響子そして(五)仮出所
2021.07.09

響子そして(覚醒剤に翻弄される少年の物語)R15+指定
この物語には、覚醒剤・暴力団・売春などの虐待シーンが登場します


(五)仮出所

 少年刑務所に来て四年の月日が過ぎ去っていた。
 丁度二十歳の誕生日。わたしの仮釈放が決定したと知らされた。
 二人の人間を殺したのだ。そんなに早く出られるはずがなかった。
 しかし、事実だった。
 女性ホルモンで限りなく女性に近づき、少年達との逢瀬を繰り返している。
 そんな少年をいつまでも所内に留めていたら、健康状良くない。
 女になったのならば、悪事行為を繰り返す事もないだろう。
 そういった判断から、追い出されるように仮釈放が速められたというべきだろう。

 出所祝いに、白いワンピースドレス・ローヒールのパンプスなど、女性として外を歩くのに必要な一揃いのものが、少年達がカンパして集められたお金で購入され、わたしにプレゼントされた。
 舞台以外では、女性の衣料を着た事がないわたしだったが、ほとんど女性的な容姿になってしまった現在、それを着るのが一番自然に思えた。
 今、それを着て、明人と面会している。
「俺が退所したら、必ず迎えにいく。それまでどんなことがあっても我慢して、ずっと待っていてくれ」
「わかったわ、。待ってる。きっとよ、迎えに来てね」
「もちろんだ。その服きれいだよ。俺達からのせめてもの志だ」
「ありがとう。みんなにも感謝していると言っておいてね」
「ああ……」

 仮釈放されたといっても、自由になったわけではない。
 常に保護司の監察下にあり、定職につき住居も定められているなど、一定の束縛があった。
 その保護司が迎えに来ていた。
「保護司の行田定次だ。今日から君の面倒をみることになる」
 というわけで、彼が手配したアパートに入居した。
 そして就職先なのだが……。

 その保護司が紹介してくれたのは、いかがわしいスナックバーだった。
「おまえのような奴を、雇ってくれるのはこんな処しかないんだ。黙って働くんだ」
 といって無理矢理、男相手の職場に放りこまれた。
 しかも給与は全額保護司が受け取り、アパート代といくらかの生活費を渡すだけで、残りのほとんどを巻き上げられる格好となった。
 保護監察の身であり、保護司の言う事を聞かなければ、少年刑務所に突き返すと脅された。泣く泣く言いなりになるしかなかった。しかも毎晩のように陵辱される日々が続いていた。
 わたしの働いているところにやってきては、まるで見せ付けるように店子達や客に大判振舞いした。それらの金はすべてわたしが汗水たらして稼いだものだ。
 保護司は女性ホルモンの入手先を知らず、わたしの身体はホルモン欠如で、更年期障害に似た症状に蝕まれていった。
 この保護司のそばにいる限り、いつまで経っても泥沼状態から抜け出せない。甘い汁を吸い尽くされてずたぼろにされると思った。
 何度も自殺を考えたが、
「俺が退所したら、必ず迎えにいく。それまでどんなことがあっても我慢して、ずっと待っていてくれ」
 という明人の言葉を信じて思い留まった。


少年刑務所は、全国に6個所(函館・盛岡・川越・松本・姫路・佐賀)あり、「受刑者の集団編成に関する訓令」と、その「運用について」で対象が決まっている。
入所者の年齢は26歳未満が基本だが、割合で行くと1382人(52.97%)で半数に過ぎない。残る半分は、犯罪傾向が進んでいない26歳以上が中心だ。刑の確定後、地域性なども加味され、施設が決まるという。


 ある日。
 わたしは、以前住んでいた屋敷の前に立っていた。
 すでに屋敷は他人の手に渡っていた。
 精神が崩壊していた母親を操って実印を奪いとり、祖父から譲り受けて所有していた不動産などの資産すべてを奪い取られていた。その後、不動産は転売されて他人の所有となった。
 今では、見知らぬ人が住んでいた。庭先で高校生かと思われる女の子と、やさしそうな両親が、野外バーベキューを楽しんでいた。
 わたしは涙を流していた。
 もしあの時、交通事故に合わなければ、あの家族のような暮らしをしていたに違いない。

 背後で車が停まる音がした。
「ひろしじゃないか!」
「え?」
 自分の名前を呼ぶ声がして振り返ると、黒塗りのベンツから懐かしい青年が降り立っていた。
「明人!」
 わたしは、夢中でその腕の中に飛び込んでいった。
「やっぱり、ひろしだった。探したぞ」
 明人は満面の笑顔で、力強く抱きかえしてくれた。
「いつ、出てきたの?」
 わたしは、もう涙ぽろぽろ流してその腕の中で泣いた。
「おとといだ。保護司の野郎、おまえの住所を偽っていやがったんだ。そこに、おまえはいなかった。そして、今の今までずっと、おまえを探していたんだ。この屋敷に必ず現われると網を張っていたんだ。そしたら君がいた」
「迎えにきてくれたのね」
「そうさ。約束しただろ。必ず迎えに行くって」
「うれしい……。わたし、何度も自殺しようかと考えた。でも、明人が必ず迎えにきてくれると信じて、ずっと耐えて待ってたの」
「そんなに苦労してたのか」
「ええ……」
「わかった。もう何も心配ない。俺のところに来い」
「はい」

 こうして、わたしは愛する明人の下に引き取られることになった。
 明人は出所と同時に、抗争事件で死んだ親に代わって、暴力団の新しい組長になっていた。わたしを縛り付けていた悪徳保護司を合法的に処分し、自分の息の掛かった新たなる保護司を代わりに据えた。
 わたしに対する扱いに対して、明人の保護司への怒りは絶頂に達し、耐えがたい苦痛を与える拷問を繰り返し与えられてショック死したらしい。

 わたしは自由になったのだ。
 その日から、組長の明人の情婦としての生活がはじまった。
 再び女性ホルモンを投与できるようになり、崩れ掛けていた乳房は、再び張りのある豊かさを取り戻していた。
 外を出歩く時は、常にボディーガードの中堅やくざに囲まれているのは、いささか閉口するが、対抗組織から狙われている危険から守るため仕方がないことだった。
 高級ブランドのドレスやバック、そして高額の宝石が散りばめられたネックレスやイヤリングで身を飾ることができた。自分としてはそんなブランドとか宝石には興味がなかったのであるが、組長の情婦として威厳のあるところを組員に見せ付けるために、明人から言われてそうしているのだった。
 ひろしという名前では不具合があるので、響子という名前を、明人がつけてくれた。それは明人が手にかけた母親の名前だった。今でも母親を愛しており、母親の分まで愛させてくれと言った。
 明人は憎くて母親を殺したのではない。浮気をしていた男が上になっているところを、母親をいじめているのだと思い込んだ明人が、金属バットで殴りかかろうとして、それを男にかわされ、勢いあまって母親の頭部を強打してしまったのだ。脳挫傷で母親は死んでしまった。
 殺人事件として発覚したが、五歳の子供ゆえに訴追される事はなかった。
 実は母親は、その男に覚醒剤を打たれていたことが後から判明した。
 母親は貞操な女性だったのだが、か弱い力では男にはかなわない。深夜に侵入したその男に押さえつけられ、無理矢理覚醒剤を打たれて貞操を奪われたのだった。
 その男は、組長の妻を手込めにしていた事が発覚し、下半身をコンクリート詰めにされ生きたまま海に放りこまれた。当然の報いだ。指詰めくらいでは納まるはずがない。私刑としては最高刑の処分となった。
 愛する母親を自らの手で殺したという精神的なジレンマが、明人を凶悪な性格に変貌させ、幾多の人間を殺害した。その度に、組の中堅どころの幹部候補性達が身代わりで自首していったから、明人自身が捕われることはなかった。
 しかしついに明人自らが現行犯逮捕され、少年刑務所に収監された。
 そしてわたしに出会ったのである。
 明人は言った。凶悪的だった性格は、わたしとの出会いで次第に癒されていったと。
 やさしい明人。
 わたしはそれに応えるためにも精一杯尽くした。

 身代わり自首した者達は、刑期を終えて出所と同時に幹部となり、明人を支えている。

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響子そして(四)愛する明人
2021.07.08

響子そして(覚醒剤に翻弄される少年の物語)R15+指定
この物語には、覚醒剤・暴力団・売春などの虐待シーンが登場します


(四)愛する明人

 遠藤明人。
 わたしのいる宿房の長だった。
 暴力団の組長の息子だった。その身分と、毎日のように届けられる差し入れによって宿房はおろか、少年刑務所全体の顔となった。その経歴は、五歳の時に、寝ていた母親を撲殺したのを皮切りに、数えきれない人々を殺傷し続けた根っからの悪玉だった。
 看守でさえ一目おいている。
 いつのまにかわたしは明人のお気に入りとなっていた。明人はわたしをいつでも抱ける優先権を獲得し、わたしを情婦のように扱った。わたしを独占したがったのだが、少年達の相手ができるのは、わたし一人しかいない。もてあます性欲のはけ口として、わたしは必要不可欠な存在になっている。それを取り上げてしまったら、反逆・暴動に発展するのは確実。所内での顔を維持するにも寛容も必要だった。しかたなく、他の少年達の相手をするのを黙認した。

 それまでのわたしの役目は、新しく入所した新参者に移った。
 毎晩のようにその新参者が襲われるのを黙って見ているだけのわたし。
 それが彼の運命なのだ。だれも止めることはできない。
 新参者は屈辱に必死に耐えている。
「馬鹿ねえ。あきらめて、女になっちゃえば楽になるのに」
 わたしは心で思ったが、最初の頃は自分も抵抗していたものだ。
 しかし当の本人にしてみればそう簡単に心を切り替えることなどできないのだ。

 そのうちに興奮してきた明人が、わたしの肩に手を回し唇を奪う。そしてそのまま押し倒されてしまう。
「咥えてくれ」
「ええ、わかったわ。明人」
 言われるままに、その張り裂けんばかりになっているものを咥えて、舌で愛撫する。やがてわたしの口の中に、その熱いものを勢いよくぶちまける。わたしは、ごくりとそれを飲み込む。
「尻を出せ」
「はい」
 わたしの心はすっかり女になりきっていた。なんのてらいもなく、四つんばいになって明人を迎え入れている。
 次第に明人に心惹かれていく自分がいた。

 ある日のこと、明人がシートパックされた錠剤を手渡して言った。
「これを飲むんだ。毎食後にな」
「なに、これ?」
「女性ホルモンだよ。いつも差し入れをする奴に、持ってこさせた」
「女性ホルモン?」
「そうだ。毎日飲んでいれば、胸が膨らんでくるし、身体にも脂肪がついて丸くなってくる」
「わたしに女になれというの?」
「完全な女にはなれないが、より近づく事はできる。頼む、飲んでくれないか」
「明人がどうしてもって言うなら飲んでもいいけど……」
「どうしてもだ」
「わかったわ。明人のためなら、何でも言う事聞いてあげるわ」

 わたしは思春期真っ最中の十代だ。
 女性ホルモンの効果は絶大だった。
 飲みはじめて一週間で乳首が痛く固くなってきた。
 胸がみるみるうちに膨らんできた。
 二ヶ月でAカップになり、半年でCカップの豊かな乳房が出来上がった。

 その乳房を明人に弄ばれる。
 全身がしびれるような感覚におそわれ、ついあえぎ声を出してしまう。
「あ、あん。あん」
 乳房やまめ粒のような乳首に、性感体が集中していた。
 脂肪が沈着し、白くきれいな柔肌になっている全身にも性感体が広がっている。
 成長途上にあった男性器は小さいままで、睾丸はどんどん萎縮しており、もはやその機能は失っていた。髭や脛毛なども生えてはこなかった。
 声帯の発達も、ボーイソプラノから、きれいなソプラノを出せる女性の声帯に変わりつつあった。もちろん喉仏はない。

 看守は、わたしの身体の変化に気がついていたが、だれも注意すらしなかった。
 明人の父親の組織の力が働いているようだった。女性ホルモン剤の差し入れがすんなり通っているのもそのせいだろう。


 芸術の秋。
 少年刑務所内において、毎年春と秋に行われる恒例の慰問会が開催されることになった。各種イベントや出店などが目白押しだ。
 実行委員長は、所内の顔である明人だ。
 わたしは明人に頼んで、その演目に舞台劇「ロミオとジュリエット」を入れてもらった。演劇が好きだったのでどうしてもやりたかったのである。
 もちろん、ジュリエットはわたしが演じる。劇団に所属し娼婦役を演じていたので、容易いことであった。問題は監督をはじめとする他の役者や道具係りを集めることだが、演劇好きな少年達を探し出して、わたしがお願いすれば、みんな快く参加してくれた。にわか劇団の誕生だ。
 舞台衣装は、作業所の縫製科で職業訓練をしている少年達に依頼して製作してもらった。もちろんわたしもそれに入って裁断やミシン掛けして手伝った。演じる舞台や小道具は、木工作業所の少年達。舞台背景は美術科、
 慰問会に際しては、看守側も通常の作業時間を減らして、劇団の練習や必要備品製作のための時間を作ってくれた。

 慰問会の日が迫り、所内では調達できない、照明器具や音響機器、特殊美術に必要な器材を、明人が特別許可を得て外部から搬入された。
 やがて所内の一角に舞台作りがはじまる。大工や鳶の職業を受けている少年が、組み上げていく。人手が足りないので、劇団員以外の少年達も声を掛けて手伝ってもらう。断る少年はいない。怪我したら大変と、ねじ釘一本持たせてもらえない。わたしは傍で、組み上がっていくのを眺めているだけで済んでいた。
 舞台稽古は一日しかない。当日の所内作業を休ませてもらって、朝から舞台衣装を着込んでの稽古。
 やがて本番の日が来た。
 わたしは貴婦人の着るドレスで着飾り、ジュリエットを完璧に演じた。
 ステージの真ん中でスポットライトを浴び、先に死んでしまったロミオの後を追って、毒薬を飲んで自殺する演技を披露する。
「おお! ロミオ、ロミオ。わたしを残してどうして先に死んでしまわれたの? いっそわたしも……。ここに、まだ毒薬が残っているわ。これを飲んで、あなたの元へまいります……」
 クライマックス、精一杯の声量を会場に響かせて、死への道を高らかに演じて死んでいく。そしてエンド。
 割れんばかりの拍手喝采だった。
 アンコールのステージに立ち、スポットライトを浴びるわたし。
 わたしはまさしくヒロインだった。演劇を続けてきた甲斐があった。
 こうして悲劇「ロミオとジュリエット」は、大成功した。

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響子そして(三)少年刑務所
2021.07.07

響子そして


(三)少年刑務所

 事件が露見し、わたしは少年刑務所に収容された。
 一年近くを独居房で暮らし、更生指導が行われた。
 やがて、多種多様の犯罪を犯した少年達と一緒の宿房に入れられた。
 雑居房の生活は悲惨なものとなった。
 新参者に対する陰湿ないじめが横行した。
 食事を横取りされたり、暴力を受けたり、看守に気づかれないようにそれは行われた。
 ある夜のことだった。
 消灯の時間になって、横になっているとまわりがざわついている。
 忍び寄る気配。
「な、なに?」
 いきなり大勢の人間に組み敷かれた。
 口の中にタオルを強引に詰め込まれた。声が出せないようにして、看守に気づかれないようにである。
「おい、しっかり押さえておけよ」
 尻を持ち上げられ、硬いものが当たった。
 次の瞬間、肛門に激痛が走った。
「ううっ……」
 相手が前後運動を繰り返す度に、ぎりぎりと挽千切られるような痛みが走る。
 やがて相手の動きが激しくなりうめき声をあげたかと思うと、わたしの中に熱いものがどうっと勢いよく流れ込んできた。
 すべてのものを放出して満足した相手は、ゆっくりとそれを引き抜いていく。わたしの太股を、ねっとりしたもが伝わり落ちた。暗くて判らないが、相手の精液とわたしの血液とが混じっているに違いない。
 すぐさま次の相手が馬乗りになって同様の行為をはじめた。
 その日以来、毎晩のように犯された。相手は毎回入れ代わった。しかも一晩に数人の相手をさせられた。
 わたしは、男しかいない宿房で、少年達の慰みものにされてしまったのである。

 どうせ抵抗できないのだ。わたしは自ら進んで身体を提供するようになった。
 フェラチオもしてあげた。数をこなす内に上手になり、不潔なバックよりフェラチオを望む少年が多くなった。
 やがて少年達の態度が変わった。
 やさしくなったのだ。いじめられる事がなくなり、食事もちゃんと取れるようになった。それまでは一晩で数人の相手をさせられていたのが、わたしの健康を気遣って一晩に一人という約束ごとが決められ、順番待ちをするようになっていた。
 少年達もそうであるが、実はわたし自身にも変化が起きていた。
 感じるようになっていたのである。自分でも信じられなかったが、バックで突つかれるたびに、あえぎの声を上げるようになっていた。
 わたしのあえぎの声を聞いて、少年達はさらに興奮していく。そしてありったけのものを、わたしの中に放出して果てていく。
 時々チョコレートなどの嗜好品が、外部から差し入れされることがあるが、おすそ分けに預かれるようになった。それにはもちろん代償行為として、夜の相手をすることを意味した。

 外部から遮断され行き場のない少年達のほとんどが、性欲をもてあそんでいた。溜まったものは出さねばならない。たまりにたまって限界に達っし、夢精してしまうこともある。そんな恥ずかしいところを見られる前に、各自隠れた場所で処理している。
 わたしのいる宿房では、おとなしく待っていれば順番が回ってくる。自分の手で慰めるよりはるかに気持ちが良いので、ちゃんとその日を指折りながら待っている。
 それでも順番を待ちきれなくなる少年達。
「なあ、頼むよ。もう限界なんだ」
「いいわよ。やってあげるわ」
 いつしかわたしは女言葉を使うようになっていた。少年達もそれを受け止めて、わたしを女としてやさしく扱うようになっていた。
 いそいそとズボンのファスナーを降ろす少年。ぎんぎんにそそり立って暴発しそうなそれを咥えて、やさしく愛撫してあげる。その根元や袋・タマにもやさしく刺激を与えてやると、感極まってどうっとわたしの口の中に放出する。
「ありがとう。借りはちゃんと返すから」
 ファスナーを上げながら、ウィンクをする少年。

 少年刑務所だから、当然所内作業がある。
 わたしが重いものを持っていると、
「重いだろ、持ってやるよ。君はこっちの軽いやつにしなよ」
 といって代わってくれる。先程フェラチオしてあげた少年だ。全然仕事しないわけにはいかないから、より軽作業になるようにしてくれる。
「ありがとう」
 わたしが精一杯の微笑みを浮かべてお礼を言うと、
「いやあ、当然だよ。きつかったら、いつでも代わってあげるから」
 顔を赤く染めて照れていた。
 同室の宿房の少年だけでなく、所内の全員がやさしく対応してくれていた。
 わたしが女として相手していることは、所内のほとんどの少年に知れ渡っていたからだ。そういった行為の背後には下心がある。
 チョコレートを手渡しながら、わたしに囁く。
「なあ、いいだろ?」
「ええ、いいわよ。でも、どこでするの?」
 するとほんとうに嬉しそうな表情になって、その秘密の場所に連れて行ってくれる。
「ここでいいの?」
 相手は溜りに溜まっているので、その股間は弾きれんばかりに膨らんでいる。待ちきれないようにズホンを降ろすと襲いかかってくる。わたしのズボンを剥ぎとりパンツを脱がすと背後からいきなり入ってくる。
 たいがいの少年はものの二三分で果ててしまう。わたしとしてはもっと楽しませてほしいと思ったりするが、少年刑務所の中であり、いつ見つかるかもしれない。時間との勝負なのだ。
 男の感覚というものは単純だ。射精すれば誰でも快感があるが、それをわたしの中に放出すればしびれるような感覚がたまらないといった表情になる。相手は、オナニーでは得られない感覚に酔いしれて満足するのだ。
 一度関係すると、わたしの虜となった。


 少年刑務所というと、未成年の受刑者が対象だと思われているが、実は少年よりも高齢者の方が多い。佐賀少年刑務所において88歳の受刑者が病気で死亡したという例があるとおり、凶悪犯でないかぎり少年は少年院に入れられるのが通常である。
 法務省によると、2016年の少年刑務所の入所者数は2609人。20歳未満は12人だけ。

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11
響子そして(二)覚醒剤
2021.07.06

響子そして


(二)覚醒剤

 離婚調停が成立し、わたしは資産家の祖父を持つ母親に引き取られる事になった。
 自宅は、祖父が建ててくれたものである。当然、母親はそのまま自宅に住み、父親
は愛人の元に去って行った。
 母子家庭になったとはいえ、祖父の資産で裕福な生活を続けられた。父親がいない
のを可哀想に思い、以前にも増してやさしくなった母親の下で、それなりに幸せな家
庭を築いていた。
 その後、母親にはいろんな男が言い寄ってきた。祖父の資産が目的なことは明らか
であったので、母親は突っぱねていた。息子であるわたしに対してもやさしく近づい
て来る者も多かったが、当然わたしだって御免こうむる。

 しかし、ついに母親はある男の手中に落ちた。
 母親は、その男に夢中になった。
 男を家に迎え入れ、毎夜を共にするようになった。
 わたしは、財産目当てのその男を毛嫌いし、母親に早く別れた方がいいと言った。
懇願した。
 しかしいくら懇願しても、母親は言う事を聞かなかった。
 やがて男は、水を得たように散財をはじめた。祖父から譲り受けた資産を食い潰し
ていった。それでも母親は、別れたがらなかった。

 貞操だった母親がこうも変わるはずがない。
 不審に思ったわたしは、小遣いをはたいて興信所を使って、男の素性を調べはじめ
た。
 男は暴力団に所属している覚醒剤の売人だった。
 母親が離婚訴訟で四苦八苦している時に接近し、
「この薬を飲めば疲れが取れますよ」
 と騙して覚醒剤を渡し、言葉巧みに母親を術中に陥れたのである。
 覚醒剤の虜となった母親は、その男のいいなりになった。

 ある夜。母親の寝室に忍び込んだ。
「さあ、今夜も射ってあげようね」
 覚醒剤を母親の白い腕に注射する男。まるでそれを待っていたかのように母親の表
情が明るくなった。
「ああ……」
 覚醒剤を打たれた母親は、やがて虚ろな眼差しになり、
「あなた……愛しているわ。抱いて」
 と、男にすがりつくように抱きついた。
 貞操を守り続けてきたはずの母親の変貌ぶりが信じられなかった。
 その身体に男が重なっていく。
 その柔肌を男の手が蛇のように撫で回していく。
 ふくよかな乳房を弄ばれ、女の一番感じる部分に触られる度に、歓喜の声を上げる
母親。

「お願い、入れて。せつないの、早く」
「なにをしてほしいんだ」
「あなたのアレをわたしに入れて」
「アレとはなにかな」
「お・ち・ん・ち・んよ。お願いじらさないで……」
「もう一度言ってみな」
「あなたのおちんちんをわたしのあそこに入れて」
「そうか……入れて欲しいか」
「お願い、早く入れて」

 わたしは、淫売婦のように男の言いなりになっている母親の姿をこれ以上黙って見
ていられなかった。たまらなかった。
 気がついたら、わたしは近くにあった電気スタンドを手に握り締め、ベッドの上の
男を襲っていた。
 ベッドの白いシーツが、男の鮮血で染まった。
 裸の母親の身体にも血が飛び散る。
 それでも構わず、男の頭を何度も何度も電気スタンドで殴りつける。
 男はベッドから、どうっと落ちて床に倒れ動かなくなった。

 はあ、はあと肩で息をし、母親の方を見る。
 自分の愛する男が、目の前で殺戮されたのに、少しも動揺していなかった。
 やがて母親は擦り寄ってきて、あまい声で囁くようにねだった。
「抱いて……入れて、はやく。もう我慢できないの」
 両腕をわたしの背中に廻すように抱きついてくる母親。
 完全な覚醒剤中毒症状だ。
 意識が弾き跳んでしまって、愛人と自分の息子との区別すらできなくなっていた。
男に抱かれて、ただ愛欲をむさぼるだけのメス馬に成り下がっていた。
 こんな惨めな母親の姿は見ていられなかった。
 わたしは、その白くて細い首に手を掛け、力を入れた。
「く、くるしい……。ひ、ひろし」
 首を絞められて息が詰まり、正気を取り戻してわたしの名を呼ぶ母親。
 しかし、わたしは力を緩めなかった。
 わたしの腕を振り解こうとする母親のか細い腕にあざとなった数々の注射痕が痛々
しい。
 涙で目が霞む。
「ご・め・ん・ね……」
 母が、かすれながらも最後の力を振り絞って声を出していた。
 それが母親の最後の言葉だった。
 死ぬ寸前になって、自分のこれまでの行為を息子のわたしに詫びたのだった。
 母親は、息絶えベッドに倒れた。
 わたしの目に涙が溢れて止まらなかった。

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響子そして(一)崩壊
2021.07.05

響子そして(覚醒剤に翻弄される少年の物語)R15+指定
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(一)崩壊

 わたしは、裕福な家庭に生まれ、やさしい両親に育てられた。

 ミュージカル劇団に所属していた。
 ある創作劇をやることになったのだが、娼婦役がなかなか決まらなかった。かなりきわどいシーンがあるので、女性達が尻込みしてしまったのだ。役をもらえるのはうれしいが、娼婦役では困る。ミュージカルで独唱部分があるので、男性が女装して演じるわけにもいかない。そうこうするうちに、変声前でボーイソプラノのわたしに白羽の矢がたった。思春期に入ったばかりで、女性的な身体つきをしていたし、顔も中性的なマスクが女性の間でも人気があったからだ。
 主なストーリーは、没落貴族の娘が生きるために街娼として街にたって客引きをしている。ここでは暗い娼婦の歌が歌われていく。徹底的にどん底の生活を表現する事で、後の大団円をよりいっそう盛り上げる演出だった。そこへ国王の第三王子が、お忍びで通りかかり一目ぼれする。ここでは娼婦と王子の掛け合いの歌。やがて二人の間に愛が目覚め、幾多の困難を乗り越えて、国王を説き伏せて、婚約にこぎつける。契りの歌。しかし幸せは長く続かなかった。戦争がはじまり二人は引き裂かれる。別離の歌。やがて戦争が決着するが王子の戦死の知らせ。悲嘆し再び街娼に立つ娘。やがて、死んだはずの王子が返ってくる。王子は生き別れた娘の捜索をはじめ、ついに娘を発見する。再会の歌。そして大団円に向かって、新国王となった王子と娘は結婚式を挙げる。結婚式では幸せ一杯の二人と共に、全員で婚礼の歌を高らかに大合唱するというものだった。
 稽古と共に衣装作りもはじまった。娼婦が着る衣装は、中世のフランス貴族風のスカートが大きく膨らんだきらびやかなドレス。娼婦用と婚礼衣装の二着が用意される。
 娼婦とはいえ、役がもらえて有頂天のわたし。本舞台に出られるなら本望だった。雰囲気作りの為に、レッスン中には女装され化粧も施された。女装に慣れていないと本舞台でも、恥ずかしがったりして実力を出せずに舞台をだいなしにする可能性があるからだ。
 毎日、楽しく劇団通いしていた。

 そんな幸せな生活が、ある日を境に崩壊した。
 日曜日、舞台稽古のために、劇場へ向かう途中で交通事故にあってしまったのである。
 救急病院へ搬送され緊急手術が行われる事になった。
 気がついた時、ベッドの上にいた。
 周囲を見回すと、輸液の投滴を受ける医療器具などに囲まれていた。
 ドアの外から怒鳴っている父親の声が聞こえてくる。
「どういうことだ! 弘子、説明しろ!」
「そ、それは……」
 弱々しい母親の声も微かに届いた。
「どうして血液型が合わないんだ!」
(血液型が合わない? なんのこと……)
「私はA型、おまえはO型。B型の子供が生まれるはずがないじゃないか!」
「本当です。わたし、お父さん以外の男性とは関係した事ありません。間違いなくあなたの子供なんです」
 必死で力説するような母親の声。

 わたしが退院した時、両親の間には離婚問題が持ち上がる程の険悪関係にあった。
 離婚を切り出したのは父親の方で、すでに家を出て愛人の女と暮らしていた。
 以前から愛人関係にあったという噂が流れていた。
 母親は離婚調停の法廷の場でも身の潔白を訴え続け、ついに親子の血液鑑定に計られることになった。
 その結果、父親の血液遺伝子に異常が発見された。表現型はA型でも遺伝子がAb因子ということが判明したのだ。遺伝子の一方が血液発現力の弱い特殊な劣性B(b因子)だったのだ。そのため本来なら表現型ABの血液型となるところが、優生遺伝子のA因子に負けて表現型Aの血液型となって現われた。
 そしてその子供には、父親から劣性な(b因子)と母親の(o型)を引き継いで生まれた。遺伝子型(bo)となって、劣勢ながらもB型を発現させる(b因子)によって発現B型の血液型となった。
 ここに正真正銘の父親の息子であることが確定し、母親の貞操は証明された。
 しかし一度こじれた関係は、二度と戻らなかった。

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