銀河戦記/拍動編 第二章 Ⅲ 王族の証
2022.12.31

第二章


Ⅲ 王族の証


 大広間の隅でアレックスが、疲れ切って眠り込んでいる。
 大勢の囚人たちが集まり、ヒソヒソと話し合っている。
 その中から、老人がアレックスの下に歩み寄ってきて、小声で話しかけてきた。
「アレックスさま……。アレックス様」
 その声に、目を覚ますアレックス。
 老人は真剣な表情をしていた。
「こんな夜中に、一体何の用ですか?」
「実は、あなたを高貴な方と見込んで、お話ししたいことがあります」
 首を傾げながら訪ねるアレックス。
「高貴? 僕は、ただの囚人ですよ」
「いえ、そんなはずはございません。我々は皆トラピスト国の者です。何も隠す必要はありません」
「あなた方は、トラピスト人かも知れませんが、隠していると言われても何の事だか分かりません。僕は、ごく平凡な地球人ですよ」
 老人、ふいにアレックスの左腕の袖を捲る。
 肩口に紋章の形をした痣(あざ)が現れる。
 一同、それを見てため息をつく。
 反射的に痣を隠すアレックス。
「失礼ですが、その痣はどうしてあるのですか? 火傷かなにかでそうなったのですか? それとも……生まれつき?」
「これは……。生まれつきかどうかは知りませんが、物心ついた頃にはすでにありました。しかし、この痣が一体どうしたと言うのですか?」
「そう、それが問題です。私の知る限りにおいて、そのような模様の痣を持つ人々が多数いらっしゃるが、皆さんトラピスト王家の方々なのです」
「トラピスト王家の一族……」
「そうです。あなた様は、トラピスト王家の方でいらっしゃいますね」
「そんな事おっしゃられても、僕は、地球で生まれて地球で育った、れっきとした地球人ですよ」
「本当に、そうと言い切れますか? あなた様がそう思い込んでいられるだけでは?」
 アレックス、返答に窮していた。
 記憶をたどれば、あの大木の根元に捨てられていたということが思い浮かぶのだが……。
「私は、あなた様にそっくりなお方に、お目にかかった事がございます。フレデリック様とおっしゃって、トラピスト星系連合王国女王クリスティーナ様の第三王子でいらっしゃいます。とても勇敢で、王子自らがケンタウリ帝国に戦いを挑むという立派なお方でした。太陽系連合王国の貴族の方とご結婚されていましたが、ご夫婦共々行方不明になられたとか……」
 信じられない事実が語られるのをアレックスは驚愕の思いで聞いている。
 老人の話は続く。
「いつだったか、あなた様は孤児だと仰られました。だとすればフレデリック様のご子息であっても不思議ではないでしょう。その痣が何よりの証拠です」
「しかし、偶然の一致ということも……。それにもし、僕がその人の子であるならば、何故地球に捨て子として置き去りにされなければならなかったのでしょうか? どうしてトラピストで育てようとはしなかったのか? 僕には、それが理解できません。あなたの取り越し苦労ではありませんか?」
「いや! 私の目に間違いはありません。あなた様は、確かにフレデリック様のご子息に相違ありません。地球に一人残されたのは、何か訳があってのことだと思います。そう私は信じます」
 老人の話に同調した囚人が語りだす。
「そうですとも。肩の痣とフレデリック様の奥方様が地球人であることも考えて、間違いないと思います」
「そうですとも」
 別の囚人も首を縦に振っている。
 しばらく考え込んでいたアレックス。
「もし仮に、かの話の王族の子息だったとしても、僕には何の力もありません。あなた達を救うことのみばかりか、自分自身さえどうしようもできません」
「いいえ。あなた様には、信頼と尊厳というものがございます。トラピスト王位継承権をお持ちになられており、万が一の時には国王となれるお方です。今はお力はなくとも、いずれにおいては強大なお力を。我々にとっては生きる支えになるのです。我々は指導者を求めています。そんな折にあなた様が現れた。我々は、心からあなた様を指導者としてお迎えいたします。どうか我々をお導きください」
 そういうと老人は跪き、その他の囚人たちも見習った。
 アレックス、呆気にとられて言葉も出ない。
「アレックス様。すべてはあなた様次第なのです」
「しかし……。一体僕は何をしたらいいのか……」
「あなた様は、ここへいらしたばかり。すべては準備完了しております。いずれあなた様のお力を借りることになりますが、それまでは見ているだけでよろしいのです」
 ここで老人は、囚人一同に向かって宣言した。
「今ここに、アレックス様は我々の指導者となられた」
「おお! アレックス様。我らが指導者!」



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銀河戦記/拍動編 第二章 Ⅱ インゲル星
2022.12.24

第二章


Ⅱ インゲル星


 流刑地惑星インゲル。
 刑場。
 銃を突きつけられ監視されて、囚人たちが重労働をさせられている。
 アレックスもその中にいる。
 老人が息をついて倒れている。
 兵士がやってきて、老人に鞭を振るう。
「貴様あ! 何をしている。休み暇があったら働け!」
 さらに鞭が舞う。
 近くにいたアレックスが見かねて老人を庇う。
「何をするんです。こんな老人に、鞭を振るうなんて」
「貴様、新人だな。ならば今後のために教えておく。いいか貴様らは奴隷だ。死ぬまでここで働いてもらうぞ。働けなくなった者は、容赦なく殺す。働けない奴に無駄飯を食わす必要はないからな。分かったか! 死にたくなかったら働け。早くしろ!」
 言いながら、アレックスを鞭打った。
 痛みを耐えながらもにらみ返すアレックス。
「何だ、その目は?」
 アレックス、兵士に食って掛かろうとするが、老人に止められる。
 その時、アレックスの肩口の痣(あざ)がチラリと見えた。
「お若いの、止めなされ。反抗したところで無駄な事じゃよ」
「しかし、おじいさん」
「いいから」
 アレックスを説得する老人。やがてツルハシを持って仕事を始めた。
「じじいの言う通りだ。さあ、貴様も黙って仕事を始めろ! さもないと……」
 言いながら鞭を撓(しな)らせる。

 アレックス、一旦は仕事に掛かるが、堪え切れずに兵士の隙をついて飛び掛かる。格闘となるが、集まった兵士達によって取り押さえられ、滅多打ちにされる。
 下士官がやってくる。
「油断するな!」
「申し訳ありません。以降気を付けます」
「ようし! 今日の仕事はこれまでだ。囚人どもを収容しろ!」
 兵士たちに銃を突きつけられて、次々と宿舎に連れられる囚人達。
 アレックスに向かって忠告する下士官。
「貴様は罰として今晩と明朝の食事抜きだ! しかも倍の量を働かせてやる。空腹の身体で思い知るがいい。さすれば賢くなるだろう」
 兵士に向き直って命令する。
「明朝まで独房に入れておけ!」
「はっ! かしこまりました」
 連行され、独房に入れられるアレックス。


 独房。
 兵士に手錠を掛けられて連れてこられるアレックス。
「ここで頭を冷やすんだな」
 笑いながら、牢に鍵を掛けて去ってゆく。
 独房内を見渡すアレックス。
 冷たいコンクリートの壁や床。
 それなりのベッドもなく、床にごろ寝するしかない。
 おそらく脱獄対策なのであろう。
 窓には頑丈な鉄格子が嵌められており、窓ガラスもないので雨風が吹き込んでくるのが想像できる。真冬ならば凍死しそうな部屋だ。
 壁に背をもたれるようにして床に腰を降ろし、物憂げな表情のアレックス。

 独房のある通路。
 兵士の立ち去った方向から、後ろを何度も確認しながら、一人の女性がやってくる。
 独房の前に立ち止まって中に向かって、小さな声で話しかける。
「そこにいますか?」
「君は?」
「しっ。あまり声を立てないで。私はルシア。あなたの名前は?」
「僕はアレックス。君も囚人かい?」
「そうよ。さ、これを食べて」
 ドアの下にある小さな戸口から食物を差し入れる。
「どうしてこんな事をしてくれるの? 見つかったら、君もただでは済まないだろう」
「これは、私の叔父様を庇ってくれたお礼よ」
「じゃあ、君はあの老人の?」
「ええ……。私、兵士たちの食事係をしているわ。調理室の窓から見ていたのよ。さあ、兵士に見つからないうちに早く食べて。私も、これ以上いられないから」
「ありがとう」
「頑張ってね」
 微笑みを返しながら立ち去るルシアだった。


 刑場で黙々と作業を続けるアレックス。
 そばを女性が通りかかり、アレックスに軽く意味ありげな会釈をする。
 それだけでなく、囚人のほとんどがアレックスに対して、何らかの表情をして見つめているようだった。
「新入りも、やっと落ち着いたようだな」
 監視兵長が呟くように言った。
「反抗しても無駄だと分かったのでしょう。威勢のいいのは最初だけですよ。どいつもこいつもね」
「うむ……。それはそうと、弁務コミッショナーが、急遽この星へお見えになるそうだ」
「コミッショナーが? なんでまたこんな辺鄙な流刑地などへ……」
「詳しい事情は分からん。とにかく、こちらへ到着するまであのアレックスという男を厳重に監視しろという命令が届いておる」
「あの若造。よっぽどの重要人物なのでしょうか? 私にはただの小僧にしか見えませんが」
「いや。人間、表面だけで判断してはいかんぞ。とにかく命令だ。奴を四六時中見張っているのだ。行け!」
「はい。分かりました」



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銀河戦記/拍動編 第二章 Ⅰ 脱出
2022.12.17

第二章


Ⅰ 脱出


 洞窟内秘密基地。
 多種多様の兵器などの装備が壁際に立ち並び、中央にあるプールに一隻の船が浮かんでいる。
 天井から昇降機が降りてきて、船の上部昇降口にピタリと収まった。
 乗員が降りたのか、再び天井へと戻ってゆく昇降機。


 計器がずらりと並んだ部屋。
 機器が発生する稼働音が微かに響いている。
 ロボットのロビーが計器類を操作している。
 そんな部屋に、エダとドレスに着替えたイレーヌが入ってくる。
「発進準備完了シマシタ!」
 ロビーが報告する。
「よろしい。補助エンジン点火!」
「了解シマシタ」
 ロビーが操作すると、稼働音がさらに大きくなってゆく。
 連れてこられたこの部屋が何なのか、何をする場所なのか説明もされず疑心暗鬼になっているイレーヌ。
 エダ、イレーヌの肩に手を掛けて、
「いいですか、イレーヌ。これから起こることに驚かないで、気を確かに持っていてください」
 頷くイレーヌ。
「補助エンジン、正常ニ運転中デス」
「ロビー、発進して。そっと静かにやって頂戴ね」
「了解、ソット静静カニ発進シマス。ヨウスルニ、微速前進。船台ロック解除!」
 僅かに揺れる部屋。
 外壁から聞こえる地響きの音。
「何? この振動音は?」
 心配そうに尋ねるイレーヌに、
「大丈夫ですよ」
 優しく安心させるエダだった。
「微速前進! 潜航シマス」


 秘密基地内、プールに浮かんでいた船が静かに潜航を始めた。
 水中をしばらく進んだ向かう先には頑丈な壁が迫っている。
「ゲート・オープン!」
 ロビーが操作すると、外海に通ずる隔壁がゆっくりと開いていった。
「海中ニ進入シマス!」

 外の世界。
 滝のある岸壁の海中にあった隠し扉が開いて、一隻の船が出てくる。
 イレーヌの連れてこられた部屋は、船の船橋だったようだ。
「海中ヲ潜航移動中デス。異常ナシ」
 基地を悟られないためか、しばらく海中を進んでゆく。
「そろそろいいでしょう。浮上してください」
「了解。浮上シマス。現在深度200メートル。上昇角30度。補助エンジン最大ヘ。海面マデ、十二分、両舷推力正常」
 状況の把握しきれないイレーヌは、言葉を発することも忘れていた。
「深度三十メートル。海上ヲ探査シマス」
 船の甲板からドローンが海上へと投入され、付近の探査が開始される。追手が索敵に出ている可能性があるからである。
「海上ニ敵ノ姿ハ見当タリマセン。浮上シマス」
 海中から海上へと浮上にかかる船。

「海上ニ 出マス」
 海中から海上に浮上する船。
「浮上シマシタ。メインエンジン始動シマス」
「イレーヌ様、揺れますから着席してください」
 椅子を指して誘う。
「いいですか、イレーヌ様。これから起こることに、驚かないでください。何も怖がらずに、気を確かに持っていてください」
 船は海上を滑るように走り始める。
「飛行翼展開シマス」
 胴体から飛行翼が迫り出してくる。
 しばらく海上を走って速度を上げてゆく。
「上昇角10度。メインエンジン最大出力へ」
 水飛沫を上げながら、海上からふわりと浮き上がる船。


 総督府地下軍司令部。
 暗く広い大部屋に各種の機器類、明滅するランプ類、慌ただしく動き回る兵士達。
「Cブロック第七ポイントに未確認飛行体出現!」
「監視カメラからの映像をスクリーンに映してみろ!」
「了解、スクリーンに映像を流します」
 スクリーンに艦船が飛び立つ姿が映し出されていた。
 それはまさしく宇宙戦艦だった。
「どこの戦艦だ?」
「戦艦の所属は不明。こちらからの呼び出しにも応答なし」
「海底のどこかに潜んでいたものと思われます」
「それは分かっておる。一体どうやって、我々の防衛網を搔い潜って潜入したというのだ? あの巨体だ。他の惑星から来たならば見落とす訳がない」
「では、この星で建造されたとか?」
「この星には、あれほどの巨艦を建造できるほどの大工場は見当たりません」
「現実として目の前にあるのだ。どこかの地下ないし海底で密かに建造されたに違いない。だが、一体何者が、何の目的で……」
「迎撃態勢完了しました」
「よし! 攻撃開始せよ」
「しかし、あの艦にはイレーヌ王女が捕えられているかもしれません」
「かまわん! 我々の敵に間違いない者を見逃すわけにはいかない。撃ち落せ」


 宮殿王室。
 イライラしながら、右往左往するクロード王。
 恐縮している重臣達。
「ええい! まだイレーヌは見つからんのか?」
「はあ……。手を尽くして探してはいるのですが、未だに……」
「一体捜査隊は何をしているのだ?」
「あなた。セルジオ様にお願いしてみたらいかがでしょう」
 イサドラ王妃が提案する。
「そ、そうだな。お願いしてみるとしよう」
「それはそうと、エルドラはどこへ行ったか知らないかい?」
 王妃が従者に尋ねる。
「はあ……知りませんが……」
 首を横に振る従者。
「そう……どこに行ったのかしら」
 心配そうに娘の安否を気にしている。


 イレーヌの乗船する船の船橋。
 エダが、疑心暗鬼な王女の気を静めようといろいろと、気をもんでいるようだった。
「お気づきでしょうが、この船は宇宙船であり戦闘艦です」
「宇宙戦艦……ですか?」
「はい。艦名をアムレス号といいます」
「アムレス号……」
 せいぜい馬しか乗ったことがなく、戦艦などという無粋なものとは縁遠いイレーヌだった。
「後方カラ、ミサイル!」
「早速来たわね。後部発射管からデコイ発射!」
「デコイ、発射シマス」
 ミサイルとデコイが入り乱れて爆発炎上する。
「重力圏離脱します」
 大気圏を脱出して、深淵漆黒の宇宙空間へと突入するアムレス号。

「後方、七時ノ方向ニ、敵艦接近中! スクリーンニ投影シマス」
 地球から発進したと思われる艦隊が後を付けてきていた。
「セルジオの護衛艦隊ね」
「敵艦から艦載機が発進しました」
「パルスレーザー砲で撃ち落してください」
 迫る来る艦載機を次々と撃ち落してゆく。
 やがて遠くから大型の戦艦が近づいてくる。
「セルジオ艦隊だわ」
 次第に間を詰めてくるセルジオ艦隊。
「ロビー、主砲発射用意。目標、セルジオ艦隊」
 アムレス号の艦体より、格納式旋回砲台が現れ、セルジオ艦に標準を合わせるように砲口が動く。
「主砲、発射準備完了シマシタ。有効射程内デス」
「主砲発射!」
 アムレス号より発した強力なビームがセルジオ艦隊に命中して爆発炎上する。
 さらに第二派・第三派と攻撃を続けるアムレス号。
 やがてセルジオ艦隊は全滅する。
「後続艦隊ハ、アリマセン」
「よろしい。最大船速で逃げます」
「了解。最大船速へ加速シマス」
 セルジオ艦隊を振り切り、彼方へと消え去ってゆくアムレス号。


 司令部。
「味方艦隊全滅!」
 憤慨するセルジオ弁務コミッショナーがいる。
「何ということだ。たかが一隻に艦隊が全滅させられるとは!」
「火力が桁違いでした。これほどの科学技術を反乱軍が持っているとは思えません。一体どこの組織なのでしょうか?」
 副官が首を傾げている。
「これからいかが致しますか?」
「無論。あの船がどこへ行くか、その目的をはっきりさせるのだ」
「はっ! 奴が消えた方角へ探索艇を差し向けます。

 セルジオ私室。
 窓辺に立ち、夜空を仰ぐセルジオ。
 従者が入ってくる。
「コミッショナー。クロード王が謁見を申し出ております。イレーヌ王女のことかと存じますが」
「あまり会いたくないが……」

 セルジオと謁見が叶ったクロード王。
「閣下。お願いでございます。私の娘が行方不明になった事は、閣下もご存じかと思います。我々が手を尽くして探したものの、一向に手がかりすらも掴めておりません。そこで、閣下の配下の特殊部隊の出動を要請したく思い、参った次第であります」
「特殊部隊の出動だと?」
「はい。閣下の配下の特殊部隊は、我々すら気が付かなかった、反逆者を察知し捕えたほどの腕前。イレーヌを探し出すのも容易いかと……」
 テーブルの上に置いてあったグラスに、酒を注いで飲むセルジオ。
「それはできぬ」
「何故でございますか? イレーヌは閣下の嫁となる身の上。万が一な事があれば……」
「特殊部隊を出動させる暇などない。それにイレーヌは、この星にはもうおらぬわ」
「え? この星にいないですって?」
「そうだ。反逆者の一味によって、宇宙の彼方へと連れていかれてしまったよ」
 セルジオ、後ろ向きになって酒をあおる。


 アムレス号のプライベートルーム。
 イレーヌが、ベッドの縁に腰かけて瞳をうるませている。
「お父さま、お母さま……」
 扉が開いて、エダが入ってくる。
 慌てて涙を拭うイレーヌ。
「まだ、眠らないのですか?」
「エダ、これからどこへ行くの?」
「地球から12光年の所にあるルイテン星系にある惑星インゲルです」
「インゲル星?」
「アレックス様が流刑されている惑星です。これからアレックス様を救出に向かいます」
 エダを凝視するイレーヌ。
「アレックスを? 一体あなたとアレックスの関係は何なの?」
 エダ、イレーヌの隣に腰かける。
「いずれお話しますわ。身分のあるお方に仕えているということだけ……。さ、もうお休みならならいと……」

 エダが退室した部屋で天井を見つめて何事か考えている様子のイレーヌ。



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銀河戦記/拍動編 第一章 Ⅵ 王女イレーヌ
2022.12.10

第一章


Ⅵ 王女イレーヌ


 太陽系連合王国首都星地球。
 ケンタウリ総督府内にある軍事法廷。
 軍服に身を固めた文官がずらりと席に着いている。
 対面する尋問席に銃を突きつけられて立たされている反逆者達、その中にアレックスも含まれている。
「判決を言い渡す。一同を流刑星での終身懲役刑に処す」

 総督府入り口付近、護送車に乗せられるアレックスと反逆者達。

 宮殿内、イレーヌが走っている。。
 表情を強張らせて、息せき切りながらバルコニーに立つ。
 眼下に護送されてゆくアレックス達。
「アレックス!」
 イレーヌ、涙を流しながら必死でアレックスを呼び続ける。
 その声に気づいたアレックスが、バルコニーに視線を向ける。
「イレーヌ!」
 車から身を乗り出すが、兵士に押さえられる。

 宮殿バルコニー。
 遠くなってゆくアレックスの乗せられた護送車。
 イレーヌ、その場に崩れながらもアレックスの行方を見つめ続ける。
「アレックス……」
 いつの間に現れたのか、侍女がそばで立ちすくんでいた。

 宇宙軍港。
 アレックス達が、兵士に銃を突き付けられながら、宇宙艇に入ってゆく。
 ふと振り返るアレックス。
「イレーヌ……」
「何をしている早く乗れ!」
 銃で小突かれて、中に入る。
 やがて発信する宇宙艇。


 宮殿イレーヌの部屋。
 鏡の前で椅子に腰かけ、侍女に髪を梳かせている。
 その表情は重苦しく、時々ため息をついている。
「イレーヌ様、そんなに思い詰めていると、お身体に差し障りますよ」
 侍女が心配そうに気遣う。
「いいの。アレックスがいないなら、私なんかどうなってもいいの……」

 夕闇に包まれてゆく宮殿。
 イレーヌの部屋。
 ネグリジェ姿でベッドの縁に腰かけているイレーヌ。
 その表情は虚ろで精気がない。
 膝の上に短刀を置き、右手で撫でている。
 侍女が入ってくると、慌てて短刀を枕の下に隠す。
「イレーヌ様、まだお休みになりませんの?」
 侍女、窓を閉めてカーテンを引く。
「明日は、セルジオ閣下とのご結婚の日ですよ。寝不足のまま式を迎えるなんていけませんよ」
「いや!」
 耳を手で塞いで嫌がる。
「いやよ。あんな人と結婚するくらいなら、死んだ方がましよ!」
「そんなにまでアレックスの事を?」
「そうよ。小さい頃からずっと好きだったわ。地位も財産もないけど、一緒になるならアレックス以外にないと決めてたのよ。あなたなら、私の気持ちを分かってくれると思っていたのに……」
「ですが、お嬢様は王女ですよ。ちゃんとした人の所へお嫁入りするのが道理だと思いますが。セルジオ様だってお優しい方ですよ」
「やさしい? あの人のどこが優しいというの?」
「聞くところによれば、アレックスだって本当は死刑になるところを、セルジオ様の力で流刑に減刑されたとか」
「流刑だって死刑だって結局は同じことよ。一生流刑地で重労働をさせられることを思うと、いっそのこと死刑の方がどんなにマシなことか。アレックスをわざと苦しめるためにしたことよ。あの人の考えていることぐらい分かります」
「ですが……」
「もういいから放っておいてちょうだい。出てって、出てってよ」
「イレーヌ様……。分かりました。でも、その短刀は預かっておきます」
「そんなものないわ」
「いいえ、隠されるところをちゃんと見ましたから。さ、イレーヌ様」
 侍女手を差し出した。
「渡さないと言ったら?」
 イレーヌ、侍女をキッと睨みつける。
 しばし見つめあう二人。
「お嬢様……本当に死ぬつもりですね」
 イレーヌ答えない。
 侍女、黙って窓のところへ歩いてゆく。
 外の気配を窺っているようすだ。
 やがて振り向いてイレーヌに歩み寄る。
「お嬢様」
「だめ! 近づかないで、それ以上近づくと、今すぐ死ぬわ」
 枕元から短刀を取り出して、喉元に突き立てる。
 侍女、立ち止まる。
「お嬢様、本当に死ぬお覚悟なら、その命を私にお預けになりませんか?」
「どういう意味よ」
「決して悪いお話ではありませんよ。それにうまくいけば、アレックスとも会えるかも知れませんよ」
「アレックスに会えると言うの?」
「そうです。確実にとまではいきませんが、少なくともセルジオ様とご結婚しなくても良いのです。この私の言うとおりになさいませんか?」
「本当にアレックスに会えるのね? 信じていいのね?」
「この私が、今まで嘘を申したことがありますか?」
 首を横に振るイレーヌ。
「では、その短刀を私に渡してください」
 侍女、イレーヌの側にすぐそばに寄り、短刀を受け取り脇の台の上に置く。
「アレックスには、いつどこで会えるの? あの人は、今流刑星にいるのよ」
「だから、その星へお迎えに出かけるのです」
「行くって……どうやって?」
「それは、私におまかせ下さい……ほら、お迎えがきたようです」
「え? どこに?」
 窓の外が明るく輝いている。
「窓の外です。さあ、時間がありません」
 イレーヌの手を取って、窓を開けてバルコニーに出る。


 バルコニー。
 イレーヌと侍女が連れ立って出てくる。
 反重力エアカーが空中に浮遊しており、その扉が開く。
 運転席には、ロボットが着席している。
 下の方では騒ぎが起こっている。
「気づかれたようです。さ、早くお乗りください」
「乗れって……あなたは?」
「私は一緒に行けません。後に残ってしなければならない事があるのです」
「でも……」
「アレックスに会いたくないのですか? いいですね、すべてはこのロボットのロビーの言うとおりにすればいいのです。分かりましたね?」
「……」
「ロビー、出発してください」
「ワカリマシタ、出発シマス」
 扉が閉じられ、ゆっくりと浮上して上空へと発進する。
 バルコニーに残った侍女、それを黙って見送っている。


 草原の上を反重力カーが進んでいる。
 じっと黙ってロビーの後ろ姿を見つめているイレーヌ。
「イレーヌサマ」
 ロビーの声に気づかないイレーヌにもう一度問いかける。
「イレーヌサマ」
「え?」
「ソンナニ怖ガラナイデクダサイ。私ハナニモシマセンカラ」
「は、はい」
「マモナク目的地ニツキマス」

 湾の入り組んだ海岸線を走るエアカー。
 崖の上から直接海に落ちる滝が見えてくる。
 エアカーが近づくと、滝の裏側の岸壁がせり上がってきて、洞窟が現れた。
 水飛沫を上げながら、その中へ入ってゆくエアカー。
 そして再び岸壁が閉じていって元通りになった。

 暗い洞窟の中を、ライト点けて進んでいくと、土くれだった洞窟の壁面がコンクリートに変わった。
「到着シマシタ。ココガ、我々ノ秘密基地デス」
「こんな所に?」
 やがて大きな空間に到達する。
 途端にあちらこちらから照明が点灯する。
 照明に照らされて、そこに姿を現したのは……。
「これは……宇宙船?」
 エアカーが近づくと、後部着艦口が開いてゆく。
 宇宙船に入ってゆくエアカー。

「到着シマシタ。降リテクダサイ」
「は、はい」
 エアカーから降りるイレーヌ。
「こ、これは?」
 あたりを見回して驚く。
 戦闘機やら各種の武器やらが、ずらりと並んでいる。
「サ、コチラヘドウゾ」
 ロビーが先に立って、エレベーターへと誘導する。
 キョロキョロとしながらも着いてゆく。
 エレベーターを上がった先の部屋に通される。
「ココガ、アナタノオ部屋デス。オクツロギクダサイ」
 そういうと離れていった。
 中は美しく飾られ落ち着いた雰囲気のある部屋だった。
 しかもイレーヌのいた宮殿の内装とそっくりだった。
 ロビーがワゴンに飲み物を乗せて運んできた。
「サア、コレヲオ飲ミクダサイ。落チ着キマスヨ」
 それを受け取るが、躊躇するイレーヌ。
「サア、飲ノンデクダサイ。毒ハ入ッテイマセン」
 イレーヌ、緊張しながらもその飲み物を飲んだ。
「一つだけ教えて、私の侍女は今どうしているの?」
「ソレハ心配イリマセン。イズレマタ会エルデショウ。デハ、オヤスミナサイ」
 そういうと、ロビー外へ出て、扉を閉める。
 一人残されたイレーヌ、ロビーの出て行った扉を見つめている。


 イレーヌ眠っている。
 やがて眼を覚まして起き上がる。
 あたりを見回して、昨夜のことを思い出している。
 扉が開いて誰かが入ってくる。
「誰?」
 美しいドレスを着た女性が入ってくる。
「おはようございます。ぐっすり眠れましたか? イレーヌ様」
「あなたは?」
「私は、エダ。あなたはアレックス様の恋人でいらっしゃいますね。良く存じております」
「アレックス?」
「私は、アレックス様のしもべです」
「一体どういうことなのですか? 私には、さっぱり分かりません。あなたとアレックスとの関係、それにあなた達が、ここで何をしようとしているのかも……」
「くわしい事情は、いずれお話します。とにかく私どもは、アレックス様を、お救いしなければならないということです」
「でも、どうやって? 今、アレックスは遠い星にいるのよ」
「それは、すべて私どもにお任せ下さい。それから、こちらにドレスがございますから、ご自由にお召しになられて結構です」


 計器がずらりと並んだ部屋。
 ロビーが計器類を操作している。
 その後方に、エダとドレスに着替えたイレーヌが立っている。
「発進準備、完了シマシタ!」
「よろしい。補助エンジン点火!」



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銀河戦記/拍動編 第一章 V トラピスト連合王国
2022.12.03

第一章


V トラピスト星系連合王国


 地球から、「みずがめ座」の方向およそ四十光年先に、「TRAPPIST-1(トラピスト1)」と呼ばれる恒星がある。
 直径が太陽の約十一パーセント、質量が太陽の約八パーセント、表面温度が摂氏約二千三百度と小さな赤色矮星ではあるが、地球型の七つの岩石惑星が周回している。その公転軌道は、最内側の惑星で約一日半、最外側の惑星でも約十八日である。太陽系の水星軌道の内側に入っていることになる。惑星同士の距離が近いために、互いに重力干渉を受けて、ラプラス軌道共鳴に近い軌道を回っている。
 第四惑星から第六惑星は、惑星表面に液体の水が存在できるハビタブルゾーンに位置しているが、恒星に近すぎるために潮汐ロックを受けて、惑星の半球ずつが常に昼か夜の世界となっていた。
 また潮汐加熱によって、惑星内部に摩擦熱が発生し、地表の至る所で火山噴火を起こし、大気を温めると同時に気体成分を放出していた。水蒸気は冷えて雨となって地表に降り注ぎ海を作った。
 大気は循環して海流と共に、厳寒の夜側へと熱を運んで、気候を温暖化させていった。

 この恒星系にたどり着いた人類は、最も地球環境に近い『トラピスト1e(第四惑星)』を最初の居住惑星とした。
 大気と海洋の存在により、大気循環と海流によって、平衡温度十三度前後と住みやすい環境にあったからだ。
 さらに地球型環境改善化(テラフォーミング)を行って、地球型大気組成となるように開発していった。
 周辺の他の六つの惑星に存在する豊富な鉱物資源を持って、資源大国から工業都市へと発展した。


(提供:NASA/JPL-Caltech)

 トラピスト星系連合王国トリタニア宮殿。
 中央壇上玉座にクリスティーナ女王、それを囲むように重臣と侍女達。
 皆がスクリーンを見つめている。
 映像が変わって、ネルソン提督が現れる。
「……以上が、ビデオコーダーに記録されていたすべてです。この後のアレックス様とエダ、そしてアムレス号については未だ消息不明です」
「そうでしたか……分かりました。ご苦労様でした。よく知らせてくれました」
「また何かありましたら直ちにご報告致します」
「よろしくお願いします」
「かしこまりました。失礼します」
 一人になり、バルコニーに出る女王。
 空には、内合を終えたばかりの巨大な第三惑星が南天に浮かんでいる。
 すぐ近くに見える第三惑星の夜の側には、王国最大の工業都市の夜景が美しく輝いていた。
 突然、警報音が街中に鳴り響いた。
 女官が歩み寄ってきて報告する。
「陛下。トラピストの閃光フレアの兆候が観測されました。安全な場所へお移りください」
「分かりました」
 促されてバルコニーから退避する女王。
 トラピスト1のような赤色矮星は、白色光フレア(可視光を伴う強力なフレア)を頻繁に発生させる。高エネルギー荷電粒子が惑星に襲い掛かり、人々を死に至らしめることもある現象である。地球においても太陽フレアの発生時には、両極地方でオーロラが観測されることでも周知。地球には地磁気があって、これがバリアーとなって荷電粒子を防いでくれている。
 幸いにもフレアは、トラピストの高緯度で発生することが多いので、恒星赤道面上を公転している限り、その影響はかなり減少する。とはいえ、何割かは惑星に向かってくるので、衛星軌道上に磁気シールド衛星を三十六基打ち上げてバリアーを張って防いでいる。
 それでも完全に防ぎきれないので、市民に避難場所に退避するように警報を出しているのである。


 アンツーク星。
 パネルスクリーンに映るクリスティーナ女王に敬礼するネルソン提督。
 通信を終えて、スクリーンが切られる。
 その時だった。
 警報音が鳴り響き、赤色灯が点滅を始めた。
「どうした?」
「これをご覧ください」
 半自動防空管制装置の監視スクリーンに、このアンツーク星に接近する艦影が映し出されていた。
「敵か味方か?」
「拡大投影してみます」
 技術士官が機器を操作する。
 スクリーンに近づきつつあるのはケンタウリ艦隊だった。
「敵艦隊だ。しかし大した数ではない」
「敵はこちらに気づいていないようです」
「オリオン号に知らせて戦闘配備させろ! 但し、気づかれるまでは静観だ。それと走行車などは隠せ!」
「了解しました」
 この場にいる者すべてに緊張が走る。
「ここの施設には警戒迎撃管制装置もあるんだよな。動かせないか?」
「はい。私も、そう思って迎撃の起動装置を探しているのですが……だめです、見つかりません」
「馬鹿な。迎撃管制装置があるのに、迎撃できないってどういうことだ?」
「しかし、どこを探しても見当たりません」
「提督、もしかしたら別の場所にあるのではないでしょうか」
「別の場所だと?」
「そうです。ここには最終判断を下すメインコンピューターがありません。近づいてくる艦がいれば、一応迎撃態勢に入りますが、それが味方か敵か判断して、攻撃するか否かを決断するメインがないのです」
「つまり中枢は他の場所にあって、そこから遠隔操作されているというわけか?」
「可能性はあります。その場所とは」
「まさか、アムレス号のマザーコンピューターか?」
「多分そうだと思います。私の知る限りでは、艦載型のコンピューターでは銀河一優れているということですから」
「アムレス号か……」
「とにかく、ここの武器が使えないとなると、我々で奴らを叩くしかありません」
「よし、直ちにオリオン号に連絡。発見される前に攻撃する。総員艦に戻れ!」


 オリオン号ブリッジ。
「全艦、戦闘配備完了しました」
「敵艦の位置は?」
「それが……。位置関係が悪くて、こちらのレーダーに反応なく、位置の確認が取れません」
「何だと!」
「只今、先ほどの場所の管制システムに連結させて、データを送ってもらっている所です。まもなくパネルスクリーンにデータが映されます」
 スクリーンに敵艦隊の位置情報が次々と送られてくる。
「敵艦隊の情報入力完了。丁度この星の反対側です」
「反対側か、どうりで気づかないわけだ。艦の修理はどこまで進んだか?」
「一戦やるくらいなら大丈夫ですよ」
「なら、やるぞ! 発進だ!」
 静かにアンツーク星を離陸してゆくオリオン号。


 帝国軍艦隊旗艦の艦橋。
「まもなくアンツーク星です」
「うむ。謎の電波を受信したというのはここか?」
「はい。間違いありません」
「こんな辺鄙な星に何があるというのか……」
 司令、アンツーク星を見つめている。
 スクリーン上の惑星の縁がキラリと輝く。
「今のは何だ!」
 司令、目を凝らしてスクリーンを凝視する。
 やがてオリオン号が出現する。
「あれは! オリオン号です」
「こんな所に隠れていたのか! 全艦戦闘配備!」
「ミサイル接近中!」
「機関全速。取り舵一杯! デコイ発射!」
「駄目です。間に合いません、命中します」
 吹き飛ぶ乗員達。
 ブリッジ内爆破し続ける。

 奇襲を掛けられて右往左往する敵艦隊。
 ミサイルによって撃沈する艦、異常接近し互いに衝突して大破する艦。
 まったく統制の取れていない艦隊の末期だった。

 オリオン号艦橋。
「敵艦隊全滅しました」
 飛び上がって喜ぶ乗員達。
「やったあ! 勝ったぞ」

「それにしても、あの設備を放っておくてはないと思うのですが……」
「いや、女王様のご命令だ。トリタニア王家の人物だ、そっと静かに眠らせておいてやろうじゃないか」
「それもそうですね」
「念のためだ。あの洞窟の入り口を封印しておこう。魚雷一号発射準備だ!」
「了解! 魚雷一号発射準備!」
 オリオン号の魚雷発射管が開いてゆく。
「発射!」
 魚雷が発射されて、洞窟上部の岩盤に命中して、山が崩れて洞窟入り口を塞いだ。
「これでいい」
「提督。艦の修理が終わりました。巡航速度出せます」
「よし、発進準備に入れ!」
「了解!」

 オリオン号艦橋。
 スクリーンに映るアンツーク星が次第に遠くなってゆく。
 ネルソン提督見つめながら、敬礼を施す。
「安らかに眠りたまえ」
「アンツーク星の重力圏より離脱します」
「只今より五分後にワープに入ります」
 加速してゆくオリオン号。
 やがてワープして消える。


 洞窟内、プライベートルーム。
 カプセルの中で静かに眠る二人。
 自動消灯装置が働いたのか、ルームの照明が静かに暗くなってゆく。



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