銀河戦記/拍動編 序章
2022.10.29

序章・太陽系を離れて


太陽系外、居住可能とされる惑星一覧(地球に近い順に)
・恒星名(地球からの距離)星座惑星名
・プロキシマ・ケンタウリ(4.2光年)ケンタウルス座b星
・バーナード(6光年)へびつかい座b星(Barnard's star)
・ロス128(11光年)おとめ座b星
・Gj1061(12光年)時計座b~d星
・くじら座タウ(12光年)くじら座f星
・GJ273 ルイテン(12.4光年)こいぬ座b星
・ディーガーデン(12.5光年)牡羊座
(観測史上、最も地球環境に近いと言われている)
b・c 星
・ウォルフ1061(14光年)りゅう座c星
・グリーゼ667C(22光年)さそり座d~f星
TRAPPISTトラピストー1(40光年)みずがめ座1b~1h星
(d~g ハビタブルゾーン)
 *惑星名表記は、恒星系で最初に発見された惑星に『b』(小文字)、さらに見つかった場合は発見順となり、中心から近い順ではない。

 などがある。


 宇宙新世紀初頭。

 国家分断と戦争に明け暮れていた地球人類は、ついに世界統一を果たして地球連邦を設立。戦争に費やしていた国家予算を宇宙開拓に注げるようになった。
 やがて母なる地球を離れて、火星に最初の植民を行い、これをもって西暦を廃止して宇宙歴を制定した。
 ケレスなどの小惑星帯を探索して資源を開発採掘しながら、さらに外側への軌道へと移り、木星衛星カリストに宇宙基地を建設に至っていた。さらなる遠くの惑星に向かう前進基地としてである。
 探査開拓は、海王星以遠の冥王星・エリス・ケレス・マケマケ・ハウメアなどの準惑星に到達した。

 さらに数百年後、超光速航行法と高速宇宙船の開発に成功、太陽系を脱出した人類は、へびつかい座方向に約6光年離れたバーナード星 b惑星(Barnard's star)に到達した。その内側軌道に居住可能なc星が発見されて『バルマー』と名付けられ開発が始まり、首都星としての位置づけを与えられた。
 その3年後には、太陽より約4.2光年にあるケンタウルス座 α星系の惑星プロキシマ・ケンタウリbに到達した。
 両惑星に向かっては、同時期に移民船が出発したのだが、航路上の障害に遮られたケンタウルスへの行き足が遅れて、バーナード星側に一足先を越されてしまった。
 環境的にはハビタブルゾーンにあったケンタウリの発展は順調に進み、いち早く惑星国家としての位置を獲得した。
 その後宇宙航行術も開発が進み、ロス128b星、グリーゼ832 b星、エリダヌス座 ε星、TRAPPISTー1 d星など40光年以内の惑星に人類は進出して、それぞれ惑星国家として発展した。

 開拓時代は、それぞれの惑星の発展に力が注がれたが、開発が終わって一段落すると、近隣惑星との間には『隣の芝生は青い』という感情が生まれてくる。
 やがて起こるべくして起こったのが惑星間戦争である。
 その中でも、軍事的優位にあったのが帝政を敷いていた惑星ケンタウリ国家。
 瞬く間に諸惑星を平定し、母なる地球を含む太陽系連合王国も属国とするに至ったのだ。

 さらに、隣国のバーナード星系連邦を勢力下に置いたのを皮切りに、ティーガーデン惑星国家(12光年~太陽)、ウォルフ惑星国家(14光年)、グリーゼ諸国連邦(22光年)、と次々と支配下に置いていった。
 次なる目標は、トラピスト星系連合王国だったが、四十光年という遠距離にあり、補給の問題から攻略に苦慮していた。

 帝王アウゼノンの執政は厳しいものであり、惑星住民たちは重税や刑罰などの圧政に苦しんだ。
 そんな民衆の解放に立ち上がったのが、ネルソン提督率いる反乱軍であった。トラピスト連合王国を後援者(パトロン)として、帝国領内を荒らしまわっていた。


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11
銀河戦記/拍動編
2022.10.27

銀河戦記/拍動編

序章
第一章 
第二章 
第三章 
第四章 
第五章 
第六章 
終章 エピローグ



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銀河戦記/脈動編 最終章・和解の地にて Ⅲ(完)
2022.10.22

最終章・和解の地にて





「これを見て頂けますか」
 トゥイストーは、くるりと背を向けて計器を操作しはじめた。
「機器が動くのですか?」
「はい。いわゆる動態保存というやつでね、こんなこともあろうかと、整備をしていたのですよ」
 静かな船内に、機器を操作する音が響く。
 薄暗い中、モニターが明るく輝いて、映し出された人物があった。
 その人物を見て驚くトゥイガー達イオリスの四人。
「ランドール提督!」
 天の川銀河において、トリスタニア共和国同盟最高司令官であり、銀河帝国皇太子にして宇宙艦隊司令長官。
 三百年以上続いたバーナード星系連邦との戦争を終了させ、銀河の統一に導いた英雄である。
 モニターを一旦止めてから、トゥイストーは語る。
「この移民船をこのまま朽ちさせるのはもったいない。コンピューターは子孫の教育などに役立つし、いつかまた飛び立つかも知れないということで、常時修理整備して動態保存していたのです。そんなある日、コンピューターが自動起動して、このモニターが映し出されたのです。どうやら映像の主は、一万年経過後に自動起動するようにシステムを組んでいたようです」
「なるほど、先読みの鋭いランドール提督らしいですね」
 モニターの英雄が語り掛ける。
『私は、アレックス・ランドールである。私はすでにこの世にはいない。おそらく一万年後の世界で、どのようなことが起こっているかは知るすべもない』
 ランドール提督の素顔は、トゥイガー達は見知っているが、他の三民族は初見である。歴史上の人物で、アルデノン共和国を建国した人物であることしか知らない。
「あらためて確認しましょう。この方は、我々をこの銀河に誘(いざな)ったアレックス・ランドール提督です。そしてそれは、あなた方の指導者でもあったようです」
 言語学者のクリスティン・ラザフォードが確認する。
「この方が、英雄ランドールですか……」
 ヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐が呟くように言った。自国の英雄として文書記録には残っている人物であるのだが、一万年前のこととて写真データなどは風化消滅していた。
 系統的に繋がるミュータント族も植人種も同様の思いであったろう。
 話は続いている。
『一万年後の世界が、平和なのか戦乱に荒れ狂っているのか想像だにできない。最悪人類は滅んでいるのかも知れない。願わくばすべての民族が共存共栄していることを望む……』

 映像が終わった。

 三つに分裂して長年戦いあった国家間を一つにまとめあげた英雄だけが醸し出す雰囲気が漂っていた。
 映像ながらもこの場にいる人々に連なる英雄の登場で、連帯感のような感情が沸き上がるのを感じているようだった。
 しばらく無言のまま見つめっていた。

 突然、トゥイガーの携帯無線が鳴った。
 サラマンダーからの緊急連絡のようだった。
「ちょっと失礼します」
 と言って、携帯を取った。
「どうした?」
『未確認の艦隊が接近しています』
 その声に、ケルヒェンシュタイナーが応えた。
「私の味方艦隊のようです。救援に来てくれたようです」
「そのようですね」
「一旦艦に戻って、艦隊と連絡を取りましょう。戦いは避けたいですからね」

 一旦解散して、それぞれの艦に戻る一行。

 ケルヒェンシュタイナーは、旗艦ヴァッペン・フォン・ハンブルグに戻り、壊れていない無線で救援部隊に連絡を入れて、停戦指示を出した。
 ドミトリー・シェコチヒンも、軽巡洋艦スヴェトラーナから衛星軌道を周回している艦隊に待機命令を。

 そして、トゥイガーはサラマンダーから、万が一の場合に備えることにした。
「アルビオン艦隊より入電しました」
 通信士のフローラ・ジャコメッリ少尉が伝える。
「繋いでくれ」
「繋ぎます」
 通信用モニターに、ケルヒェンシュタイナーが映る。
『今、救援艦にいる。事情はすべて了解してもらった。安心してくれ、戦いはない』
「それは結構ですね」
『我々は、一旦本国に戻って和平交渉を上層部に進言することにするよ」
「よろしくお願いいたします」

 続いてドミトリー・シェコチヒンから連絡が入る。
『我々も救援艦を要請した。到着を待つことにする』
「分かった」

 こうして、それぞれの本国に戻った彼らの精進努力によって、数年後に和平交渉が始まった。
 いずれマゼラン銀河にも平和が訪れるだろう。


 完



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11
銀河戦記/脈動編 最終章・和解の地にて Ⅱ
2022.10.15

最終章・和解の地にて





 開拓移民船。

 それは、ここに集ったすべての人々の寄る辺となっていた船。

「遥か一万年前に、天の川銀河からこの地へと渡ってきた船です」
 族長トゥイストーが、横たわる船を指さしながら皆に伝えた。
「それは真か?」
 ドミトリーが驚きの声を上げた。
 一万年前のある日、かつてのミュータント族が、アルデノン共和国にただ一隻あった開拓移民船を略奪して、宇宙へと飛び出した船でもあるからである。
「調べてみます」
 技術主任のジェフリー・カニンガム中尉が、船に駆け寄って船体を調べ始めた。
 こびり付いている植物の蔦を掻いて地肌を露出させて、船体に刻まれているはずの機体番号を読み取ろうとしていた。
 それは多少擦れてはいたが、何とか読み取れたようだ。
「この開拓移民船は、ランドール提督が乗船していた船に間違いありません」
 その声は、感動に震えていた。
「そうか……」
 トゥイガー、ケルヒェンシュタイナー、ドミトリー、それぞれ何か言いたげだが言葉が出ないという表情をしている。

「中へ案内しましょう」
 トゥイストーが搭乗口を開けて、船内へと導いた。
 移民船の中には、一行にとって馴染みのある見慣れた機器が並んでいる。
 たどり着いた場所は、船を操作する制御盤の並んだ船橋であった。
「まあ、適当な椅子に座ってくだされ」
 言われたとおりに、それぞれ着席する。
「まずは、私どもについて話しましょうか。植人種となったいきさつをね」
 そう言うと、訥々(とつとつ)と話し始めた。

 かつて、アルデノン共和国の移民船を分捕り、宇宙へと脱出したミュータント族がたどり着いたのが、生存に可能な水と空気のある環境を備えた居住惑星、後にサンクト・ピーテルブールフと命名されることとなる惑星でした。
 首領ドミトリー・シェコチヒンの指導のもと、開発と人口殖産が進められ、やがて再び宇宙へと進出することが可能となりました。
 新造の移民船が多方面の宇宙へと進出してゆき、記念となるべきこの移民船も駆り出されることとなったのです。
 そして、この地を訪れることとなったのですが……。
「冬虫夏草の巣窟だったということですね?」
 生物学者のコレット・ゴベールが口を挟んだ。
「その通り」
「ちょっと質問よろしいですか?」
 今度は言語学者のクリスティン・ラザフォードが質問する。
「何かね?」
「その冬虫夏草にしろ海の魚にしろ、生命の誕生には神がかりな確率だと思うのですが」
「移民船は、航行中に定期的にゴミを排出するからね。一万年前に、惑星アルビオンにたどり着く途中で排出したゴミがこの惑星に落下して、そこに付着していた生物から新たな生命が発生したと考えられる」
「それは十分考えられますね」
 コレットが頷く。

 何もしらない人々は、開拓精神に燃えながら植林や耕作を始めたのだが、一人また一人と病に臥していきました。
 冬虫夏草に体内を寄生されてしまったのです。
「宇宙に脱出することはできなかったのですか?」
「最初は風邪のような病気だと軽く考えていましたからね。気が付いた時には、誰も動けなくなっていました。船を動かせる者が全員倒れてしまったのです」
「それでは仕方がありませんね」
 話は続く。
 最後に一人だけ生き残ったのは生物学者でしたが、甲斐もなく発症の前兆を見せていました。
 絶望した彼は、自殺装置を作って実行したものの、シダ植物は必至の抵抗を見せて遺伝子の一部を預けて同体化してしまったのです。
 目を覚ました彼は、動物体と植物体が共生する植人種となったことに気が付きました。
「なるほど、元々は我々と同族だったというわけか……。実に興味津々な出来事だったのだな」
 ドミトリーが納得したように感心している。
 ミュータント族と植人種の関係が明らかにされたが、他の人々もそれぞれ繋がりがあることも明らかにされた。


 ランドール提督の乗っていた開拓移民船がすべての民族を繋いでいた。



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11
銀河戦記/脈動編 最終章・和解の地にて Ⅰ
2022.10.08

最終章・和解の地にて





 惑星アグルイス地上に墜落したアルビオン軍旗艦ヴァッペン・フォン・ハンブルグ。
 艦内では、艦の修復や気密性のチェックが行われていた。
「しようがないとはいえ、とんでもない所に降りてしまったな」
 司令官のヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐が恨めしそうに呟く。
「いつまで持ちますかね。救助隊が来る前に食料が尽きて死ぬか、損傷が広がって胞子が侵入して死ぬか、どちらになるか」
「救助信号は打ち上げているんだ、必ず救援に来てくれるさ。友軍かもしくは……」
「イオリス共和国ですか?」
「そうだ。彼らなら助けてくれるかも知れない」
 これまでの対談などから、平和的な国家であることは承知していた。
「そんなことより、奴らがさらに集まってきていますよ」
 指さすモニターには、ぞろぞろと集まってくる植人種達が映っていた。
 その中から一人が前に進み出た。
「何か言いたそうな顔していますね」
「外部マイクスピーカーのスイッチを入れてくれ」
 オペレーターが機器を操作すると、外の植人種の声が届いてきた。
『自分は、族長のトゥイストーである。そなたらの所属を教えてくれ』
「私は、アルビオン共和国軍大佐ヴィルマー・ケルヒェンシュタイナーだ」
『そうか、アルビオンか……』
 と言って上を仰ぐトゥイストー。
『どうやら別の来訪者がやってきたようだ』
 その声に、
「モニターを上空に切り替えてくれ」
 指示を出すケルヒェンシュタイナー。
 画面が切り替わり、上空の映像に切り替わった。
 上空の一点から黒い影が舞い降りてくる。
 どうやらイオリスの上陸用舟艇のようだ。
「助けに来たのでしょうか?」
「それは有り難いが、まずいことになるぞ」
「胞子のことを知らせなくてはいけませんね」
「そうだな。連絡を入れてくれ」
「分かりました。共倒れになっては助けて貰えません」
 通信士が通信を繋ぐ。
 モニターにトゥイガー少佐が映し出される。
『トゥイガー少佐です。救難信号を受け取りました。これから助けます』
「ちょっと待ってください。ここの惑星の大気には、人を死に至らしめる物質が漂っているのです」
 副官のゲーアノート・ノメンゼン中尉が警告する。
『ご警告ありがとうございます。しかし心配は無用です、我々には十分な対策が用意してありますから』
 トゥイガー少佐は、惑星降下前に大気組成の下調べを充分に行っており、この惑星が開発前のイオリスの大気に似通っていることを確認していた。
 冬虫夏草の殺人胞子が蔓延していることも承知していた。
 しかしながら、イオリスの科学部は胞子に対する特効薬の開発を終えていた。
 発症状況に応じて四段階の対処法がある。
1、感染初期における胞子の発芽を抑制する薬。
2、発芽後の根の成長を抑制する薬。
3、根を張り始めた後には、人体無害の除草剤の開発。
4、最後の手段は、中性子線照射機による体内根茎の滅却。
  (三大肥料であるリン・窒素・カリウムなどの放射性同位体を注射して、植物が取り込んだ箇所を中性子照射で限局的に核反応を起こして組織を破壊する)

 上陸用舟艇は、ハンブルグの隣に降り立った。
 同様にして食人種がそちらにも集まってくる。

「イオリス艇より入電しました」
「繋いでくれ」
「繋ぎます」
 モニターにトゥイガー少佐が出る。
『とりあえず状況確認のために降りてきました。本格的な救出活動はこれからです』
「申し訳ない」
『ところで、取り囲んでいる生命体はご存じですか?』
「ああ、我々は植人種と呼んでいるが、動物体と植物体が相利共生している生命体のようだ」
『なるほど、そうみたいですね』
「おっと、彼らからお呼びが掛ったよ。宇宙服を着て着いてきてくれだそうだ」
『分かりました。二十分後に外で落ち合いましょう』
「了解した」


 二十分後、生物学者のコレット・ゴベール、言語学者のクリスティン・ラザフォード,
技術主任のジェフリー・カニンガム中尉を同行させて地上に降り立ったトゥイガー少佐だった。
 一方のヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐の方も、副官のゲーアノート・ノメンゼン中尉と通信士のヴィルヘルミーネ・ショイブレ少尉を連れてきていた。
 ミュータント族の方も呼ばれてきていた。族長ドミトリー・シェコチヒンと瞬間移動のエヴゲニー・ドラガノフ、遠隔視のニーナ・ペトリーシェヴァである。
 そして一同の前に立つのは、この惑星アグルイスの主ともいうべき族長トゥイストーである。
「惑星アグルイスへようこそ。皆さんにお見せしたいものがあります。着いてきてください」
 と言うと、先に立って歩きだした。
 植人種の族長トゥイストーに導かれて、奥深い森へと進んでゆく。

 森を抜けて開けた場所に出ると、眩いばかりに輝く大海原と砂浜が広がっていた。
「あれをご覧ください」
 とトゥイストーが指さした先には、緑色の植物に覆われた小高い山のようになっている物体があった。
 その所々から黒光りする金属製の地肌が覗いて見えていた。
「あれは?」
 誰ともなく質問する。
「我々の祖先がこの地にやってきた乗り物。開拓移民船です」

 開拓移民船!

 その言葉を聞いて、一様に驚く一行だった。

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