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2021.06.30

PC版ホームページからの移行ブログです。
最近はスマホが流行し、今後は主流となると思います。
そこで、スマホでは表示が見にくいPC版を、
こちらへと転載していこうと思います。

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序章
索敵 
士官学校 
模擬戦闘 
情報参謀レイチェル 
独立遊撃艦隊 
カラカス基地攻略戦 
不期遭遇会戦 

第八章~十章は、稚拙ながら推理小説仕立てとなっております。
殺人犯は誰なのか? お楽しみください(*'▽')

犯罪捜査官 コレット・サブリナ 
コレット・サブリナ 犯人を捜せ! 
コレット・サブリナ 氷解 
スハルト星系遭遇会戦 
テルモピューレ会戦 
ハンニバル艦隊 

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銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章・皇位継承の証 Ⅲ
2021.06.21

第四章 皇位継承の証




 アレックス・ランドール提督は、第一皇子として最上位にあるものとして、謁見の間の壇上の玉座のそばの位置を与えられた。大臣や将軍達を上から見下ろす格好となったわけである。
 何かと反問していた大臣達の、ばつの悪そうな表情が印象的であった。
 そして、マーガレット皇女が、眼下にかしずいて、アレックスの言葉を待っていた。
 アレックスは、マーガレット皇女、すなわち自分の双子の妹の助命嘆願を、摂政であるエリザベス皇女に申し出た。
「そもそもマーガレット皇女は、私の身分を保全・確保しようとしたことが、反乱の要因となったわけで、今こうして私がここにいることが、皇女の正当性を証明するものです。情状酌量をもって対処していただければ幸いです」
「と、第一皇子が申しておる。大臣達はどう思うか?」
 何せ第一皇子は、皇帝に次ぐ地位であるから、その嘆願となれば絶対的とならざるを得ない。
「いえ……。第一皇子のご意見となれば、我々一同に反対する者はおりません」
「そうか……」
 と頷いたエリザベス皇女は、マーガレット皇女に向き直って発言した。
「マーガレットよ。そなたの起こした罪は重大ではあるが、皇子の温情をもってこれを許すことにする。今後とも第一皇子、並びに帝国に対して忠誠を誓うこと。よいな」
「はい。誓って忠誠を守ります」
「よろしい。では、列に戻りなさい」
 マーガレット皇女は深々とお辞儀をすると、ジュリエッタ皇女と対面する位置に並び立った。
 ほうっ。
 というため息が誰ともなく沸き起こる。

 その夜の宮殿での皇家の夕食の席。
 アレックスとマーガレットと家族が全員揃ったはじめての食事となった。
 政治においては摂政であるエリザベスが統制権を有しているが、身内だけの席ではアレックスが主人として最上の席を与えられた。それまではエリザベスが座っていた席である。
「ところで、アレックスが願い出ていた協定のことだけど……。まだまだ難解でさらに時間が掛かりそうです」
 エリザベスが申し訳なさそうに答える。ここは身内の席なので、皇子や皇女と言う公称は使わない。
「ベス、どういうことなの?」
 ジュリエッタが質問する。アレックスの第一皇子という地位をもってすれば、できないことなどないと思っていたからである。
「解放戦線との協定ともなれば、援軍を送るとしても一個艦隊やそこらで済むはずがないでしょう。それに援助物資の運搬にしても多くの輸送船を割譲しなければならないわ。しかも中立地帯を越えて共和国同盟に進駐することになる。総督軍や連邦軍が黙っているはずがないじゃない。これは国家間の紛争となるに十分な意味合いを持っている。つまり結局として全面戦争に向けて、銀河帝国艦隊全軍を動かすだけの権力が必要なの。それができるのは皇帝か、皇太子だけに許されていることなのよ」
「つまり、第一皇子の権限を越えているというわけね」
 マーガレットがエリザベスの後を受けるようにして答えた。
「でも、メグ。あのロベール王子にしたって、正式に皇太子になるのはまだ先のこと。悠長なこと言っていると、総督軍なり連邦軍が押し寄せてくるわよ」
 姉妹が議論している中、帝国の法律や儀式のことを全く知らないアレックスは、ただ聞き役に回るしかなかった。また末娘のマリアンヌも黙々と食べているだけだった。
「援助物資を供給するだけなら何とかなるけど……。ただし、解放軍が自ら引き取りに来るという条件付だけどね」
「無理よ。解放軍は帝国から共和国の向こう側にあるのよ。輸送艦隊を襲われたら元も子もないじゃない」
「唯一つ、裏道があるのよ」
 エリザベスが告白した。
 それは、アレックスを銀河帝国統合軍宇宙艦隊司令長官に任命するというものだった。
 銀河帝国宇宙艦隊全軍を指揮統制できるのは、事実上として司令長官ということになっており、歴代の皇太子が務めることが慣例として行われていた。
 皇太子イコール宇宙艦隊司令長官という図式が成立していたのである。
 あくまで慣例であって、憲法や法律には明確な規定は設けられていなかった。ここに、裏道が存在するのである。法令に定められていなければ、摂政権限で特別条令を発動して、アレックスを宇宙艦隊司令長官に任命することが可能だというのである。
 だからと言って、無制限に特別条令を発動できるわけではない。他国が侵略してきたなどの非常事態となり、帝国艦隊全軍で迎撃しなければならなくなった時などに限られる。
 そもそも帝国辺境には、御三家が自治領宇宙艦隊の保有を認められて防衛陣を敷いているわけだから、初動防衛に統合軍が動くことはなかった。
「でもこれからは、、以前にも比して総督軍や連邦軍の干渉が増えると思うわ。なぜって帝国軍に新たなる名将が加わったのだから。共和国同盟の英雄と讃えられたアレックス・ランドール提督が帝国軍の全権を掌握したら、もはや侵略の機会は失われる。だからこそそうなる前に、何とかしようと考えるはずよ」
 そう発言するジュリエッタの考えは正しい。
 総督軍や連邦軍と互角に戦うには、平和にどっぷりと浸かって退廃ムードにある帝国軍を、一から鍛えなおす必要もあった。帝国艦隊全軍を掌握したとしても、いざ戦いとなって将兵達が逃げ腰では意味をなさない。
 速やかに宇宙艦隊司令長官を任命し、迫り来る敵艦隊との総力戦に備えておくべきだ。
 ジュリエッタは、一刻も早くの司令長官任命を力説した。
 それに対して摂政という立場からエリザベスが説明する。
 宇宙艦隊を動かすには、すべからく軍資金が必要となってくる。燃料・弾薬はもちろんのこと、食料や兵士達の給料・恩給の積み立て、港湾施設での整備費用に至るまで、その資金を動かす権限を持っているのは、大臣達だからである。
 その大臣達の意向を無視するわけにはいかないし、だいたいからして保守的で頭の固い彼らの賛同を得るには、並大抵ではないということである。
 やはり絶対的権限を有する皇太子とならない限りは、本当に自由に艦隊を動かせないということである。
「摂政とて、そう簡単には決断を下せない難しい問題なのよ」
 エリザベスが深いため息をついた。

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2021.06.21 07:26 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章・皇位継承の証 Ⅱ
2021.06.20

第四章 皇位継承の証




 宮廷楽団の奏でる音楽の旋律が変わって、パーティーのはじまりを告げていた。
 正面壇上にパーティー主催者であるウェセックス公国ロベスピエール公爵が立った。そばには小さな子供、嫡男であり皇太子候補のロベール王子。
「パーティーにご列席の皆様、ようこそおいで下さいました。ご存知の通りに、帝国に対して謀反を引き起こしていましたマーガレット皇女様が逮捕され、内乱は鎮圧されました。このパーティーは、それを祝いまして開催いたしました。と同時に、我が息子のロベール王子が正式に皇太子として認められたことになる記念日でもあります」
 場内に拍手が沸き起こった。
 皇室議会においてロベール王子が皇太子に推されたことは事実ではあるが、皇女の一人が意義を唱えて内乱を引き起こしたことによって、一時棚上げとされたのである。しかし首謀者のマーガレット皇女が捕らえられたことによって、ロベール王子擁立に反対する者がいなくなって、皇太子として正式に認知されたということである。
 会場に、アレックスとパトリシアが遅れて入場した。
「おお! 今宵の主賓の登場でありますぞ」
 と、アレックスの方に向かって、大きなジェスチャーで紹介するロベスピエール公爵だった。
「この度の電撃作戦によって、見事マーガレット皇女様を逮捕された功労者であります。銀河帝国客員中将となられたアレックス・ランドール提督です」
 ざわめきが起こった。
「何とお若い……」
「あの若さで中将とは」
「それにほら、あの瞳。エメラルド・アイではございませんこと」
「すると皇室ゆかりの方でいらっしゃられる?」
「でも、お見受けしたこともございませんわ」
 会場に参列した貴族達に、アレックスの第一印象はおおむね良好のようであった。
「さあさあ、飲み物も食べ物もふんだんにご用意しております。どうぞ、心ゆくまでご堪能下さいませ」
 アレックスのことは簡単に紹介を済ましてしまったロベスピエール公爵。
 その本当の身分が共和国同盟解放戦線最高司令官であることは伏せておくつもりのようだ。パーティー主催の真の目的がロベール王子の紹介であることは明白の事実であった。貴族達の間を回って、自慢の嫡男を紹介していた。
 参列者達の間でも、それぞれに挨拶を交し合い、自分の子供の自慢話で盛り上がる。
 やがてそれらが一段落となり、見知らぬ女性の存在を気にかけるようになる。
「何でしょうねえ……。提督のご同伴の女性」
 パトリシアである。
 中将提督と共に入場してきた場違いの雰囲気を持つ女性に注目が集まっていた。
「何か、みすぼらしいと思いませんか?」
「ドレスだって、借り物じゃございませんこと?」
 蔑むような視線を投げかけ、卑屈な笑いを扇子で隠している。
「それにほら、あの首飾りです。エメラルドじゃありません?」
「あらまあ、ご存じないのかしら。エメラルドは皇家の者しか身につけてはならな
いこと」
「でもどうせイミテーションでしょ」
「噂をすれば、ほら侍従長が気が付かれたようですわ」
「あらら、どうなることやら……。ほほほ」
 侍従長がパトリシアに近づいていく。


 パトリシアの前に立ち、神妙な表情で話しかける。
「ちょっとよろしいですかな?」
「何か?」
「その首飾りを見せて頂けませんか?」
「え? ……ええ、どうぞ」
 パトリシアの首に掛けたまま、首飾りを手にとって念入りに調べていたが、警備兵を呼び寄せて、
「あなた様は、この首飾りをどこで手にお入れなさりましたか?」
 と、不審そうな目つきで尋ねる。
「ランドール提督から、婚約指輪の代わりに頂きました」
「婚約指輪ですか?」
 今度はきびしい目つきとなり、アレックスを睨むようにしている。
「申し訳ございませんが、お二人には別室においで頂けませんか?」
 警備兵が銃を構えて、抵抗できない状況であった。
「判りました。行きましょう」
 承諾せざるを得ないアレックスだった。
 ほとんど連行されるようにして別室へと向かう。
 首飾りも詳しい調査をするとして取り上げられてしまった。
 案内されたのは、元の貴賓室であった。犯罪性を疑われているようだが、帝国の恩人で摂政から客員提督として叙された者を、無碍にもできないというところであった。それでも警備兵の監視の下軟禁状態にあった。
 しばらくして、首飾りを持って侍従長が戻ってきた。
「さてと……。改めて質問しますが、提督にはこの首飾りをどちらでお手に入れられましたか?」
 という侍従長の目つきは、連行する時の厳しいものから、穏やかな目つきに変わっていた。
「どちらで……と言われましても、私は孤児でして、拾われた時に首に掛けられていたそうです。親の形見として今日まで大事に持っていたものです」
「親の形見ですか……。提督のお名前はどなたが付けられたのですか」
「それも拾われた時にしていた、よだれ掛けに刺繍されていたイニシャルから取ったものだそうです」
「よだれ掛けの刺繍ですね」
「はい、その通りです」
「なるほど、良く判りました。それでは念のために提督の血液を採取させて頂いてもよろしいですか?」
「血液検査ですね」
「はい、その通りです」
「判りました。結構ですよ」
 早速、看護婦が呼ばれてきて、アレックスの血液を採取して出て行った。
「結果が判るまでの二三日、この部屋でお待ち下さいませ。それからこの首飾りは提督の物のようですから、一応お返ししておきます。大切にしまっておいて下さい」
「イミテーションではないのですか?」
「とんでもございません! 正真正銘の価値ある宝石です」
「これが本物?」
 言葉にならないショックを覚えるアレックスだった。
 これまで偽造品だと信じきっていて、親の形見だと思って大切にはしてきたが……。まさかという気持ちであった。
「そう……。銀河帝国皇家の至宝【皇位継承の証】です」
 重大な言葉を残して、侍従長は微笑みながら部屋を出て行った。


 【皇位継承の証】が出てきたという報は、皇家・貴族達の間はもちろんの事、全国津々浦々にまで広がった。これほどまでの重大事に対して、他人の口に戸は立てられぬのごとく、血液検査を担当した研究者によって外部に漏れてしまったのである。しかもそれを携えていたのが、内乱を鎮圧したランドール提督であり、共和国同盟の英雄と讃えられる若き指導者であることも知られることとなった。
 気の早いニュース誌などは、「行方不明の皇太子現る」のスクープを報じていた。
 エリザベス皇女もまた謁見の間において、侍従長の報告を聞いて絶句した。
「間違いないのですか?」
「間違いはございません。【皇位継承の証】は正真正銘の物であり、血液鑑定の結果も行方不明であられたアレクサンダー皇子の血液と一致いたしました。提督のエメラルド・アイが、それを証明してくださるでしょう。拾われた時に御身に付けられていたと言う、よだれ掛けのイニシャルの刺繍もアレックス、皇子の幼名であらせられます」
「そうですか、アレックスが……」
「もう一度申し上げます。アレックス・ランドール提督は、銀河帝国における皇位継承第一順位であらせられる、アレクサンダー皇子に相違ありません」
 事実を突きつけられ、アレックスが行方不明となっていたアレクサンダー皇子であることは明白なこととなった。本来なら大歓迎を受けるはずであったが、行方不明を受けてロベール王子が皇太子として擁立され、皇室議会で承認されている。
 二人の皇太子候補が並び立ったのである。
 新たなる騒動の予感が沸き起こった。

 緊急の皇室議会が召集されることとなった。
 議題はもちろん皇太子の件であるが、開会と同時に議場は紛糾した。
 ウェセックス公国ロベスピエール公爵の息のかかった、いわゆる摂政派と呼ばれる議員が頑なに主張を続けた。
 ロベール王子の皇太子擁立はすでに決定されたことであり、それをいとも簡単に覆して新たに皇太子を論ずるなど皇室議会の沽券に関わる。
 というものであった。
 一方、
 【皇位継承の証】を拠り所として、帝国至宝の絶対的権威をないがしろにするのか?
 という、正統派の意見も半数近くまで占めていた。
 議会は完全に真っ二つに分かれ、険悪ムードとなっていた。
 このままでは、再び内乱の火種となりそうな勢いとなりつつあった。
 しかし、内乱となることだけは、絶対に避けなければならない。
 そこで中立派ともいうべき議員達から折衷案が提出された。
 次期皇太子、皇帝は議会決定通りにロベール王子が継ぐこととし、さらなる次世代にはアレクサンダー皇子もしくはその子孫が皇帝を継承する。ロベール王子は一代限りの皇帝として、アレクサンダー皇子が世襲する。
 というものであった。
 議会の決定を尊重し、かつ【皇位継承の証】の権威を守る唯一の解決策であった。
 とにもかくにも、アレクサンダー皇子の皇室への復籍と、皇位継承権第一位を意味する第一皇子という称号授与が確認された。
 これを中間報告として、皇太子問題は継続審議とされることが決定された。
 謹慎処分を受け、軟禁状態に置かれていたマーガレット皇女は、アレクサンダー第一皇子復籍の報告を受けてもさほど驚きもせず、改めて謁見の許可を求めたという。
 それは認められて、アレクサンダー第一皇子とマーガレット皇女との対面が実現した。
 行方不明だった皇子が現れ、【皇位継承の証】も戻ってきた。
 マーガレットが反乱の拠り所としたものが、目の前に立っていた。その主張が正しかったことを証明する結果となった。

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2021.06.20 08:17 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十三章 カーター男爵 Ⅲ
2021.06.19

第十三章 カーター男爵




 捕えられたカーター男爵は、ペラペラと摂政派の内情を話し続けた。
 海賊や本拠の基地の所在や、公爵とドレーク提督の関係まで、聞きもしないことを吐き続けた。
 そのほとんどが既にこちらでも手に入れていた情報であった。
 男爵は、そうとは知りつつも自らは情報提供者という演出をしたかったのあろう。

「男爵をどう思われますか?」
「所信をコロコロと変える人物は信用なりませんね」
「ではどうなさりますか?」
「言質はとってあるし、公爵のところに返してあげましょう。ここに置いておいても役に立つとは思えません。かえって、こちらの情報が洩れる可能性もありますから」
「そうですね。ああいう輩は、自分の都合で簡単に仲間を裏切るものです」

 数時間後、男爵は解放された。

 自分の艦に戻った男爵。
「公爵の元に帰るぞ!」
 敵の捕虜になったことは知られているだろうから、普通の神経を持っていたら、いけしゃしゃあと戻る気にはなれないだろうが。
 しかし腰巾着を長年続けてきた男爵の意識には、遠慮というものは存在しないのだろう。
 公爵邸に舞い戻った男爵は、平然と報告をする。
「海賊基地は崩壊し、ドレーク提督は殉職されました」
「そうか……。海賊の末期だな」
 意外と冷淡な返答をする公爵。
「それで、捕虜になった時に喋らなかっただろうな?」
 突然追及してくる。
 しどろもどろになりながらも言い訳を繰り交ぜて報告する男爵。
「まあいい。捕虜になった以上、解放されるためにはあらゆる努力をするのは同然だ。」

 自らが率いる摂政派は戦争経験のない貴族ばかりで、いざ戦いとなるとへっぴり腰になるのは目に見えている。
 一方の皇太子派は戦争経験も豊富で、何より共和国同盟の英雄が指揮する精鋭部隊ばかっりだ。
 戦いに持ち込むことなく、政争で勝ちにいくしか手段はない。
 となると公爵としても、一人でも多くの賛同者が欲しいはずだ。
 たとえスチャラカ男爵だとしても、無碍には放り出すことはできないのだろう。

「ともかくドレーク提督が逝ってしまった以上、体制を立て直さなくてはならない。お主にも協力してもらうからな」
「もちろん喜んで協力させて頂きます」
「第一艦隊の司令官も選任しなければなるまいが……。それにしても、海賊との関係を知られた以上、これまで以上に慎重な行動を取るしかない」
「奴らが、未だにその件を公表していないのは何故でしょうか? スキャンダルの何ものでもなく、奴らにとっては好材料のはずだと思うのですが……」

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2021.06.19 08:20 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 Ⅰ
2021.06.18

第四章 皇位継承の証




 首都星アルデランのアルタミラ宮殿。
 謁見の間に居並ぶ大臣・将軍達の表情は一様に重苦しい。
 マーガレット皇女が、摂政であるエリザベス皇女の裁定を受けていた。
「マーガレットよ。我が帝国の治安を乱し、テロなどの破壊行為なども誘発したことは悪しき重罪である。事の次第は皇室議会において処遇を決定することになる。追って裁定が下るまで、自室にて謹慎を命じる」
 うやうやしく頭を下げて処分を承諾するマーガレット皇女。
 そしてくるりと翻り姿勢を正して自室へと向かい始め、その後を侍女が従った。警備兵が二人その後ろから付いてくるが、連行するというようなことはしない。皇女としての誇りに委ねられた一幕であった。
 マーガレットが退室し、続いてアレックスに対する労いの言葉が、エリザベスより発せられた。
「今回の任務。よくぞ無事にマーガレットを連れてこられた。感謝の言葉もないくらいである。その功績を讃えて、中将待遇で銀河帝国特別客員提督の地位を与え、この謁見の間における列席を許し、貴下の二千隻の艦船に対して、帝国内での自由行動を認める」
 ほうっ。
 という感嘆の声が、将軍達の間から沸き起こった。

 貴賓室。
 謁見を終えたアレックスが、応接セットに腰掛けてパトリシアと会談している。
 アレックスがマーガレット保護作戦に出撃している間、パトリシアはこの部屋に留め置かれていた。
 いわゆる人質というやつで、大臣達からの要望であったと言われる。それでも世話係として侍女が二人付けられたのは皇女の計らいらしい。
「艦隊の帝国内自由行動が認められたので、スザンナ達には軍事ステーションから、最寄の惑星タランでの半舷休息を与えることにした」
「休暇と言っても先立つものが必要でしょう?」
「ははは、それなら心配はいらない。帝国軍から一人ひとりに【おこづかい】が支給されたよ。内乱を鎮圧した感謝の気持ちらしいが……。本来なら彼らが成すべき事だったからな」
「至れり尽くせりですね」
「しかし、これからが正念場だ。帝国側との交渉の席がやっと設置されたというところだな。まだまだ先は遠いよ」
「そうですね」
 事態は好転したとはいえ、解放戦線との協定に結び付けるには、多くの障害を乗り越えなければならない。特に問題なのは、あの頭の固い大臣達である。あれほど保守的に凝り固まった役人達を説得するのは、並大抵の苦労では済まないだろう。
「ジュリエッタ皇女様がお見えになりました」
 侍女が来訪者を告げた。
「お通ししてください」
 アレックスが答えると、侍女は重厚な扉を大きく開いて、ジュリエッタ皇女を迎え入れた。
「宮殿の住み心地は、いかがですか?」
「はい。侍女の方も付けて頂いて、至れり尽くせりで感謝致しております。十二分に満足しております」
「それは結構です。何か必要なものがございましたら、何なりと侍女にお申し付けください」
「ありがとうございます」
「ところで明晩に戦勝祝賀のパーティーが開催されることが決まりました。つきましては提督にもぜひ参加されますよう、お誘いに参りました」
「戦勝祝賀ですか……」
「内乱が鎮圧されたことを受けて、ウェセックス公が主催されます。その功労者であるランドール提督にもお誘いがかかったのです」
「しかし、私のような門外漢が参加してよろしいのでしょうか?」
「大丈夫です。パーティーには高級軍人も招待されておりまして、客員中将に召されたのですから、参加の資格はあります」
「そうですか……。判りました、慎んでお受けいたします」
 断る理由はなかった。


 祝賀パーティーには、皇族・貴族が数多く参加するだろうから、印象を良くし解放戦線との交渉に道を開く好機会となるはずである。
「しかし、わたしはパーティーに着る服がありません」
 パーティーともなれば、女性同伴が原則である。アレックスの同伴として参加するにはそれなりの衣装も必要である。参加者達は着飾ってくるだろうし、まさか軍服でというわけにもいくまい。
「それなら心配要りません」
 皇女が侍女に合図を送ると、部屋の片隅の扉を開け放った。
 そこはクローゼットであった。ただ広い空間に豪華なドレスがずらりと並んでいた。
 すごい!
 パトリシアの目が輝いていた。まるでウエディングドレスのような衣装を目の前にして、軍人からごく普通の女性に戻っていた。
「これは貴賓室にお招き入りした方々のためにご用意しているものです。お気に入りになられたドレスがございましたら、ご自由にお召しになされて結構です。着付けには侍女がお手伝いします」
「本当によろしいのでしょうか?」
 念押しの確認をするパトリシア。
 どのドレスを取っても、パトリシアの年収をはるかに越えていそうなものばかりなのである。さすがに遠慮がちになるのも当然であろう。
「どうぞご遠慮なく」
 微笑みながら促すジュリエッタ皇女。
 というわけで、パトリシアがドレスを選んでいる間、ジュリエッタと相談するアレックスであった。
「マーガレット皇女様はどうなるのでしょうか?」
「帝国に対して反乱を引き起こしたことは重大で、死刑を持って処遇されることもありえます。皇室議会の決定に不服を訴え、あまつさえ反乱を企てたのですから、皇室議会の印象が非常に悪いのです。少なくとも皇家の地位と権利を剥奪されるのは避けられないでしょう」
「皇家の家系から抹消ですか……」
「致し方のないことです」
「そうですか……」
 深いため息をもらすアレックスだった。

 戦勝祝賀パーティーの夜がやってきた。
 宮廷には、貴族や高級軍人が婦人を伴って、次々と馳せ参じていた。
 大広間にはすでに多くの参列者が集まり、宮廷楽団がつまびやかな音楽を奏でていた。
 貴賓室の中にも、その音楽が届いていた。
 儀礼用軍服に身を包んだアレックスは、客員中将提督として頂いた勲章を胸に飾り準備は整っていた。しかしパトリシアの方は、そう簡単には済まない。豪華なドレスを着込むには一人では不可能で、侍女が二人掛かりで着付けを手伝っていた。そして高級な香水をたっぷりと振り掛けて支度は整った。
「いかがですか?」
 アレックスの前に姿を現わしたパトリシアは、さながらお姫様のようであった。
「うん。きれいだよ」
「ありがとうございます」
 うやうやしく頭を下げるパトリシア。ドレスを着込んだだけで、立ち居振る舞いも貴族のように変身していた。
「しかし……、何か物足りないな」
 アレックスが感じたのは、ドレスにふさわしい装飾品が全くないことであった。パーティーに参列する女性達は、ネックレスやイヤリングなどドレスに見合った高価な装飾品を身に纏うのが普通だった。
「宝石類がないと貧弱というか、やっぱり見映えがねえ……」
 パトリシアも気になっていたらしく、紫色の箱を持ち出して言った。
「実は、これを持ってきていたんです」
 蓋を開けると、深緑色の大粒エメラルドを中心にダイヤモンドを配したあの首飾りだった。それはアレックスが婚約指輪の代わりに譲ったものだった。
「そんなイミテーションで大丈夫か?」
「ないよりはましかと思いますけど……」
「まあ、仕方がないか……。僕達にはそれが精一杯だからな」
「ええ……」
 パトリシアにしてみれば、イミテーションだろうと大切な首飾りには違いなかった。夫婦関係を約束する記念の品であったから。

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2021.06.18 08:35 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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