冗談ドラゴンクエストII 冒険の書・8(金曜劇場)
2020.01.31

冗談ドラゴンクエスト II 冒険の書・8


ナレ「サンペタに戻り、宿屋で体力を回復し、忘れずに町外れの翁にセーブしてもらった
二人は、人懐こい犬の頭をなでなでしてから、ラーの鏡探しに出かけるのだった」
勇者「ラーの鏡か……どこにある?」
王子「魂の一人が、『サンブルグの東の地、4つの橋が見えるところに 小さな沼地があ
るという。そこにラーのかがみが……』と言ってました」
勇者「そうだな、行ってみるか。マンドリル3匹に出会わないように祈りながらな。今の
俺たちのレベルと装備じゃ、一撃で15Pとか一気にHP削られるからたまらんよ」
王子「祈ります」
ナレ「王子の祈りが功を奏したのか、たいした強敵に遭遇することなく、魂が指摘した沼
地にたどり着いた」
王子「見てください、沼の一角が光ってますよ」
勇者「うまい具合に、上向きになって太陽光を反射しているようだ。ゲームクリエイター
の作為が感じられる。スマホ版だからか……」
王子「何言ってるんですか」
勇者「気にするな。いいから、おまえ取ってこい」
王子「わたしがですか?ここ、毒沼ですよ」
勇者「大丈夫だ。おまえが死んでも荷物持ちとして使えるから」
王子「荷物持ち?どこかで聞いたような話ですね」
勇者「うむ……慎重勇者なんたらかんたらか?」
王子「勇者さんが取ってきてくださいよ。たとえ死んでもセーブポイントまで自動的に運
ばれる上に、無料でHP全快で復活してもらえるんだから」
勇者「何を言っておるか、持ち金の半分をふんだくられるんだぞ。もち全滅だから結局お
まえの復活費用も払わなきゃならん」
王子「でも、経験値はそのままじゃないですか」
勇者「いいから、取ってこい!」
ナレ「王子をひょいと背負ったかと思うと、光っているところまで投げ飛ばした」
王子「ちょっと、ひどいじゃないですか!」
勇者「いいから、すぐ手元にあるから拾え」
王子「え?ああ、これですね」
ナレ「王子は、ラーのかがみを手に入れた」
勇者「よし、サンペタに戻るぞ。HPもMPもきびしいからキメラの翼使おう」
王子「いいですね」
勇者「昔は、キメラの翼使っても、最後に立ち寄ったセーブの所しか戻れなかったのに、
今ではどこへでも行ける。随分進歩したものだ」
王子「まあ、ガラケーからスマホに進化したのと同じですよ」
ナレ「空を飛んでサンペタに戻ってきた二人」
勇者「さて、犬は……と、いた!」
王子「はやく呪いを解いてあげましょう」
勇者「おい、犬。今解いてやるからな」
犬 「くん、くん」
ナレ「犬がパーティーに加わった」
勇者「あ、おい!」
王子「だめですよ。呪いを解くまで話しかけちゃ」
勇者「あはは。失敗、失敗」
王子「一旦、町の外へ出ましょう。外へは付いてこれないですから」
勇者「よし、一旦外へ出て……で、また入ると、犬は……おお、いるいる」
王子「話しかけちゃだめですよ」
勇者「こら!じっとしてろよ」
犬 「くん、くん」
ナレ「犬がパーティーに加わった」
王子「何やってるんですか!」
勇者「だってよ。向き合った状態でないと、ラーの鏡使えねえんだよ。動き回るから、つ
い話し掛けたくなるじゃないか」
ナレ「再び町から出て、また町に入りなおす」
王子「今度は、自分がやってみます。勇者さんは押えておいてください」
勇者「わかった……」
ナレ「王子は、ラーのかがみをのぞきこんだ。なんと鏡は美しい王女の姿をうつしだした
っ!鏡がくだけちり 姫にかけられた呪いがとける!」
王女「ああ もとの姿にもどれるなんて……。もうずっと あのままかと思いましたわ。
私はサンブルグ王の娘です。もうごぞんじかと思いますが、サンブルグ城はハーゴンの軍
団におそわれ……私は呪いで 犬の姿に変えられて ここに飛ばされたのです。今頃サン
ブルグ城は……。ああ 今は考えないことにしましょう。私もあなたがたの仲間にしてく
ださいませ。ともに戦いましょう!」
王子「よろしくお願いします」
勇者「よろしくな」
ナレ「こうしてサンブルグの王女を交えた、あらたなパーティーの冒険がはじまったので
あった」
勇者「そうだ!町外れの脱走兵にも報告しておくか」
兵士「ま、まさか、王女様!?ご無事でしたかっ!わ、私は…王様や城の者たちを置き
去りにして……私はなんという情けない兵士なのでしょう!もう姫様に顔向けできませ
ぬ…」
王女「いいのよ、顔を上げて。誰もあなたを責めることはできないわ」
兵士「ひ、姫様……うっうっうっ…」
勇者「おお、おお。感動の再会か」
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あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-8
2020.01.30

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-8

 アポロの居城。
 すでに玉座についているアポロ。
 その両脇には、弘美と愛が眠らされて椅子に座っている。
「さて、一応話を聞いてやろうか」
 神子に酒を注がせながら余裕綽々ヨユウシャクシャクの態度で応対する。
「おまえが拉致するのを命じられたのは、弘美だけだろう。なぜ愛も連れ去る?」
「ああ、黒服が間違えたのは謝るよ。その黒服は、ほれ、そこの石像になっている」
 アポロが指差した先には、確かに黒服そっくりの顔つきをした石像が置かれていた。
「間違いを犯したと言うだけで、石像にするのか?」
 ヴィーナスが追求する。
「心配するな。ほんの一時のことだ」
「神暦時間でだろ。人間の時間にして何百年だ?」
「人間の時間に直してどうなる。ここは天上界だ」
「長年、人間の運命管理していたから、人間時間が身についてしまったわ」
「なるほど……。ともかく一旦わたしの元に来た者は、何があろうともわたしのものだ」
「だがな、弘美はともかく愛は無関係だろ。ヘラ様はともかく、ゼウス様に知れれば懲戒
ものだぞ。解放してやれよ」
 ディアナが忠告する。
「ゼウス様か……」
 ふふんと鼻を鳴らすような態度で、
「そもそもファイルーZなどという可愛い女の子リストを作成するゼウス様に、わたしの
ことを責めるには及ぶまい」
 と、相手にもしない雰囲気だ。
「ふぁああ!よく寝た……」
 大きな欠伸と共に弘美が目覚めた。
「あれ?ここはどこだ?」
 キョロキョロと辺りを見回す。
「弘美!」
「ヴィーナスじゃないか!ディアナもいるな」
 まだ、現状を把握していない様子だった。
「ところで、隣のこいつは誰だ?」
 アポロを指差して訊ねる。
 が返答する前に、
「あれ?そのまた隣にいるのは、愛ちゃんじゃないか!」
 椅子を立ち上がり、アポロの前を横切って、愛のところに駆け寄る。
「愛ちゃん!大丈夫?」
 声を掛けるが返事は無い。
 まだ眠っているのか?
「これは、どういうことだよ?」
 ヴィーナスに向かって問いただす。
「それは、そこにいる人物に聞くんだな」
 とアポロを指差すヴィーナス。
 向き直り、
「おい、おまえは誰だ!?」
 と訊ねる。

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あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-7
2020.01.29

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-7

 天上界にあるゼウスの妻、ヘラの神殿。
 イライラと玉座の前を、行ったり来たりしているヘラがいる。
「アポロはまだか?」
 弘美を捕らえたという報告を受けていた。
「まだのようです」
「今度また人違いだったら、ただじゃおかないからね」
 この目でしっかりと確認しないと安心できない。
 ファイルーZの存在を知って以来、是が非でも邪魔しようと思っている。
 そのリストにあったかつての女性たち。
 ヘレネー(スパルタ王テュンダレオースの娘・実父ゼウス)から始まって、
    クレオパトラ7世(古代エジプト・プトレマイオス朝最後のファラオ)
    虞美人(楚の将軍項羽の愛妾)
    則天武后(唐の皇宗の皇后から中国唯一の女帝となる)
    楊貴妃(唐玄宗の皇妃)
    小野小町(平安時代前期の歌人)
    エリザベス1世(英国女王)
    エカテリーナ2世(ロシア女帝)
    ジャンヌダルク(英仏百年戦争の英雄)
    インディラ・ガンジー(インド初の女性首相)
    クララ・バートン(米国赤十字の創始者)
    マリリンモンロー(米国超有名な歌手)
    マーガレット・サッチャー(鉄の女と称された英国首相)
    などなど……。
 なおリスト上の女性について当局は一切関知しない。保存ディスクは当人の死亡と同
時に自動的に消滅した。

 そして、相川弘美だ。

「アポロ様がお見えになりました」
 神子の声に振り返り、駆け寄るヘラ。
「首尾は?」
 頭上左右に浮遊させた状態で、弘美と愛を運んできたアポロ。
「ご覧のごとく」
 ヘラの視線が弘美に集中する。
「確かに、ファイルーZの娘じゃ」
「というわけで、この娘たちは貰い受けた」
「ふん。好きにするがよい」
 言いながら玉座に腰を下ろすヘラ。
 ファイルーZの娘が、ゼウスにさえ渡らなければ、アポロの妻になろうが下僕になろ
うが、どうでもよいことなのである。
 改めて許可を貰ったので、弘美と愛を連れて自分の居城へと向かおうとする。
 そこへ、ヴィーナスとディアナが登場する。
「待ってください!」
「なんだ?お前たちは呼んでおらんぞ」
「アポロ様に用があります」
「ならばアポロと話し合え。わたしは忙しいのだ」
 手を振って、シッシッと追い払うような仕草する。
「わたしの城で話そう」
「わかった」
 ということで、アポロの城へと向かった。

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あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-6
2020.01.28

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-6

「バルス!」
 エンジェルが最後のボタンを押した。
 と同時に、コントロールルームが激しく振動した。
「な、なに?」
 慌てて飛び上がって、制御盤から離れる。
 何事かとしばらく様子を見ていたが、床や壁が次々と崩壊していくのを見て、ディアナ
に報告しなきゃと、その場を離れた。
 天井が崩れて落下してくるのを避けながら急ぐエンジェル。

 アポロンのいる玉座付近でも騒動が起きていた。
 足元から城が崩れてゆくのに動揺するヴィーナス達。
「城が崩れる!」
 そこへエンジェルが駆けつけて、実情をディアナに報告する。
「城から離れないと」
 天駆ける戦車を呼び寄せるディアナ。
「弘美は?」
 心配になったディアナが見たものは、バリアーの中で平然としているアポロンと茫然自
失のままの弘美だった。
 天空城が崩壊する中、バリアーは完全防御状態で、その中は安全地帯となっていた。

 天空城は崩れ去った。
 しかし、アポロンのいるバリアーは球体状となって浮かんでいた。
 玉座に座ったアポロン、取り巻きの神子、そして愛も弘美も無事息災であった。
 球体の周りを飛び回る、天駆ける戦車に乗ったディアナとヴィーナス。
「なんてことだ」
 上へ上へと昇ってゆく球体を追いかけながら、自分達の浅はかさに悔しがる女神。
 アポロンの深層意識までは読みきれなかったという。
「アポロンの行き先は、判っている」
「ヘラ様のところね」
「その通りだ」
 ヘラのいるところ、天上界へと向かう女神だった。

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あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-5
2020.01.27

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-5

 アポロが決断を迫る。
「さあ、人質交換に応じるのかな」
 愛は可愛いが、ゼウスのお気に入りリスト【ファイルーZ】の弘美は、さらに可愛い。
 成長すれば、それこそ絶世の美女となりうるのだ。
 アポロにしてみれば、愛より弘美を選ぶのは当然だろう。
 たじろぐ弘美。
 愛は助けたい。
 かといって、人質交換に応じて、アポロの元に行くのも、吝かやぶさかである。
「どうするかね?」
「本当に愛を解放する気はあるのか?」
 ヴィーナスが確認する。
 アポロの周りを見渡せば、篭絡ろうらくした女の子や神子をはべらしているのだ。
 弘美を手に入れても、愛を手放すとは言い切れない。
「約束しよう」
「言い切ったな。約束したぞ」
 ヴィーナスとディアナが見詰め合って確認している。
「さあ、こちらへ来なさい」
 アポロが手招きする。
 躊躇ちゅうちょするが、愛を助けたい気持ちには変わらない。
 ここにはヴィーナスとディアナという女神がいる。
 愛と自分を助ける算段をしているかも知れないし。
 ゆっくりと前へ、アポロに向かって歩き出す弘美。
 時々振り返りながら。
 後数歩にまで来たときだった。
 突然、弘美を含めたアポロの周囲にバリアーのようなものが発生して、女神との間を遮断した。
「何をした!?」
 ヴィーナスが近づこうとしたが、バリアーが進入を防いで、その身体を弾き飛ばした。
「だましたな!約束が違うじゃないか」
 ディアナが叫ぶ。
「はて?何か約束をしたかな?」
 知らぬ存ぜぬといった風情のアポロ。
「弘美、大丈夫か?」
 何があったのか、茫然自失状態の弘美。
 愛は可愛い、弘美はもっと可愛い。
 女たらしのアポロが、どちらか一方を手放すと思ったのが間違いだったのだ。
 地団太踏んでくやしがる女神。

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