あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 part-1
2021.01.08

あっと! ヴィーナス!!(49)


partー1

 弘美たちの目の前に広がるのは、水平線が果てしなく続く大海原。
「どうやら、冥府を出られたようだが……」
 弘美がぼそりと呟く。
「海ですね」
 現実を認められない愛君。
「来た道を戻っていたはずだよな」
「間違いない」
「では、なんで海に出ちゃうんだ?」
 本来なら、ローマ郊外の洞窟に出てくるはずだった。
 でなきゃ、冥府に引き戻されて化け物にされていたか……。
 海に出る要素は一つもない。
 戻るわけにはゆかず、悶々としていると、
「なんだあれは?」
 水平線の向こうから海面を泳いでくるものがあった。
 やがて近づいて来たのは、
「亀だ!」
 間違えようもない大亀だった。
 体長180センチメートルくらい。
 現世種で言えば、オサガメというところだろうか。
 背中に、箱が括り付けられていた。
 その箱を取り外して中を確認してみると、
「これって、アクアラングか?」
 空気ボンベ、レギュレーターセットなどの潜水用具一式が入っていた。 
「何かメモが入ってるわ」
 愛が気付いて読んでみると、
『この潜水用具を身に着けて、亀の背に乗ってください』
 という内容。
「亀の背に乗るって、浦島太郎かよ」
「そうみたいね」
「亀を助けた覚えはないが……」
「亀が二匹ということは、あたしと弘美ちゃんの二人だけ?」
「心配するな。我らは海の中でも平気だ。後ろから着いてゆく」
 という女神たちは、いつの間にか水着に着替えていた。
「何だよ、その恰好は?」
「決まっている。海の中に入るには、やはりこれじゃないか?」
 といいながら、モデルがとるようなポーズをしてみせる。
「あ、そ……神通力で着替えたのか」
「神様って、便利なんですね」
 もじもじとしていた愛ちゃんだったが、
「あの、わたしにも水着を頂けませんか?」
 思い切っておねだりしてみるのだった。
「かまわんぞ」
 ヴィーナスが指をパチンと鳴らすと、愛ちゃんの制服が水着に変わった。
「わあ!可愛い!!」
 フリル付きのワンピ水着だが、どうやら気に入ったようだ。
「おまえもどうだ?」
「あ、あたしはいいよ!」
 いきなり水着というのは困る!
 当然の反応であろう。
「遠慮するな!」
 というと、強引に弘美をビキニの水着姿に変えた。
 ちなみにビキニという名称は、1946年7月1日にビキニ環礁で行われた原爆実験に由来がある。7月5日にルイ・レアールという服飾家が、その小ささと周囲に与える破壊的威力を原爆にたとえて、ビキニと名付けたという。Wikipediaより
「なんで、愛ちゃんがワンピで、こっちはビキニなんだよ?」
「愛ちゃんは恥ずかしがりやだからね。よく似合ってるじゃないか」
「か、返せよ。あたしの服」
「大丈夫だ。元の世界に戻れば、ちゃんと返してあげるよ」
「秘密のポケットやらにしまっているのか?」
「ああ、便利なものだろう」
「弘美ちゃん。可愛いわよ」
 愛ちゃんから、お褒めの言葉を頂けば、無碍にもできない弘美だった。
「お伽噺ではこんな装備をしないで、海の中に入ったようだが……」
「そりゃまあ、作り話は現実とはかけ離れているからな」
 催促するようにゆっくりと海の方へと移動を始める大亀。
「おっと、乗り遅れたら冥府行き決定だぞ」
「乗りましょうよ。他に行く当てはないんだし」
「そうだな。乗るとしよう。目指すは竜宮城かな?」
 亀の背に乗る二人。
 やがて静かに海の中へと沈んでいく。

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あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 プロローグ
2021.01.06

あっと! ヴィーナス!!(48)


ポセイドンの陰謀

 ここは海底神殿、ギリシャ神話におけるオリュンポス十二神の一人、ポセイドンの居城である。
 最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る。海洋の全てを支配し、全大陸すらポセイドーンの力によって支えられている。
 なぜなら、大陸移動説で語られるように、地殻は対流するマントルの上に浮かんでいるからである。
 彼が怒り狂うと、強大な地震を引き起こして世界そのものを激しく揺さぶる。また、地下水の支配者でもあり、泉の守護神ともされる。

 玉座に腰を降ろし神の酒を飲みながら、TV中継を鑑賞している。
 天上界でもお馴染みの地上波デジタル放送である。
 海底神殿でも、海底ケーブルを引き込んで、視聴することができる。
 もちろん高速インターネット回線もある。
 リモコンを操作して、チャンネルを切り替えている。
「何か、もっと刺激的な内容の番組はないのか?」
 やがて、冥界チャンネルという番組になった。
 冥界にTVカメラを持ち込んで、生中継しているようだ。
「お? 冥界に人間が紛れ込んだのか?」
 その映像は、ハーデースの御前での弘美とヴィーナス達のものであった。

 音声も出ている。

『地上へは元来た道を戻るがよい。ただし、冥界から抜け出すまでの間、決して後
ろを振り返ってはならぬぞ!』
『振り返るなだと?どういうことだ??』
 しばし考え込む弘美。
 やがて、日本神話を思い出す。
『まさか、イザナギとイザナミの黄泉の国の物語か?』
『違うな』
『じゃあ、JOJO/ダイヤモンドは砕けないの岸辺露伴編『振り向いてはいけな
い小道』の怪、じゃないだろうな。振り向くと魂を持っていかれるっていうやつ』
『竪琴の名手オルペウスと妻エウリュディケーの物語は知ってるか?』
『知らん!』
『ギリシャ神話だよ……ともかく、振り返るなってことだ』
 和洋の違いはあれど、冥府に関するタブーというものは共通のものらしい。

「さて、彼らはどうなるかのお?」
 ポセイドンが呟くと、
「冥府から無事に脱出できたものはこれまでいません」
 と、側近にして愛人のメデューサが説明する。
 メデューサは美しい長髪に、宝石のように輝く目を持つ美貌の女神である。
 長姉ステンノー、次姉エウリュアレーとともに「ゴルゴン(ゴーゴン)三姉妹」の名前で呼ばれ、ポルキュスとその妹ケトの間に生まれた娘。
 ギリシャ語で「女王」「支配する女」という意味名であり、ギリシアの先住民族ペラスゴイ人の崇める女神(大地母神)であったと言う説が有力。
 都市の守護女神アテーナーの怒りを買って、恐ろしい怪物になる前の姿であった。

「生中継のようだが、彼らは撮影されていることに気付いていないのか?」
「たぶん、隠しカメラのようです」
「そうか……。ハーデースめ。余興のつもりのようだな」
 一部始終が中継されているのを知らない弘美たちの慌てぶりを笑って見ているというところ。
 いわゆる、どっきりカメラの一種。
「ふむ……。このまま、ハーデースの軍門に降るのも、癪に障るな」
「助け舟を出されてはいかがでしょうか?」
「ハーデースやアポローン、そしてゼウスに一泡吹かせるのも一興であるな」
「手配いたします」
「よろしく頼む」

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あっと!ヴィーナス!!第三部 第二章 part-13
2021.01.05

あっと! ヴィーナス!!(47)


第二章 part-13

「ああ!」
 矢が当たって、一瞬硬直するペルセポネー。
 やがて、へなへなと浴槽の縁に倒れ掛かる。
「死んだのか?」
 弘美が尋ねる。
「いや、心身が弛緩しているだけだ」
「この後、どうするんだ?」
「無論、冥府へお連れするだけだ」
 というと、ディアナが浮遊の神通力を使ってペルセポネーを浮き上がらせた。
 そのまま、元来た道を通って旅の扉で冥府に戻った。

 ペルセポネーを迎えて、ハーデースが喜んだのも当然だった。
 エロースの弓矢のおかげか、ハーデースに寄りそうペルセポネー。
「ご苦労だったな。約束通り、愛君は地上へ返すことにしよう。
「おおそうか!働いただけのことはあるな」
「ただし、気を付けることだ」
「気を付ける?どういうことだ?」
「地上へは元来た道を戻るがよい。ただし、冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならなぬぞ!」
「振り返るなだと?どういうことだ??」
 しばし考え込む弘美。
 やがて、日本神話を思い出す。
「まさか、イザナギとイザナミの黄泉の国の物語か?」
「違うな」
「じゃあ、JOJO/ダイヤモンドは砕けないの岸辺露伴編『振り向いてはいけない小道』の怪、じゃないだろうな。振り向くと魂を持っていかれるっていうやつ」
「竪琴の名手オルペウスと妻エウリュディケーの物語は知ってるか?」
「知らん!」
「ギリシャ神話だよ……ともかく、振り返るなってことだ」
 和洋の違いはあれど、冥府に関するタブーというものは共通のものらしい。

「ハーデースの野郎、地上に返すといいながら、その道すがらに罠を仕掛けているんだろな」
「まあ、簡単には返してくれるとは思ってはいなかったけどね」
「わき目も振らず駆け抜けろってことか」
「出口まであと一歩というところでも油断しちゃだめよ」
「出口だと思わせて、実はまだ洞窟の中だったとかだったら、どう判断するんだよ。牡丹灯籠とかで、朝と思わせて実はまだ夜だったというのがあるのよな」
「そうねえ、幻影くらい朝飯前でしょうね」
 ここで考えていてもしようがない。
 地上への脱出行は始まった。
 ひたすら、ただひたすらに。
 再びゾンビや骸骨などのアンデッドモンスターが襲い掛かる。
 弘美が王者の剣を振り回して薙ぎ払いながら道を切り開く。
「おい!おまえらも戦えよ」
 そういえば、さっきから全く戦闘に参加しない女神だった。
「女神は殺生はしないのだよ」
「殺生っつったって、こいつら死んでるじゃないか!アンデッドだぞ」
「といわれても、女神のしきたりというものがあってだな」
「ヴィーナスはしょうがねえよ。愛と美の女神だからな」
 と、ディアナの方を見る弘美。
「どうして私を見るのだ」
「おまえ、確か狩猟の女神でもあったよな。弓矢を射る能力があったはずだ。ペルセポネーを一発で射ったよな」
「すまぬ。弓矢は持ってきていない」
「またエロースに借りればいいじゃないか。そういえば、エロースがいないな。帰ったのか?」
「あれは、愛の弓矢で魔物はもちろん人間も倒せない。使い道が違うのだ」
 もはや手立てはない。
 走って、走って、出口まで走り続けるだけだ。
 やがて、前方に出口の光が見えた。
「出口か!?」
「幻影かも知れんから、気をつけろ!」
「わかった!」
 走り続ける一行。
 そして、出口を通過して一行が見たものは……。

 広大な海だった。


というところで、ポセイドン編に続きます。

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