銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 II
2019.08.31


第四章 皇位継承の証(あかし)/土曜劇場


                 II

 祝賀パーティーには、皇族・貴族が数多く参加するだろうから、印象を良くし解放戦
線との交渉に道を開く好機会となるはずである。
「しかし、わたしはパーティーに着る服がありません」
 パーティーともなれば、女性同伴が原則である。アレックスの同伴として参加するに
はそれなりの衣装も必要である。参加者達は着飾ってくるだろうし、まさか軍服でとい
うわけにもいくまい。
「それなら心配要りません」
 皇女が侍女に合図を送ると、部屋の片隅の扉を開け放った。
 そこはクローゼットであった。ただ広い空間に豪華なドレスがずらりと並んでいた。
 すごい!
 パトリシアの目が輝いていた。まるでウエディングドレスのような衣装を目の前にし
て、軍人からごく普通の女性に戻っていた。
「これは貴賓室にお招き入りした方々のためにご用意しているものです。お気に入りに
なられたドレスがございましたら、ご自由にお召しになされて結構です。着付けには侍
女がお手伝いします」
「本当によろしいのでしょうか?」
 念押しの確認をするパトリシア。
 どのドレスを取っても、パトリシアの年収をはるかに越えていそうなものばかりなの
である。さすがに遠慮がちになるのも当然であろう。
「どうぞご遠慮なく」
 微笑みながら促すジュリエッタ皇女。
 というわけで、パトリシアがドレスを選んでいる間、ジュリエッタと相談するアレッ
クスであった。
「マーガレット皇女様はどうなるのでしょうか?」
「帝国に対して反乱を引き起こしたことは重大で、死刑を持って処遇されることもあり
えます。皇室議会の決定に不服を訴え、あまつさえ反乱を企てたのですから、皇室議会
の印象が非常に悪いのです。少なくとも皇家の地位と権利を剥奪されるのは避けられな
いでしょう」
「皇家の家系から抹消ですか……」
「致し方のないことです」
「そうですか……」
 深いため息をもらすアレックスだった。

 戦勝祝賀パーティーの夜がやってきた。
 宮廷には、貴族や高級軍人が婦人を伴って、次々と馳せ参じていた。
 大広間にはすでに多くの参列者が集まり、宮廷楽団がつまびやかな音楽を奏でていた。
 貴賓室の中にも、その音楽が届いていた。
 儀礼用軍服に身を包んだアレックスは、客員中将提督として頂いた勲章を胸に飾り準
備は整っていた。しかしパトリシアの方は、そう簡単には済まない。豪華なドレスを着
込むには一人では不可能で、侍女が二人掛かりで着付けを手伝っていた。そして高級な
香水をたっぷりと振り掛けて支度は整った。
「いかがですか?」
 アレックスの前に姿を現わしたパトリシアは、さながらお姫様のようであった。
「うん。きれいだよ」
「ありがとうございます」
 うやうやしく頭を下げるパトリシア。ドレスを着込んだだけで、立ち居振る舞いも貴
族のように変身していた。
「しかし……、何か物足りないな」
 アレックスが感じたのは、ドレスにふさわしい装飾品が全くないことであった。パー
ティーに参列する女性達は、ネックレスやイヤリングなどドレスに見合った高価な装飾
品を身に纏うのが普通だった。
「宝石類がないと貧弱というか、やっぱり見映えがねえ……」
 パトリシアも気になっていたらしく、紫色の箱を持ち出して言った。
「実は、これを持ってきていたんです」
 蓋を開けると、深緑色の大粒エメラルドを中心にダイヤモンドを配したあの首飾りだ
った。それはアレックスが婚約指輪の代わりに譲ったものだった。
「そんなイミテーションで大丈夫か?」
「ないよりはましかと思いますけど……」
「まあ、仕方がないか……。僕達にはそれが精一杯だからな」
「ええ……」
 パトリシアにしてみれば、イミテーションだろうと大切な首飾りには違いなかった。
夫婦関係を約束する記念の品であったから。


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妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の拾漆
2019.08.30


陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪


其の拾漆 兵士の霊


 やがて現場に到着する。
 旧民家が跡形もなく姿を消し、整地された土地には地鎮祭に設置された縄張りが今も
取り残されていた。
 その片隅に怪しげな黒い影が、微かにオーラを発しながら立っていた。
 それは少しずつ形を現わしてゆく。
 旧日本軍の軍服を着た兵士の姿だった。
「霊魂?」
 怨念を残したまま成仏できずに彷徨っているのか?
 白虎から降り立ち、その敷地に一歩踏み入れる。
 そして丁寧に語り掛ける。
 この世に彷徨っている霊ならば、成仏できないでいる根源を取り払ってやらなければ
ならない。
「あなたは誰ですか?」
 幽霊になった者に、名前など聞いても意味はないかも知れないが、とにかく取っ掛か
りを得るためには会話することである。
「夜な夜な、罪もない人々を殺(あや)めたのはあなたですか?」
 前問に答えないので、引き続き尋ねる。
「復讐……」
 やっとこぼそりと呟くように答える。
「何のための復讐ですか」
「わたしの生活を残忍にも踏みにじった」
「踏みにじったとは?」
「お国のために出征したというのに、奴らはその隙をついて好き勝手にした」
「奴らとは?」
「朝鮮人だ!」
「在日朝鮮人ということですか?」
「だから朝鮮人に復讐するのだ」
「すると朝鮮人を殺めていたというのですか?」
「そうだ!」
 初耳だった。
 被害者はすべて在日朝鮮人だったというのか?

 井上課長から聞いた事件簿と照らし合わせて、これですべての因果関係が繋がった。

 ともかくこれ以上の惨劇はやめさせなければならない。
「浄化してあげます」
 手を合わせて、この世に呪縛する幽霊の魂を解き放つための呪文を唱え始める。
 と、突然。
「そうはさせない!」
 怒声が響き渡った。
 敷地の片隅に、胞衣壺を抱えた美咲が、姿を現した。
「美咲さん……じゃないわね。魔人?」
「そうです。この娘の身体を借りて話しています」
「血の契約を交わしたのね」
「その通りです」
 すんなりと答える美咲魔人。
「それはともかく、せっかく情念を増長させてあげて、怨みを晴らさせて上げていたの
に」
 白虎がうなり声を上げて威嚇をはじめた。
「大丈夫よ」
 今にも飛び掛かりそうになっているのを制止する。
 相手が誰であろうとも、まずは対話であろう。
 まあ、聞いてくれる相手ではないだろうが……。
 戦って勝ったとしても、それは美咲の死をもたらすことになる。
 リストカットの痕跡を見ても、血の契約を交わしたことは明らかであるから、相手を
倒すことは美咲を死に追いやることでもある。
 手を引いてくれないかと、まずは交渉してみるのも一考である。
「いやだね」
「何を?」
「貴様の考えていることくらい読めるぞ。この身体から手を引けというのだろう」
「その通りです」
「馬鹿か! せっかく手に入れた依り代を手放すはずがなかろうが」
「では、戦うまでです」
「この娘がどうなっても良いというのか?」
「仕方ありません。血の契約を交わした人間を助ける術はありませんから」
「知っていたか。まあいい、ではいくぞ!」


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冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 51
2019.08.29


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 51


ナレ1「簡易釜土を作って火を焚き、途中で捕まえた獲物を串刺しにして、その周りに
刺して炙る」
コンラッド「はい、焼けましたよ(と焼き肉を一行に手渡す)」
リリア「(肉を受け取って)ありがとうございます」
勇者「ところでよお、龍峡谷までは、後どれくらいなんだ」
コンラッド「そうですねえ……ざっと32万マイラってところですか」
勇者「32万マイラだとお!もしかして地球一周できる距離じゃないか」
リリア「ちきゅう……ってなんですか?」
勇者「地球を知らないのか?」
リリア「知りませんが……ここはファンタジア大陸ですよね。周りを果てしなく広がる
海に囲まれているという」
ナレ1「解説しよう。この世界の1マイラは、地球世界の1/10マイルであり、もち
ろんこの世界は地球ではない」
ナレ2「ここは仮想世界であり、地球平面説が常識となっている」
ナレ1「いや、こんな話はよそうぜ!ファンタジーに地球物理学を持ち出すな」
ナレ2「というわけで、話を元に戻して先に進めよう」
コンラッド「まあ、十日くらい歩けば着きますよ」
勇者「いきなり元に戻したな」
リリア「そろそろ眠りましょうか。明日も早いですから」
コンラッド「そうですね。今夜の見張りは私がやります」
ナタリー「お願いします」
ナレ1「というわけで、焚火を囲むようにして、それぞれ雑魚寝することとなった」
ナレ2「夜が明けて、目覚める一行」
ナタリー「久しぶりに良く眠れたわ(とチラと横を見る)」
ナレ1「そこには、ロープでぐるぐる巻きにされた勇者が横たわっていた」
勇者「おいこら!早く解放しろ!!」
ナタリー「どうやら今回は、縄ぬけできなかったようね」
勇者「身動きできないように呪縛の魔法かけたんだろうがあ」
ナタリー「あら、バレてた?」
勇者「まともに寝返りがうてなくて腰が……痛いぜ」
コンラッド「朝食が出来てますよ」
ナレ1「夜明け頃から準備良く、飯盒炊爨(はんごうすいさん)をしていたようであ
る」
ナレ2「ちなみに飯盒炊爨とは、おかずなどのさまざまな素材の調理を含めており、ご
飯だけを炊く飯盒炊飯(はんごうすいはん)とは区別される」
リリア「ご苦労様です」
ナタリー「さあ遠慮なく頂きましょうか」
ナレ1「というわけで、早速朝食となった」
リリア「コンラッドさん、眠くないですか?」
コンラッド「大丈夫です、鍛えていますから。48時間でも起きていられますよ。戦争
に駆り出されれば眠る時間さえ無くなりますからね」
リリア「戦争に出られるのですか?」
コンラッド「それが騎士の役目の一つですから。侵略者から国や国王を守るためには立
ち上がらなければ」
ナタリー「さすがは騎士ですね。どこかの遊び人には言えないセリフね」
勇者「うるせいやい!」
ナレ1「食事を終え、後片付けも済んで出発することとなった」
コンラッド「さあ、出発しましょう。目指すは龍峡谷!」


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冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 50
2019.08.28


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 50


コンラッド「ここで休憩しましょう」
ナタリー「賛成!泳ごう、泳ごう!」
リリア「裸になるんですか?」
ナタリー「馬鹿ねえ、水着があるじゃない」
リリア「水着?あたし、持ってません」
ナタリー「これ、なーんだ!(何かを高く掲げた)ジャーン!!」
ナレ1「それは【あぶないみずぎ】であった」
ナタリー「安心して、リリアの分もあるわよ。と言ってもスクール水着だけど、これな
ら男の娘のあなたでも着れるでしょ」
勇者「さすが売春婦。それを着て男どもをだぶらかしていたのだな」
ナタリー「残念ながら、あんたの分はないわ」
勇者「大丈夫。俺はこれで十分だ」
ナレ1「と着替えた姿は、ふんどし一丁であった」
ナレ2「もちろん胸もあらわにプルルンと」
ナタリー「ちょっと待った!仮にも女の子がそんなもん着るんじゃないわ」
ナレ1「あわてて駆け寄り、勇者のバストをタオルで隠した」
リリア「そうよ。やめてください(悲鳴にも似た声)」
ナレ1「リリアが驚愕するのも当然だ。その身体は自分自身なのだから」
勇者「そっかあ……。俺は全然気にしないが」
リリア「あたしが気にするんです!」
コンラッド「…………(固まったまま動かない)」
ナタリー「ほら、コンラッドさんも目のやり場に困ってるじゃないの」
勇者「なに、見たのか?おいコンラッド。10000Gよこせ!」
ナタリー「自分で裸になっておいて、それはないでしょ。コンラッドさん気にしないで
ね。こいつの病気だから」
コンラッド「は、はあ……(ため息)」
勇者「しようがねえなあ……。じゃあ、これでいいんだろ」
ナレ1「と着替えたのは、【あぶないビスチェ】だった」
勇者「どうだ!(と腰に両手を当てて威張るように)」
ナタリー「そんなもの、どこで手に入れたのよ。売ってないわよね」
勇者「大聖堂の隠し部屋のタンスの中で見つけた」
リリア「大聖堂に隠し部屋なんてあったの?」
勇者「盗賊のスキルも持っているからよ。どんな隠し部屋も見つけ出せる得意技だぜ」
リリア「早い話が、盗んだのね」
勇者「何のことはない。宝箱はもちろんのこと、家の中のタンスを開けて、中身を頂戴
するのはドラゴンクエストの常道じゃないか」
ナタリー「まったく、しようがないわね」
勇者「にしても、大神官も男よのお。女子下着収集癖があるようだ。それとも女装趣味
か?」
ナタリー「たとえそうであっても、あんたよりはましよ」
ナレ1「とにもかくにも海水浴をエンジョイする一行だった」
ナレ2「そうこうするうちに日が落ちて、適当な場所を見つけて野宿することとなっ
た」


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冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 49
2019.08.27


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 49


ナレ1「道しるべの羅針盤を入手して、『いざ!龍峡谷へ』と大聖堂から出てくる一
行」
コンラッド「龍峡谷は、入ってきた反対側の東大門からの出発です」
リリア「まずは道具屋で、食料とかの必要品を買い揃えておきましょう」
ナタリー「聖水とかも一杯買っておきましょう」
コンラッド「私は、武器屋に寄りたいので、東大門の所で落ち合いましょう」
ナレ1「ほどなくして東大門で落ち合う一行」
リリア「それでは出発しましょう!」
勇者「おお、気を付けて行けや」
ナタリー「行くわよ!(勇者の耳を引っ張っていく)」
ナレ1「こうして、新たなる旅が始まるのである」
衛兵「コンラッド様、旅に出られるのですか?」
コンラッド「ああ、今度は長い旅になりそうだ」
衛兵「お気をつけて行ってらっしゃいませ(と重い扉を開け放つ」
ナレ1「全員が城外に出た所で、城門は閉ざされ新展開の世界へと飛び出した」
ナレ2「とはいえ、まず最初にするのは雑魚モンスターを退治して、レベルアップに励
むことである」
ナレ1「と言っているそばからモンスターが現れた」
コンラッド「みなさんこれをどうぞ(武器を渡す)」
ナレ1「三人に「聖なるナイフ」を手渡した」
リリア「(ナイフを受け取り)それで武器屋に?」
ナタリー「気が利くわね、流石リーダーだわ」
勇者「おい、俺がリーダーじゃなかったのか?」
ナタリー「何よ、今のあなたはスケベなただの花売り娘じゃない。勇者という名前の
ね」
勇者「俺は、花売り娘なのか?」
リリア「そうです(キッパリと)」
勇者「ドラクエにそんな職業あったか?」
コンラッド「無駄話はよして戦いに集中しましょう」
ナタリー「そうだった。目の前にモンスターがいたんだ」
勇者「大丈夫だ、ドラクエはターン制。こっちのコマンド入力戦闘が終わるまで、モン
スターは襲ってはこない」
ナレ1「モンスターがいきなり襲ってきた。勇者に50Pのダメージ」
勇者「そ、たまに奇襲されることもあるから要注意だ」
ナタリー「何をのんきな事言ってるのよ」
コンラッド「えい!(とばかりに、モンスターをなぎ倒した)」
ナレ1「チャリラリラン、と天から鳴り響く」
ナレ2「勇者はレベルアップした。体力その他1アップした」
勇者「おっ!久しぶりに聞く天の声か。しかし【1】とは、相変わらずせこいな」
ナレ1「なんやかんやとモンスターを倒しながら進んだ先、目の間に広大な海の広がる
海岸に出てきた」
リリア「これが海ですか?はじめて見ました」
勇者「俺もはじめてだ。何せ、城から一歩も出たことがなかったからな」


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