冗談ドラゴンクエストII 冒険の書・3
2019.12.27

冗談ドラゴンクエスト II 冒険の書・3


勇者「おい、王子」
王子「なんでしょう?」
勇者「いや、呼んでみただけだ」
王子「はあ……」
勇者「うむ、やはり話し相手がいるというのはいいもんだ」
ナレ「あの……わたしもいますけど」
勇者「おまえは、話し相手じゃないだろ。テレパシーでの会話だし、他人の目には俺がブ
ツブツと独りで呟いている危ない奴と思われてるんだぞ」
ナレ「それはどうもです。冒険のストーリーを端折ってサマートリア王子を仲間にするの
を急いだのはそのためだったのですね」
王子「あの……。誰と話しているんですか?(ナレとの会話は聞こえていない)」
勇者「ほらな」
ナレ「納得しました」
勇者「もう話しかけないで、解説だけしてろ」
ナレ「判りました」
勇者「ところで王子よ」
王子「なんでしょう?」
勇者「おまえ、なんでレベル1なんだよ」
王子「はあ?」
勇者「だってよ。モンスター徘徊する平原や洞窟を難なくクリアして、あっちの町、こっ
ちの城と廻り廻ってきたんだろ?レベルアップしてて当然だろ」
王子「実はですね、一人じゃ怖くて逃げ回ってたんですよ」
勇者「逃げ回ってた?洞窟なんか狭い通路じゃ逃げられないだろ?」
王子「穴掘って隠れたり、水の中に潜ったりして、モンスターが通り過ぎるのを、息をひ
そめてました」
勇者「とんでもねえ奴だな。忍者のスキルがあるんじゃないか?」
王子「いやだなあ、ドラクエに忍者なんて職業ないですよ」
勇者「とにかく足手まといにはなるなよ」
王子「わかりました」
勇者「さて、次の行動予定は……『ぎんのカギ』を手に入れることか」
王子「それは、ルリザの北西の湖の洞窟にあると聞きました」
勇者「よし、早速行こう」
王子「その前に、装備を整えましょう」
勇者「おい、武具屋」
武具「へい、らっしゃい!」
勇者「見せてみろや。お勧めは?」
武具「へい。くさりがま330G、くさりかたびら390Gです」
勇者「よし、その二つをくれ」
武具「ありがとうございます。装備されますか」
勇者「おうとも。装備してくれ」
武具「装備しなくてはね。お似合いですよ」
王子「あの……。自分のは?」
勇者「まだ一匹もモンスター倒してないのにか?」
王子「パーティーの面倒を見るのも勇者の勤めではないですか」
勇者「そうはいっても、もう金がねえよ」
王子「外した装備を売ればいんですよ。せいなるナイフくらい買えるじゃないですか」
勇者「しようがねえ、ほれ、せいなるナイフだ」
王子「ありがとうございます」
勇者「じゃあな武具屋」
武具「またのおこしを」
勇者「おい、そこの禿げてるおっさん、なにしてんだ?」
禿男「わっ!いきなり話しかけないでくれ!おしっこが足にかかったじゃないかっ」
勇者「なんだ、たちションか」
ナレ「こうして装備を整えた二人は、北西の湖の洞窟へ向かって冒険を開始したのであっ
た」

11
クローン病?
2019.12.27

○月○日 クローン病?

 とにもかくにも……。
 クローン病である。

 病名が確定すれば治療がはじまるのだが、クローン病には明確なる根治治療法はまだ確
立されていない。
 いわゆる対症療法しかない。
 腸が炎症を起こして腸閉塞となっているわけだから、まずは腸に休養してもらわねばな
らない。
 そのための絶飲食であり、中心静脈点滴によって、高カロリー輸液を滴下して栄養補給
を行う。
 約800キロカロリーの輸液を1日2パック使用する。都合1600キロカロリーで、
1日に必要なカロリーはこれで補える。もちろんナトリウムなどの電解質やビタミンも必
要量含まれている。
 抗生物質や抗がん剤なども投与される。

 実に退屈な日々が続いていた。
 腸閉塞だからといって、手術でお腹を切り開いて閉塞部分を治すわけでもないし、これ
といって有効な治療方法もない難病である。
 ただひたすらに点滴で栄養補給を続け、薬で腸の炎症を抑えて閉塞が治るのを待つだけ。
 時折、レントゲンやCTで状態変化の具合を調べるくらい。
 ただただ、ベッドの上に横になって時間の過ぎ行くのを待ちぼうけの日々。
 何もすることがないので、携帯電話で小説をダウンロードして読んでみる。
 西村京太郎「十津川警部の旅行ミステリー殺人」
 内田康夫「旅情ミステリー殺人シリーズ」
 一冊あたり5~8百円くらいであるが、時間潰しには丁度良い。
 病室では携帯電話の使用禁止が原則である。
 しかし、声を出して電話したり、相手の声が漏れるわけじゃなし、小説を静かに読むく
らいはいいんじゃない?
 見逃してくれるやさしい看護師もいれば、今度見つけたら没収しますなどというお堅い
看護師もいる。
 昼間だと頻繁に看護師がやってくるので、こっそりと読むには夜中ということになる。
 昼間に寝て、夜に起きているという、昼夜の逆転が起こり始める。仕事に就いているわ
けではなく、一日が丸ごと自由時間なので可能なのであるが。
 毎朝4~5時頃に、血糖値の検査がある。たいがいその時間帯は起きている。
 高カロリーの輸液を点滴しているので、血糖値を常に把握しておかなければならないら
しい。
 指先を針で刺して血を採集する。毎回痛い思いをするが一瞬のことである。
 さらに1週間に一度、血液採集もある。

 やがてお待ちかねの、経口食事療法がはじまる。
 腸の炎症が治まり、腸閉塞が改善されたかどうか、ちゃんと食事が摂れなければ、退院
はできないので重要である。
 消化器系病症の定番メニューコースである重湯(十倍粥の上澄み)からはじまる。
 急転直下のごとく、回復してゆく。
 重湯が三部粥になり、五分粥、八分粥。そして全粥になる。
 ここまでくれば、後は退院の機会を諮るだけである。

 最後に一通りの検査を行って異常が見つからなければ退院ということになる。

 そして無事に退院となったのである。
 おめでとう!!

 とは言っても、難病のクローン病である。
 完全治癒したというわけではなくて、症状が安定している時期(緩解)に入ったという
だけである。
 今後も再燃・再発を繰り返し慢性の経過をとることもある。
 これ以上病院での治療のしようがないので、自宅療養に変えて投薬と栄養管理に委ねる
ということである。
 規則正しい食事と睡眠を取りましょうというわけである。


 それからしばらく平穏無事な毎日が続いた。
 入院生活も通算で6ヶ月を越えて、ずっと病院のベッド生活だったので、体力も落ちて
足の筋肉が痩せ細っていた。
 早朝と夕刻の散歩を日課として、健康増進に努める。

 しかし……。
 そんな私を、次なる病魔が襲ったのである。

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