銀河戦記/脈動編 第三章・第三勢力 Ⅳ
2021.11.27

第三章・第三勢力





 司令   =ウォーレス・トゥイガー少佐(英♂)
 副長   =ジェレミー・ジョンソン准尉(英♂)
 艦長   =マイケル・ヤンセンス大尉(蘭♂)
 航海長  =ラインホルト・シュレッター中尉(独♂)
 操舵手  =ジャクソン・フロックハート中尉(英♂)
 通信士  =モニカ・ルディーン少尉(瑞♀)
 レーダー手=フローラ・ジャコメッリ少尉(伊♀)
 軍医   =ドミニクス・ビューレン(蘭♂)


 基地で亡くなっていた遺体を収容して、サラマンダーに戻ってきた。
「調査を終了。基地に帰還する」
 ゆっくりと衛星を離れるサラマンダー。
 その瞬間だった。
 激しく震動する艦内。
「な、なんだ!」
「後方に未確認艦! 第二衛星の陰に隠れていたようです」
 レーダー手のフローラ・ジャコメッリ少尉が確認して報告した。
「そいつらが基地を襲った奴らか?」
 副長が興奮して叫ぶ。
「戦闘配備! 艦首を敵艦に回せ!」
 トゥイガー少佐が、すかさず戦闘態勢を下す。
「警告もなく攻撃を仕掛けてくるなんて、例の好戦的な国家勢力の艦でしょう」
「たぶんな。交渉も不可能だし、やるしかない。原子レーザー砲用意!」
「原子レーザー砲への回路接続。レーザー発振制御超電導コイルに電力供給開始」
「BEC回路に燃料ペレット注入開始します」
*BEC=ボーズ・アインシュタイン凝縮
「原子レーザー砲、エネルギーゲイン95%」
「敵艦との軸線、右へ五度転回して下さい」
 砲手が姿勢変更依頼を出す。
「了解。右五度転回します」
 と、操舵手のジャクソン・フロックハート中尉。
 原子レーザー砲などの艦首エネルギー砲は、正面軸線上の敵艦しか撃破できないために、照準は艦体の方を動かすしかない。
「敵艦との距離230デリミタ」
「モニカ、念のため全周波で交信を試みてみろ」
「了解!」
 通信機器を操作するモニカ・ルディーン少尉。
「返答がありません。通信システムが違うのかも……」

「それにしても、奴らは我々がここにいることをどうして知ったのでしょうかね」
「そりゃ、我々が未知の周波数の電波を探って、滅亡都市を発見したように、交信電波を逆探知したんだよ。通信の内容は分からなくても、電波が来ていることは探知できるからな」
「ああ、なるほどね」

「原子レーザー砲、発射準備完了しました!」
「よし、撃て!」
 サラマンダーから一条の軌跡が走り、敵艦に襲い掛かる。
 まばゆい輝きとともに一瞬にして蒸発する敵艦。
「え? あっけなく轟沈してしまいましたよ」
 驚く副長だった。
「防御シールドがなかったのか、それとも艦体の素材が弱かったのか……」
「適度に損傷を加えて、敵を捕虜にすることもできない。どんな姿形しているか見たかったのに」
「索敵が目的だったとしても、この広大な宇宙でたった一隻で行動していたのも理解できません」
「仕方がない。残骸を漁って敵に繋がる、船の破片とか肉片とかを拾っておくか」

 基地に戻ってきたサラマンダー以下の艦艇。
 早速、司令官のメレディス中佐に報告するトゥイガー少佐。
「敵の残骸を科学部で鑑定しております」
「ご苦労だった。下がってよし」
 敬礼して退室するトゥイガー少佐。
 通路に出ると、ジョンソン准尉が待っていた。
「敵艦隊が現れたことで、惑星開拓の方も暗雲が立ち込めましたね。生物兵器を使う物騒な奴もいますし」
「そうだな。その辺のところは、評議会の方で議論しているらしい」
「その辺のところは上に任せて、私たちは酒でも飲んで疲れを癒しましょう」
 ということで、連れ立ってパブリック・パブへと向かうのだった。


 評議会議場。
 これまでの事件から、敵対する国家勢力の存在を鑑みて、今後の惑星開拓の方針を議論することとなった。
「先の調査で、好戦的な種族のDNA鑑定の報告が上がってきており、我々の遺伝子にかなり近いことが判明した。おそらく我々よりはるか以前に移住してきた者の子孫だと思われる。滅亡都市の住民共々な」
「何とかして、どちらかの国と友好的な関係を築いて、他方の国との交戦を有利にできれば良いのだが」
「好戦的な勢力でも、相手勢力をダシにすれば、友好国となりうるかも知れない」
「ともかく、我々が惑星探索と移民を続ける限り、両勢力との接触は避けられない」

 基本的方針が定められた。

・発見した惑星が無主地の場合は自国領として開拓する。
・既に居住の地となっていた場合は、外交官を送って通商条約などの交渉を行う。
・上記において、交渉に応じず有無を言わさずの戦闘となった場合は、これと戦い勝利占領して自国領とする。

 他、細々とした内容が決められた。

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11
銀河戦記/脈動編 第三章・第三勢力 Ⅲ
2021.11.20

第三章・第三勢力





 司令   =ウォーレス・トゥイガー少佐(英♂)
 副長   =ジェレミー・ジョンソン准尉(英♂)
 艦長   =マイケル・ヤンセンス大尉(蘭♂)
 航海長  =ラインホルト・シュレッター中尉(独♂)
 通信士  =モニカ・ルディーン少尉(瑞♀)
 レーダー手=フローラ・ジャコメッリ(伊♀)
 軍医   =ドミニクス・ビューレン(蘭♂)


 地上から、軌道エレベーターを昇るトゥイガー少佐とジョンソン准尉。
 副長も一階級昇進していた。
 到着したのは、建造なったばかりの宇宙ステーション。
 宇宙港にハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式、サラマンダーが停泊している。
 トゥイガー少佐とジョンソン准尉が乗り込んでゆく。
 乗艦管理員のチェックが入る。
「ウォーレス・トゥイガー少佐及びジェレミー・ジョンソン准尉、乗艦許可願います」
 二人、胸に付けていた徽章バッチを外して管理員に渡す。
 管理員は徽章を機械に通して、人物確認と乗艦処理を行い、バッジを返しながら、
「ウォーレス・トゥイガー少佐とジェレミー・ジョンソン准尉、確認しました。乗艦を許可します」
「ありがとう」
「乗員は全員揃っています。すぐそこのエレベーターを上がった所が、艦橋です」
「分かった」
 二人がエレベータ前に着くと、自動的に扉が開く。
 徽章は階級・身分を示すと共に、艦内の主要施設を使用できるキーアイテムともなる。

 艦橋に入る二人。
 一斉に立ち上がって敬礼するオペレーター達。
「出港準備完了しております」
 艦長のマイケル・ヤンセンス大尉(蘭♂)が報告する。
「ご苦労様」
 艦橋の指揮官席に陣取るトゥイガー少佐。
 副長のジョンソン准尉はその脇に立つ。
「随伴艦の艦長お二人から通信が入っております」
 通信士は、モニカ・ルディーン少尉(瑞♀)だ。
「繋いでくれ」
 正面スクリーンに二人の艦長が映りだされる。
「戦艦ビスマルク号、艦長ハーゲン・ネッツァー大尉であります」
「装甲巡洋艦フィルギア号、艦長ジェラール・プルヴェ大尉です」
「新たなる任務だ。よろしく頼む」
「はっ!」

「しかしサラマンダーと言えば、七万隻の艦船を統率した旗艦、銀河随一の名艦中の名艦だったのに……。今は、たった三隻の小隊クラス。寂しいですね」
「ハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式で、こっちに来ているのはこの艦だけだしな。そもそも民間船や民間人ばかりで、軍関係はほとんど来ていない」

 オペレーター達は、指揮官の合図を待っている。
「よし、行こうか!」
 下令と共に動き出す。
「エンジン始動。係留解除」
 ジョンソンが具体的な指令を出し、オペレーター達が復唱する。
「エンジン始動します」
「係留解除」
 艦が少し揺れた。
「よし、微速前進!」
 サラマンダーが動き出し、二隻の随伴艦も追従する。
「コース設定、α34β134ベンチュリー恒星系」
「コース設定しました」
「機関出力最大、全速力へ!」
「機関出力最大!」
「全速力!」
 次第に速力を上げるサラマンダー。
「ワープ設定しました」
「ワープ!」
 異空間へと飛び込む艦隊。


 宇宙空間に現れるサラマンダーと随伴艦。
「目標地点近くに着きました」
「付近に船はいないか?」
「いないようです」
 レーダー手のフローラ・ジャコメッリが答える。
「よし、索敵機を出してみようか」
「手配します」
 副長のジェレミー・ジョンソン准尉が、索敵機の手配のために艦載機発着場へと向かった。
「航海長、この恒星系の星図を出してくれないか」
「分かりました。スクリーンに出します」
 航海長のラインホルト・シュレッター中尉が機器を操作して映像を出した。
 青白く明るく輝く主星と赤色巨星からなる連星(ベンチュリーA・B星)が、中央に表示されており、それらを楕円軌道の焦点となすガス状惑星が公転している。
 三重連星以上の恒星系には、軌道が安定できないために惑星は存在できないとされている。なので惑星探査の候補から三重連星以上は外されている。

 その惑星を回る衛星の資源調査を行っていた探査艇が、不審な船を見かけたというのだが……。
「本艦を衛星方向に回してくれ」
「了解。周連星惑星ベンチュリーABbに向かいます」
 周連星惑星とは、連星をなす恒星Aと恒星Bの周りを回る惑星。恒星名A+Bに小文字bと付属名を付けるのが慣例である。多数ある場合はABcなどとなる。

 衛星に到着した。
「先に来ていた調査隊がどうなっているか調べる必要がある。上陸舟艇を出してくれ」
 数時間後、調査隊の活動拠点となっていた基地付近に宇宙服を着て降り立つ。
 随行員として少佐の他は、副長そしてドミニクス・ビューレン軍医である。
 その目に映ったのは、完全に破壊された基地だった。
「酷い有様ですね」
「ああ、どっちの国家勢力がやったのか?」
「問答無用に攻撃されてますから、滅亡都市国家と敵対する方でしょうね」
「ともかく生存者がいないか探してみよう」
 少佐の指示で、基地内を捜索する。
「少佐、この人生きています! 早急の手当てが必要です」
 軍医が早速生存者を見つけた。
 艀をもう一隻呼び寄せて、軍医と共に帰還させて、副長と一緒に捜索を続ける。
 乗ってきた艀を使うと、万が一の時の退避手段がなくなるからである。敵の存在がある以上、当然の措置であろう。
「よし、もう少し探ってみよう」
 敵に関わる何かが落ちていないかと、辺りをさらに詳しく探し始める。
 しばらく歩き回っていると、不発弾と思われるミサイル弾が地面に突き刺さるように埋没していた。
「敵の兵器か……。科学力の水準を見極めることができる」
 工兵隊を呼んでミサイル弾を回収する。

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11
銀河戦記/脈動編 第三章・第三勢力 Ⅱ
2021.11.13

第三章・第三勢力





 イオリスの胞子殲滅作戦が終了して、大気や海の温度が下がるの待って、地上の開拓が始まった。
 大型輸送船が降り立ち、開発は順調に進んでいく。
 空港、港湾、放送センター、議事堂そして居住センターなどの主要施設が次々と建てられてゆく。
 一通りの施設が揃ったところで、人々は地上に降りてきて暮らし始めた。

 国家の運営には、国民の代表となる評議員が必要である。
 移民船内にいるときに前もって選挙で選ばれていた評議員によって、第一回の議会が議事堂で開催された。
 主要議題は、
1、街造りと植林計画について。
1、農業・牧畜・漁業殖産計画(魚類放流含む)について。
1、鉱物資源の探査について。
1、今後の探索計画について。
1、二つの国家勢力への対応について。
1、対抗するための戦艦建造と艦隊編成について。
1、士官学校の建設と士官育成計画について。
 などである。

 そして特別議案として、アレックス・ランドール提督の彫像を議事堂前に立てることが動議され可決された。
 銀河統一の功労者であり、マゼラン銀河開拓移民を提唱したアレックス・ランドール提督。共和国同盟最高指導者であり、銀河帝国皇太子だった英雄。
 ところが、マゼラン銀河へ移動中にランドール提督が乗船していた一隻の輸送船が遭難、行方不明となり音信不通になってしまったのだ。

「謎の好戦的な国家があるというのに、ランドール提督不在なのは痛いな」
「それを言っちゃだめだ。いないものはしようがないので育てていけばいいんだよ」
「ゴードン・オニール少将やガデラ・カインズ少将を本国から呼び寄せては?」
「ランドール提督の誘いを断って天の川銀河に残ったんだから無理じゃない? 彼らには向こうでの仕事があるようですから」
「有能な将軍が皆こちらに来たら、あちらだって困りますよ。軍は弱体化して、またぞろ反乱分子が動き出します」
「ま、そういうことだな。こちらのことはこちらのみで解決するしかない」
「艦隊の増強と将兵の鍛錬が必要だな」
「現在のところ、最高官位はメレディス少佐です」
「高級士官が、給与と年金を捨ててまで、未開な地に来る気にはなれないだろうさ」
「ランドール提督は、出自はともかく人格形成の大切な時期を孤児として過ごしていましたからね、国家とかには未練もなかったのでしょう」
「少佐か……。しようがない、役不足かもしれないが、彼を最高司令官にしよう。一応、中佐に昇進させておくか」

 事情はともかくも、イオリス軍の最高司令官に任命されて、新築なった軍司令部庁舎のオフィスに陣取ったアントニー・メレディス中佐。
 副官のセリーナ・トレイラー中尉が報告書を運んできた。
「造船所がまもなく完成するそうです」

「移民関連の船舶と戦闘艦を半々の割合で建造する予定となっております」
「半々か……。好戦国の存在がなければ一割程度で済んだのだろうな」
「好戦国といいましても、まだ誰も出会っていないんですよね。確か軌道衛星砲から推測されただけで、両国とも既に滅亡しているということもあります」

『中佐殿、トゥイガー大尉が来られました』
 控室の秘書官が来訪者を伝えてきた。
「おお、通してくれ」
 扉が開いてトゥイガー大尉が入ってくる。
「トゥイガー大尉、入ります」
「おお、忙しいところ悪いな」
「いえ。構いません」
「早速だが、指令を与える」
 姿勢を正して指令を受けるトゥイガー大尉。
「α34β134にあるベンチュリー恒星系で不審な船を見かけたという報告が上がってきたのだが、その後調査隊との連絡が途絶えた
「不審船ですか?」
「見失ったそうだがな……」
「つまり、その不審船を見かけた星域の調査ですね?」
「その通りだ。頼めるか?」
「大丈夫です。やらせて下さい」
「分かった。なら、サラマンダーを使ってくれ」
「サラマンダー!」
「ああ、戦闘になるかも知れないし、今まともに動かせる戦艦はサラマンダーだけだ」
「分かりました。サラマンダーをお借りします」
「それから戦艦を指揮するには大尉では士気に関わるからな」
 と任官状を差し出した。
「少佐に昇進だ。これを機に益々精進してくれ」
「ありがとうございます」
 任官状を受け取り、敬礼するトゥイガー少佐だった。

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11
銀河戦記/脈動編 第三章・第三勢力 Ⅰ
2021.11.06

第三章・第三勢力




 調査班からの報告を受けて、滅亡惑星は『イオリス』と名付けられた。
「イオリスを調査した班の報告では、このマゼラン銀河には敵対する二つの国家勢力が存在することが判明した。我々は、第三勢力としてその中に分け入るということになる」
「その勢力って、地球人類なのでしょうか?」
「彼の地の住民のDNA分析によると、地球人類のソレと同一性が確認されたので、その可能性は高い」
「我々より遥か以前に、移住してきたというわけでしょうか? 戦争難民的に……」
「それはまだ分からない。彼の地にあった書物、特に歴史書の解読が現在進行中である。おいおい、彼らの歴史もいずれ判明するだろう」


「敵対国家勢力がある以上、我々もその火中の栗を拾うことになりそうだ。今後は、惑星探索も戦艦を同行させる必要がある」


「イオリスを放っておくのはもったいないので、何とかして例の胞子殲滅計画を科学部に依頼する」
「殲滅って……。惑星を丸ごと焼却するしかないのでしょう?」

「胞子の存在しない地下とか水中とかに都市を作るって方法もありますけど」
「イオリスのことを、ここで議論しても詮無い事。科学部に任せることにして、我々は探索計画を進めようじゃないか」
「例の好戦的な勢力と遭遇したらどうしますか? 言語が分からなければ交渉もできないですよね」

「マゼラン銀河の橋頭保である、このニュー・トランターは是が非でも守らなければならない。敵が襲来した時のために、戦艦の造船と守備艦隊の編成が急がれる。また、シャイニング基地のような絶対防衛システムの構築も必要かもしれない」
「それも必要でしょうが、まずは好戦国の人口や軍事力を知る必要があるでしょう」
「当然だ。イオリスの歴史記録を調べれば判明するだろう。胞子殲滅の前にな」


 ニュー・トランターから大型輸送船の一部が回送されてきた。
 イオリスを居住可能な惑星にするための、胞子殲滅作戦が始動する。
 ニュートランターのシアン化水素を除去するよりも短期間で済むだろうと判断されたためだ。
 シャイニング基地と同様のエネルギーシールド発生装置が増築された。
 通常エネルギーシールドは衛星軌道上に発生させるのだが、これを大気圏内で発生させると雷放電のごとく周囲を数万度という高温にすることができる。
 雷撃で胞子を焼き尽くそうという作戦であり、胞子殲滅の後にはシールドを衛星軌道上まで上げて、惑星防衛に当たらせることになる。
 胞子がある間は、人間は地上に降りられないので、シールドタワーは大型輸送船の中で組み立てられて地上に降ろされる。
 無人の作業機械が、降ろされたシールドタワーを、定位置に設置してゆき、それぞれをケーブルで繋いでゆく。
 最後に核融合発電機を乗せた数隻の大型船が降下して、それらのケーブルを接続して準備完了である。

 作業に入ってから三年の月日が流れていた。

 イオリスから遠く離れた場所で、サラマンダー艦橋に置かれたエネルギーシールドの起動スイッチを操作する指揮官メレディス少佐。
 好戦的な国家勢力の存在が知られて以降、各植民星には最低一個小隊二百隻規模の艦隊が配備されることになったのだ。
 イオリスの警護担当となったメレディスには、胞子殲滅作戦の指揮も委ねられていた。
「準備完了です」
 副官のセリーナ・トレイラー少尉が、エネルギーシールドの配備完了を報告した。
「これまで結構時間が掛ったな」
「胞子のせいで人間が立ち入れなくて、遠隔操作ロボットによる作業ですからね。時間が掛るのは当然でしょう」
「胞子が殲滅できれば、シャイニング基地並みの基地を造成することも可能になるな」
 警報装置がカウントダウンを始めた。
『一分前……五十秒前……』
 そして、
『5,4,3,2,1』
「よし、ポチッとな」
 起動ボタンを押すと同時に、正面スクリーンに映るイオリスを見つめた。
 しばらく何の反応も見せないが、発動するまで時間が掛かるようだ。
「胞子殲滅まで何時間掛かるのでしょうか?」
「地上から上空に向かって、スキャンするようにシールドを上げながら焼却するからなあ……。ま、終了すればシステムが報告してくれるから待つだけだ」


 胞子殲滅作戦のために、大気は灼熱となっており地上も焼けて真っ赤に燃えている。
 放熱のために、一旦シールドを解除する。
「後は大気が冷えるのを待つだけですね」
 指揮官席でイオリスを眺めるメレディスの所に、サンドイッチとお茶を乗せたワゴンを運んでくるセリーナ。
「ああ、済まないね」
 サンドイッチを受け取って頬張りながら、
「冷えるには一か月は掛かるかな」
 と推測する。
 実際の所は、大地や海そして大気の比熱によって、冷却時間はそれぞれ違うだろうが、計算が終了するまえに決行日が来てしまったのだ。
「いい加減なんですね」
「敵勢力の存在があるからな。一刻も早く開発を終える必要があるんだ」
「早く終わるといいですね」
 二人静かにイオリスを見つめるのだった。

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