銀河戦記/脈動編 第六章・会敵 Ⅳ
2022.02.26

第六章・会敵





 時間を少し遡る。
 ここはミュータント族の前進基地クラスノダール。
 基地司令官イヴァン・ソルヤノフは、副官のニコライ・クニャーゼフから今朝の報告を聞いているところである。
「隣接する散開星雲で、怪しげな交信が頻繁に行われています。調査に向かった船との連絡が途絶えました」
「銀河人の奴らか?」
「銀河人のいた星は我々の冬虫夏草爆弾で壊滅させたはずです。それに電波の種類も銀河人とは異なっています」
「ではどこの種族か?」
「もしかしたら……」
「なんだ?」
「伝承にある天の川人ではないでしょうか?」
「天の川人だと?」
「一万年の彼方の次元の狭間から現れ、災いをなすという話ですが……」
「そうか……我々の祖先が誕生してから、一万年も経ったのか」
「ですね」
「どちらにしても、災いを成すというならば排除するだけだ」

 一万年も経てば歴史の事実も忘れ去られ、全く異なった伝承として受け継がれてゆくこともある。時の政権によって、自己・自国の都合の良いように改竄させられることも。
 次元の狭間を通って一万年前の過去にやってきたのは自分達だという事実は消え去っているようだ。

「念のために、索敵を出すか」
「フョードル・グヴォズダリョフにやってもらいましょう」
「そうだな。イヴァン・マトヴィエンコのヴォストーク号の修理は終わっていないしな」


 戦列艦サラートフ号と従属の二隻、コンスタンチン号・スヴァトーイ号を引き連れて出発するグヴォズダリョフ。
「隣の星域から、未確認の種族が我々の星域へと向かっているらしい。それを撃退する任務を与えられた」
「聞いていますよ。天の川人だとか、どんな種族なのでしょうか?」
「分からんな。銀河人相手でも面倒なのに、新たな敵は手っ取り早く片付けるに限る」
「コース設定完了しました」
「出発する!」
 ゆっくりと動き出す三隻の艦艇。


 やがて色鮮やかな星雲に到達する。
「七色星雲というところだな」
「ここから先は、敵の勢力圏かと思われます。慎重な行動をお願いします」
 扉が開いて車椅子に乗った女性が入室してくる。
「未確認船が近づいています」
「ふむ。サーシャ見えるのか?」
 グヴォズダリョフが声を掛けたアリクサーンドラ・メリキヤナ(愛称サーシャ)は視覚障碍者で虚弱体質である。
 目は見えないが、その感覚を補完するように遠隔透視の能力を有している。
「右舷二十度、七十光秒に接近する移動物体があります」
「分かった。面舵二十度転進せよ! 全速前進」
「面舵二十度転進!」
「全速前進!」
 操舵手と機関長が復唱する。

 数時間後、会敵する。
「敵艦発見!」
「やはりいたか。戦闘配備だ!」
 艦内を自分の部署へと駆け回る乗員達。
「第一主砲配置に着きました」
「弾薬庫、準備よし!」
 次々と戦闘配備の報告が上がってくる。
「全艦、戦闘配備完了しました」
 副長が報告する。
「敵艦、回頭してこちらに向かって来ます」
「こちらに気づいたか。よし、どれほどのものか見てみようか」
「全速前進せよ!」
 副官の下令に続いて、速度を上げて近づいてゆくグヴォズダリョフ艦。
「無線に感あり、全周波で交信を試みているようです」
 通信士が報告する。
「こちらからも返信をしてみますか?」
「必要ない。どうせ言葉も分からんのだ。我々の前に立ちはだかる者はすべて敵だ」
「主砲の射程内に入りました!」
「撃て!」
 砲弾が敵艦に一直線に向かう。
「着弾します」
 激しい閃光が前方に広がる。
「やったか?」
 目を凝らす乗員。

 粉々になった艦が浮遊しているはずだった。

 しかし目に映ったのは、悠然と前進してくる敵艦だった。
「馬鹿な! 外れたというのか?」
「敵艦、反撃態勢に入ったもようです」
「攻撃を続行する。面舵二十度!」
 艦の舷側を敵艦に向けて、後部砲塔をも射撃可能にさせるためだ。
 古来より使われていた砲撃戦で迎え撃つ体勢に入った。
 艦砲を舷側に揃えた戦列艦においては、当然の戦い方である。
「敵艦、真っ直ぐ向かって来ます」
「愚かな。砲撃の的になるつもりか?」
「あ、あれは何でしょう?」
 指さす敵艦が怪しく発光していた。
 次の瞬間だった。
 艦が激しく震動して、投げ出される乗員が続出した。
「な、なんだ? どうした?」
「攻撃されました!」
「損害報告しろ!」
 立ち上がる乗員達。
 やがて各所から報告が上がってくる。
「エンジン部に被弾、機関出力七割低下、機動レベルを確保できません……」
「コンスタンチン号撃沈、スヴァトーイ号中破なるも航行は可能」
 意気消沈の艦橋員達だった。
「たった一発で……」
「相手方は、引き続き交信を求めているようです」
「今更交渉もないだろう……。捕虜になって蔑(さげす)まれるよりも、最後まで戦ってミュー族の誇りを見せるのみだ! 全砲門、全弾撃ち尽くせ!」
 ありったけの弾薬を討ちまくる艦艇。
 やがて、視界が真っ白になってゆく。

 ミュータント族艦隊は全滅した。



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銀河戦記/脈動編 第六章・会敵 Ⅲ
2022.02.19

第六章・会敵





 司令官=ウォーレス・トゥイガー少佐
 副官 =ジェレミー・ジョンソン准尉
 艦長 =マイケル・ヤンセンス大尉(蘭♂)
 通信士=モニカ・ルディーン少尉(瑞♀)
 レーダー手=フロランス・ジャッカン少尉(仏♀)
 技術主任=ジェフリー・カニンガム中尉(英♂)
 言語学者=クリスティン・ラザフォード(英♀)


 模擬戦闘も終わって、新たなる任務がトゥイガー少佐に与えられた。
 命令を伝えるメレディス中佐。
「模擬戦闘はご苦労様でした」
「いえ、訓練は必要ですからね」
「さて、君にはタランチュラ星雲の隣にある、散開星団に向かう探索隊の護衛任務を与える」
「居住可能な惑星が見つかったのですか?」
「そういうことだ、行って目で確認しなければ実情は分からない。ともかく制宙権を確保していない、この星雲の外に出るには護衛が必要だ」
「例の好戦国ですか?」
「そうだ。以前、君が遭遇した相手と出くわす可能性がある。サラマンダーを使ってくれ」
「本国の防衛に支障がでませんか?」
「大丈夫だ。先の戦闘で得られた不審船の残骸から、交戦国の技術力はまだ我々よりかなり低いらしい」
「分かりました。探索隊の護衛任務に就きます」
「よろしく頼む」


 数日後、探索隊と共に出発するトゥイガー少佐率いる護衛艦隊。
 戦艦ビスマルク号と装甲巡洋艦フィルギア号も随伴している。
「少佐殿、今回もご同伴よろしくお願いします」
「またご一緒できて光栄です」
 艦長ハーゲン・ネッツァー大尉と艦長ジェラール・プルヴェ大尉が挨拶を交わす。
「恒星VFTS682が見えてきました」
「この辺りは、何でこうも極超巨星ばっかりなんだろうな」
「星が生まれる星域ですから」
「ともかく迂回しろ!」
「了解」
 ウォルフ・ライエ星であるVFTS682は、表面の温度が50000度!(太陽は6000度)、質量は太陽の150倍! 明るさは太陽のなんと300万倍!という、まさにスーパースター。こういう“スーパースター”はふつう、星の集団の中で生れるものだが、この星はなぜか、まわりに星が無く孤立している。
 近くにある星団R136から、なんらかのメカニズムでVFTS682が飛び出してきたというもの。例えば連星系を成していた片側が超新星爆発を起こして弾き飛ばされたとかが考えられる。浮遊惑星は数多く存在するが、恒星しかも超重質量の浮遊恒星は珍しい。
「恒星の重力圏を出ました」
「コース設定、アルファオメガ(αω)散開星団へ」
 その星団は、タランチュラ星雲の濃いガスの向こう側、天の川銀河からは見透かすことのできない領域に広がっている。
 イオリスの天文家が、当地に来て発見して命名したものである。
「よし、ワープしろ!」
「了解」

 αω散開星団近くまでやってきたトゥイガー少佐率いる探索隊。
 目の前には、鮮やかな色彩の星間ガスを伴った星々が輝いている。
 目的の恒星系に入った時だった、
「前方に感あり! 未確認艦三隻が真っ直ぐこちらに向かって来ます!」
 レーダー手のフロランス・ジャッカン少尉が叫ぶ。
「警報鳴らせ! 戦闘配備、探索艇は待機せよ」
 艦橋内に緊張が走る。
「モニカ、全周波で交信してみろ」
「了解しました」
 通信士のモニカ・ルディーン少尉が相手艦に対して友好信号を打電する。
 滅亡都市だったイオリスの先住民の通信記録を解読して、救助信号や友好信号などの基本を理解できていた。
「相手からの応答ありません」
「攻撃兵器の射撃統制装置らしき反応、ロックオンされました!」
 相手は有無を言わさずの攻撃態勢に入っているようだった。
「どうやら、例の好戦国のようだな」
「防空識別圏に入り込んでしまったのでしょうか?」
「そうかもな」
「戦闘配備、完了しました」
「相手からの応答はないか?」
「ありません。交信は届いていると思うのですが、沈黙を貫いています」
「イオリスの先住民とは言語体系が違っていて、通信内容が理解できないという場合もあります。行動は慎重に」
 言語学者のクリスティン・ラザフォードが注意する。
「とは言っても、撃ってくれば話は別だがな」
 前回、警告なしで戦闘を仕掛けてきた連中である可能性が大である。
「カニンガム中尉、相手の戦力分析を記録しておいてくれ」
 技術主任のジェフリー・カニンガム中尉に指示する。
「了解しました」

「まもなく射程内に入ります」
 副官のジェレミー・ジョンソン准尉が促す。
「相手が撃ってくるまでは、こちらからは何もするなよ」
「と言っているそばから撃ってきました」
「やはり話し合う気がまったくないということか……」
「迎撃せよ!」
 艦長のマイケル・ヤンセンス大尉の下令と共に、反撃を開始するトゥイガー艦隊。



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銀河戦記/脈動編 第六章・会敵 Ⅱ
2022.02.12

第六章・会敵





 双方の艦隊が遭遇するのは、中間地点にあるR135a2星であった。
 一歩先にたどり着いたのは、トゥイガー少佐の艦隊だった。
「恒星に近づきすぎないように、二千デリミタが限界だ」
「了解」
 太陽系冥王星の軌道が四十デリミタであるから、かなり離れていると思われるが、これで十分危険地帯なのである。恒星からの強烈なエネルギーから艦体温度を何とか保っていられる距離となっている。
「重力加速度計に反応!」
「敵艦隊発見!」
 恒星から強烈な紫外線が飛んでくるので、通常の電磁波によるレーダーは役に立たない。無論肉眼視なども不可能だ。
「敵は単縦陣で突き進んできます」
「よし、両翼に展開して、包囲陣を敷け!」

 一方のメレディス中佐の艦隊も気づいていた。
「敵艦隊は、両翼に展開して包囲陣を敷くつもりです」
「想定通りだな。作戦通りに二列縦隊に組みなおしながら突進せよ!」
 単縦陣を敷いていた艦隊が二つに割れるようにして二列縦隊へと組み替えながら突進する。
 地球古代史に残る『トラファルガーの海戦』で、ホレーショ・ネルソン提督がフランス・スペイン連合艦隊を打ち破った作戦、ネルソン・タッチ戦法に近い。その名前からネルソンが考案したと勘違いするが、それ以前から行われていた。
「信号手、光信号で各艦に打電せよ。『各員がその義務を尽くすことを期待する』だ!」

 当然前方にいる艦は集中砲火を浴びることになるが、中央を突き崩しさえすれば、敵艦の横っ腹を狙い撃ちできて形勢逆転できる。
 ほとんど一か八かの戦法であり、砲撃手の熟練度が物を言う。

「残弾数は気にするな! 撃って撃って撃ちまくれ!」
 突然、激しく震動する艦橋。
 模擬弾が当たれば、システムが当たり判定を行って、被害想定を弾き出して艦への影響をシュミレーションする。
「機関室に被弾、火災発生!」
「直ちに消火班を急行させろ!」
 艦内通路を消火器などを持った隊員が駆け回る。
 被害想定区域の機関室では、火災を想定した3DCGホログラムが映し出され、炎上する機関室を再現していた。
「消火急げ!」
 到着した消火班が、消火剤を放出する格好をする。そのホースの先からレーザーポインタが出ており、効果ポイントに当てられればCG炎は鎮火していく。
「機関室、消火完了!」
 隊長が艦橋に報告する。
「了解。消火班は弾薬庫へ移動せよ」
「弾薬庫へ移動します」
 消火班が弾薬庫にたどり着いたとき、隔壁扉は固く閉じられていた。
「弾薬庫暴発しました! 消火不能です!」
「仕方あるまい。指揮権を副司令のオリヴァー・フレッカー少佐に委ねる。総員退艦せよ!」
『当艦は撃沈されました。戦線を離脱します』
 コンピューターが自動操船して、ゆっくり離れてゆく。
 退艦は手続き上だけで実際には行われない。乗員が救命艇に乗り込むまでで終了する。シールドの脆弱な小型艇では、恒星風に耐えられないからである。


「指揮権を引き継ぐ! 全速前進、進路そのまま!」
 後方に続いていたオリヴァー・フレッカー少佐が下令する。
 前方にいた艦がいなくなったので、今度はこちらが集中砲を受けることになる。
 何とか切り抜けて、敵陣の中央を切り崩す。
「中央突破に成功しました!」
「よおし、後背に回り込め!」
 右側に進んでいた列の艦隊は右転回し、左列は左展開して、立場を逆転して包囲陣を敷いた。
「今度はこちらの番だ! 全艦砲撃開始!」
 それまでの鬱憤(うっぷん)をはらすような猛烈な攻撃を開始するメレディス艦隊。


「中央を突破されました! 展開しつつ後背に回り込もうとしています」
「敵艦に向けて回頭せよ!」
 中央突破はされても、戦況が不利になったのではない。
 双方が向き合って、激しい砲撃戦となっていた。


 模擬戦闘終了の時刻となり、戦闘終了を知らせる発光信号が打ち上げられる。
「終了だ。全艦、戦闘停止せよ!」
 双方ともが戦闘を停止して、基地へと帰還の途についた。
 すぐさま士官達が集まって、戦闘講評会が行われる。
 戦果は、メレディス艦隊が撃沈五隻・大破七隻・中破二隻他、トゥイガー艦隊は撃沈六隻・大破五隻・中破三隻他。
 双方の損害を計算して、ほぼ互角という判断が下された。
「お疲れさまでした」
 一同が労いの言葉を投げかけ講評会は終了した。



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銀河戦記/脈動編 第六章・会敵 Ⅰ
2022.02.05

第六章・会敵






 イオリスの民は、天の川銀河から最も近いタランチュラ星雲の領域内の惑星開発を完了して勢力圏に収めることに成功していた。
 星雲内部には、1立法cmあたり100個から1万個の分子が存在すると考えられる超高濃度真空となっている。地球上の海抜0mの大気が、1立法cmあたり25x10の18累乗個の分子が存在することを考えれば、希薄すぎるといえるかもしれない。それでも何光年も離れた遠くから見れば、電離した水素イオンなどが背景にある青色巨星の光を受けて色鮮やかに輝いて見えるのだ。

 この星雲の外縁部で、超新星1987Aが発見され、発生したニュートリノをカミオカンデが観測して、日本人がノーベル物理学賞を受賞した。
 タランチュラ星雲は、直径1862光年ほどに広がっており、その中心付近にはNGC2070散開星団、さらにその内側にR136超星団(直径35光年)やホッジ301星団などを内在している。HⅡ領域の輝線星雲であり、非常に巨大な星形成領域として数多くの恒星が生まれては滅んでいる。星形成領域はオリオン大星雲の三十倍に広がっている。
*R136=ラドクリフ天文台マゼラン雲カタログ番号
 

 敵対する交戦国の存在があることを知ったイオリス国は、惑星開拓を進める一方で戦闘艦の造船と戦闘訓練を頻繁に行っていた。

 折しもアントニー・メレディス中佐とウォーレス・トゥイガー少佐、両者が率いる艦隊同士の戦闘訓練が始まっていた。
 仮想戦闘宙域は、タランチュラ星雲内R136超星団で行われる。

 メレディス中佐の乗艦する模擬戦闘艦301号以下の三十二隻、トゥイガー少佐率いる模擬戦闘艦401号以下の三十三隻が相対する。
 模擬戦闘艦には実弾は装填されていない。炸薬の代わりに、着弾と同時に四方八方に弾ける花火のような火薬が詰められた弾頭が使われている。
 ミサイルが当たっても艦体が少し凹むだけだが、当たり判定を模擬戦闘シュミレーションシステムが計算して戦績をはじき出す。
 今回の模擬戦は、艦隊戦の訓練で戦闘機は参加しない。


 メレディス中佐の艦隊は、ウォルフ・ライエ星に分類される青色超巨星であるR136a1という恒星系に展開していた。HⅡ領域と呼ばれるイオン化された水素からなる巨大な領域の中央に浮かんでいる。

*ウォルフ・ライエ星=猛烈な恒星風によって、恒星表層の水素が吹き飛ばされて、ヘリウム・窒素などが融合反応を起こしている超高温の内層が露出して、三万から十万度という超高温で輝いている。

 a1星は全天球中で最も重く最も明るい星である。315太陽質量、870万太陽光度。太陽の一年分のエネルギーをたった四秒で放出しているという化け物である。
 仮に太陽系の冥王星の軌道にあったとしたら、地球からは太陽と同じぐらいの大きさに見えるが、なんと二千四百度という高熱となり全ての生物は死滅する。
 対不安定型超新星爆発という、通常の超新星爆発よりもさらに高威力で中心にブラックホールすら残さない超大爆発を起こすとされる。


「恒星より二千八百デリミタ。全艦、配置に着きました」
*デリミタ=天文単位(AU)/一億五千万km、に相当する。

「恒星風に流されるなよ」
 操舵手に注意勧告するメレディス中佐。
「了解!」
 操舵手は、士官学校を卒業したての新人である。
 戦闘訓練には、総員の三分の一が新人であり、先輩から指導を受けながら、自分の担当部署の熟練度を上げてゆく予定だ。
 副官のセリーナ・トレイラー中尉が質問する。
「なんでわざわざこんな危険な恒星系を仮想戦闘宙域に設定しなのでしょうか?」
「敵は、時と場所を選んでくれないからな。最悪の条件下においても最善を尽くせるようにな。まあ、この辺りは一応ハビタブルゾーンに入っている」
「惑星があればですけど……ありませんね」


 トゥイガー少佐の艦隊は、隣の恒星R136a3付近に展開していた。
 こちらの星系もa1に負けず劣らずの青色超巨星であるが、表層にはまだ水素が四割ほど残っている。
「時間です」
 副官のジェレミー・ジョンソン准尉が、作戦開始の時刻を告げた。
「よし。微速前進だ」
 動き出す艦隊。



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