銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 XI
2020.01.19

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦


XI


 壮烈なるターラント基地攻略戦が開始された。

 ミネルバ。
 艦内の至るところで、警報が鳴り響き戦闘態勢が発令された。
「艦載機及びモビルスーツ隊は発進準備せよ」
 フランソワの命令を伝えるオペレーターの声がこだまする。
 格納庫から戦闘機が次々と引き出されて、発着艦デッキへと移動されてゆく。
 モビルスーツへと駆け込むパイロット達。

 搾取したモビルスーツも全機投入される。
「アイク、ジャン、両名とも搭乗完了しました」
「出撃させてください」
「了解しました」
 今回の作戦は総力戦である。
 モビルスーツ及びパイロットを遊ばせておくわけにはいかないのである。
 作戦に参加する艦艇も、ミネルバ以下の空中戦艦、水上艦艇、陸上部隊と動員できるものはすべて参加していた。

「あの新人、大丈夫でしょうか?」
 副長のリチャード・ベンソン中尉が心配する。
「アイクはサブリナ、ジャンはナイジェルに任せてあります。何とか扱ってくれるでしょう」
「二人の競争意欲が邪魔をしなければと思うのですがね」
 フランソワとて考えでもないが、それを口にすることは士気の低下を招くことも良く判っていた。
「良いほうに考えましょうよ。オニール准将とカインズ准将もまた競争心によって、絶大な功績を挙げたのも事実なのですから」
「確かにそうではあるのですが……」
 煮え切らない副長であった。
 オニールとカインズ両名は、有能であるからこそ競争心は向上心となりえた。
 アイクとジャンは未熟で能力は未知数である。が、未知数であるからこそ将来もまた有望であるかも知れないのだ。

 激烈なる戦闘が繰り広げられる中、アイクとジャンも頑張っていた。
 双方ともパイロット役として、操縦桿を握っている。
「右後方に敵機!」
 機関士でありナビゲーターでもあるサブリナ中尉が警告する。
「了解!」
 振り向きざまに、ビームサーベルを抜いて切りかかる。
「上手いぞ。その調子だ」
 サブリナの指揮・指導の元、着々と技術を向上させてゆくアイク。
 ジャンとナイジェル中尉の方も同様であった。

「アーレスを発射します。軸線上の機体は待避せよ」
 ミネルバからの指令に、サブリナ機及びナイジェル機、その他多くの機体が退避する。
 その数分後にミネルバから強力な光が放たれターラント基地を破壊した。
 その凄まじさに驚愕した基地司令官は白旗を揚げて降参。ターラント基地はミネルバの手に落ちた。
「作戦終了!これより、この地に留まって撤収指令が出るまで確保する」


 メビウス海底基地司令部。
 ターラント基地攻略成功の報告が届いていた。
「着々と任務をこなしているようですね」
 副官が感心していた。
「まあ、ランドール提督の眼鏡にかなった人物ですからね。それなりの力量は持っている
はずです」
 レイチェルの言葉には確たるものがあるようだ。
「ここいらで休息を与えてはどうでしょうか?」
 副官の提案にレイチェル・ウィング大佐が答える。
「それはやまやまなのですが、総督軍もミネルバを追い回しているみたいですからね。そ
れにミネルバ級二番艦の【サーフェイス】の完成の間近なようですから」
「ミネルバ級ですか……」
「このミネルバ級と合わせて三番艦まで建造予定でした。いずれもメビウス部隊の所属に
なるはずでしたが、占領の方が早過ぎたのです」
「連邦軍のスティール・メイスン提督の作戦が作戦が素晴らしかったからですね」
「三百万隻もの艦艇を炎で焼き尽くしてね」
「あれには参りましたよ。お陰で共和国将兵は腰を抜かしてしまいました」
「しかし、サーフェイスが完成し実戦配備されると、今後の活動に支障が出ますね」
 これまでの勝ち続けの戦いは、最新鋭空中戦艦ミネルバがあってこそのものだった。総
督軍がミネルバ級をもって対戦を挑んできたら勝ち目は遠のく。
「サーフェイスが実戦投入される前に、トランター解放作戦を成功させなけらばならない
ようですね」
 という副官のため息とも思える言葉に、
「そのためにもモビルスーツ隊の教練度を上げる必要があります」
 レイチェルが作戦の方向性を唱える。
「訓練ですか……例の三人組も?」
「もちろんです。パイロット候補生は一人でも多い方がよろしい」
「分かりました。ミネルバに伝えます」
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 X
2020.01.12

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦




「総員帰還しました」
「司令本部より暗号通信入電!」
「解読してください」
「ただ今解読中です」
 やがて解読されて報告される。

『ターラント基地を攻略し、撤退命令あるまで確保せよ』

 その指令に、げんなりという表情をする副官。
「まともな休息もありませんね。次から次へと命令が届けられます」
「仕方ありません、我々の任務は陽動です。総督軍の只中にいるのですから。それより回
収したモビルスーツを使って、パイロット候補生の訓練を始めてください」
「了解しました」
 というわけで、パイロット候補生の訓練が開始された。
 発着格納庫で、ナイジェル中尉が、候補生を前に訓示を垂れる。
「パイロットになるための訓練はきびしい。志願した君達には十分な訓練を積んで、立派
な戦士となってもらいたい。幸いにも搾取したモビルスーツを持って、訓練の機会が増え
たのは喜ばしいことだ。今から読み上げる者から順に機体に搭乗しろ。呼ばれなかった者
は次の順番とするが、訓練を見学しつつ仲間の動きを観察して研究しろ」
 名前を順番に読み上げるナイジェル中尉。


 その頃、病室に入れられている三人。
 サブリナ中尉が面会に来ていたのはアイクとジャンのいる病室。
 サリーは、まだ回復せず別室となっていた。
 サブリナを見つけて、中の一人が駆け寄ってきた。
「いい加減に出してくれよ!」
 隔てられた窓ガラス越しに懇願するのはアイクだった。
「いいだろう。三日間の休息を与えた後に、仲間と共に訓練をはじめる」
「訓練か……それは、いやだなあ」
「何を言っておるか。強制召集されて軍に入ったんじゃなくて、志願したんだろ?」
「まさか、トリスタニア共和国が滅亡するとは、思ってもみなかったもんでね。後方部隊
でのほほんとしていながら、給料を貰って楽しみたかったよ」
 呆れ返るサブリナ中尉。
「甘ったれたことを言うんじゃない。艦長は君達の将来を、いつも考えて戦っているの
だ」
「そういえば、まだ艦長さんにはお目見えしていないな」
「そのうちに会えるさ。ともかく三日間の休息だ。十分に身体を養生しておけ」
「へいへい。ところでサリーはどうしている。見えないが……」
「まだ集中治療室だ。起き上がれるまでには回復しているがな」
「それは良かった」
 突然、サイレンが鳴り響いた。
「なんだ?」
「ターラント基地の攻略戦が始まるのさ」
「ターラントって結構大きな基地じゃないか。大丈夫なのか?」
「五隻の応援部隊が駆けつけている。この機動戦艦ミネルバと合わせて、艦長なら何とか
するさ」

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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 IX
2020.01.05

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦


IX


 ミネルバ艦橋。
「敵機来襲!」
「後方に揚陸母艦が見えます」
「何隻いるか?」
「三隻です」
「ヘリウム残量は?」
「残り12%です」
「超伝導磁気浮上システム維持できる時間は?」
「およそ56時間です」
「そうか……」
「やはり、ここへ来るときに、敵艦隊の足止めに放出したのが痛いですね」
「仕方がなかった。そうしなければ、ミネルバの運命もどうなっていたか」

「訓練部隊総員帰還しました」
「よし、ミネルバ浮上!」
 砂塵を巻き上げて浮上するミネルバ。
「戦闘配備!」
 艦内を駆け回って、それぞれの持ち場に急ぐ隊員達。
 モビルスーツの格納庫では、出撃の準備が始まっている。
 旧式機から昇降機を使って降りながら、整備員に大声で尋ねるサブリナ中尉。
「新型の整備状況はどうか?」
「液体ヘリウムの注入がまだ完了してません」
「何割注入した?」
「六割です」
「なら、二十分は飛べるな?」
「ええ、たぶん」
 新型の諸元表によると、液体ヘリウム満タンで大気中を三十分飛べることになっている。
もちろん気温や気圧といった環境でも違ってくるが。
「ハイネはまだか?」
 と叫ぶと、
「今行きます!」
 待機所から、携帯食料のチューブを咥えながら出てきた。
「ちょっと小腹が空いたもんで」
 言い訳していた。
「早く乗れ!」
「了解」
 新型は複座式である。
 パイロットの他、超伝導磁気浮上式システムを操作する機関士が必要なのだ。
「システム起動!」
「よし、出発する」
 ノシノシと歩いて射出機に両足を乗せる。
 前方の信号機が青になると同時に、
「サブリナ機、行きまーす!」
 カタパルトによって前方空域へと飛び出した。
 浮上システムによって、ふわりと空中に浮かぶサブリナ機。
「三時の方向に編隊多数!」
 レーダー手でもあるハイネが報告する。
 が早いか、戦闘機から発射されたミサイルが飛んでくる。
 防御用の盾を前にかざして、それを防ぐと同時に、身近を通った戦闘機をバルカン砲で
なぎ倒す。
 戦闘機の方も、素通りしてミネルバを急襲する。
「ミネルバなら大丈夫だ。こっちは敵母艦を叩く」
 戦闘機には目もくれずに、敵母艦へ向かってゆく。
 当然として、激しい弾幕攻撃を受ける。
 しかし、それも難なくかわして、母艦に取り付くのに成功する。
 背負っていたビームサーベルを手に取って、
「くらえっ!」
 とばかりに、ビームサーベルを艦体に突き刺す。
 ビームエネルギーが流れ込み、艦内のあちこちで爆発が起こり始める。
 サブリナが離艦すると同時に、轟音と共に大爆発した。
「役目は終わった、帰還するぞ」
 母艦が轟沈するのを見て、散り散りに逃げ去ってゆく戦闘機を見送りながら帰還するサ
ブリナだった。

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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 VⅢ
2019.12.29

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦




「ナイジェル中尉はトラップに気づきますかね」
「最初の一発を食らえばいやでも気づかされるだろうが、時すでに手遅れという状況に
追い込んでやればいいのさ」
「どうやって?」
「オーガス曹長が考えていた手を使わせてもらうさ」
「湿地帯を?」
「いや、山岳地帯を登っていく。途中に開けた場所があって、狙撃には格好の場所だ。
隊を二手に分ける。私のチームが山岳地帯へ向かう。カリーニ少尉は、トラップ地帯か
ら抜け出してきた機体を迎え撃て」
「判りました」
「上手くいけば、こちらは損害を被ることなく全滅させることができるだろう」
「そう願いたいですね」
「第一から第三小隊は私に続け、残る第四から第六小隊はカリーニ少尉と共にここでト
ラップから抜け出てきた敵を攻撃」
「了解!」
「総員機体に乗車!」
 サブリナとカリーニが率いる二隊が分かれて、それぞれの作戦に向かう。

 山岳地帯へと向かう傾斜を登るサブリナ隊。
 やがて開けた場所に出た。
「ここなら眼下を進撃するオーガスらを狙撃することができるな」
 双眼鏡で監視するサブリナ。

 数時間後、ナイジェル中尉率いるB班が登場した。
「B班が森林地帯に入る瞬間を狙うのだ」
「ブービートラップに追い込むのですね」
「ん?ナイジェルめ、気が付きよったな」

 覗く双眼鏡のレンズを通して、同じように双眼鏡でこちらを眺めているナイジェルが
いた。
 と同時に、部下の一人が対戦車用擲弾発射機(ロケットランチャー)を撃ってきた。
 慌てて退避し、難を逃れるナイジェル。
「どうやら、見透かされていたようだ」
 砲弾は至近距離に着弾したものの、砲弾に炸薬は入っていないペイント弾なので人体
被害は免れた。とは言っても、部下三名がペイントを浴びて戦線離脱となった。

 さてどうするか?

 と考えていると、通信士が叫んだ。
「隊長!敵襲です、ミネルバが敵に発見されました。至急訓練を中止して帰還せよ」
 上空を戦闘機が飛び交いはじめた。
 地上にいる所を発見されると、機銃掃射される危険がある。
「分かった!ナイジェルにも伝えろ。総員退却帰還!」
 これからいいところだったのに、という名残惜しさが漂う中、慌ただしく総員撤収が
はじまった。

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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 Ⅶ
2019.12.22

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦


                 Ⅶ

 湿地帯の中を突き進むオーガス曹長の班。
 足を取られながらも前進を続けていた。
「ようし、ここらでいいだろう。上陸するぞ」
 向きを変えて、湿地帯から上がろうとするオーガス班。
 およそ三分の一ほどが上陸した時だった。
 森林の奥からミサイルが飛んできて、一機に命中した。
 ペイント弾が破裂して、機体を真っ青に染め上げる。
『ガラン上級上等兵、命中です。行動不能に陥りました。隊より離脱して帰還してくだ
さい』
 通信機から指示が入った。
 戦闘シュミレーションによって、攻撃を受けた場合の損傷状態が計算され、戦闘不能
と判断されて帰還命令が出されたのである。
「りょ、了解。帰還します」
 隊を離脱して帰還の途につくガラン上級上等兵。
 奇襲攻撃にたじろぐ兵士たち。
「な、なんだ? どうしたんだ」
 オーガス曹長も例外ではなかった。
「奇襲です。森の奥から攻撃を受けています」
「森の奥からだと?」
 攻撃は続いていた。
 次々と撃破されて離脱する機体が続出していた。
「一時後退だ。湿地帯へ戻れ」
 湿地帯へと避難するオーガス班の機体。
 だが、違う方角からの攻撃が加わった。
「後方よりミサイル多数接近!」
「ミサイル?」
「対岸より発射されたもよう」
「対岸というと、サブリナ中尉か!」
「挟み撃ちです」
 進むもならず、退くもならず。
 進退窮まって全滅の道を急転直下のごとくに陥るオーガス班だった。

 全滅だった。

「こんなのありか……? 二班から同時攻撃を受けるなんて」
「おそらく共同戦線を張られたのかと思いますが」
「共同戦線だと?」
「はい。作戦概要の禁止条項を確認しましたところ、ルール違反にはならないようで
す」
「サブリナ中尉の策略か」
「そのようですね」
 通信機が鳴った。
『オーガス曹長の班は、総員帰還せよ』
 ミネルバからの連絡は、冷徹な響きとなってオーガスの耳に届いた。
「了解。帰還する」
 ペイントまみれの機体が続々と帰還をはじめた。

「オーガス班、全滅です。総員、帰還の途に着きました」
「ふふん。天狗になっているから、こういうことになるのさ」
「これから、どうしますか?」
「共同戦線はここまでだからな。この勢いに乗ってハイネの班へ殴り込みをかけたいと
ころだ」
「C班ですね」
「まあ、ハイネは個人としての戦闘能力はずば抜けて高いが、所詮はただの下士官だ。
作戦を立て、隊を指揮するなどという頭脳プレーは経験がない。ちょっとかき回してや
れば、隊は混乱に陥り、士気は乱れて自滅する」
「サブリナ中尉の指揮下にあってこそのものということですね」
「その通りだ。ハイネ上級曹長、恐れるに足りずだ」
 数時間後、ナイジェル中尉率いるB班と、ハイネ上級曹長率いるC班が、戦闘の火蓋
を切った。
 ナイジェル中尉の予想通り、ハイネ上級曹長率いるC班は、緒戦こそ善戦したが、ナ
イジェルが放った陽動作戦に見事に引っかかって、善戦むなしく敗退した。
 奮戦むなしく帰還するC班を見送るナイジェル中尉。
「ようし続いて、残るD班との決戦だ。その前に補給だ。しっかり燃料弾薬を積み込ん
でおけ」
 負け組みが帰還した後に残された陣地は、勝ち組が自由に使っていいことになってい
た。

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