銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅹ
2021.04.17

第十一章 帝国反乱




 Pー300VXからの報告を受けて、首都星サンジェルマンから遠く離れた場所で待機していた部隊が動いた。
 艦体に赤い火の精霊が描かれた高速巡航艦「ヘルハウンド」に従えられた、本家本元のサラマンダー部隊十二隻である。。
 指揮官トーマス・マイズナー少佐が頷く。
「提督の危惧した通りに、敵さんが動いたな」
「さすがですね。先見の明には感服します」
 副長のクランシス・サックス少尉が感心する。
「提督自身も誘拐された経験があるからな」
「もしかしたら、今回の誘拐犯もその時の奴では?」
「かも知れない」
「直ちに救出作戦に入りますか?」
「いや待て! 奴らがどこへ向かうかを見定めなくてはならない。アルデラーンに向かうか……」
「中立地帯の海賊基地に向かうかですね」
「そうだ。もし海賊基地に向かうならば、摂政派と海賊、というかバーナード星系連邦との繋がりも判明する」
「そういえば、海賊基地はまだ判明していないんですよね」
「ああ、惑星ミストと補給基地から通信傍受して、場所を割り出そうとしているのだが、あれから探知できるような通信記録はないそうだ」
「もしかしたら移動基地のようになっているのかも知れないのでは?」
「可能性はあるが……。ともかく跡をつけていけば、何らかの事実が判明するだろう」
「ですね」
「よおし! 尾行していることを悟られないように、微速前進で追跡する」
「了解! 微速前進」
 先行するP-300VXに案内されるように、私掠船の尾行を始めた。


 私掠船内にある一室。
 少女がベッドの縁に座り、虚ろな表情で天井を見つめている。
 拉致監禁され、どうしようもない状態を悲観している。
 少女の力では成す術もなかった。
 唯一の救いは、拘束されていないことだけだった。
「侯女はどうしておるか?」
「おとなしくしておりますよ。浚った当初は抵抗していましたが、宇宙に出た今は逆らっても無駄だと悟ったようです」
「大切な人質だ。一応大切に扱わなくてはな」
「一応ですか」
 とほくそ笑む副長。
「よし。進路を中立地帯へ向けろ!」
「久しぶりに基地に戻るのですね」
 ゆっくりと方向を変えて、中立地帯へと転進した。


 ヘルハウンド艦橋。
「やっこさんが、中立地帯に向かうようです」
「跡をつけられているのに気づかないか。案内してもらおうか、海賊基地まで」
「さすが、Pー300VX偵察機ですね」
「ああ、戦艦千二百隻分の予算が掛かっているからな」
「それもこれも、ランドール提督の采配というところでしょうか?」
「まあな。俺だって、戦艦千二百隻の方を選んださ」
「問題は、偵察機の燃料ですね。エネルギー切れで正体を明かしてしまわなければいいのですが……遮蔽装置って結構エネルギーを消耗するのでしょう?」
「やつらが真っすぐ基地へ向かってくれる分には、十分燃料は持つはずだ」
「寄り道しないことを祈りましょう」

第十一章 了

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2021.04.17 13:16 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅸ
2021.04.10

第十一章 帝国反乱




 アルビエール侯国首都星サンジェルマン、執務室で談話するアレックスとハロルド侯爵。
「どうやら摂政派は、サセックス侯国を自陣に取り込もうと画策しているようです」
「当然でしょうね。味方は多ければ多いほどいいですから」
「こちらも交渉した方がよろしいのではないでしょうか?」
「そうなのかもしれませんが……。紛争が泥沼化した際には、仲裁役として中立を保っていて欲しいものです」
「しかし反乱を起こした側にとっては、溺れる者は藁をも掴むです」
「そうですね。取りあえずは、保険を掛けておくとしますか」

 数日後。
 サセックス侯国のエルバート侯爵の館を訪れた使節団があった。
 使節の代表は、ロベスピエール公爵の懐刀のマンソン・カーター男爵である。
 応接室で応対するエルバート侯爵。
「早い話が、味方になれということですかな」
「その通りです」
「我が国が、バーナード星系連邦に対する盾になっていることはご存じですよね」
「はい。しかし連邦は、革命直後で侵略する可能性はありません」
「それは分かっております。とはいっても、アルビエール侯国側にしても、同じことを考えておりましょう。どちらか側の肩を持つというのは、不公平というものです」

 数時間後。
 館から出てくる使節団。
「想定通りだったな」
「仕方ありませんね。やりますか?」
「無論だ。後はドレーク提督に任せよう」
 やがて乗ってきた車で帰ってゆく。

 宇宙空間に十二隻の宇宙船が停止している。
 その中心にフランシス・ドレーク提督の乗船する私掠船カリビアン号。
 かつて海賊として帝国内を荒らしまわった船である。
 久しぶりに仲間を招集して海賊団を結成したのだった。
 船橋では、今しがた通信が終わったばかりのところ。
「男爵は、説得に失敗したか……。まあ、想定内だ」
「次は我々の番ですね」
「標的は今どこにいる?」
「今の時間は、女学院にいるはずです」
「よし! 先に潜入している奴と連携して、下校するところを襲うぞ!」
「彼女は、送り迎えの車で通学しています」
「運転手は殺しても構わん。娘だけ誘拐できれば良い」

 数時間後。
 数隻の高速艇が惑星へと降下していった。

 女学院から公爵家へと向かう自動車。
 車内で本を読んでいる少女。
 その自動車の前方に出現する高速艇。
 道を塞ぐように停止する。
 何事かと車を降りてくる運転手だったが、バタリと地面に倒れてしまう。
 高速艇から数人の男達が降りてきて、自動車を取り囲む。
 怯えている少女。
「お嬢さま、お迎えに参りました」
 ドアを開けて、降車を促す男。
「おとなしくして頂ければ、危害は加えませんから」
 逆らってもしかたがないと思った少女は、言われるままに男達に着いてゆく。

 少女を乗せた高速艇は上空へと飛び去り、待機していた私掠船に合流する。
 やがて、どこかへと消え去った。

 その私掠船の後を密かに追跡する一隻の船。
 その機影はレーダーからは確認できず、肉眼でも視認できない。
 歪曲場透過シールドで守られていた。

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2021.04.10 06:31 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅷ
2021.04.03

第十一章 帝国反乱




 大演習は終わった。
 すでに展望ルームには、皇帝の姿はない。
 幼い皇帝に長時間同じ場所に立たせておくのは無理だろう。
 ぐずって泣いて周りの者を困らせたのであろう。皇帝をあやしながら侯爵とエリザベス皇女と共に帰ったと思われる。
 残っているのは将軍達だけのようである。
「大演習を終了する。これより反省会を開くので、各艦隊の指揮官及び参謀はステーション作戦会議室に集合せよ」
 本部から連絡が届く。

 数時間後作戦室に集合する面々。
 議長は、当然ロベスピエール公爵子飼いのアルバード・ギンガム大将である。
「反乱軍は、アルビエール侯国に集結している」
 摂政派においては、反乱を起こしたのは前回に続いて皇太子派ということになっている。
 前回はともかく今回はどうみても摂政派の謀反であることは確か。
 しかし国政においては、帝都を押さえている摂政派に分がある。
「帝国を放ったらかしにして、共和国同盟にばかり加担して国政を疎かにしている」
 アレクサンダー王子に、皇帝になる資格はないと吹聴しまくっていた。
 盗人にも三分の理があるということだろう。
 摂政派にとって、アレックス(アレクサンダー)が皇位継承継承権を有する王子であることまでは認めているようだが、皇太子としては認めない。


 話題は中立を保っているサセックス侯国の話しとなった。
「サセックス侯国は、今まで通り中立を保っている」
「まあ、バーナード星系連邦の侵略を阻止するためには致し方ないでしょう」
「連邦? 今はあっちも謀反が起きて分裂しているのだろ? こちらに攻め入る余裕はまだないと思うのだが」
「さすれば、サセックスをこちら側に引き込むこともできるじゃないか」
「使者を送ってみたらどうだ?」
「そうだな。手をこまねいていたら、反乱軍に先を越されてしまうぞ」
「だが、これまでの経緯をみても、エルバート侯が首を縦に振るとは思えないが?」
 頭を抱える一同だったが、
「人質を取って、言うことを聞かせるしかないだろう」
 と進言したのは、フランシス・ドレーク提督であった。
 海賊上がりのドレーク提督にとっては、人質作戦を実行するのも容易いだろう。
「ならば貴官が陣頭指揮を執ればどうだ?」
「いいですとも。ご命令なさればいつでもよろしいですぞ」
 と議長のギンガム大将を見る。
「それは良いのだが……一応公爵に伺ってからでないと結論は出せない」
 国家間の案件であるがゆえに、公爵の了解を取る必要がある。
 最高権力者であるはずの皇帝ロベール三世でも、摂政エリザベスでもない公爵の名を出すことからして、真の実力者は誰かを示していた。


「ところで、ジュビロ・カービンはどうしておるか?」
「例の同盟分断作戦を上程した奴か? 闇の帝王とか名乗っていたようだが」
「議会進行中のスクリーンに突然現れたのにはビックリしましたよね。ハッキングの能力は認めますけど」
「しかし彼の進言通りに途中までは上手く運んでましたよ」
「共和国同盟内に反乱を起こさせたのは、素晴らしい手腕でした」
「いっそ参謀に取り入れたらどうでしょうか?」
「いや、それはよした方がいい。ああいう奴は、自分の都合で簡単に裏切る」
 ということで、話題を変える一同だった。

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2021.04.03 10:38 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅶ
2021.03.27

第十一章 帝国反乱




 神聖銀河帝国母星アルデラーンの衛星軌道上にある宇宙ステーション。
 その展望ルームに大演習観艦式用の特設会場が増設されている。
 壇上に立つのは、神聖銀河帝国皇帝ロベール三世。
 その両側に、ロベスピエール公爵と摂政エリザベス皇女の姿がある。
 後方には、第一艦隊以下の指揮官提督が並んでいる。
 彼らの目前を、各艦隊から選び抜かれた精鋭部隊が、整然と隊列を組んで進んでゆく。
 二チームに分かれて両側から進軍し、すれ違った後に反転して攻撃開始という内容だった。
 展望ルームの前を艦艇が通過する度に、特設スクリーン上に艦橋内の映像が流され、艦長が敬礼していく。展望ルーム後方の将軍達も敬礼している。

 第一艦隊旗艦エリザベス号は、第一皇女の名を冠してはいるが、実質的にはロベスピエール公爵の息が掛かっている提督が乗艦している。
 フランシス・ドレーク提督。
 戦闘経験の少ない帝国軍にあって、唯一と言ってもよいくらい戦闘経験豊富な逸材だ。
 彼は海賊として帝国内を荒らしまわった経歴がある。
 ある時、彼の標的として狙われたのが、ロベスピエール公爵の奴隷貿易船だった。
 奴隷密売買がために詳細は闇に埋もれて公表されていない。
 あくまで商人たちの噂話でしかないが、彼が貿易船に勇躍飛びついたところが、敵は護衛船団を隠し持っていて、手痛い反撃を喰らって航行不能となり、彼は拘束されてしまったらしい。
 公爵の前に突き出されたものの、その気っ風に惚れた公爵が自分の配下にした。
 奴隷狩りの私掠船(しりゃくせん)の艦長に取り立てられ、摂政派VS皇太子派分断騒動時に第一艦隊の提督に推挙された。

 艦艇のすれ違いが終わり、反転しはじめる。
 態勢を立て直して、戦闘準備にかかる。

 最初から向き合ってすぐさま撃ち合ってもよいのだろうが、戦意高揚と冷静沈着とを両立させるにはこの方が良いとされていた。
 すれ違ううちに精神を安定させる時間を与えるのである。

 公爵がロベール皇帝に耳打ちしたかと思うと、やおら右手を上げる皇帝。
 その手を降ろした時が、戦闘開始の合図のようである。
 振り下ろされる小さな手。

 砲弾飛び交う模擬戦闘の開始だった

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2021.03.27 08:07 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅵ
2021.03.20

第十一章 帝国反乱




 事件の発端は、皇室議会だった。
 今後の方針について、議論を始めようとした時だった。
 突然、武装した兵士がなだれ込んできた。
「君たちはなんだ!」
 議員の一人が乱入者に向かって叫んだ。
「黙れ! これが見えないのか?」
 と、サブマシンガンを構える兵士。
「な、何をするつもりだ!」
 だがその答えは、マシンガン掃射であった。
 シャンデリアなどの調度品が片っ端から破壊されてゆく。
 議場内の人々には危害はなかったものの、問答無用という意思表示は伝わった。
「皇室議会は、本日をもって解散する。諸君らは拘禁させてもらう」
 次々と連行されてゆく議員たち。

 アルタミラ宮殿でも、ひと悶着が起きていた。
「これは、どうしたことですか?」
 玉座に座っていた摂政エリザベス第一皇女が、居並ぶ大臣たちに叱咤していた。
 ロベスピエール公爵が前に出て答える。
「どうやら、ジョージ王子を皇帝に擁立する一派が立ち上がったようですな」
 あくまで自分は知らぬ存ぜぬ、一切関わっていないという表情を見せる公爵だった。
 エリザベスも承知の上ではあるが、言葉には出せなかった。
 息子と弟とを両天秤に掛けても、どちらに傾くかは自分では図ることができない。
 もはや情勢にまかせるしかなかったのだった。

 突然、宮殿入り口が騒がしくなった。
 おびただしい軍靴の音が鳴り響いている。
 謁見の間へと姿を現した軍人たちがなだれ込んで来る。
 銃を構えて、大臣達を威嚇する。
 軍人たちをかき分けて、リーダーらしき人物が入ってくる。
「我々は、ジョージ親王殿下を皇太子として擁立するものだ!」
 大臣の一人が異議を訴える。
「何を言うか! 皇太子はすでにアレクサンダー王子が……」
 そこまで言ったところで、兵士に銃床で腹部を殴られて倒れる。
 さすがにエリザベス皇女の前では、発砲流血騒ぎは起こせないようだ。

 例えジョージ親王が帝位に就いたとしても、まだ幼くて政治を執ることは不可能であるから、摂政が立つことになる。


 後日に分かったことであるが、議員の中でも摂政派に属する者は解放されたという。
 これによって、摂政派による反乱ということが明らかとなった。

 反乱軍は、放送局、宇宙港などの公共機関、財務省などの政府機関を次々と掌握していった。

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2021.03.20 08:54 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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