銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 VⅢ
2019.12.29

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦




「ナイジェル中尉はトラップに気づきますかね」
「最初の一発を食らえばいやでも気づかされるだろうが、時すでに手遅れという状況に
追い込んでやればいいのさ」
「どうやって?」
「オーガス曹長が考えていた手を使わせてもらうさ」
「湿地帯を?」
「いや、山岳地帯を登っていく。途中に開けた場所があって、狙撃には格好の場所だ。
隊を二手に分ける。私のチームが山岳地帯へ向かう。カリーニ少尉は、トラップ地帯か
ら抜け出してきた機体を迎え撃て」
「判りました」
「上手くいけば、こちらは損害を被ることなく全滅させることができるだろう」
「そう願いたいですね」
「第一から第三小隊は私に続け、残る第四から第六小隊はカリーニ少尉と共にここでト
ラップから抜け出てきた敵を攻撃」
「了解!」
「総員機体に乗車!」
 サブリナとカリーニが率いる二隊が分かれて、それぞれの作戦に向かう。

 山岳地帯へと向かう傾斜を登るサブリナ隊。
 やがて開けた場所に出た。
「ここなら眼下を進撃するオーガスらを狙撃することができるな」
 双眼鏡で監視するサブリナ。

 数時間後、ナイジェル中尉率いるB班が登場した。
「B班が森林地帯に入る瞬間を狙うのだ」
「ブービートラップに追い込むのですね」
「ん?ナイジェルめ、気が付きよったな」

 覗く双眼鏡のレンズを通して、同じように双眼鏡でこちらを眺めているナイジェルが
いた。
 と同時に、部下の一人が対戦車用擲弾発射機(ロケットランチャー)を撃ってきた。
 慌てて退避し、難を逃れるナイジェル。
「どうやら、見透かされていたようだ」
 砲弾は至近距離に着弾したものの、砲弾に炸薬は入っていないペイント弾なので人体
被害は免れた。とは言っても、部下三名がペイントを浴びて戦線離脱となった。

 さてどうするか?

 と考えていると、通信士が叫んだ。
「隊長!敵襲です、ミネルバが敵に発見されました。至急訓練を中止して帰還せよ」
 上空を戦闘機が飛び交いはじめた。
 地上にいる所を発見されると、機銃掃射される危険がある。
「分かった!ナイジェルにも伝えろ。総員退却帰還!」
 これからいいところだったのに、という名残惜しさが漂う中、慌ただしく総員撤収が
はじまった。

11
痛風かな?疑わしいけど……
2019.12.29

○月○日 痛風かな?疑わしいけど……

 身体全体の痛みが少し和らいだ頃。
 足指に激痛が走った。
「もう、我慢できない」
 と、入院費は……考えないことにして、生きるために病院へ行くことに決心した。
 もちろん歩けないので、ハイヤーを呼んだ。
 病院にたどり着く、病状からはどこの診察科になるか判断がつかないが、問診表に症状
を記入して、総合受付に提出した。
 結局、前回と同じ主治医の診療科に回された。
 消化器外科である。
 一応総合病院とはいえ、所詮個人経営で診療科の内容にも限りがある。
 問診表の病状に該当する適当な診療科もなく、取りあえず病歴を把握している消化器外
科に当たらせてみようというところであろう。
 尿検査、血液検査、レントゲンと一通りの検査が行われる。
 もちろん歩けないので、車椅子で移動である。

 敗血症、クローン病とたて続けに発症した病歴と、今回の病状からいくつかの病名が考
えられただろう。
 それを特定するためには、入院して精密検査が必要だった。
 こちらは入院の準備は万端整っている。
 早速入院手続きがなされて、再三度の入院生活となった。


「尿酸値が高いですね」
 と言われた。
 尿酸値といえば痛風(高尿酸血症)である。
 男性は4~7mg/dl、女性は3~5mg/dlが正常値で、これ以上だと痛風が疑われる。
 ◇ 発作が起きたのが突然のこと!!
 ◇ 足の関節近辺が腫れていること!!
 ◇ 痛風になりやすい場所に該当していること!!
 ◇ 尿酸値が基準以上に高いこと!!
 足の甲の激しい痛みを考えれば、痛風が一番怪しいと言える。
「痛風ですか?」
 と聞いてみた。
 が、医者は煮え切らない返答しかしなかった。
「痛風の症状はあります。しかし、それだけではないようなのです」
 確かに、痛風が原因なら全身の脱力症状までは起きないし、激痛は二三日でおさまり、
一週間もすれば痛みは和らぐものであるが、今回の症状はいつまでも続いていた。
 何らかの他の病気が関与している可能性が高く、痛風もその合併症として発現している
と思われる。

 最初の頃は、ベッドから起き上がるのも大変だったが、数日するうちに何とか起き上が
れるようになった。
 しかし歩けないので、ベッドサイドに携帯便器、いわゆる【おまる】を持ってきてもら
った。
 投薬は、消炎鎮痛剤の「ロキソニン」他。
 炎症による腫れ、痛みをやわらげる作用があります。とくに痛みに対してよく効きます。
消炎剤では、炎症そのものの原因は治せませんが、炎症に伴う症状を軽くして、治癒を助
けます。内服は上気道炎による炎症・痛み、腰、頸肩腕、関節、慢性関節リウマチ、
手術後、歯科などの鎮痛に、貼付剤は筋肉痛などの鎮痛に用いられます。
 ロキソニンは貼付剤もあるので、足の甲に貼り付ける。
 しかし、足の甲の痛みは一向に治まらなかった。
 血行不良を起こしていたのか、足の指が変色していた。
 もし放置していれば、指を切断する事態にもなったかもしれない。
 少しはロキソニンが効いているのだろう。


 足の甲のレントゲンも撮ったが、ヒビもなくまったくの異常なし。
 整形外科の医師も診察にきたが、
「歩いていますか?」
「いいえ、痛くて歩いていません」
「極力歩いてください」
 と冷たい答えが返ってきた。
 苦しんでいる患者の気持ちを逆なでするような言葉。
 しかし、そこまで言うなら、
「歩いてやろうじゃないか」
 反骨精神が頭を持ち上げる。
 痛みをこらえて、ベッド伝いに歩いてみることにする。
 まずは、立ち上がらなければ始まらない。
 ベッドの落下防止用の鉄柵につかまって、そろりと足をおろしてみる。
 じんじんと痛みが伝わってくる。
 何とか両足で立ち上がることができた。
 しかし歩くために、片足だけに重心がかかるととてつもなく痛い。
 それでも我慢して、ベッド伝いに歩みを進める。
 少し歩いては休み、また歩いては休みしながら。
 医者の方からはリハビリの話が出ないので、自己流でリハビリを続ける。
 やがて短い距離なら歩いていけるようになった。
 トイレにも行けるようになったので、携帯便器をさげてもらった。
 足の痛みは相変わらずも、しっかりとした足取りで歩けるようになった。

 唯一の救いは、今回は消化器の病気ではないので、食事は普通のものが出されているこ
とだった。
 入院中で一番の楽しみなので良かった。

 とにかく痛みを抑える薬を与え、貼付剤を足の甲に貼り付けるだけ。
 治療といった治療はなかった。
 前回のクローン病のことなど、携帯のi-mode検索で特定疾患についていろいろ調べてい
た。
 その中に、重症筋無力症というのがあるのを思い出した。
 自己免疫疾患の一つで、合併症として「全身性エリテマトーデス」「関節リウマチ」な
どがある。
 ということなのだが、入院している病院には該当する診療科はなかった。
 つまり専門家がいないので、明確な診断を下すことができないというわけだ。
 医者の煮え切らない返答も納得できた。

 これ以上、この病院にいても改善の余地はないので、またもや退院を打診した。
 数日して退院の許可が降りた。
 退院はしたものの、結局正式な病名は確定していない。
 退院証明書に記載された病名はまさしく、

 「痛風」

 だった。
 確かに症状は痛風そのものだったし、筋無力症かどうかを明確に診断できる医師がいな
い当病院では、いたし方ないところであろう。
 会計で一悶着が起きた、金がないので払えない、後日払うからと頭を下げた。
 なんとか許してもらって病院を後にする。

 そして、久しぶりに我が家に戻ったのである。
 しかし……。
 想像はしていたものの、長期間閉め切っていた部屋の中は悪臭にまみれていたのである。

 窓を開け換気をして、匂いを追い出す。
 雑菌の繁殖した布団や、着替えた衣類は捨てるしかなかった。
 夏用の布団を取り出して交換する。

 さて、当面の課題としては、ともかく歩くことである。
 リハビリとして、朝昼夕と付近を散歩することにした。
 再三の入院で、筋力も落ちているので、体力の回復が一番である。

 そして……。
 再び病魔が襲い掛かる。


 後日に判ったこととして、全身性エリテマトーデスは、内臓のうちの腎臓を冒すことが
知られている。これによって尿酸の処理が追いつかずに、痛風という症状を引き起こした
のではないだろうか。ただし、全身の痛みと筋無力症までは、判断のできないところであ
る。

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