、さかんに動かしながら叫ぶアイク。
「ふふふ。口だけは達者だな。いいだろう、解いてやれ」
 と、食事をする手を休めて、部下に命ずる隊長。
「逃げられます」
「構わん。縛られていては食事は摂れんだろう」
「しかし……」
「大丈夫だ。少なくとも食事が終わるまでは逃げないさ」
 二人のおなかがクウと鳴っていた。
 食べ盛りの若者である、何はなくとも腹ごしらえ。湯気の立ち上る食事を前にして、
逃げる気配は見せてはいなかった。
 引き下がる副隊長。
「まあ、座れや」
 自分の隣を指し示す隊長。
 言われた通りに、隊長の隣に腰を降ろす二人だった。
 プラスティック製の皿に盛られたシチューが手渡されると、早速口に運んだ。
「わたしの名は、シャーリー・サブリナだ。ご覧の通りに、この部隊の隊長をしている。
おまえ達の名前を聞こうか」
 まず先に名乗ってから、二人に名前を尋ねるシャーリー。 
「俺の名は、アイク・パンドールだ」
「ジャン・サルバトール」
 食事を口元に運ぶ手を止めて、それぞれに名前を名乗る二人。
「いい名だ」
「それはどうも……」
 気の抜けたような声で答える二人。
 会話よりも食べることの方が大事だという感じだった。
「それだけでは足りなさそうだな。おかわりしてもいいぞ」
「そんじゃ、おかわり」
 と遠慮なく空になった皿を給仕係りに差し出す二人。
 二人はいつもおなかを空かせている食べ盛りなのである。
 やがて、おかわりの皿をもきれいに平らげて、地面に置いてから尋ねるアイク。
「あんたら反政府軍のものだろ? そうか……。判ったぞ、新型モビルスーツを取り戻
しにきたんだな」
「そういうことにしておこう」
「なんだったら手伝おうか? 基地内のことには精通している俺達がいれば楽だぜ」
「その必要はない。情報ならこちらでも把握している」
 と言いながら、テント入り口に立つ兵士に目配せするシャーリー。
「おまえら、食事が済んだだろ。立つんだ」
 二人の前に立って促す兵士。
「また、木に縛り付けるのかよ」
「悪いがそうさせてもらう。作戦に支障が出ないようにな」
「冗談じゃねえよ!」
 と突然、兵士に体当たりし、外へ逃走しようとするアイク。ジャンも追従する。
 テントの幕を跳ね上げて外へ飛び出す二人。
 だが、外には屈強な兵士が待ち受けていた。
 簡単に首根っこをむんずと捕まれ、宙吊りにされてしまう二人。
「は、離しやがれ!」
 手足をばたばたとさせて、振りほどこうと暴れるが無駄な努力だった。
 体格差も筋力も、大人と子供ほどの違いがあった。
 シャーリーがテントから出てくる。
「どうした? もう捕まったのか、ぶざまだな」
「うるせえ!」
 プイと顔を背けるアイク。
「体育教練など無駄だとか抜かしておったが、その結果がこれだ。いざという時に一番
発揮するのは体力だということがわかっただろう」
「ランドール提督だって、体育教練をサボっていたじゃないか」
 何とか言い返えそうとするアイクだが、
「提督の真似をしたということか……。で、おまえは戦術用兵士官か?」
 尋ねられて、言葉を詰まらせる。
「戦艦を指揮する者は、体力など必要がない。優秀な頭脳さえあればいいのだからな。
比べられるものではないだろう」
 押し黙ってしまうアイク。
「頭を冷やして考えることだな」
 言い放すと、
「連れて行け!」
 二人を抱えている兵士に命ずるシャーリー。
「判りました」
 屈強な兵士は、二人が縛られていた大木へと連行していった。


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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ IV
2019.06.09


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                IV

 隊長がテントに入ってくるのを見て、通信士が早速声を掛けた。
「あ、隊長。今、暗号文の解読を終えたところです」
 と、通信士が暗号文を記したメモを手渡した。
 暗号が入電したとのことで、各班の班長が集まってきていた。
 暗号文を読み終えて、苦々しい表情で部下に伝える。
「面倒な任務が一つ増えたぞ」
「新しい任務ですか?」
 そばにいた兵士が聞き返した。
「ああ、ミネルバからの依頼だ。トーチカを守っているエネルギーシールドを何とかし
てくれとのことだ」
「ミネルバとは、空と陸からの両面からの共同作戦を行うはずでしたよね」
 共同作戦とは、バイモアール基地を空からミネルバが奇襲を掛けて、敵が空に気を取
られている隙に、地上から基地に潜入してモビルスーツを奪回するというものだった。
「何とかしてくれと言われても堅牢なトーチカを攻略するには、我々の装備では不可能
かと思いますが」
「トーチカそのものではない、エネルギーシールドだ。電力の供給元を絶てば簡単に済
むことだ」
「変電所でも爆破するのですか?」
「そんな危険な作戦はやらない。おい、変電所とトーチカを結ぶ電力線の記された基地
の見取り図を出してくれ」
 隊長が別の兵士に指示するのを聞いて納得していた。
「そうか、電力ケーブルですね。変電所などの施設に入るには危険が伴うが、山腹に埋
設された電力ケーブルの切断なら、人知れず任務を果たせるというわけですね」
「ありました。基地内の電力ケーブルの埋設図です」
 鞄から埋設図を取り出して机の上に広げられた。
 図面には、無数の配線がトーチカのある山腹に至るまで、緻密な網の目状に引かれて
いて、素人には何が何だが見当がつかなかった。
「トーチカに連なるケーブルはどれだ。それも大容量高電圧のやつだ」
 おそらく電気技術士官なのであろう、緻密な配線の中からエネルギーシールドに電力
を供するケーブルを探し当てた。
「あった。これです」
 といいながら図面のケーブルに蛍光ペンで色を塗った。
「よし。爆発物処理班を召集だ。君も一緒にきてくれ」
 電力ケーブルが埋設されている正確な位置を知るには、図面に詳しい電気技術士が同
行した方が良いに決まっている。
「もちろんですよ」
 快く承諾する技術士。
「指揮はわたしが執る!」
 爆破の専門家とケーブルを掘り出す工兵要員が速やかに集められて、隊長の指揮の下
に山腹へと移動をはじめた。

 トーチカへと続く丘の中腹。
 木々の茂みを掻き分けて特殊部隊が移動している。
「この辺りにケーブルが埋設されているはずです」
 見取り図と位置情報機器と見比べながら、電気技術士が指差していた。
「よし。早速掘り起こそう」
 隊長が指示すると、シャベルを持った兵士が、土を掘り起こしはじめた。
 保守点検を考えるならば、道沿いに埋設するのが常道なのであろうが、軍事機密とし
てわざわざ道なき所に埋設されているのであろう。
 その軍事機密である電力ケーブルの見取り図を、いとも容易く手に入れることのでき
た情報部の底力を知らされた。
「レイチェル・ウィング大佐か……」
 パルチザン組織にとって死活を征するのは、正確な情報をいかに早く収集し、極秘裏
に必要とする部署に的確に配信できるかである。
 特殊部隊が任務を遂行するのに必要な情報が、見事なまでに揃っていた。
 その情報能力を高く評価して、ランドール提督が送り込んできただけのことはあった。

 近くを通る山道を登ってくる自動車のエンジン音が聞こえてきた。
「静かに! 身を隠せ」
 穴掘りを中断して、茂みに隠れる兵士達。

「おい、止めろ!」
 山道を登っていた四輪駆動車の助手席の兵士が制止した。
「どうした?」
 運転手が尋ねる。
「今、茂みの中で何かが動いたんだ」
「見間違いじゃないのか? こんな山道、めったに通らないぞ。獣だろう」
「いや、人影だ。見てくる」
「気をつけろよ」
「判っている」
 車を降りて、銃を構えて茂みに入っていく兵士。

 茂みに身を隠して、近づく兵士を窺いながら、
「気づかれたみたいですよ」
 と、銃を取り出していた。
「銃はいかん。ナイフを使え」
 発砲すれば車に残った兵士に聞こえ、本部に連絡されてしまう。
 作戦発動までは、特殊部隊の活動を知られては、すべてが失敗となる。
 言うが早いが、隊長はナイフを手に取り、兵士の背後に回って急襲して見事に倒した。
 
「車にも一人残っていますよ」
 誰かが車の方を指差す。
「まかせてください」
 そう発言した兵士は、ナイフ投げの達人と呼ばれる人物だった。
 特殊部隊なら最低一人くらいはいるものである。
 達人はナイフを持つと、投てきの体勢を取り、車の方に向かって投げ放った。
 放たれたナイフは真っ直ぐ突き進んで、車で待機していた兵士を倒した。
「お見事!」
 何人かが手を叩いて賞賛した。
「誰か、車の方を片付けてくれ」
「わかりました」
 一人が車に向かった。
 車と倒れている兵士をその場に残しておいては、次に来る者に発見されてしまう。
「急ごう。作戦発動に間に合わなくなって、夕飯を食べる時間がなくなるぞ」
 穴掘りを急がせる隊長であった。
「それは大変だ! 急ぎましょう」
 賛同してシャベルを再び握る兵士達だった。
 作戦を遂行するのも大切であるが、腹ごしらえはもっと大切である。


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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ III
2019.06.02


 新型モビルスーツを奪回せよ


                 III

 バイモアール基地に隣接されたカサンドラ訓練所。
 その全貌を見渡せる小高い丘の上に、身を隠すようにして崖縁から様子を伺っている
者達がいる。
 搾取された最新鋭のモビルスーツ奪回するために潜入している特殊工作部隊である。
 その一人が手にした双眼鏡の視界には、訓練所内で行き来する士官候補生達の動きを
捉えていた。

 水飲み場で顔を洗い、水を飲んでいる生徒がいる。
 小脇に出席簿を抱えた教官が声を掛ける。
「アイクとジャンはどうした?」
 体育教練に出なかった二人を探し回っている風であった。
「さあ……。どこかで昼寝してるんじゃないですか」
「またか、どうしようもない奴らだな」
「なんすかねえ。あのランドール提督の真似してるんじゃないすかね。提督も体育教練
をよくサボっていたっていうじゃないすか」
「馬鹿もん! 提督は、学力も運動神経も人並みはずれた能力を持っていたんだぞ。た
だそれを前面に出したくなくて、人知れず『能ある鷹は爪を隠す』をやっていたんだ。
しかしトライトン提督や士官学校の先輩であるガードナー提督は、その内面から溢れる
才能を見抜いてランドール提督を重要なるポストに抜擢したんだ。ランドール提督はそ
の期待に応えた」
 陶酔したような表情を浮かべて、ランドール提督を賞賛する教官だったが、
「あの……ランドール提督は敵になったのでは……」
 という生徒の言葉に、気を取り戻して軽く咳払いしながら、
「とにかく、二人を見かけたら私のところに来るように伝えろ」
 罰が悪そうに立ち去る教官であった。
 総督軍にとっては敵将となったとはいえ、英雄と称えられる数々の功績を打ち立てた
ランドール提督を真に敵視する者は、生徒はもちろんのこと教官の間でも誰一人として
いなかったのである。

 小高い丘の上。
 特殊工作部隊のいる場所から少し離れた所に、空を覆いつくすように広々と枝を伸ば
している巨木がある。
 木漏れ日が差し込むその根元で惰眠をむさぼっている二つの人影があった。
 養成所の訓練生であるアイクとジャンであった。
 大きな欠伸をして目を覚ますアイク、その動きにジャンも目を覚ました。
「こんなにいい天気の日に体育教練など野暮ってもんだな」
「格闘技でもあるまいし、全自動のプログラムが動かしてくれるんだ。体育教練などや
っても無駄じゃないか」
 青い空に流れる雲を目で追いながら、アイクがそう呟いたときだった。
「ほう……。たいした自信だな」
 突然女性の声がしたかと思うと、仰いでいた空が黒い影で遮られた。
 それは人の影だった。
 明るい所に目が慣れていたせいと、逆光のせいでその素顔を確認できなかったが、そ
の体格からしても女性に間違いない。
 しかし、顔面に突きつけられたのは自動小銃の銃口。
「そのまま動くな。でないと頭に大きな穴が開くことになる」
 身動きできなかった。
 周囲で物音がしているところをみると、他にも数人いるようだ。
 寝転がったままの状態で、身体を調べられている。
 おそらくジャンも同じ境遇だろう。
「武器は持っていないようです」
「よし、縛って木の根元にくくり付けろ」
「了解!」
 その人物が銃を降ろして後ずさりしたかと思うと、数人がかりで縛られた。
「立て!」
 そして引っ立てられるように巨木の根っこにくくりつけられた。
 何がなんだか判らないうちに……。
 そんな感じだった。
「隊長、暗号文が入電しています」
 下から上がってきた兵士が伝えてきた。
「判った、今行く。そいつらから目を離すな。監視を一人付けておけ」
「了解」
 逃げられて特殊部隊の存在を、訓練所に連絡されて困る。任務完了までは縛っておく
に限る。
 隊長と呼ばれた女性士官は下へ降りていって、岩陰に設営されたテントに潜り込んだ。

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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ II
2019.05.26


新型モビルスーツを奪回せよ


                II

「バイモアール基地周辺の詳細図を」
 これから戦闘が行われるだろう基地の情報を、前もって知り事前の作戦計画を練るこ
とは大事である。
 オペレーターが機器を操作すると、それまでの航海図からバイモアール基地の投影図
へと切り替わった。
 基地の名称ともなっているバイモアール・カルデラは、数万年前に大噴火を起こして
陥没して広大なカルデラを形成したもので、その後東側の外輪山の山腹に新たな噴火口
ができて爆発、山腹を吹き飛ばして海水が流入し現在のカルデラ湾となった。
 バイモアール基地は、このカルデラの火口平原に設営されたもので、海側は入り口が
狭い湾となっているし、山側は高い外輪山に阻まれ、さらに後背地は砂漠となっていて
格好の天然要塞となっている。
「基地の兵力はどうなっているか?」
 作戦計画なので、各自意見のあるものは遠慮なく発言を許されている。
「湾内には共和国同盟の水上艦が守りを固めているはずです」
「基地直轄としては、三個大隊からなる野砲兵連隊が配備されておりまして、各大隊は
7.5cm野砲8門、10.5cm榴弾砲4門の構成。内二個大隊は湾側の防衛、一個大隊を砂漠側
の防衛にあたっております」
「野砲はそれほどの脅威はないでしょう。脅威なのは湾を望む高台に設営されている
トーチカ、そこに配備されている205mm榴弾砲ではないかと思います。直撃されれば一
撃で撃沈されます」
 一同が頷いている。
 ミネルバ搭載の135mm速射砲でも敵戦艦を一撃で撃沈させたのだ。それが205mmともな
れば、言わずもがなである。
「まず最初に破壊する必要性があるでしょうが、いかんせん向こうの方が射程が長いの
が問題です。こちらの射程に入る前にやられてしまいます。近づけません」
「ですが、こちらにはより長射程の原子レーザー砲があるじゃないですか」
「強力なエネルギーシールドがありますよ。原子レーザーは無力化されてしまいます」
「軍事基地をたった一隻の戦艦で攻略しようというのが、いかに最新鋭戦闘艦といえど
もどだい無理な話なのでは?」
 一人の士官が弱音を吐いた。
 すかさず檄が飛ぶ。
「馬鹿野郎! 戦う前からそんな弱気でどうする。困難を克服しようと皆が集まって作
戦会議を開いているのが判らないのか? 艦長に済まないとは思わないのか」
「も、申し訳ありません」
 フランソワの方を向いて、平謝りする士官だった。
 遙か彼方のタルシエン要塞から遠路はるばるこの任務に着任してきたフランソワ・ク
レール艦長。共和国の英雄と称えられるあのランドール提督からの厚い信望を受けての
ことであるに違いない。
 たんなる戦艦の艦長であるはずがない。
 それは一同が感じていることであった。
 暗くなりかけたこの場を打開しようとして、副長が意見具申する。
「この際、背後の砂漠側から攻略しますか?」
 砂漠には、丘陵地や谷間などがあって、砲台からの死角となる地形が多かった。
 それらに身を隠しながら接近して、砲台を射程に捕らえて攻撃しようという作戦のよ
うであった。
 しばし考えてから答えるフランソワ。
「いえ。海上側から攻略しましょう。砂漠から攻略してトーチカを破壊しても、山越え
した途端に基地からの総攻撃を受けます。基地に配備されたすべての兵力の集中砲火を
浴びせられては、さすがのミネルバも持ち堪えられません」
 トーチカの205mm榴弾砲のことばかりに気を取られていた一同だったが、基地の総兵
力の九割が海側にあることを失念していたようだ。トーチカだけなら砂漠からの方が楽
であるが、その場合は基地に入るためには山越えをしなければならず、満を持して構え
ていた基地から一方的に攻撃を受けることになる。
「海上からなら、まずは水上艦艇、次に野砲兵連隊、そして基地直営ミサイル部隊と、
射程に入り次第に各個撃破しつつ基地に接近することができます」
「トーチカからの攻撃はどうなさるおつもりですか?」
 海上では隠れる場所がない。トーチカの格好の餌食となるのは必定である。
 それがために皆が頭を抱えて思案していたのである。
 が、フランソワは一つの打開策を用意していた。
「基地には、モビルスーツを奪回するために潜入している特殊部隊がいるはずです。彼
らに協力を要請しましょう」
 特殊部隊?
 一同が目を見張ってフランソワを見た。

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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ I
2019.05.19


第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 I

 海上を進む機動戦艦ミネルバ。
 第一作戦室では台上に投影された航海図を囲んで士官たちが作戦を討論していた。
「しかし……、ここまで来て、バイモアール基地が陥落したことを知らせてくるとは。
何も知らずに基地に向かっていたらどうなっていたか……」
「それは無理からぬことではないでしょうか。何せ敵の只中にいるのですから、通信は
基地の所在を知らせる危険性があります。もちろん敵も通信傍受の網を広げて、我々を
必死で探し求めています」
「で……。どうなさいますか、艦長」
 一同の視線がフランソワに集まった。
 フランソワは毅然として答える。
「命令に変更はありません。情報によれば、最新型のモビルスーツを搭載していた輸送
艦が搾取されて、基地に係留されているという。最新型を回収し、予定通りに訓練生を
収容します」
「訓練生と申されましても、すでに敵軍に感化されてしまっていて、スパイとして紛れ
込むという危惧もありますが……」
「それは覚悟の上です。何しろこの艦には乗員が足りないのです。交代要員もままなら
ない状態で戦闘が長引けば、士気は減退し自我崩壊に陥るのは必至となります」
 いかに最新鋭の戦闘艦といえども、それを運用する兵員がいなければ、その戦闘力を
発揮できない。問題とするなれば、カサンドラ訓練所はモビルスーツ・パイロットの養
成機関であり、パイロット候補生に艦の運用に携わる任務をこなせるかどうかである。
それでも、猫の手も借りたい状況では、一人でも多くの兵員が欲しい。特殊な技術や知
識を必要としない部門、戦闘で負傷した将兵を運んだり介護する治療部衛生班や、艦載
機などに燃料や弾薬などを補給・運搬する整備班など。特に重要なのは、戦闘中に被爆
した際における、艦内の消火・応急修理などダメージコントロール(ダメコン)と呼ば
れる工作部応急班には、事態が急を要するだけにパイロットであろうと誰であろうと関
係なしである。とりあえずはパイロットであることは忘れてもらって、各部門に助手と
して配備させて、手取り足取り一から教え込んでいくしかないだろう。

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