銀河戦記/鳴動編 第一部 第七章 不時遭遇海戦 Ⅰ
2020.12.31

第七章 不時遭遇会戦




 ディープス・ロイド少佐と配下の二百隻の艦船を加えて、アレックスの独立遊撃艦隊はさらに陣容を高めた。
 アレックスは新生部隊の今後を検討するために、司令室において三名の少佐及び大尉、そして各参謀らを交えて協議を計ることとした。
「カラカス基地という要衝を得たことで、当面の我々の課題はこれを死守することである……と、統帥本部の命令ではあるのだが……。そこで今後を鑑みて、我々が直面する問題点と解決方法などについてみんなと協議したい。活発なる意見交換を期待する」
 と言い終えて席についた。
「正直なところ、当基地を守り抜くには艦数が極端に不足しているのは明白なる事実でしょうね」
 ゴードンが最初の口火を切った。
「不足なんて比ではありませんよ。たった七百隻でどうしろというのですか」
「レナード・エステル大尉の言うとおりです。守備にたかだか七百隻。軌道衛星砲を有効に活用するためには、最低一個艦隊は必要です。敵迎撃ミサイルによる衛星砲の破壊を守り、艦隊の接近を許さないためにも」
「衛星砲には攻撃力はあっても、防御力はないに等しいからな」
「衛星砲の攻撃力と守備艦隊の防衛力があってこそ、相乗効果をもたらして堅固な要塞としての機能を果たすことができるのです」
 カール・マルセド大尉の発言に頷く一同。
「レナードとカールの言い分はわかるが、ないものねだりしても詮無いこと。出来る限りを尽くし、やるだけのことをやるだけじゃないのか」
「そうはいいますがね……」
「いっそのこと燃料採掘プラントを破壊して、軌道衛星砲を引き揚げてシャイニング基地に戻るというのは?」
「それはいいかも知れない。元々我々は第十七艦隊に所属しているわけだし、シャイニング基地に軌道衛星砲を取り付ければ守備力は増強されます」
「それは無理だよ。軍部が許すはずがない。チャールズの野郎は、無茶苦茶な作戦指令を与えて、我が部隊をあわよくば殲滅させようと考えているんだ。そんなことしたら敵前逃亡罪だぞ。奴に格好の題材を与えるだけじゃないか」

 しばらく一同の会話に耳を傾けていたアレックスであったが、弱気な意見ばかりにたまりかねて、喝をいれるべく発言した。
「君達は戦う気があるのかね。聞いていれば先程から、艦の絶対数が足りないとか、援軍を要請できないのかとか、弱気な発言ばかりじゃないか。もっと前向きな意見はでてこないのか」
「そうはいいましても……」
「それでは司令には、よい試案がおありなのですね」
「もちろんだ。私は、君達がまるで足りないと愚痴をこぼしているたった七百隻をもって、敵艦隊を撃滅する作戦を考えている。たとえそれが一個艦隊だろうが三個艦隊だろうが、相手にとって不足はない作戦をね」
 一同から感嘆の吐息が漏れた。
「司令の作戦を聞かせていただけませんか」
「話してもいい。だが、君達はそれでいいのかね。作戦会議と称してこれだけの人数が集まりながら、最初から諦めてかかって何ら建設的な意見を述べないまま、結局司令である私の作戦に従うだけとは、悲しいとは思わないか。それで作戦が実行され勝利を得てもすべての戦果は私一人の功績になってもいいのだな。功績をあげ昇進したいという武人の心構えがまるでない。情けないことではあるが、私は君達の任を解き、新たなる参謀を選ぶことにする。それでいいんだな」
「ま、待ってください」
「待ってどうする」
「もう一度、考えなおさせてください」
「いいだろう。だがな、今この瞬間にも敵艦隊がこの基地に押し寄せているかも知れないのだ。一秒の遅れが命取りになることを、君達は理解していないのか。基地を防衛するということは、基地周辺に待機して迎え撃つことばかり考えているようだが、何も敵が接近するまで待っている必要はないではないか。極論をいえば、こちらから出向いていって敵艦隊が要塞を出撃するその瞬間を叩く、発進口に向けてミサイルをぶち込むということも、作戦の一つと考えられないか。誰しもが不可能だと考えられる作戦を可能にする手段を講じられないか、尋常ならざる作戦でもどこかに突破口はあるものだ。先程私は敵艦隊を撃滅する作戦を考えていると言ったが、そのためには第一に、敵艦隊がいつ・どこから・どれくらいの兵力で出撃してくるか、という情報の収集。第二に、進撃ルートの割り出しと攻略ポイントの策定。第三として、最終防衛ラインの設置。そして、すべてを看破された場合のための、カラカス基地からの安全なる撤退マニュアルが必要だ。これらの何一つ欠けても作戦は成り立たない」
 いっきにまくしたてるように論じていたアレックスだが、一息つくように声の調子を落としながら話しを続けた。
「私の考えを理解できない者或は賛同できない者は、直ちにこの場を退出したまえ。そうしたからといって誰も非難はできないはずだ。そもそも我々に課せられている任務自体、常識を逸脱しているくらいだからな。五分待とう、その間に結論を出し給え。退出するもしないも、君達の自由だ」
 そういって、アレックスは立ち上がり窓際に歩み寄った。
 一分立ち、二分立ち、そして五分が過ぎ去った。
 誰も動かなかった。
 ゆっくりと振り向き、再び席に戻るアレックス。
「どうやら私の考えを理解してくれたようだな。さて……カラカス基地の防衛にかかる作戦は、ひとまず宿題としておこう。まずはその前にやらねばならない、キャブリック星雲での戦闘訓練のことを先に片付けよう」
 一同を見回しながら言葉を続けるアレックス。
「ともかく新しく配属されてきた隊員達の訓練が必要となるだろう。特に搾取した敵艦船に搭乗する隊員はなおさらだ。ということで……訓練航海のことは私は口を出さないでおこうと思う。作戦立案からすべて、君達にまかせることにする。作戦が決まったら一応報告したまえ。それではこれで私は失礼する」
 というと、参謀達を残して会議室を退室してしまった。

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2020.12.31 15:25 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅹ
2020.12.30

第六章 カラカス基地攻略戦




 準旗艦ウィンディーネに戻るゴードン。
 副指揮官のレナードが挨拶する。
「お帰りなさいませ。オニール少佐殿」
 すでにゴードンの昇進は知らされていたので、新しい階級で呼びかわしていた。
「どうだい、シルフィーネを追い出された気分は?」
 レナードは大尉に昇進したものの、実質的な指揮統制の経験がほとんどなかった。準旗艦シルフィーネにいても、上からの指令をそのまま伝達するだけでしかなかったからだ。上官であるアレックスの昇進にともなって自動的に大尉までになったばかりなのだ。ゴードンの下で指揮統制の研修中である。
「からかわないでくださいよ。ところでそちらの女性は?」
「ああ、彼女は……」
「シェリー・バウマン少尉です。オニール少佐の副官を仰せ付けられました」
 自ら自己紹介をするシェリー。
「こちらこそ、レナード・エステル大尉です」

 ガデラ・カインズが準旗艦ドリアードに戻ると、第二分隊副指揮官のカール・マルセド大尉からの報告を受けた。
「第二分隊の編成艦数二百隻。乗員の配備及び弾薬以下食料・燃料等の積み込を完了し、いつでも出航可能です」
「ご苦労だった」
「あ、とそれから……」
「ん?」
「佐官に昇進、改めておめでとうございます」
「あ、ああ。ありがとう。君も大尉だったな」
「はい。本来なら後四・五年はかかるはずでした。それもこれもランドール中佐のおかげといえるでしょう。ランドール司令が着任してきた当初は、カインズ大尉を差し置いてと憤慨もしましたが、今では正直に感謝したいと思います」
「そうだな……」
 確かにカールの言うとおりである。ランドールの奇抜な作戦と決断力が、大勝利をもたらして、結果的に昇進を早めたのは間違いない。
 特にクラスの変わる大尉から少佐への昇進には、監査委員会が実施する昇進試験(実戦を含む)や面接が行われ、司令官としての作戦能力や適正が調査されたのちに、承認されてはじめて官位が与えられることになっている。
 しかし、ランドールがそうであったように、名誉十字勲章が授与されるような素晴らしい戦功を挙げた場合などは、特例として無監査で官位が与えられる。
 カラカス基地の奪取という功績により、ゴードン及びカインズ両名は、無監査による昇進を認められたのである。
「おっと、そうだ。紹介しておこう。今度、俺の副官として着任することになった。パティー・クレイダー少尉だ」
「パティー・クレイダーです。よろしく、お願いします」
「こちらこそ。副指揮官のカール・マルセド大尉です」
「マルセド大尉は、準旗艦ノームにいたのだが、エステル大尉と同様に、佐官昇進の準備のため、私のドリアードに第二分隊副指揮官として来ることになったのだ」

 そしてディープス・ロイドが、準旗艦シルフィーネの艦橋に現れた時、艦長以下の艦橋勤務要員から熱烈歓迎を受けたのであった。
「少佐殿。よくおいでくださいました。我々一同、ご命令とあれば即座に最善をもってお仕えいたします」
 シルフィーネの乗員達は、自分達が敬愛する司令官がディープス・ロイドを指揮官として自艦に乗り込ませたことで、彼が信用に足りる人物であることを悟ったのであった。
 サラマンダー以下のハイドライド型高速戦艦改造II式には、アレックスが少尉時代に指揮していた艦長以下の乗員達が乗り込んでいる。つまりはアレックスと共に生死を分かちあってきた懐刀といえる存在なのである。その大切な艦を任せるということは取りも直さず、ゴードンやカインズそしてジェシカに並ぶ者として、作戦部隊の要として位置付けているということであった。
「それでは艦内をご案内いたします」
 バネッサはロイドを連れて、艦内の重要施設を案内して回った。
「ここが、少佐殿のお部屋になります」
 施設を一通り説明して、最後に居住ブロックの私室に案内した。
「一つ確認したいが……ここの艦橋要員は、女性士官ばかりなのか?」
「はい。交代要員も含めて全員女性です。もちろん旗艦サラマンダーを含めて準旗艦すべてが指揮官を除いてそうなっています」
「そうか……」
「指揮官殿は、女性に偏見を?」
「いや。そんなことはない。がしかし、男が俺だけという境遇に慣れるのが大変だなと思ってね。お手柔らかにたのむ」
「はい。でも、旗艦サラマンダーに比べれば、男女比はまだそれほどでもありませんよ」
「まあ、旗艦となれば、戦闘そのものよりも、作戦・通信・管制が重要な役割を背負
っているから、自然女性オペレーター士官も多くなるだろうな」
「少佐に関わる施設などの案内は以上です。艦橋に戻りましょう」
「そうだな」
 バネッサに従い艦橋へと戻るロイド。
「アレックス・ランドールか……ついていく価値のある人間であることは確かなようだ」

 第六章 了

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2020.12.30 15:16 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅸ
2020.12.29

第六章 カラカス基地攻略戦




 ともかくも、連邦軍前線補給基地奪取作戦は被害を最小限に食い止めて、無事に成功して終了した。
 その功績を認められてアレックスは中佐に昇進し、ゴードン、カインズは少佐に、また多くの士官達もそれぞれ昇進を認められた。一年経てば自動的に昇進の権利を有していたが、それが三ヶ月に短縮したのだ。
 またカラカス防衛の重要さが指摘されて、第十七艦隊から増援としてディープス・ロイド少佐率いる部隊が合流してアレックスの配下に収まった。
 アレックス率いる独立遊撃部隊は、搾取した改造艦艇三百隻とロイド少佐の二百隻の艦艇を合わせて七百隻からなる部隊となり、軌道ビーム砲に守られた惑星カラカスという前線補給基地を得たのである。

 もちろん報道部がそのニュースを逃すはずがなかった。
 早速報道特別番組が組まれて作戦の詳細を事細やかに伝えたのである。
「またもやランドール、電撃作戦によって大勝利をもたらす」
「僅か二百隻で、敵一個艦隊を翻弄してこれを敗走させ、敵基地の奪取に成功する」
「三ヶ月で昇進、たった一度の戦闘で中佐となる」
 といった見出しが報道各誌やTVを賑わしていた。
 それによってアレックスの率いる部隊への転属・配属希望が殺到した。それによって搾取した艦艇の必要乗員はすぐに埋まることとなった。

 ゴードンとカインズがアレックスに呼ばれて司令官室に入ると、前面の司令官席に座るアレックスと側に立つパトリシア、そして見知らぬ女性士官三名が待機していた。
 アレックスの前に並んで立つゴードンとカインズ。
 目の前の机の上には少佐の任官状と階級章が並べられていた。
「今回の作戦において、カラカス基地の奪取と敵艦船の捕獲に成功したのは、君達をはじめ配下の将兵達の功労であることは言うまでもない。その功績によって、多くの将兵が昇進を認められることとなった。ゴードン・オニール並びにガデラ・カインズ。両名は少佐に昇進、それぞれ二百隻を率いる部隊司令官に任命する」
「はっ! ありがとうございます」
 ほとんど同時に最敬礼をほどこす二人。
「それからと……」
 と女性士官の方に目を移しながら言葉を繋ぐアレックス。
「こちらにいるのは、シェリー・バウマン少尉とパティー・クレイダー少尉だ。君達の副官として着任することになった」
「副官ですか?」
「シェリー・バウマン少尉」
「はい」
 先に名前を呼ばれて一歩前に進み出て起立姿勢をとる女性士官。
「高等士官学校パテントン校舎卒業。旗艦リュンクスに配属、特務科情報処理担当。ゴードン・オニール少佐の副官として着任する」
「シェリー・バウマンです。よろしくお願いします」
「しかし、自分にはウィンザー中尉という副官がいますが」
「うーん。ウィンザー中尉は情報参謀として、やはり私のそばにいたほうが良いと判断した。済まないが納得してくれ」
「わかりました。納得はしたくありませんが……命令ですから」
 ゴードンとて、アレックスの判断は十分に理解できた。情報参謀が別の艦艇にいたら、重要な情報の伝達に支障が生じることは判りきっている。通信は傍受される危険があるし、いちいち艦と艦を行き来するわけにもいかない。

「パティー・クレイダー少尉」
「はい」
 続いて、一歩進んでシェリーの横に並ぶ女性士官。
「高等士官学校ジャストール校舎卒業。旗艦リュンクスに配属、飛行科航空作戦担当。ガデラ・カインズ少佐の副官として着任する」
「パティー・クレイダーです。よろしくお願いします」
「両名とも旗艦リュンクス勤務からこの独立遊撃部隊への転属申請が受理されてここに来た。最前線に志願するくらいだから、やる気は十分、副官として才能を発揮してくれるだろう。ま、よろしくやってくれ」
「わかりました」
 だが女性士官はもう一人残っている。
 インターフォンが鳴った。
「中佐殿。ディープス・ロイド少佐がお見えです」
「通してくれ」
 ドアが開いて、統帥本部からの転属命令によってアレックスの配下となったディープス・ロイド少佐が入室してきた。
「ディープス・ロイド少佐。本日付けをもって、アレックス・ランドール中佐の部隊に配属を命じられました」
 踵を合わせて敬礼して申告する少佐。
「よく、いらしてくださいました。歓迎します」
「はい」
「バネッサ・コールドマン少尉」
「はい」
 一歩進んで直立するバネッサ。
「高等士官学校スベリニアン校舎卒業。独立遊撃部隊準旗艦シルフィーネ配属、戦術科戦術作戦担当。ディープス・ロイド少佐の副官として着任する」
「バネッサ・コールドマンです。よろしくお願いします」
「彼女は、私の後輩で卒業と同時に我が部隊に配属されている」
 バネッサは、士官学校入学当初からアレックスに目を掛けられ戦術理論を直接叩きこまれた唯一の人物である。アレックス流の戦術をもっとも熟知しているので、転属してきたばかりのロイド少佐に進言できる的確な人選といえた。
「ロイド少佐には、旗艦部隊三百隻を統率していただきます。高速戦艦シルフィーネを準旗艦として坐乗してください」
「シルフィーネですか、あのハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式の」
「そうです。たった五隻しかないタイプだから、旗艦が一目で判って便利ですからね」
「しかし確かシルフィーネには、レナード・エステル大尉が搭乗していたのではないですか」
「レナードには、副指揮官として、ゴードン少佐の下に置くことにしました。彼は、首席主任大尉ということで、少佐への昇進に係る査問委員会による監査と試験を控えている身です。ゴードンには教育官として指揮統制のありかたを教育してもらっています。ですから、遠慮することは何もありません。十二分に采配をふるってください」
「わかりました」
「シルフィーネのことは、このバネッサが良く知っています。判らないことがあれば何でも遠慮なく聞いてください」

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2020.12.29 08:41 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅷ
2020.12.28

第六章 カラカス基地攻略戦




 散開した部隊の直中を中央突破する敵艦隊。
 その光景を眺めるサラマンダー艦橋のオペレーター達。
「敵は撤退を始めたようです」
「予定通りですね。撤退する艦隊を追い詰めて、必死の反撃を誘うことはありません。こちらの被害を最小限に食い止めつつ、射程内の敵だけを確実に撃ち落とせばいいのです」
 撤退中の敵艦隊といえど数に圧倒的な差があるため、油断していれば部隊全滅の危険もある。慎重に防御体制をとりつつ、確実に目前に迫る敵艦隊を落としていく。
 数時間後、戦闘は終了した。
「レーダーに敵の艦影姿なし。敵艦隊、完全に撤退したもよう」
「上空の部隊に連絡をとってくれ」
 正面のパネルスクリーンにゴードン以下の各編隊長が映しだされた。
「ゴードン、済まないが。そのまま哨戒の任務についてくれ。指揮はまかせる」
「了解した。ただちに哨戒任務に入る」
「ジェシカは被災した艦艇の救援活動だ。一人でも多くの負傷者を助けだしてくれ」
「わかりました」
「パトリシア、本隊及びカインズ隊は基地に降下して、基地の施設内で抵抗する残存兵士の掃討と艦艇の燃料補給だ。それが済み次第本隊をゴードンと交替させる」

 さらに数時間後、施設内の残存兵士の掃討も済み、アレックスは配下の者達を集めて、今回の作戦の結果報告と今後の対策などを検討することにした。
「さて、とにかく被害報告を聞こうか」
「はい。味方の損害は七隻が大破して航行不能、三十六隻が中破するも修理可能です」
「死傷者は?」
「十八名が死亡。重傷五十六名。そして行方不明が三名です」
「そうか……」
 たとえ作戦に勝利したとしても戦死の報告を聞くことは悲痛の念にたえない。
 一人の戦死者も出さずに戦いを勝ち抜くことは有り得ないことである。それが殺し合いの戦争である限り。敵味方双方とも、味方の屍を乗り越えてより多くの敵兵士を殺戮して明日の戦勝を目指すのである。戦争に勝つためには、味方が五十万人戦死したならば、敵を百万人殺せばいいのである。敵の反攻を許さぬためには、撤退する艦隊とて徹底的に叩いて撲滅掃討するのが常道である。
 この点において、敵艦隊の撤退を許したアレックスの行動は手緩いといえる。威嚇だけでなく軌道ビーム砲を使って全滅させれば、捲土重来けんどちょうらいの機会を与えることもなく、敵の兵力一個艦隊を確実に削ぎ落とせたのである。しかしアレックスはそうはしなかった。それは軌道ビーム砲の射程内には味方の部隊もいるのだ。パトリシア、レイチェル、ゴードン、カインズ、その他大勢のアレックスの忠実で有能な部下達がいる。誤射や流れ弾、敵艦の誘爆に巻き込まれることもある。アレックスはそれを危惧したのである。敵艦隊の撲滅よりも部下が生存する方を選んだのである。
「今回の戦闘では、百数十隻の敵艦艇を撃破した模様です」
「撃破率でみますと、七対百数十という好成績で、かつ補給基地を奪取したのですから、我が部隊の圧倒的勝利といえますね」
「ところで基地には約三百隻の敵艦艇が残されていますが、いかがなされますか」
「搾取した艦艇の処遇は、その司令官に一任されている。もちろん我が部隊に編入するさ。敵艦の運航システムを同盟のそれと入れ替えてな」
「運航システムの入れ替えとなると、システム管理部のレイティ・コズミック少尉が責任者として最適でしょう」
「そうだな。カインズ大尉、配下の者を使ってレイティと共に作業に入ってくれ」
「わかりました」
「それから、それを実際に運用する乗員も必要だ。パトリシアは、早速本部に連絡して至急人員の補充を要請してくれ」
「はい」
「レイチェルは、三百隻の艦艇を編入するにあたっての部隊再編成と人員配置を検討してくれたまえ。本隊として二百隻、残る三百隻を二分して、ゴードンとカインズにそれぞれ百五十隻ずつの分隊として編成させる。その際、高速艦艇を優先的にゴードンの分隊に振り分けてくれ」
「それはどうしてですか」
「ゴードンには機動遊撃部隊としての任務を考えている」
「機動遊撃部隊?」
「本隊に対峙する敵部隊の側面や背後に高速で回りこんで攻撃を加える役目というところかな」
「ほう……俺にぴったりの役目じゃないか。アレックスもやっと俺の性格を理解できるようになったか」
 一同の視線がゴードンに向いた。同僚とはいえ上官であるアレックスに対する言葉使いが問題なのであった。勤務時間以外では私語や馴れ合いも許しているアレックスではあっても、今は会議ルームであり公務執行中である。上下関係は厳守されなければならない。
 パトリシアがわざと軽い咳をしてゴードンに注意を促した。すぐに気がついたゴードンは、改めて言葉を直して答えた。
「失礼しました、司令官殿。喜んでその任務お引き受けいたしますが、カインズ大尉には何を?」
 両大尉にそれぞれ同数の分隊の指揮を任せているのであるから、ゴードンが機動遊撃部隊なら、カインズにも別の任務を与えられていいだろう。誰しもが考えることであった。
「カインズには、当面このカラカス基地の防衛指揮官をやってもらうことにする。第八艦隊が守るクリーグ基地、第十七艦隊の守るシャイニング基地、両基地と比べても遜色のない設備と資源を有した戦略重要拠点である。それを若干の部隊だけで守らねばならない。軌道衛星砲があるとはいえ、油断すれば我々が攻略した二の舞を踏む結果ともなりえない。要は部隊と衛星砲の運用次第で、それを完璧にこなせるのはカインズをおいて他にいない」
「かしこまりました」

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2020.12.28 18:00 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅶ
2020.12.27

第六章 カラカス基地攻略戦




 その頃サラマンダー艦橋で待機するパトリシアは、じっとパネルスクリーンに映る惑星を凝視していた。
「敵守備艦隊に動きはありませんか?」
「いえ、ありません。軌道ビーム砲の射程内に陣取ったまま動こうとはしません」
「予定通りですね……」
「我が部隊は、このまま動かないでいいのでしょうか」
「我々の任務は敵の注意をこちらに引き付けておくことです。こちらから攻撃を仕掛けることはしません」
「しかし敵が攻撃に転じたら?」
「それはまずないでしょう。敵守備艦隊の司令官は、温厚実直なダンヴィッド・バンダイン少将。性格は攻撃より防御に徹するタイプです。危険を冒してまで出て来ることはないでしょう」
「それでも出てきたらいかがなされますか?」
「もちろん逃げます」
「逃げる?」
「そうです。作戦が成功するも失敗するも、我が本隊は戦うことなく予定時刻を過ぎればいさぎよく撤収せよ。というのが少佐の指令ですから」
 オペレーター達は互いに目を合わせて肩をすくめていた。
「あれから三時間になるわね」
 レイチェルがパトリシアに声をかけた。
「はい」
「万事順調にいっていればそろそろ連絡が来るころかしら」
「そうですね。作戦予定X時までには三十分後です」
 その時通信が入った。一斉に通信士に注目する士官達。
「突撃部隊より連絡。敵基地コントロール塔の占拠に成功したとのことです」
 艦橋の士官達が小躍りして歓声をあげた。
「やったわね」
 レイチェルがパトリシアの肩に手をおいて微笑みかけた。
「はい」
「作戦の第二段階に移りましょう」
「そうですね。軌道粒子ビーム砲を回避するため部隊を散開させます」

 一方管制塔を占拠したアレックス達は、軌道衛星砲の発射準備に取り掛かっていた。
「味方部隊は?」
「作戦の第二段階に入っております。この角度からなら軌道粒子ビーム砲を発射しても被害はでません」
「よし。軌道粒子ビーム砲の発射準備だ。目標は、敵守備艦隊」
「了解。軌道粒子ビーム砲、発射準備にはいります。目標、敵守備艦隊」
「エネルギー回路解放。軌道砲へエネルギー充填開始」
「敵艦隊捕捉。距離十七宇宙キロ、発射角調整値入力」
 中央パネルスクリーンに投影されたそれぞれの軌道砲の数値が次々と変わっていく。やがて修正完了した軌道砲からロックオン表示されていく。
「一号機から十二号機まで全機発射体制に入りました」
「まず威嚇攻撃を行うとしよう。一号機、敵守備艦隊すれすれに目標修正だ」
「了解。一号機の発射角微調整開始、上下角を四度ずらして固定」
「発射OKです」
「よし。発射!」
「発射します」
 軌道ビーム砲から一条の閃光がほとばしる。

 守備艦隊の艦橋。
「後方よりエネルギー波急速接近!」
 オペレーターが叫んだ。
「何だと!」
 守備艦隊のすぐそばをすれすれに通過するビームエネルギー。
「軌道ビーム砲が発射されました」
「馬鹿な。味方を撃つつもりか」
「司令! 敵より入電です」
「読んでみろ」
「読みます」
『補給基地はすでに我々が占拠した。軌道ビーム砲の餌食になりたくなければすみやかに降伏せよ』
「以上です」
「なんだと! いつのまに敵の手に落ちたのか」
「わ、わかりません。基地が完全に敵の手に落ちたのかどうかは不明ですが、少なくとも軌道衛星砲のコントロールを握られてしまったということは確かです」
「くう……。一戦も交えずに降伏しろというのか」
「閣下。軌道衛星ビーム砲を奪われてしまった以上、戦況は我が艦隊の方が不利です。もはや降伏か逃亡かのどちらしかありません」
「降伏か逃亡だと?」
「どうやら敵艦の数は情報通りの二百隻と少数ですし、軌道ビーム砲を避けるために散開しています。基地を放棄して中央突破を図ればそれほどの被害を受けずに撤退することができます」
「仮に撤退できたとしても、基地を敵に渡したとなれば厳罰は必至である。それに基地に残した部隊を見殺しにしろというのか」
「それはそうですが、あくまで基地防衛にこだわり、より多くの忠実な部下達を無駄死に追いやるのは閣下の不徳とするところではありませんか。ここは涙をのんで撤収し、捲土重来をお計りくださいませ」
「捲土重来か……果たしてその機会があるかどうか」
「閣下……」
「わかっている。ここは撤収する。紡錘陣形を取りつつ、最大戦速で敵の包囲網を突き崩して脱出する」
「了解!」
 速やかに撤退行動に入る守備艦隊。
「それにしても、アレックス・ランドール……またしても奴の術中にはまったというわけだ。ただ者ではないな」
「二十分の一以下の艦艇でありながらも、平然と作戦遂行を果たしてしまうなんて、よほどの自信家か、さもなくば楽天家のどちらかですね。尋常な精神の持ち主ではないでしょう」

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2020.12.27 18:11 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

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