銀河戦記/鳴動編トップメニュー
2021.04.30

PC版ホームページからの移行ブログです。
最近はスマホが流行し、今後は主流となると思います。
そこで、スマホでは表示が見にくいPC版を、
こちらへと転載していこうと思います。

第一部後半はこちらです
第二部はこちらです
ファンタジー系はこちらです


序章
索敵 
士官学校 
模擬戦闘 
情報参謀レイチェル 
独立遊撃艦隊 
カラカス基地攻略戦 
不期遭遇会戦 

第八章~十章は、稚拙ながら推理小説仕立てとなっております。
殺人犯は誰なのか? お楽しみください(*'▽')

犯罪捜査官 コレット・サブリナ 
コレット・サブリナ 犯人を捜せ! 
コレット・サブリナ 氷解 
スハルト星系遭遇会戦 
テルモピューレ会戦 
ハンニバル艦隊 

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

ファンタジー・SF小説ランキング
銀河戦記/鳴動編 第一部 第十九章 シャイニング基地攻防戦 Ⅸ
2021.04.19

第十九章 シャイニング基地攻防戦




 カインズの次にレイチェルを司令室に呼び寄せたアレックス
「君の配下にすることにした第八占領機甲部隊メビウスのことなのだが、極秘の任務を与えようと思っている」
「極秘任務ですか?」
「何度も言うようにトランターはいずれ陥落する。その後のためのレジスタンス活動が任務だ」
「レジスタンスですか? メビウスは当地に残るとして、他の艦隊はいかがなされるのですか」
「もちろん、タルシエン要塞を本拠とする解放軍を組織して、徹底交戦を続けるつもりだ。たとえ連邦に対して敗北し占領されようとも、いずれ反旗を掲げ立ち上がる将兵や民衆が出て来る。そういった人々を解放軍に吸収しつつ、機が熟するのを待って持てる全軍を持って反攻作戦にでる」
「そのためにもトランターに残って内部攪乱を引き起こし、占領軍の情報を逸早くとらえて解放軍に伝える。それがメビウスに与えられた任務というわけですか」
「その通り。とりあえずはモビールアーマー隊の強化訓練という名目でトランターに残り、陥落後のレジスタンス部隊の主力として働いてもらいたい。どうだやってくれるか」
「一つお伺いしてよろしいですか?」
「どうぞ」
「提督は、あたしをメビウスの司令官に任命し、極秘任務をお与えになる、その真意をお伺いしたいですわ」
「レジスタンス活動を継続するとなると、補給物資の調達と運搬をはじめとして、隊員の士気を維持し指導する能力と人望、すべてに困難が伴うのは必定である状況の中で、それらをすべてクリアーできるのは君しかいない。主計科主任として数々の隊員達の要望をそつなく処理、その信頼と人気は艦隊随一のものだ。私が信用し全権を委ねられる人物は他にはいない」
「そこまで信頼されているとなると、お引き受けするしかありませんね」
「そういってくれるとありがたい。早速トランターへ向かってくれないか」
「直ちにですか? タルシエン要塞攻略はいかがなされるおつもりですか」
「いや。タルシエン要塞は、メビウスなしで攻略する」
「例の作戦が発動する時がついにきたというところですか。ジュビロとは?」
「軍法会議のその日に、早速向こうからアクセスがあったよ。作戦発動は伝えておいた」
「どう言ってましたか?」
「わかった。と一言だった」
「あの人らしいわね」
「それともう一つ、トランター本星アスタバ造船所において、新造の機動戦艦が完成した」
「機動戦艦ですか?」
「水中潜航能力をも備えた究極の対空防衛用戦艦だ。モビールアーマー八機と専用のカタパルト二基を装備、艦載機は三十六機搭載可能だ。主砲には原子レーザー砲の改良型を装備。最新のCIWS(近接防御武器システム)を搭載し、大気圏戦闘に特化した究極の戦闘艦だ。開発設計者はフリード・ケイスンだ。推して測ることもないだろう」
「そうですね。艦名は?」
「ミネルバだ。いい名前だろう」
「ローマ神話に登場する女神ですね」

 ※ギリシャのアテナと同一視される最高の女神。知恵と諸学芸をつかさどる女神であるが、戦略の女神でもありしばしな英雄たちに戦術を指示した。さらに機織りの神でもあり、アテナイ市の守護神で、そこのパルテノン神殿は彼女の聖域として知られる。長いキトーンを着て、頭には兜をかぶり、胸にはメデューサの頭を飾りとしてつけたアイギスを着ている。手には槍、および勝利の女神ニーケをかかえている姿が多い。知恵を表すふくろうが聖鳥である。

「まあな。至急アスタバへ赴いてこれを受領したまえ」
「乗組員の手配は?」
「現在、士官学校教習生がミネルバに搭乗して実習訓練を開始しているはずだ。Xデーと同時に彼らを繰り上げ卒業というかたちで自動的に実戦配備させることになる。教習生と熟練者が半々というところかな」
「それって……」
「本来首都星トランターは第一艦隊の守備範囲だ。その内で第十七艦隊が行動を起こすには、実戦訓練という名目でもない限り許されないことなのだからな」
「仕方ありませんねえ……それで教官はどなたが」
「去年スベリニアン校舎を勇退なされたセキセドル前校長だ。事情を説明して特別にお願いしたところ快く引き受けてくだされた」
「セキセドル教官なら心強いですわね。なにせ士官学校時代の提督を退学させずに辛抱なされて、模擬戦闘の指揮官に徴用するという先見の明をそなえていらっしゃったお方ですからね。安心して任せられますわ」
「艦長には、フランソワ・クレール大尉を任官させるつもりだ」
「フランソワですか……」
「性格的には問題が多いかもしれないが、作戦指揮能力は人並み以上のものを備えているし、彼女にとっては佐官昇進試験も兼ねているのだ」
「どちらにしても当分は眠れない夜が続きそうですね」
「なにはともあれ、Xデー以降のメビウスの全権は、すべて君の判断に委ねる」
「すべてですか?」
「そう、すべてだ」
「わかりました」

第十九章 了

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v


ファンタジー・SF小説ランキング


小説・詩ランキング



11
2021.04.19 08:19 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第十九章 シャイニング基地攻防戦 Ⅷ
2021.04.18

第十九章 シャイニング基地攻防戦




 軍法会議の糾弾から開放されて、自由の身となったアレックスは、トランター本星に帰郷したのをいい機会として三日間の休暇を申請した。もちろんそれを拒否できる者はおらず順当に受理された。
 スーパーで買い物をしているパトリシア。その後ろにはカートを押しながらついてくるアレックスの姿があった。法廷での審議を終えて、帰宅の途中で立ち寄って日常の品々を買い求めていたのである。
 私生活においては、公務における立場と逆転して、主婦であるパトリシアの方が権限を握っていた。毎月のローンやクレジットの支払い、公共料金、家計に関わることはすべて彼女が財布を握っていたのである。食料の購入はもちろんのこと、アレックスの着る衣料でさえ、彼女の意向に逆らうことは出来ない。彼女の家計簿には、妊娠・出産費用にはじまる子供の養育・教育費など、将来に渡る家族構成をもしっかり計算に入れられた、綿密な将来設計が出来ていたのである。
 ゆえにアレックスが何か欲しいと思った時には、まず妻にお伺いを立ててからでないと、何も購入できないのである。

 郊外の一角の邸宅。
 アレックスが准将になりこの一戸建をあてがわれた時から、パトリシアは自分に与えられる予定だった大佐用の官舎は引き払い、この邸宅で一緒に暮らしている。未だに婚約者のままであるとはいえ、士官学校当時に提出した同居申請は失効していないので、自動的に居住の権利は有していた。
 アレックスが婚約破棄するはずもなく、事実上の夫婦生活に入っていたのである。もちろん一緒に暮らしているという事実は軍籍コンピューターに登録されており、万が一アレックスが婚姻前に戦死するようなことになっても、引き続き居住できることになっている。これは同居する事実上の夫婦関係にあった婚約者の既存権利を保証する制度である。ただし、同居の事実がなかった場合は居住する権利は消失する。あくまで同居が原則なのであり、同居の事実があってこそ居住の既存権利が発生するのである。
 婚約破棄しない限り、相手が死んでも婚約期間中に得た権利はそのまま有効であるが、同時に別の相手とは婚約も結婚も出来ないという反面もある。

 台所でエプロン姿で夕食の準備をしているパトリシア。だいぶ主婦業も板についてきという感じではあるが、まだ二十三歳になったばかりで、初々しさもそこかしこに残っている。艦隊勤務のために子作りしている暇もなくて、残念ながらまだ子供はできないが、妊娠可能期間はまだ二十年以上あるので、あわてる様子もない。
 一方のアレックスは食卓で報告書に目を通している。新婚当初、台所に入って手伝いをしようとしたが、あまりの不器用さに呆れたパトリシアから、台所への立ち入りを禁止されてしまったのである。
 アレックスの方を時々見やりながら、夫のために食事を作りながら、妻の責務を甘んじて受け入れているパトリシアであった。自分がいなければ何もできない夫のために、何かをしてあげられるということは、夫婦の絆を深くする精神的融合である。それぞれにないものを補い合うことこそが、子供を産むという以外、夫婦として結び付く意義なのである。
 やがて食事をお盆にのせて、食卓に運んでくるパトリシア。
「一戸建ての家に住めるなんて夢みたい」
 エプロンを脱いで、アレックスの向かい側に腰を降ろすパトリシア。
「一応これでも官舎なんだぜ、将軍用のね。つまり借家ってこと」
「でも、退役してもずっとここに住んでもいいのよね」
「正確には、僕とその配偶者が亡くなるまでだ」
「そうね……」
 といってパトリシアは微笑みながらアレックスを見つめた。
「タルシエン攻略に成功したら、あなたも少将となって内地勤務よ。そうしたら参謀のわたしも一緒に地上に降りられるから、重力を気にすることなく、安心して子供を産むことができるわ」
 艦隊にある時は、優秀な参謀であるパトリシアも、アレックスと二人きりでいる時は、本能のままに子供を欲するごく普通の女性であった。

 寝室。
 裸のまま並んでベッドに横たわる二人。
「ところで第十七艦隊でタルシエン攻略は可能なの?」
「内部に潜入出来れば、何とかなるかもしれない」
「潜入? でもどうやって」
「ああ、潜入の直接的な方法は俺が何とか考えるが、たぶん小数精鋭の特殊工作部隊を組織することになるだろう。君には、特殊工作部隊を後方から支援する体制と、潜入後の特殊部隊の行動指針及び艦隊運営に関わる作戦立案を検討してもらいたい」
「わかったわ」
「この作戦を成功させるには隠密行動を取る必要がある。たとえ味方にも特殊工作部隊の存在を知らせたくない。君とゴードンとレイチェル、そして特殊工作部隊に参加する将兵だけだ」
「わたしとゴードンとレイチェルだけに?」
「そう。恋女房と片腕だからな」

 翌日。
 ジュビロ・カービンと連絡が取れて、早速例の廃ビル地下室へと向かうアレックス。
 レイチェルも当然として同伴する。
「久しぶりだな」
 ジュビロが懐かしそうに出迎える。
「そちらも無事息災で結構。檻の中に入れられないかとずっと心配してたよ」
「そんなドジ踏まねえよ」
「早速だが打ち合わせに入ろうか」
「おいおい、いきなりかよ」
「二日後にはシャイニング基地に戻らなければならない、時間がもったいないからね」
「分かった」


 三日間の休暇を終えてシャイニング基地に舞い戻ったアレックスは、次なる指令であるタルシエン要塞攻略に向けての行動を開始した。
 シャイニング基地に残って、捕獲した六万隻の艦船の改造の指揮にあたっていたカインズは、戻ってきたアレックスに呼ばれて司令官室へ向かった。
「カインズ中佐。入ります」
「搾取した艦船の改造の進行状況はどうか」
「艦制コンピューターを同盟仕様に変えるのに手間取っておりまして、現在三万隻が動かせるところまで進んでおります。乗員のほうも艦政本部長のコール大佐のおかげで、丁度それを動かせる人数分だけ何とか集まり、現在試運転に掛かりはじめました」
「人集めに関しては、コール大佐の手腕はたいしたものだな。で、コンピューターウィルスの懸念は?」
「提督の指示通り、ROMはすべて総取り替え、SRAMやメモリディスクは完全に初期化してソフトを再インストールしましたので、万全な状態です。ただそれが工期を遅らせている原因になっておりまして」
「ご苦労様。たとえ手間がかかってもやらなければならない。ウィルスが潜んでいては元も子もないからな。この基地を取り返したような事態になってはいけない」
「わかっております」
「さて……と」
 アレックスはわざとのように呼吸を整え、パトリシアに視線を送った。パトリシアは書類入れのところへ行って、中の書類を取り出して戻ってきた。
「今三万隻が動かせるのだな」
「そうです」
「それでは、その三万隻の指揮を、貴官に預けよう」
「三万隻を私にですか」
「そうだ。カインズ大佐」
「大佐? 私が大佐に?」
 アレックスはパトリシアに合図を送り、彼女が小脇に持っていた辞令書と階級章を手渡させた。
「第十七艦隊は、四十八時間後にタルシエン要塞攻略に向かうことになった」
「タルシエンですか?」
「私は、別働隊としてウィンディーネ以下の第六部隊を率いて出るつもりだ。貴官には、ドリアードから本隊を指揮運営してもらいたい」
「私が、本隊をですか?」
「ただし、作戦指令はこのウィンザー参謀長の指示に従ってくれ」
「わかりました。提督がそうおっしゃられるのなら」
「それから、第八占領機甲部隊メビウスを君のところからレイチェル少佐の配下に移行する」
「メビウスを?」

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v


ファンタジー・SF小説ランキング


小説・詩ランキング



11
2021.04.18 07:29 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅹ
2021.04.17

第十一章 帝国反乱




 Pー300VXからの報告を受けて、首都星サンジェルマンから遠く離れた場所で待機していた部隊が動いた。
 艦体に赤い火の精霊が描かれた高速巡航艦「ヘルハウンド」に従えられた、本家本元のサラマンダー部隊十二隻である。。
 指揮官トーマス・マイズナー少佐が頷く。
「提督の危惧した通りに、敵さんが動いたな」
「さすがですね。先見の明には感服します」
 副長のクランシス・サックス少尉が感心する。
「提督自身も誘拐された経験があるからな」
「もしかしたら、今回の誘拐犯もその時の奴では?」
「かも知れない」
「直ちに救出作戦に入りますか?」
「いや待て! 奴らがどこへ向かうかを見定めなくてはならない。アルデラーンに向かうか……」
「中立地帯の海賊基地に向かうかですね」
「そうだ。もし海賊基地に向かうならば、摂政派と海賊、というかバーナード星系連邦との繋がりも判明する」
「そういえば、海賊基地はまだ判明していないんですよね」
「ああ、惑星ミストと補給基地から通信傍受して、場所を割り出そうとしているのだが、あれから探知できるような通信記録はないそうだ」
「もしかしたら移動基地のようになっているのかも知れないのでは?」
「可能性はあるが……。ともかく跡をつけていけば、何らかの事実が判明するだろう」
「ですね」
「よおし! 尾行していることを悟られないように、微速前進で追跡する」
「了解! 微速前進」
 先行するP-300VXに案内されるように、私掠船の尾行を始めた。


 私掠船内にある一室。
 少女がベッドの縁に座り、虚ろな表情で天井を見つめている。
 拉致監禁され、どうしようもない状態を悲観している。
 少女の力では成す術もなかった。
 唯一の救いは、拘束されていないことだけだった。
「侯女はどうしておるか?」
「おとなしくしておりますよ。浚った当初は抵抗していましたが、宇宙に出た今は逆らっても無駄だと悟ったようです」
「大切な人質だ。一応大切に扱わなくてはな」
「一応ですか」
 とほくそ笑む副長。
「よし。進路を中立地帯へ向けろ!」
「久しぶりに基地に戻るのですね」
 ゆっくりと方向を変えて、中立地帯へと転進した。


 ヘルハウンド艦橋。
「やっこさんが、中立地帯に向かうようです」
「跡をつけられているのに気づかないか。案内してもらおうか、海賊基地まで」
「さすが、Pー300VX偵察機ですね」
「ああ、戦艦千二百隻分の予算が掛かっているからな」
「それもこれも、ランドール提督の采配というところでしょうか?」
「まあな。俺だって、戦艦千二百隻の方を選んださ」
「問題は、偵察機の燃料ですね。エネルギー切れで正体を明かしてしまわなければいいのですが……遮蔽装置って結構エネルギーを消耗するのでしょう?」
「やつらが真っすぐ基地へ向かってくれる分には、十分燃料は持つはずだ」
「寄り道しないことを祈りましょう」

第十一章 了

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v


ファンタジー・SF小説ランキング



2021.04.17 13:16 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第十九章 シャイニング基地攻防戦 Ⅶ
2021.04.16

第十九章 シャイニング基地攻防戦




 すべてのTV放送局が、ランドール提督の功績を讃えるような放送内容で、命令違反に対する軍法会議が行き過ぎであると放映していた。
 軍部の信用失墜の極みといえるだろう。
「広報部から言わせてください。今、ランドール提督を処罰するのは共和国同盟にとって重大な損失になります」
「またか……同盟の英雄とか言い出すつもりだろう」
「いけませんか? 士気を鼓舞する上で英雄の存在は必要不可欠であります。シャイニング基地防衛の時、三個艦隊が攻め寄せて来ると判っておりながらも、第十七艦隊の士官達は誰一人として、乱れることがなかったそうです。これはランドール提督なら何とか切り抜けてくれると信じて疑わなかったからでしょう」
「そしてその期待通りに難局を看破した。方法はともかくとしてな」
「だが、その方法が問題となっているのだ」
「ここに第十七艦隊副司令官オーギュスト・チェスター大佐を筆頭に全乗組員の署名の入った嘆願書が届いています」
「全員か?」
「はい。一人残らず」
「ランドールは部下の絶大なる信望を得ているということか。今回の作戦における彼の功績点は、基地防衛と敵二個艦隊の撃滅、そして艦船六万隻の搾取とで少将昇進点に達した。順当にいけば第十七艦隊司令と准将の地位が、次席幕僚に巡ってくるというわけだが……提督の処分となれば、その夢を取り上げることになり、ひいては第十七艦隊全員が離反する可能性があるというわけですな」
「それはまずいぞ。国民の期待はすべてに第十七艦隊、というよりもランドール提督一人の名声にかかっているのだ。ミッドウェイ宙域会戦の折りもそうであったように、連邦の連合艦隊来襲を完膚なきまでに粉砕した度量は、誰にも真似できないであろう。たとえそれが命令違反を犯す奇抜な作戦であったとしても許容される範囲ではないだろうか。長期化する戦争によって財政は逼迫しており、国家予算に占める国防費の比率は四割を越え、その重圧に国民は耐えかねているのだ。ランドールにさえまかせておけば、国家は安泰だろうという気運は充満している。これ以上国民の期待を裏切ることはできまい」
 軍部から参列している者はともかく、評議会から参列している者はランドールの処罰に反対の気運へと動いていた。
 今回のTV放映の影響によって、ランドール提督の絶大なる国民の人気と信頼が、改めて明らかとされる結果となったのだ。この会議場に参加している者達のほとんどが、ランドールを処罰に賛成したと知られれば、自分の地位が危うくなるのは必至である。次回の評議会選挙に出馬する予定の者は、これ以上の追求は人気に大きく影響し落選は確実。そう思い始めている者が大勢を占めるようになっていた。今やランドール提督の人気に逆行するような意見は述べることができなくなっていた。
「処罰するに処罰できずか……」
「かといってこのままでは他の士官達への示しがつかん」
「どうだ、この際。例の作戦を、彼にやらせるというのは」
 宇宙艦隊司令長官が口を開いた。
「作戦?」
「それはいい」
「タルシエン要塞攻略の任務をランドール提督に任せるのか」
「トライトン少将。君はどう思うかね」
 審議官の一人が、参考人として参列していたトライトン少将に向き直った。
 これまで審議の経過をじっと見つめていたトライトンであるが、静かに答えた。
「わかりました。ランドールの第十七艦隊にやらせましょう」
「決まりだ。タルシエン攻略の任務をランドールの第十七艦隊に与える」
「諸君。タルシエン要塞は難攻不落と言われて幾度かの攻略をことごとく跳ね返した。もし成功すれば、指令無視の件を不問に伏し、規定通りの少将の位と現在空席の第八師団司令官の席を、彼に与えようじゃないか。反対するものは」
 議場が一時ざわめいてやがて静かになった。
 宇宙艦隊司令長官の意見に反対できるものはいなかった。長官はぐるりと周囲を見回して、異議のでないのを確認した。
「よろしい。ランドール提督をここへ」


 議場の扉が開いてアレックスが入場してくる。
 そして被告席に入ると、
「アレックス・ランドール提督。貴官の処分を申し渡す」
 審判長が審議の結果を言い渡した。
「貴官の今回の行動は、共和国同盟に対する離反であると言わざるを得ない。命令を無視してシャイニング基地を撤退し、一時的ながらも占領される結果となり、共和国同盟への侵略の足掛かりとされる危険性を生じたのである。しかしながら、それは第十七艦隊及び第八艦隊のクルーの生命を守らんががための人情からきたものと信じるものである。よって温情を持ってこれを処罰するのを猶予し、その条件としてアル・サフリエニ宙域にあるタルシエン要塞攻略の任務を新たに与えることとする。もしこの任務を達しえたならば、貴官の命令違反を不問に帰し、要塞攻略とシャイニング基地防衛にかかる功績点を規定通りに与えることとする」
 会場からため息にも似た吐息が聞こえた。
 ニールセンがランドールを陥れようとしたことは誰しもが感じていた事である。それが逆の効果として、ランドールの名声を高めたに他ならないことを知り、今また新たなる活躍の場を与えることとなったのは、ニールセンに対する痛烈なる皮肉な結果となったわけである。
「以上で審議を終了する。全員解散」
 全員起立して敬礼し長官の退室を待ってから、それぞれの持ち場へと戻っていった。
 直立不動の姿勢で全員の退室を見届けているアレックスの肩を叩くものがいた。振り返るとそれはトライトン少将であった。彼は軽く手を振って微笑みながらも無言で退室した。

 会議場を出たところで、ジェシカとレイチェルが待ち受けていた。
「いかがでしたか。会議のほうは」
「一応処罰だけは免れたというところだ。地位も階級もそのままだ。君達の処遇もな」
「よかったですね」
「しかし君達も大胆なことをしてくれたな」
「他に方法がありませんでしたからね」
「首謀者は一体誰だ?」
「リンダとフランソワですよ。リンダがTV局、フランソワが広報部、その他あちこち駆けずり回って大車輪で働いてくれました」
「あん? あの二人は犬猿の仲じゃなかったのか?」
「尊敬する提督の危機ということで共同戦線を結んだようです」
「ふうん……意外なこともあるもんだな」
「提督あってこその自分でもありますからね」
「それにしても、本当にシャイニング基地から艦隊を撤退させたのか」
「撤退? しませんよ、そんなこと。苦労して奪還したものをどうして、また敵に渡す機会を与えなきゃならんのです?」
「TVではそう報道していたようだが」
「それは、リンダがTV局側に手を打って虚偽の報道をぶちかましたんですよ。あの映像は、策略のために一時撤退したあの時のやつですよ。それをTV局に渡して流してもらったんです。もっともTV局側にはその事実は伏せてありますけど」
「ふ……。やられたな」
「いやあ、今回のことは、あの二人の手柄です。提督ほどじゃないですけど、二人合わせて一個艦隊に相当する働きをしましたね。ありゃあ、一介の艦長やパトリシアの副官にしておくには、もったいないくらいの人材ですよ」
「そうか……かもしれないな」
「だいたい、敵の三個艦隊が迫っているのに、一個艦隊で防衛しろということ事態が間違っているのです。いくら今までにも数倍の敵艦隊を撃破してきた事実があるといえ、それらはすべて奇襲先制攻撃であったから可能だったのであって、今回のように専守防衛の任務にまで同様にうまくいくはずがありません。わざと攻守の立場を変えて奇襲攻撃を敢行したから何とか最終的に敵の手から守れたといえるのに」
 ジェシカはつぎからつぎに憤懣をぶちまけて喋り続けており、アレックスが切り出す機会を与えなかった。いつものことではあるが……。
「アル・サフリエニ宙域に向かうぞ」
 アレックスは切り出した。
「え!? それってまさか……」
「タルシエン攻略を命じられた」
「また、難題を吹っ掛けられましたね」
「それにしてもタルシエンとは、また……」
「やっぱり、ランドール提督を潰そうという魂胆が見え見えじゃないですか」
「とにかく命令が下された以上、行くしかない」
「せめてもの救いは、防衛なんて堅苦しい作戦じゃなくて、攻撃ってところですね」
「そうだ、レイチェル」
「はい」
「早速、あいつと連絡を取ってくれないか」
 あいつとは、ジュビロ・カービンのことである。
 闇の帝王とも呼ばれる天才ハッカー。
「分かりました、ついに例の作戦を始動させるのですね」
「そうだ」
 アレックスが少佐になったばかりの頃、ダウンダウンの廃ビルの地下室にて交わした極秘裏の作戦計画が、ついに長年の時を経て発動することとなったのである。

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v


ファンタジー・SF小説ランキング


小説・詩ランキング



11
2021.04.16 12:51 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

- CafeLog -