あっと!ヴィーナス!!第二部 プロローグ
2019.12.31

あっと! ヴィーナス!!(14)


第二部


プロローグ

ナレーション
再び天上界。
オリュンポスの頂きにそびえ立つ神殿の玉座に鎮座するゼウス。
神々の王。全知全能の神。神と人間の支配者。
ゆえに彼の意志は掟であり、気まぐれは運命と言われる。
彼はまた大変な浮気者であった。
姉であり妻であるヘラの目を盗んでは行幸を重ねていた。
その姿を変えて……。

ゼウス
ところでディアナ。最近ヴィーナスの姿が見えないが知っておるか?

ナレーション
神の酒(ネクタル)と神の食物(アムブロシア)を口に運びながら、
壇上から見下ろすそこには、天空の女神アルテミスことディアナがかしこまって
傅いていた。

ディアナ
存じませぬ。ヴィーナスとは犬猿の仲であります。
(実は知っているが。ここは黙っていた方がいいと黙っている)

ゼウス
うむ……。そうであったな。
ところで、例の件であるが、どうやらヘラに知られてしまったらしい。

ディアナ
……と申しますと、ファイルーZでございますな。

ゼウス
その通りじゃ。
どこから秘密が漏れたのかは判らぬが……。

ディアナ
……ヴィーナスだよ。(そう思うが口には出さない)

ゼウス
おまえも知っていると思うが、わしゃあヘラには頭が上がらん。
今頃、わしの計画を潰そうと、策を巡らしているに違いない。
何とかならんか?

ディアナ
ヘラ様が、ファイルーZの存在をお気づきになられたとなれば、
必ずやその対象を拉致監禁なさる可能性がございます。

ゼウス
だろうなあ。
そうじゃ、お主。
時の充まで、ボディーガードとして、そのもののそばに参っておれ。
いいな。

ディアナ
御意にございます。

ナレーション
深々と頭を垂れて玉座を離れて退室するディアナ。
神殿の入り口にディアナが出てくる。
空をつと仰ぎため息をつきながら……。

ディアナ
参ったな……。
ヘラ様のお気持ちも判るし、ゼウス様の意志には逆らえない。
それもこれも、あの飲んだくれのせいだ。
ともかく御意が下った以上従うまでだ。

暗転

ナレーション
ところ変わってここはゼウスの妻ヘラの神殿である。
壇上に怒りくるった表情のヘラがいる。
いらいらと壇上を右往左往している。
そこへ一人の神子が駆け込んでくる。

神子 D
ファイルーZの居所がわかりました!
証拠写真も、ほれこの通り。(と写真を手渡す)

ヘラ
(写真を受け取って)でかしたぞ。
(しばらく写真を眺めてから)
アポロ! アポロはおらぬか。

ナレーション
そこへ神子を右脇に抱えるように連れ添い
(その手は神子の胸元をまさぐっている)
左手にカクテルグラスを捧げ持つようにして、アポロが登場する。

アポロ
お呼びですか?
お母さま。

ヘラ
用があるから呼んだのです。
しかしその格好はどうにかならんのか。

アポロ
これ? 可愛い娘でしょう。
すぐそこでひっかけました。
(と神子の衣装の胸元をはだけると豊かな乳房が露になる)

神子 E
…………。(乳房を露にされて恥ずかしがっている)

ヘラ
さすがゼウスの息子。血は争えないか……。
まあ、それはどうでもよい。
おまえに命令を与える。
この写真の娘を拉致して我が元へ連れてくるのじゃ。
(と指先で写真を弾くと、それは宙を舞ってアポロの手へ)

アポロ
(写真を眺めて)この娘が何か?

ヘラ
どうやら次の浮気の相手のようだ。

アポロ
ほほう。相変わらず女に手を出されているのか。

ヘラ
人のことを言えた身分か!
(とアポロが抱えている神子を見つめて)
まあ、いい!
とにかく、その娘が十六歳になるまえに拉致するのじゃ。

アポロ
十六歳というと成人する前ということですね。

ヘラ
そうだ!

ナレーション
天上界では、十六歳を成人として扱い、それ未満の婦女子には
手を出してはならないという暗黙の了解があった。
それはゼウスをしても破ることのできないものだった。
ゼウスは運命管理局が管理しているファイル。
これから生まれ出る予定の人間達の中でも、絶世の美女として生まれる運命と
なっている娘のファイル。それをファイルーZとして、
時の充まではと管理しているのであった。

アポロ
拉致ねえ。わたしだってただ働きは遠慮したい。
もし私の気に入ることになれば……。

ヘラ
ああ、かまわぬ。妻にでも何にでもするがよい。
ゼウスにだけは、いいようにさせなければよいのじゃ。

アポロ
ならば、結構。
では、さっそく。(神子を抱えたまま退場)

ナレーション
さて諸君もご存じの通り、このアポロはゼウスの最初の浮気の相手とされる
レトが産んだ双子の一人で、姉(妹?)がディアナである。
なぜか彼が恋する相手は悲劇を迎える。
月桂樹となったダフネ。
ヒヤシンスの花にまつわる美少年ヒュアキントス。
他にもシビュレーやカッサンドラーなどなど。
それがゆえに常に新しい恋を求めてさまよう。
なお、アポロとはディアナ(ダイアナ)と同じく英語名。

役者は揃った。

ゼウスの命を受けたアルテミスことディアナ。
かたやヘラの命を受けたアポロ。
この兄妹とヴィーナスを交えて、物語は波乱の様相を呈してきた。
さて、これらの神々の下。
我らがヒロイン。
相川弘美ちゃんの運命は?
期待が膨らむ中、第二部がはじまる。
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11
肺炎・胸膜炎
2019.12.31

○月○日 肺炎・胸膜炎


 そんな忙しい毎日を暮らしていたのだが……。

 その日は朝から体調がすぐれなかった。
 やけに寒く感じていた。
 ストーブにかじり付きでも、一向に身体が温まらなかった。
 咳がひんぱんに出て、胸も締め付けるような痛みがあった。
 念のために体温を測ってみる。
 39度。
 風邪かインフルエンザか?
 尋常ならざる事態に陥っていることは確かなようだ。


 4度の入院を体験しての実感だった。
 そう……腸閉塞で3度目の入院があったのだが、同じ内容を書くのも……

 早速病院へ向かう。
 前回までの治療費滞納はあったが、取りあえずは診療が可能であった。
 今までは消化器外科だったが、今回は明らかに内科であろう。
 あの主治医とは、はじめて担当が代わることになる。
 内科を受診して医者は、レントゲン写真を見せながら言った。
「肺炎と胸膜炎ですね」
 え?
 耳を疑ったが、レントゲン写真は明確な答えを示していた。
 肺の映像が、蜘蛛の巣状の白い影で完全に覆われていた。
 胸膜炎である。それに肺炎を併発していた。
 以前、肺の影が薄いと診断されたことがあったが、それが具現化してしまったというわ
けである。

 肺炎と胸膜炎。
 後で知ったことであるが、全身性エリテマトーデスの合併症として有名な病状である。
 主治医もそのことは良く知っていたらしく、
「膠原病です。埼玉医科大学総合医療センターで、精密検査を受けた方がいいでしょう。
紹介状を書いておきましょう」
 ということになった。
 埼玉医科大学総合医療センターは、リウマチ(膠原病)ではかなり有名な病院だそうで
ある。

 レントゲン写真で、肺炎と胸膜炎であることは明確だったので、すぐさま治療が開始さ
れ順調に回復してゆく。
 膠原病の治療も必要だったのだろうが、この病院ではそれができない。
 膠原病の専門家でない医師が下手に治療をすると、病状を悪化させるだけである。
 ここでは肺炎と胸膜炎だけに絞って治療が行われた。
 そして退院の日を迎える。
 またしても診療費は「ごめんなさい!」である。
あっと!ヴィーナス!!第五章 part-6
2019.12.30

あっと! ヴィーナス!!


第五章 part-6

 ええと……。どれかな……。
 昨日と今日と買ったばかりの新品衣料の中からパジャマを探し出す。昨日着用したもの
はすでに洗濯機の中だ。以前なら二三日は同じのを着ていたりしたが、女の子としては毎
日着替えるようにとの厳命だ。だから洗濯サイクル、乾きにくい雨の日のことをも考慮し
て、最低でも後三着はあるはずだ。
「これかな……」
 可愛い花柄のネグリジェだった。
「ん……。パス!」
 どうも、てるてる坊主のネグリジェは敬遠したい。
 整理好きな母だから、同じ物をあちこちばらばらにしまうことはしない。当然、これの
下が……。
 胸元に華やかなレースが施されたネグリジェだった。
「……。つぎね」
 さらに下を探る。
 肩紐式のストレートなスリップドレスのネグリジェだった。
「肩紐な分、胸の膨らみがくっきりとでそう……パス」
 さらに下を探る。
 透け透けとは言わないが、ピンクのナイロン製のネグリジェだった。
「こいつは暑い夏には着れないね」
 さらに下を探る。
 もうなかった……。
 …………。

 ということは、パジャマが一着にネグリジェが四着というわけか……。
 もろ母の好みで選んでるというところ。
 母はネグリジェ派だった。
 もっとも結婚していて、旦那との夜の相手をするには、ネグリジェの方がなにかと都合
がいいからに違いないが……。

 はあ……

 思わずため息が洩れてしまう。
 シーツがよけいに汚れるからと母がうるさいので、裸で寝るわけにもいかない。
「しようがない……こいつでいいや」
 一番最初に取り出した花柄のネグリジェにした。

「しかし……今日も一日、ほんとに疲れたよ」
 朝目覚めた時から今この時まで、緊張と羞恥心との連続で、ひとときも気の休まること
はなかった。
 ベッドに潜り込み祈る。
 朝目覚めたらすべてが元に戻っていますように。


第一部 完

 引き続き第二部をお楽しみください。

11
生活保護申請と自己破産 その1
2019.12.30

○月○日 生活保護申請と自己破産 その1


 長い入院生活によって、いろいろとやらなければならない事が山積みだった。
 まずは保健所に特定疾患「クローン病」の認定申請だろうか?
 今後想定される再発に対して医療費免除は必要不可避だからである。
 これ以上の治療費の出費は痛い。一回の入退院だけで、軽く30万円を超えるからだ。そ
れが何度も繰り返される。しかし入院費滞納してては、認定申請のための医師の診断書が
貰えるかは未知数である。
 だが、保健所の申請は止めて、生活保護を受けることにする。

 そして、市役所に生活保護の申請である。難病のクローン病を抱えながら、度重なる入
院によって仕事先から解雇を言い渡されて収入が閉ざされており、入院治療費が支払えな
い。税金やローンの支払いも滞っていた。
 しかし自宅があり銀行ローンを支払っているということで認定が降りないことを説明さ
れた。
 そして、預貯金合わせて所持金3万円以上あると駄目ということも念押しされた。


 入院費を払うために消費者ローンなどにも手を出して多額の借金を抱えており、もはや
返済不能となっていた。

 残る手段は、自己破産しかない。

 法律相談センターで債務整理を弁護士と相談。相談無料の三十分以内で、自己破産する
ことに決めて、その日の担当弁護士に法律の手続きをお願いすることにした。
 弁護士に支払うべき十万円ほどの着手金が必要だったが、法テラスという法律互助会組
織に申請して決済され、月々5千円の支払いで済むことになった。

 まずは自己破産の申請書類の作成である。

① 債務のすべての洗い出し、どこのローン会社にいくら、どこの消費者金融にいくら、と
こと細かく書き出す。
② 債務超過に陥った理由書き。これはもちろん診療費の支払いをするために借金したこと
が主な理由である。長期の入退院によって勤めていた会社を解雇され無収入になったこと
も。
③ 自己所有のあらゆる財産目録。手持ち金、預貯金、自動車等の動産、宝石などの高額商
品(概ね10万円以上)、犬猫、その他諸々。
④ 前年度の所得証明書。
⑤ 住民票(発行6ヶ月以内)
⑥ 実印と印鑑証明。
⑦ そして誓約書(もう二度と借金を重ねません)
⑧ その他諸々の書類。

 実は、ここへきて住宅ローンの督促状や最後通告書などが届いていた。
 ローン会社は二種類あった。通常の銀行ローンの他に、年金公庫融資という公的なもの
だ。その年金公庫融資分が、ついに債務管理団体に債務が移された。債務の一括返済の督
促状と共に、期限までに返済されない場合、競売に掛けられるとの通告書が届いた。
 競売となれば自宅は二束三文の捨て値となる。
 残る銀行ローンの担当者と相談して、自宅売却することにした。もちろん自己破産の手
続きを進めていることを伝えた。
 自宅売却のための不動産会社も紹介された。


 数日後、弁護士から連絡があって、自己破産の審理が開始されたとのこと。

 破産手続きが開始されると、一定の資格を利用することが制限される。
 例えば、弁護士・司法書士・宅地建物取引主任者などの公的資格を取得することや、資
格取得者はその資格が使えなくなる。
 また、居住制限や通信の秘密の制限もなされる。

 破産手続きとは、破産者の財産を換価処分して、それによって得た金銭を債権者に弁済
または配当するという手続き。換価処分しても債務が充当できなければ、残りの分は返済
の義務が生じる。
 法人では、破産した法人が消滅するので、債務の主体が消滅するので問題はない。
 個人での破産ではすべての債務を返済できるはずもなく、生きていく金も必要がある。
 そこで免責という、もう一つの手続きが同時進行で進められていた。

 もう一度確認、自己破産では免責の決定が受理されるまでは、債務はなくならない。

 弁護士から連絡があって、家庭裁判所から招聘があったのことで、裁判所で待ち合わせ
る。
 今日は、自己破産の免責についての説明があった。
 自己破産しても、債務返済の義務は無くならない。一時的に返済猶予が与えられただけ
だ。
 免責の決定が出て、はじめて債務や資格停止処分(復権)が帳消しになる。
 但し、未払い税金や健康保険料などの公的債務は免責にならない。
 また、ギャンブルや投資などによって負った債務も免責にならない。


 自己破産決定は、官報に載る。
 その官報を見て、ローン会社から甘い勧誘が来るようになるので、要注意だ。
「自己破産した方にでも、お貸し致します」
 という葉書が度々送られてきたものだ。

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 VⅢ
2019.12.29

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦




「ナイジェル中尉はトラップに気づきますかね」
「最初の一発を食らえばいやでも気づかされるだろうが、時すでに手遅れという状況に
追い込んでやればいいのさ」
「どうやって?」
「オーガス曹長が考えていた手を使わせてもらうさ」
「湿地帯を?」
「いや、山岳地帯を登っていく。途中に開けた場所があって、狙撃には格好の場所だ。
隊を二手に分ける。私のチームが山岳地帯へ向かう。カリーニ少尉は、トラップ地帯か
ら抜け出してきた機体を迎え撃て」
「判りました」
「上手くいけば、こちらは損害を被ることなく全滅させることができるだろう」
「そう願いたいですね」
「第一から第三小隊は私に続け、残る第四から第六小隊はカリーニ少尉と共にここでト
ラップから抜け出てきた敵を攻撃」
「了解!」
「総員機体に乗車!」
 サブリナとカリーニが率いる二隊が分かれて、それぞれの作戦に向かう。

 山岳地帯へと向かう傾斜を登るサブリナ隊。
 やがて開けた場所に出た。
「ここなら眼下を進撃するオーガスらを狙撃することができるな」
 双眼鏡で監視するサブリナ。

 数時間後、ナイジェル中尉率いるB班が登場した。
「B班が森林地帯に入る瞬間を狙うのだ」
「ブービートラップに追い込むのですね」
「ん?ナイジェルめ、気が付きよったな」

 覗く双眼鏡のレンズを通して、同じように双眼鏡でこちらを眺めているナイジェルが
いた。
 と同時に、部下の一人が対戦車用擲弾発射機(ロケットランチャー)を撃ってきた。
 慌てて退避し、難を逃れるナイジェル。
「どうやら、見透かされていたようだ」
 砲弾は至近距離に着弾したものの、砲弾に炸薬は入っていないペイント弾なので人体
被害は免れた。とは言っても、部下三名がペイントを浴びて戦線離脱となった。

 さてどうするか?

 と考えていると、通信士が叫んだ。
「隊長!敵襲です、ミネルバが敵に発見されました。至急訓練を中止して帰還せよ」
 上空を戦闘機が飛び交いはじめた。
 地上にいる所を発見されると、機銃掃射される危険がある。
「分かった!ナイジェルにも伝えろ。総員退却帰還!」
 これからいいところだったのに、という名残惜しさが漂う中、慌ただしく総員撤収が
はじまった。

11

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