銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 V
2019.09.21


第四章 皇位継承の証


                 V

 【皇位継承の証】が出てきたという報は、皇家・貴族達の間はもちろんの事、全
国津々浦々にまで広がった。これほどまでの重大事に対して、他人の口に戸は立て
られぬのごとく、血液検査を担当した研究者によって外部に漏れてしまったのであ
る。しかもそれを携えていたのが、内乱を鎮圧したランドール提督であり、共和国
同盟の英雄と讃えられる若き指導者であることも知られることとなった。
 気の早いニュース誌などは、「行方不明の皇太子現る」のスクープを報じていた。
 エリザベス皇女もまた謁見の間において、侍従長の報告を聞いて絶句した。
「間違いないのですか?」
「間違いはございません。【皇位継承の証】は正真正銘の物であり、血液鑑定の結
果も行方不明であられたアレクサンダー皇子の血液と一致いたしました。提督のエ
メラルド・アイが、それを証明してくださるでしょう。拾われた時に御身に付けら
れていたと言う、よだれ掛けのイニシャルの刺繍もアレックス、皇子の幼名であら
せられます」
「そうですか、アレックスが……」
「もう一度申し上げます。アレックス・ランドール提督は、銀河帝国における皇位
継承第一順位であらせられる、アレクサンダー皇子に相違ありません」
 事実を突きつけられ、アレックスが行方不明となっていたアレクサンダー皇子で
あることは明白なこととなった。本来なら大歓迎を受けるはずであったが、行方不
明を受けてロベール王子が皇太子として擁立され、皇室議会で承認されている。
 二人の皇太子候補が並び立ったのである。
 新たなる騒動の予感が沸き起こった。

 緊急の皇室議会が召集されることとなった。
 議題はもちろん皇太子の件であるが、開会と同時に議場は紛糾した。
 ウェセックス公国ロベスピエール公爵の息のかかった、いわゆる摂政派と呼ばれ
る議員が頑なに主張を続けた。
 ロベール王子の皇太子擁立はすでに決定されたことであり、それをいとも簡単に
覆して新たに皇太子を論ずるなど皇室議会の沽券に関わる。
 というものであった。
 一方、
 【皇位継承の証】を拠り所として、帝国至宝の絶対的権威をないがしろにするの
か?
 という、正統派の意見も半数近くまで占めていた。
 議会は完全に真っ二つに分かれ、険悪ムードとなっていた。
 このままでは、再び内乱の火種となりそうな勢いとなりつつあった。
 しかし、内乱となることだけは、絶対に避けなければならない。
 そこで中立派ともいうべき議員達から折衷案が提出された。
 次期皇太子、皇帝は議会決定通りにロベール王子が継ぐこととし、さらなる次世
代にはアレクサンダー皇子もしくはその子孫が皇帝を継承する。ロベール王子は一
代限りの皇帝として、アレクサンダー皇子が世襲する。
 というものであった。
 議会の決定を尊重し、かつ【皇位継承の証】の権威を守る唯一の解決策であった。
 とにもかくにも、アレクサンダー皇子の皇室への復籍と、皇位継承権第一位を意
味する第一皇子という称号授与が確認された。
 これを中間報告として、皇太子問題は継続審議とされることが決定された。
 謹慎処分を受け、軟禁状態に置かれていたマーガレット皇女は、アレクサンダー
第一皇子復籍の報告を受けてもさほど驚きもせず、改めて謁見の許可を求めたとい
う。
 それは認められて、アレクサンダー第一皇子とマーガレット皇女との対面が実現
した。
 行方不明だった皇子が現れ、【皇位継承の証】も戻ってきた。
 マーガレットが反乱の拠り所としたものが、目の前に立っていた。その主張が正
しかったことを証明する結果となった。


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妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の廿壱(最終回)
2019.09.20


陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪(最終回)


其の廿壱 顛末


 土御門神社の自分用の部屋。
 布団を敷いて美咲を寝かしつける。
 傍には白虎も寄り添っている。
「ありがとう。もういいわ」
 白虎を優しく撫でると、軽く鳴いて静かに消えた。
 何事も知らずに軽い寝息を立てている美咲の顔を見つめる蘭子。
 つと立ち上がり、胞衣壺を抱えて向かった先は、土御門神社内にある書物庫。
 書物庫はもちろん敷地全体に、魔物や怨霊の侵入を防ぐ結界が厳重に張られている。
 結界陣を開封して中に入り、開いた棚に静かに安置する。
「これでもう、世を惑わせることもないでしょう」
 再び結界陣を元に戻して、書物庫を後にする蘭子。


 翌日の土御門神社の応接間。
 井上課長、土御門春代、美咲と父親、そして蘭子が一堂に会していた。
 事件の詳細を説明する蘭子。
 その内容に驚愕する父親と、まるで記憶にないので首を傾げるしかない美咲。
 重苦しい雰囲気が漂う中で、最初に口を開いたのは春代だった。
「さて刑事殿。この事件の顛末をどうつけるつもりだい?」
 問われて言葉に詰まる井上課長だった。
 警察の役目は事件についての捜査を行い、被疑者の身柄や証拠などを検察へ送ること。
 一般的思考でいうなら、今回の事件の犯人は、神田美咲であることに違いはない。
 【人にあらざる者】が介在していることなど、理解の範疇には存在しないので、呪術
や魔法といった非科学的な犯罪は取扱しない。
 有名なところでは、藁人形に釘を打って対象を呪い殺す丑の刻参りがあるが、非科学
的で刑法も民放もこれを認めていない。
 現代の警察は科学捜査を基本としているからだ。
 美咲の部屋を捜査すれば、殺人現場の証拠は出るだろうが、犯人は誰か?となれば当
然として美咲の名が挙がる。
 殺人を立証するには、
 殺人方法
 殺害時刻
 凶器
 動機
 アリバイ
 遺体の移送方法
 などを検証しなければならない。
 遺体移送方法はもちろんの事、凶器は壺の中に封印済み、とにかく魔人のしでかした
ことの解明は不可能だろう。
 人事考課に汚点を残すことになるが、迷宮入りにするほかにないと考えていた。


 翌日。
 美咲の部屋に入った蘭子。
 魔人の術法によって人の目に見えなくなっていた血痕が、その消滅によって再び露わ
になっていた。
 式神を使役して床にこびり付いた血痕を、綺麗に拭い去った。
 ルミノール反応にも出ないほどに。
「証拠隠滅だけど……仕方ないわよね」
 井上課長の同意も得ていた。
 そもそも凶器の刀子も壺の中だし……。

 数日後の阿倍野高校一年三組の教室。
 一時限目開始のチャイムが鳴ると同時に、美咲が入室してくる。
「おはよー!」
 それに答えるように、クラスメートも応答する。
「おはよう」
「ひしぶり~」
「もういいの?」
「ありがとう、大丈夫よ」
 口々に挨拶が交わされる。
 そういったクラスメートから離れて、窓辺の自分の席に座り、ぼんやりと庭を見つめ
ていた。

 一つの事件は終わった。
 しかし、これで終わりではない。

 一つの事件は解決したが、蘭子の【人にあらざる者】との戦いはこれからも続く。

胞衣壺(えなつぼ)の怪 了


11
冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 63
2019.09.19


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 62


ナレ1「主祭壇の傍に地下に通ずる階段が現れた」
ナタリー「大聖堂祭壇にある地下って納骨堂とかがあるのよね(リリアに耳打ちす
る)」
リリア「ええ、普通はそうなっていますね」
ナレ1「リリアも怖いという意識はあるものの、元の身体に戻れるという一念が勇
気を出させていた」
ナレ2「燭台を持つ最高導師の後について、コツコツと足音の響く階段を下りる一
行」
ナレ1「一行が降り立った地下室は薄暗く、その狭い通路を進んだ先に開けた空間
があった」
ナレ2「おそらく祭礼用の部屋なのだろう。二つの四角い台が置かれていた」
リリア「棺が二つ?」
ナタリー「違うみたいね。あたしも一瞬棺に見えましたけど、供物とかを捧げるた
めの台のようです」
ナレ1「一段高くなっている祭壇から一向に向かって話す最高導師」
最高導師「さて、魂の入れ替えを望むものは前へ」
リリア「はい!(と前に進み出る)」
最高導師「もう一人は誰か?」
ナタリー「ほれ、あんただろ。前に出なさい」
勇者「俺は別にこのままでもいいんだが」
ナタリー「何言ってるのよ、元に戻りたくないの?」
勇者「俺は遊び人だぜ。男だろうが女だろうが、どっちもどっち。変わり映えもし
ねえしよ」
リリア「勇者さんはそうでしょうけど、あたしは戻りたいんです!」
ナタリー「そうよ。あんたはともかく、リリアさんの身にもなってよ」
勇者「俺の身は?」
ナタリー「あんたの身はどうでもいいのよ」
勇者「さて、帰るとしよう」
ナタリー「こら!スリープ!!(睡眠の魔法をかける)」
ナレ1「その場に崩れる勇者」
ナタリー「勇者には悪いけど、リリアの願いの方が切実だもんね」
最高導師「さて、お二方は台の上に横になってください」
リリア「わかりました。(と台の上に乗る)」
コンラッド「勇者さんは、わたしが乗せましょう(と倒れている勇者を抱きかかえ
て台に乗せた)」
ナレ1「二つの台の上に横たわる二人を見つめる最高導師」
最高導師「それでは始めるとしよう。他の者は少し下がっていてくれたまえ」
ナレ1「部屋の入口付近まで下がる残りの二人」
最高導師「…………(意味不明な祈りを捧げる)」
ナレ1「やがて、台の上の二人の身体が輝きだし、ふわふわと白い物が抜け出して
きた」
ナタリー「あれが魂……ですかね?」
コンラッド「そのようです」
ナレ1「浮かび上がった二人の魂は、部屋の中を乱舞しはじめた」
ナレ2「最高導師の祈りは続いている。やがて魂の動きが静かになり、台上の二人
の真上で止まった」
最高導師「褐っ!(目を見開き魂に向かって気を入れる)」
ナレ1「すると静かに魂はそれぞれの肉体へと戻っていった」
ナレ2「地下室の空間に静寂が包み込む」


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