あっと!ヴィーナス!!第三部 第二章 part-11
2021.01.03

あっと! ヴィーナス!!(45)


第二章 part-11

「アポローンへの復讐は終わったんでしょ。手助けしてあげなさいよ」
 ヴィーナスが助け舟を出す。
「だったらこうしなよ。僕の弓と矢を貸してあげるから、そこの女の子に手助けしてもらいなよ」
「女の子? 愛ちゃんのことか?」
 キョロキョロと見回す弘美。
「どこ見てんのよ、あなたのことでしょ。愛君はここから動けないんだから」
「俺?」
「他に誰がいる?」
「ああ、そうだった。俺、女の子なんだった」
「何をいまさら」

「それで、ペルセポネーはどこにいるんだ?」
「今、手下に調べさせているからしばらく待て」
「ただ待つのはいやよ。酒を出してちょうだい!」
 と、ここぞとばかりにヴィーナスが訴える。
「仕方がない奴だな」
 会議テーブルが下がり、再び食卓が上がってきた。
 エロースを召喚して貰ったゆえに、断り切れなかったのである。
 早速酒の瓶を空にしてゆくヴィーナス。

「おまえ、それだけ飲んで酔っ払わないのか?」
「ああ、こいつは蟒蛇(うわばみ)だよ」
「だがよ。俺の家では、へべれけに酔っていたではないか」
「人間の酒だからだよ。混ざりものの麻薬(デソモルヒネ)みたいなもので悪酔い
する。神の酒(ネクター)は、泥酔することはない」
「そうなんだ……」
 ヴィーナスの意外な一面を見た弘美だった。
 そうこうするうちに、二人の手下が情報を持って帰ってきた。
 アポローンを見つけて石化を解き、冥府へと連れて来た二人だった。

「ペルセポネー様の居場所を探し当てました!」
「旅の扉のビーコンを置いてきましたから、いつでも現地に飛べますよ」
「でかしたぞ!食卓の食事を好きなだけ食べるがよい」
「ありがとうございます」
「いただきます」
 早速神の食事に手をつける手下だった。
 頼もしい目つきで手下を見つめるハーデース。
「アポローンの時といい、なかなかできる奴らだ」
 そして、弘美の方に向き直った。
「さてペルセポネーの居場所が分かった。今度は君たちの番だ」
「どうすりゃいいんだよ?」
「ここに旅の扉がある。飛び込めば、自動的にペルセポネーの所へ運んでくれるぞ」
「旅の扉? ドラクエだな。大丈夫なのか?」
「無論だ。ドラクエは11Sまでやり込んだからな」
 ゲームの事はさておき、ハーデースが旅の扉の前に一行を案内した。
 それは、まさしく扉で『ニューサの野原行き』という札が掛かっていた。
「なんだよ。やっぱり、どこでもドアじゃないか」
「ここで考えていてもしようがないわね。度胸を決めて扉の向こうへ飛び込みまし
ょう」
 ヴィーナスが背中を押す。
「わ、分かったよ。じゃあ、愛ちゃん行ってくるね」
「気を付けてね」
 愛が手を振って見送る。
「一応僕もついて行ってあげるよ。大切な弓と矢だしね」
 人質ともいうべき愛ちゃんだけを残して、旅の扉に飛び込む一行だった。

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