銀河戦記/鳴動編 第一部 第九章・コレット・サブリナ Ⅶ
2021.01.22

第九章・犯人を探せ




 コレットは、もう一度ミシェールの遺体を検分するために、遺体安置所に向かっていた。
 IDカードを提示して遺体安置所に入ったコレットは、係官に命じて遺体の収められているロッカーを開けさせた。
 プシュー!
 という音とともに安置ロッカーから引き出されたベッドの上にミシェールは裸で横たわっていた。腐敗を防ぐために冷蔵された身体は白くなり、吊るされていたことから首筋に紫斑と脚部に血液凝固斑いわゆる死斑が見られる。すでに死後硬直は解かれているようであった。身体の各部は膝の傷を除けばいたってきれいであった。
「司法解剖はいつ?」
「明日の一五○○時に監察医務官が来られることになっていますから、その後すぐに行われると思います」
「鑑識にも伝えてありますが、監察官にこの膝の擦過傷について念入りに調べてもらってください」
「念入りに調べるのですか。つまり細胞レベルで?」
「そう。この傷が、死後硬直の以前にできたのか、それとも後にできたのか、についてです。生存中にできた可能性も含めて」
「わかりました」

「やはり殺人ですかねえ……」
 係官が質問ともとれる呟きをもらした。
「まだわからない」
 殺人だという確証が出てこない限りにはそう言うよりしようがない。
「もし殺人だとしたら哀しいですね。この部隊にいる人達はみんな、ランドール司令の下で働くのを生きがいにしていると思うんです。たとえ生きて帰ってこれないような作戦にだって喜んで出撃していきます。それで戦死したのなら本望だと思っています。それがこんな形で死んでしまったら浮かばれないです」
 そうかも知れないと思った。
 部隊にいるすべてのものが、ランドール司令に絶大な信頼を寄せていた。カラカス基地攻略という理不尽な作戦命令を受けても、ミッドウェイやキャブリック星雲不時遭遇会戦にしても、まさしく生きて帰ってこれないような作戦遂行に至っても、誰一人として逃げ出さなかった。司令にたいして文句一つ口にしなかった。
 そんな志を一つにする者同士が殺人を犯す者だろうか?
 容疑者の一人であるカテリーナにしても思いは同じはずだ。
 おそらくは共犯者でありスパイである男の存在がそうさせたのだろう。

 サラマンダーに潜入したスパイは、司令官を取り巻く主要な士官達が女性ばかりと知って驚いたことだろう。第一艦橋はすべて女性だし、統合作戦司令室、統制通信管制所も九割が女性だ。顔馴染みのない男性が潜入すればすぐに身元がばれてしまう。
 スパイは考えたのだろう。ランドールのいる発令所ブロックでスパイ活動するには、発令所要員の女性を手懐けて、共犯者に仕立てれば良いと。
 そしてカテリーナが選ばれた。
 カテリーナは、野心を持って近づいた男に、何も知らずに恋に落ちた。やがて恋人からランドール司令の調査を依頼されて従うことになる。
 ランドール司令と恋人とを両天秤に掛けて、恋人の方が重ければ当然そちらに傾く。スパイ活動中にミシェールに気づかれて殺してしまった。恋人のために罪を犯し、そして証拠隠滅に尽力する。
 スパイの正体は一体何者か?
 カテリーナが白状しない限り突き止める事は不可能だろう。
 まずはカテリーナの周囲を洗って証拠を集めよう。
 何にしても、このミシェールのためにも真相を究明しなければ、係官の言うとおり浮かばれない。
「死人は黙して語らずか……。ああ、もう元に戻してください」
「わかりました」
 係官がミシェールの横たわるベッドを安置ロッカーに戻す。
「ミシェールの着ていたものを見せていただけません?」
「いいですよ、こちらです」
 隣の部屋に案内される。
 引出の中からビニール袋に収められた衣類が取り出された。
「レオタードとその下に着用するショーツ、そしてタイツか……」
 死ぬ直前に、アスレチックジムで汗を流していたのだから、それがすべてであった。
 鑑識用の白手袋をはめて、レオタードを調べる。何か付着していないかと、裏返したり透かしたりして、じっくりと観察するが、何も出ない。
「問題はタイツね……」
 擦過傷を負っていただけにタイツの生地に擦った痕があるが、破断までには至っていない。
 スポーツなどしていて転んだ時、衣服は破れていないのに、その下の膝や肘などが擦り剥けて血が出ているということがよくある。いわゆる圧迫擦過傷である。
 皮膚は誰でも知っている通り、自由に伸び縮みしながら体運動を可能にしている。転んだ場合など、皮膚と衣服との間には静止摩擦が生じて、皮膚は衣服にへばりついたまま外力方向へ引っ張られる。この時、皮膚が伸びきったり、急激な伸長が与えられ張力限界を越えた時、表層雪崩のように皮膚の表面が、ずるりと剥けるのである。
 静止摩擦が加わったことを示す、熱反応がわずかに見られた。生地が熱で縮れているようだ。しかし擦過傷があれば血液が付着しているはずなのに、ほとんど見られなかった。これはつまり死んで血流が止まった後で、傷ができたことを示す。遺体を移送中に生じた証拠となる。司法解剖で擦過傷に対する判断が下されれば真実は明らかになるだろう。

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2021.01.22 08:47 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第九章・コレット・サブリナ Ⅵ
2021.01.21

第九章・コレット・サブリナ 犯人を探せ




 とここまで調べた時、レイチェルがランドールの幼馴染みということを思い出した。
「ついでだから、ウィング大尉が中佐と仲が良かったという幼少の頃を見てみますか」
 コレットは、アレックスとレイチェルのさらなる過去についての資料を探しはじめた。

 アレックス・ランドール。一歳の時、銀河帝国及びバーナード星系連邦そして共和国同盟三国の絶対中立地帯において、擬装海賊商船「マスカレード号」に捕われているところを、辺境警備艦隊によって救出される。俗に「マスカレード号事件」と称されている。

 救出された幼児は、当時着用していたよだれ掛けに刺繍されていたイニシャルから、アレックス・ランドールと命名される。六歳の時、軍の里親制度によって、警備艦隊司令官トライトン・アズナブル中佐の元に引き取られる。同時に、共和国同盟軍幼年学校に入隊。以降、下士官養成学校、上級士官学校、高等士官学校、高等士官学校専攻科目へと順次進級する。
 所見として、深緑色の虹彩と褐色の髪の形態から、銀河帝国皇族に繋がる血筋と推測される。
「この一歳の時の、マスカレード号事件の詳細が不明にされているのよね」

 マスカレード号事件。
 銀河帝国と共和国同盟そしてバーナード星系連邦の三国が接する領域には中立地帯が設けられていた。
 国際法規上、中立地帯への立ち入りと戦闘行為が禁止されている軍艦が、海賊船を追い掛けてその境界を越えて進入し、戦闘に至った事件である。
 当時、銀河帝国や共和国同盟の辺境惑星近隣では、武装した海賊船団が各惑星を襲っては、物資略奪や婦女子誘拐を繰り返し、軍艦の追撃をかわして三国境界中立地帯へ逃げ込むという事件が多発していた。
 海賊船は、火器を減らして高速性能を高めた改造戦艦を使用していた。そのスピードに追いつける軍艦は数少なく、誘拐した婦女子を人質に取られていては成す術もなかった。
 海賊船はバーナード星系連邦の戦艦を改造していると見られていた。その背後には連邦が関与しているか、或は連邦軍人が直接携わっているかも知れないと憶測されていた。
 惑星が略奪にあった時、これまでは軍艦がその惑星へ赴いていたが、時既に遅く逃げ去った後で、事後処理にあたるだけという具合であった。
 その対策のために高速駆逐艦を主力とした討伐隊が編成された。トライトン中佐率いる辺境警備艦隊の誕生である。彼は略奪された惑星には赴かずに、海賊の逃走ルートに先回りしてこれを叩くようにしたのである。あるいは海賊が出て来そうなところに待ち伏せして一気に壊滅したこともあった。略奪された惑星を放っておいて海賊ばかり追い掛けていると不評を買ったが、確実に海賊は討伐されていった。
 そんな折り、海賊船団の族長が乗っていると見られる「マスカレード号」を、とうとう追い詰めてもう少しで撃破というところで、中立地帯に逃げ込まれた際に、さらに境界を越えてこれを追跡撃破ついには拿捕に成功した。
 共和国同盟軍は、その事件を軍事機密として封印した。中立地帯への越境・戦闘行為が、国際法規委員会の審議にかかることになれば、敵国のバーナード星系連邦の有利に働くからである。
 それがゆえに、アレックスの素性も解明されないままとなり、今日に至っているというわけである。出生不明かつそのエメラルド色の瞳から、銀河帝国からの流浪者とかスパイとか風潮されるのも仕方のないことであった。
「軍が秘密にしている限り、ランドール司令の出生の秘密も蚊帳の外ということね。もう二十年以上も前の話しだから、覚えている人も少ないし、当のトライトン中佐も軍上層部からの鉗口令に従って口を閉ざしている。その幼児の里親としてトライトン中佐が選ばれたのも流言を避けるためだと言われているわね」
 今になって、目覚ましい戦果をあげて昇進著しいランドール司令のことを調査するためにスパイが派遣されたと考えられる。

「さてそれはさておいて、ウィング大尉の方も調べてみましょうか」

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2021.01.21 07:47 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第九章・コレット・サブリナ V
2021.01.20

第九章・コレット・サブリナ 犯人を探せ




「そう言えば、中佐が言ってたわね。スパイが侵入して、気づかれたために口封じに殺されたと」
 中佐の予見能力には評判がある。将来を見据えた先見の明を秘めた作戦能力は、誰もが賞賛している。
 この事件には共犯者が必ずいるはずだ。そうでなければ遺体を一人で運べるはずがない。
 それが潜入したスパイだとしたら……。
 ランジェリーショップの店員の証言から、カテリーナには男がいたかも知れない。その男がスパイだという可能性もある。
 仮にスパイが潜入したとしたら、その目的というものがあるはずだ。
 一番考えられるのは、昇進著しい艦隊司令官アレックス・ランドール中佐の素性調査しか考えられない。
 ランドール司令が、銀河帝国のスパイだと風潮されているのは周知の事実だ。
「ランドール中佐か……調べてみる必要があるわね」
 自分には乗員名簿を閲覧する権限が与えられている。相手が艦隊司令官といえども、捜査の必要性があるからには、閲覧を許されるはずだ。
 もう一度乗員名簿を閲覧する。

 次に開いてみたのは、ランドール中佐の登録情報であった。依頼主なのだから本来なら捜査範囲から除外してもよさそうであるが、すべてを疑ってかかるという性分と、同盟の英雄と称えられている人物を知りたいという誘惑にはかなわなかったのだ。

 アレックス・ランドール中佐。
 第十七艦隊独立遊撃部隊司令。
 高等士官学校スベリニアン校舎卒、戦術科戦術用兵専攻。
 模擬戦闘戦優勝指揮官に与えられる特進規定により少尉に任官、第十七艦隊第十一哨戒部隊配属。
 ミッドウェイ宙域会戦において、敵主力空母四隻撃沈その他多大なる功績により少佐に三階級特別昇進、独立遊撃部隊司令となる。
 カラカス基地において、揚陸戦闘機による奇襲攻撃により基地を奪取、敵艦隊を敗走させた功績により中佐に昇進。

「キャブリック星雲不時遭遇会戦では、訓練航海中にも関わらずたった四百隻で一個艦隊を撃退か……」

 まともな実戦経験が二度しかないのではそれ以上調べようがなかった。
 ため息をついて、士官学校時代の年譜に目をやった時であった。
「あれ!」
 そこにはコレットにとっては、意外な事実が記されていた。
 パトリシア・ウィンザーとの婚約、既婚者宿舎入居といった記録が並んでいたのである。改めて配偶者欄を確認してみると、副官のパトリシア・ウィンザーの名前が同居婚約者として記されている。

 同様にしてパトリシアのものを開いてみると、やはり配偶者欄にはランドールの名前が記されている。
「そうか、二人は夫婦だったのね」
 士官学校スベリニアン校舎卒業の者なら、パトリシアとアレックスが恋人同士だということは誰でも知っているが、同居婚約していることまでは知られていない。
 とはいえ、二人は夫婦であることを公表しておらず、艦内では宿房も別々に別れて生活していた。実質上の夫婦関係にある同居婚約者であれば、既婚者用宿房があてがわれて夫婦同室になれるのだが……。
 正式な婚姻ではなく、あくまで婚約関係である以上、艦隊内における待遇として既婚者扱いか独身者扱いとするかは、本人達の意志に従うことになっている。
「司令官と副官という関係上、夫婦であることを隠していたほうが、都合がいいってことは理解できるが……ともかく士官学校時代の記録を徹底的に調べてみよう」

「パトリシア・ウィンザー中尉。
 ランドール中佐の副官として就任中。
 士官学校スベリニアン校舎戦術科戦術用兵専攻首席卒業。
 特進少尉として第十七艦隊独立遊撃部隊配属、ランドール少佐の副官として着任。
 在学中にランドールと同居婚約の申請、受理されてなお継続中。
 佐官クラス既婚者用宿舎在宅資格所有。衛生班長。
 カラカス基地攻略戦において、作戦参謀として参戦。中尉に昇進」

「ジェシカ・フランドル中尉。
 航空参謀兼医務科衛生主任。
 士官学校スベリニアン校舎卒。戦術科航空作戦専攻。
 ランドール司令の要請により、独立遊撃部隊へ転属。
 カラカス基地攻略戦にて航空参謀として参戦、中尉に昇進」

「レイチェル・ウィング大尉。
 情報参謀兼主計科主任。
 士官学校ジャストール校舎卒、特務科情報処理専攻。
 独立遊撃部隊に転属申請し許可される。
 以降副官としてその部隊編成に尽力する。
 カラカス基地攻略戦及びキャブリック星雲会戦における情報収集の功績によりそれ ぞれ昇進、大尉となる」

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2021.01.20 08:16 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第九章・コレット・サブリナ Ⅳ
2021.01.19

第九章・犯人を探せ




 ランジェリーショップを出てくるコレット。
「彼氏か……。ミシェールもカテリーナも、どうやら相手がいるらしい……」
 コレットには彼氏がいなかった。
 毎日のように死体や容疑者達を相手にしていると、性格のきつい厳格な女性というイメージが付きまとう。捜査官と聞いただけで、男女に関わらず誰もが身を引いてしまう。
 実に損な役回りだが、コレットは気にしていない。
 自ら進んでこの職業を選んだのだ。最初から覚悟はしていた。
 しかしせめてもの心のゆとりのために、ランジェリーには気を遣っているのだ。可愛いブラなどしていると、身も心も安らぐ。

 自分の部屋に戻る。
 特務捜査官は、その特殊任務のために個室が与えられていた。大部屋にいれば、捜査機密が洩れる可能性があるからである。
 買ったばかりのブラ&ショーツの入った紙袋を机の上に置いて、端末を操作して乗員名簿を閲覧する事にする。自分のIDには、閲覧コードが入力されているので、ディスプレイには乗員名簿を開くメニュー画面が表示されている。
 ミシェールに関わった人物達の情報を取り出しにかかる。
 まずは当の本人のミシェール・ライカー少尉である。

 高等士官学校スベリニアン校舎飛行科航空管制専攻。第二通信管制室勤務。サラマンダーから発着する艦載機の管制業務の任にあたっていた。
「航空管制か……。ウィンザー中尉と仲が良かったというのは、航空参謀のジェシカ・フランドルの後輩同士ということがあるわけね」
 パトリシアとジェシカが、かつて官舎の同室となって以来の仲というのは、誰でも知っている。ジェシカとミシェールは、艦載機運用を担う指揮官とその管制オペレーターという関係であり、そこにパトリシアが絡んでくるというわけである。もっともミシェールは一般士官なので、戦術科の二人より三・四歳若い。
 キャブリック星雲における不時遭遇会戦において、初戦闘参加にて准尉から少尉に昇進。
 サイズは上から八十三・五十八・八十五、身長百五十二。

 引き続き同室の乗員達を閲覧する。

 カテリーナ・バレンタイン少尉。
 高等士官学校パンテントン校舎特務科通信管制専攻。第一通信管制室勤務。
 キャブリック星雲会戦にて昇進。
 サイズは上から八十・五十六・八十二、身長百四十八。

 ニコレット・バルドー少尉。
 同スベリニアン校舎特務科通信管制専攻。第一通信管制室勤務。
 キャブリック星雲会戦にて昇進。
 同は八十五・六十・八十八、百六十二。

 ニーナ・パルミナ少尉。
 同ブライトン校舎飛行科航空管制専攻。第二通信管制室勤務。
 キャブリック星雲会戦にて昇進。
 同八十八・六十六・九十、百七十二。

 クリシュナ・モンデール中尉。
 同ジャストール校舎特務科通信管制専攻。第一艦橋勤務。
 ミッドウェイ及びキャブリック星雲会戦にてそれぞれ昇進。
 同八十五・六十三・八十七・百六十三。

 ソフィー・シルバン中尉。
 同スベリニアン校舎特務科レーダー管制専攻。第一艦橋勤務。
 ミッドウェイ及びキャブリック星雲会戦にてそれぞれ昇進。
 同九十一・六十八・九十三、百七十。宿房長。


 いずれも士官学校出たばかりとはいえ、司令官を支える優秀な管制オペレーター達だ。
「みんな甲乙つけ難い人ばかりね。ミシェールが殺害されたとすると、同室のこの人達のいずれかが犯人である可能性が高いのだけれど……」
 臨検医の言葉を思い出した。それによれば、背の低い相手にロープで首を絞められたかも知れないということだった。だとすると、ミシェールより背が低いとなると、
「カテリーナか……」
 カテリーナの証言には、いくつかの不審な点がある。
 器械に挟まれたミシェールを発見して死んでいると思った、と証言しているが……。はたして本当にそうなのか?
 あの状態では、はっきり死んでいるとは判断つかないと思うのだが。生死を確認し、ロープを外して蘇生を試みるといったことは考えられなかったのか。
 まるで最初から死んでいるのが判っていたかのように感じる。
 同室なら、食事前にアスレチックジムで運動をしていたことと、ミシェールの心臓が悪い事ぐらい知っていたはず。だとしたらミシェールがアスレチックジムに再び立ち寄ることはないだろうと推測できるだろう。なのにどうして探しに行ったのか?

 容疑者として濃厚ではあるが、証言における不備だけで、確たる証拠が何一つない状態ではどうしようもない。
 もっといろいろな方面からも捜査を続けてみよう。意外な人物が容疑者として浮上することだってあるからだ。

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2021.01.19 07:30 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第九章・コレット・サブリナ Ⅲ
2021.01.18

第九章・コレット・サブリナ 犯人を探せ




 その喫茶室。
 室内を静かな曲が流れている。
 先程立ち寄った放送局から流れているのだろう。
 もちろん艦内放送を聞く事ができるのは、居住区内だけである。こうした店内や病院そして乗員宿房である。
 検屍報告書に目を通しているコレット。
 死亡推定時刻は、十二時三十分から十三時の間。
 死因は、ロープによる頸動脈圧迫からくる脳酸欠死。
「まあ、このあたりは順当な鑑定ね。あたしでも判断できるわ」
 首筋の紫斑と現状のロープ位置からの所見は、死後に遺体の位置が変わったものと認める。
 膝の擦過傷における所見は、死後三十分にできたものと認める。創傷からの体液の付着痕、ジムのいずこにからも発見されず。
 以上の所見から、いずこかで事故死もしくは殺害された後に、移送されてきたものと認める。
 報告書は、現時点で殺人とは断定するには早計ではあるが、死体遺棄と証拠隠蔽工作は明らかである。結論は、司法解剖に委ねると結んであった。
「結局、殺人かどうかは司法解剖しないと判らないか……。しかし死体遺棄は明らかなので、犯罪事件として捜査できるわね」
 と、次ぎなる問題は……。
 被害者の死亡場所と死亡理由、そして遺体を運ばなければならなかった理由と、その運搬方法である。それが殺人なら、殺害動機も考えなければならない。
「気分が悪いと言っていたらしいし、心臓の持病もある。一人こっそり宿房を抜け出すことは考えられない。死んだ場所は宿房に違いない。首筋の紫斑から心臓麻痺かなんかで死んだのじゃない。これは明らかに絞首による殺人だわ。おそらく、誰もいないと思って宿房に入ってきた犯人が、ミシェールに気づかれて殺害したに違いない。何のために犯人は宿房に入ったか……。これが動機ね。そしてこのままではまずいと判断して遺体をアスレチックまで運んだ。が、その方法が判らない」
 遺体を運ぶとなると、女手一人ではとうていここからアスレチックジムまで運ぶのは不可能だろう。
「共犯者がいるわね……」

 喫茶室を出て、再び捜査を再会するこにする。
「そうね、殺害当時の放送局員に尋問してみるか」
 コレットは、その中のカテリーナ・バレンタイン少尉に興味があった。
 何よりもミシェールの第一発見者であり、同じ放送局員で同室でもある。
 交代時間になっても来ないミシェールを探していたと証言している。当然宿房にも戻っているだろうし、そこで死んでいるミシェールを見たか、或は自ら殺人に及んだ可能性も示唆できる。ミシェールとは最も接点の多い容疑者といえる。
 容疑者。そう、容疑者だ。
 コレットの直感が騒いでいた。

 カテリーナは引っ越した先の宿房にいた。
「お休みのところ申し訳ありません。ご協力お願いします」
「構いませんよ。どうぞ、何でも聞いてください」
「では率直にお尋ねします。十二時十五分からミシェールを発見するまでの間、どちらにおられましたか?」
「もちろん放送局にいましたよ。十二時四十五分頃に、交代のミシェールが来ないので探しに出ました」
「放送中にですか?」
「はい。タイムキーパーとしては、終了十五分くらい前になるとやることがないんです。それで他の三人の許しを得て探しにでました」
「どこを探しまわりましたか」
「もちろん一番に部屋に戻りました。そこにいないので、喫茶室とか美容室とか回って最後にアスレチックジムです」
「そこでミシェールが死んでいるのに遭遇したわけですね」
「そうです」
「もう一度確認しますが、他に誰もいなかったのですね」
「はい。いませんでした」
「わかりました。また何かありましたら、お聞きいたします。ありがとうございました」
 取り敢えずカテリーナへの尋問を終了して、次の証人をあたることにする。

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2021.01.18 07:59 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

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