銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅸ
2021.04.10
第十一章 帝国反乱
Ⅸ
アルビエール侯国首都星サンジェルマン、執務室で談話するアレックスとハロルド侯爵。
「どうやら摂政派は、サセックス侯国を自陣に取り込もうと画策しているようです」
「当然でしょうね。味方は多ければ多いほどいいですから」
「こちらも交渉した方がよろしいのではないでしょうか?」
「そうなのかもしれませんが……。紛争が泥沼化した際には、仲裁役として中立を保っていて欲しいものです」
「しかし反乱を起こした側にとっては、溺れる者は藁をも掴むです」
「そうですね。取りあえずは、保険を掛けておくとしますか」
数日後。
サセックス侯国のエルバート侯爵の館を訪れた使節団があった。
使節の代表は、ロベスピエール公爵の懐刀のマンソン・カーター男爵である。
応接室で応対するエルバート侯爵。
「早い話が、味方になれということですかな」
「その通りです」
「我が国が、バーナード星系連邦に対する盾になっていることはご存じですよね」
「はい。しかし連邦は、革命直後で侵略する可能性はありません」
「それは分かっております。とはいっても、アルビエール侯国側にしても、同じことを考えておりましょう。どちらか側の肩を持つというのは、不公平というものです」
数時間後。
館から出てくる使節団。
「想定通りだったな」
「仕方ありませんね。やりますか?」
「無論だ。後はドレーク提督に任せよう」
やがて乗ってきた車で帰ってゆく。
宇宙空間に十二隻の宇宙船が停止している。
その中心にフランシス・ドレーク提督の乗船する私掠船カリビアン号。
かつて海賊として帝国内を荒らしまわった船である。
久しぶりに仲間を招集して海賊団を結成したのだった。
船橋では、今しがた通信が終わったばかりのところ。
「男爵は、説得に失敗したか……。まあ、想定内だ」
「次は我々の番ですね」
「標的は今どこにいる?」
「今の時間は、女学院にいるはずです」
「よし! 先に潜入している奴と連携して、下校するところを襲うぞ!」
「彼女は、送り迎えの車で通学しています」
「運転手は殺しても構わん。娘だけ誘拐できれば良い」
数時間後。
数隻の高速艇が惑星へと降下していった。
女学院から公爵家へと向かう自動車。
車内で本を読んでいる少女。
その自動車の前方に出現する高速艇。
道を塞ぐように停止する。
何事かと車を降りてくる運転手だったが、バタリと地面に倒れてしまう。
高速艇から数人の男達が降りてきて、自動車を取り囲む。
怯えている少女。
「お嬢さま、お迎えに参りました」
ドアを開けて、降車を促す男。
「おとなしくして頂ければ、危害は加えませんから」
逆らってもしかたがないと思った少女は、言われるままに男達に着いてゆく。
少女を乗せた高速艇は上空へと飛び去り、待機していた私掠船に合流する。
やがて、どこかへと消え去った。
その私掠船の後を密かに追跡する一隻の船。
その機影はレーダーからは確認できず、肉眼でも視認できない。
歪曲場透過シールドで守られていた。
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