銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス Ⅷ
2020.03.15

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス




 海底基地司令部。
 ミネルバが入港しており、基地技術者によって修理が施されていた。
「次なる指令は?」
 レイチェルに尋ねるフランソワ。
「そうね。超伝導回路用のヘリウム4が不足しているのよ。まだ我々の支配下にあるマストド
ーヤにある生産・供給プラントへ補給艦と共に向かってください」
「護衛の任務ですね」
「そうです。重要なる物質です」
「こういうことになれは、このトランターに来るときに使ったヘリウム4がもったいなかった
ですね」
「あの時は、致し方なかったと理解しています。新型モビルスーツを届けることの方が重要な
任務だったのですから」
「しかし輸送艦が襲われて、結局敵の手に奪取されました」
「無事に取り返したから良いでしょう。ともかく、ヘリウム4の供給を成功させてください」
「判りました」

 艦の修理と、燃料・弾薬の補給、そして乗員達の休息を終えたミネルバは、海底基地を出立
して再び海上へと姿を現した。
 後方には補給艦が追従してくる。
「サーフェイスには出くわさないでほしいですね」
「その時はその時です。補給艦の護衛を優先させます。たとえミネルバが撃沈されたとしても
メビウス部隊の活動は続くのですから」
「そうですね」
「力の限りを尽くすまでです」
「それにしても、カサンドラ・リスキー・マストドーヤと、敵の手中に落ちたものを、次々と
奪還し続けていますね」
「占領はしたものの、地上部隊の大半をランドール提督が自分の配下にして、メビウス部隊に
編入してしまいましたから」
「でも政府側で造船所などを押さえている総督軍には、いくらでも艦艇の増産が可能ですから、
いずれメビウスも窮地に陥ります。いずれ供給施設などに兵力を集中させて、にっちもさっち
もいかなくなります」
「我々は、いわゆるパルチザンであり政府や総督軍に対する撹乱が任務です。戦艦などの機動
力を機動力を使っての華々しい戦いよりも、敵中に潜入しての破壊・煽動活動の方が、より大
切な任務なのですから。このミネルバは、総督軍の関心を引き付けて、そういった撹乱部隊を
援護することです」


 リンゼー少佐の方も、造船所に戻ってサーフェイスの修復を受けていた。
「酷い有様だな」
 造船所長官が頭を抱えていた。
 期待を込めて送り出した艦が、無残な状態を晒して戻ってきたからだ。
「申し訳ありません」
「仕方ないさ。同型艦で戦力は互角でも、敵は新型モビルスーツを繰り出してきたんだろ?」
「はい。あれが問題でした。完全独立飛翔型な上に、火力も並大抵ではありません」
「うむ。さすがに天才と謳われたフリード・ケースンが開発しただけのことはあるな」
「今頃、タルシエン要塞かシャイニング基地の研究所で、さらなる強力な兵器を開発している
でしょう」
「困ったことではあるが、宇宙の彼方のことは考えても仕方がないこと、我々はトランターの
ことに気を使っていればいいのだ」
「そうでしたね。それはそうとミネルバ級三番艦はどうなっていますか?」
「建造が大幅に遅れている。もしかしたらランドールの反攻作戦開始に間に合わないかもしれ
ない」
「それは辛いですね。ミネルバを撃つのにも、もう一艦あればこれほど苦労はしないでしょう
けれど」
「ランドール提督の策略で、トランター現有の戦艦をみんな取り上げられていたからな」
「トランターが陥落するとは思ってもみなかったでしょう。軍部の中で、ランドール提督は今
日のこの日があることを見越していました。それで杞憂となる戦艦を集め、核弾頭ミサイルを
も手中にした」
「頭の痛い問題だ」
「ところでメビウスの方にも、それなりの基地があるはずですよね」
「たぶんな。おそらく大海のどこか深海底にあると思われるものを探し出すのは、ほとんど不
可能だろう。ランドールも馬鹿じゃない、すべて計算済みさ」
「きびしいですね」
「まあ、気長にやろうじゃないか」
「はい」
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス Ⅶ
2020.03.08

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス




 一方のサーフェイスの方でも、戦闘体勢が完了していた。
「超伝導磁気浮上システム正常に稼働中です」
「光学遮蔽に入るかも知れん、重力加速度探知手は見逃すなよ」
 超伝導磁気シールドは、電磁気を通さず光さえも遮蔽することもできるが、重力を遮蔽
することはできない。
 惑星上で移動するには、重力に逆らって加速しなければならない。その加速度を計測す
るのが重力加速度計である。
「戦艦自体の戦闘能力は互角。後は将兵達の能力次第というわけだ」
「ミネルバの方は、士官学校出たての未熟兵が多いと聞きましたが」
「これまでにも幾度となく戦闘を重ねて、熟練度は向上しているはずだ。特にミネルバと
いう特殊戦艦の運用については、あちらの方が一日の長がある」
「そうですね。ミネルバ級という点では、こちらはマニュアルすら精読してません」
「まもなく、敵艦を射程内に捕らえます」
「待機せよ」
「大気圏内戦闘だ。光学兵器は使用不能と考えてよい」
「ミサイル接近中!」
「来たか!面舵一杯でかわせ」
 艦体が大きく右に動いて、ミサイルを回避した。
 ミサイルは後方で炸裂した。
「無誘導ミサイルのようです」
「なるほど、誘導ミサイルだと磁気シールドで撹乱されるというわけか」
「こちらも無誘導ミサイルで応戦しましょう」

 ミサイルが交わされたのを確認するフランソワ。
「ミサイルの射程が遠すぎたようです」
「次弾装填は?」
「いえ、その余裕はありません」
 サーフェイスは目の前に迫り、長距離用のミサイルは使えない。
「まもなくすれ違いに入ります」
「面舵五度、敵艦の左舷に回る。往来激戦用意!」
「面舵五度」
「往来激戦用意!」
 副長が復唱しながらも、感心する。
「往来激戦ですか……。まるで古代地球史にある大航海時代の海戦みたいですね」
 大航海時代の戦艦には、攻撃手段の艦砲が舷側に固定配置されており、戦闘は舷側を向
かい合わせて互いに撃ち合うというものだった。
 電子兵器は無論ありもしないし、艦長の判断と砲兵長の経験が戦闘の采配を左右した。
いかに有利な位置に船を誘導し、いかに大砲の弾を敵艦に届かせるかである。
 宇宙空間での戦闘における、ランドール戦法もこれに近いものだ。
「敵艦も我が艦の左舷方向に回りこむようです。敵もやる気のようですね」
「望むところだわ。戦闘要員以外は右舷に退避させて。ダメコン班出動準備!」
「了解。戦闘要員以外は右舷に退避せよ」
「ダメコン班出動準備!」
「第一主砲及び第三副砲に艦砲戦発令!砲塔を左舷旋回して待機」

 やがて、ミネルバとサーフェイスが、舷側を向かい合わせる配置についた。
 会戦の第二段階に突入したのである。
「敵艦、艦砲の射程内に入りました」
「撃て!」
 フランソワが戦闘の狼煙を上げた。
 当然、相手も撃ち返してくる。
 激烈なる戦闘が繰り広げられる。


「第十二ブロック第三発電室被弾、火災発生!」
「第十二ブロック、消化が間に合いません!」
「仕方がありません。ハロンガスで消化しましょう」
「第十二ブロック、総員退去して隔壁閉鎖!」
 ミネルバには、火災に対する対応法として、ハロンガス消化法が導入されていた。ハロ
メタン(トリフルオロヨードメタン)による消化で、一般・油・電気火災に対応できるが、
人体に有害であるから、火災区画を閉鎖する必要があった。しかし、消化剤を使わないこ
とから、鎮火後にはガスを排気すれば、すぐに点検なしで機器を使用できる利点がある。
ハロンガスとしては、かつてはブロモトリフルオロメタンが使われていたが、オゾン層破
壊が著しくて1000分の1といわれる、このガスに取って変わられた。
 特に発電室は、戦闘に不可欠重要な施設ゆえに、逸早く復旧が急がれるためにその処置
が取られたのだろう。


 新型モビルスーツも善戦したが、さすがに歴戦の勇士であるリンゼー少佐の方が戦闘巧
者であった。
 宇宙戦艦搭乗の際には、コテンパンにやられたが、今回は同型ミネルバ級機動戦艦同士
である。司令官もだが、率いられる部下の乗員達も戦闘慣れしていた。
 士官学校出たばかりで未熟なミネルバとは格が違った。


 さすがのミネルバも、戦闘巧者のリンゼー少佐によって、大変なことになっていた。
 的確な砲撃が次々に飛来する。敵の砲撃手も熟練者のようである。
「被害甚大!修復もままなりません」
 艦内のあちらこちらで火災が発生していた。
 恒久応急班も手一杯であった。

 だがそれも、サーフェイス側の方も全く同様であった。
「致し方ない。今回は痛み分け、引き分けとしよう」
 リンゼー少佐は、後退の指示を出した。
 このままでは、双方とも取り返しのつかない損害を被るだけ。
 無駄な戦いは続けないという信条のようだった。

 そんな敵側の情勢を報告するオペレーター。
「敵が退きます」
「こちらも後退しましょう。これ以上戦うのは無理です」
「判りました」
 両艦とも背を向けて離れていく。
「応急修理ではとても、巡航速度が出せるまでには回復できません」
「基地に戻って修理するしかないですね。入港許可をとって下さい」
 海底秘密基地の存在を、敵に知られないように転戦してきたわけだが、ここに至っては基地
に戻って、専門の造船技術者に頼るしかない。
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス VI
2020.03.01

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス


VI


 ほどなくして、ミネルバとサーフェイスが対峙することになる。

 ミネルバ艦橋。
「右舷三時の方向より、大型艦接近中です」
「警報!全艦戦闘配備!」
 艦内を駆け回って、それぞれの部署へと急行する将兵達。
「戦闘配備完了しました」
「敵艦の動きは?」
「まっすぐこちらへ向かってきます」
 ミネルバ乗員達の目に飛び込んできたのは、ミネルバと全く同じの巨大戦艦だった。
「あれは、ミネルバ?」
 副官が驚きの声を上げた。
「ミネルバ級二番艦のサーフェイスだわ。完成はもう少し後のことだと知らされていまし
た」
「急がせたのでしょうねえ」
 ミネルバ級は、一番艦のミネルバ、二番艦のサーフェイス、そしてまだ命名されていな
い三番艦まで建造計画が予定されていた。
「同型艦が相手では苦しいですね」
「しかし、やらなければやられます」
「判っています。艦の性能は互角ですから、新型モビルスーツに活躍してもらわなければ
なりません」
「なるほど、新型モビルスーツを奪還したのは、ここまで読んでいたからですね」
「その通りだと思います」
「ミサイル発射管室より、装填ミサイル種を聞いてきております」
「無誘導慣性ミサイルを装填してください」
「了解。無誘導慣性ミサイル装填」
「無誘導ですか……。大昔の戦艦同士における艦砲戦になりそうですね」
「レーザー誘導ができませんからね」
 同型艦なら当然、超伝導磁気浮上システムによる電磁波遮蔽能力を備えている。
 超伝導によるマイスナー効果(完全反磁性)によって、磁力を完全遮断して電磁波を通
さない。
「すべてのセンサーを超音波センサーに切り替え」
 電磁気は防がれても、音波は防げないということだ。
 遮蔽能力を最大限に引き上げると、光すらも通さなくなるが、当然電力消費も莫大とな
り、兵器に回す電力が足りなくなる。防御に徹するならそれでも良いが、ミネルバとの対
決を目指すサーフェイス側としては論外であろう。
 接近するサーフェイスを見つめるフランソワ。
「これより、敵艦サーフェイスとの戦闘になる。レーザー誘導ができないため、自分の目
と感が頼りになる。各砲手は光学側距離計を用いて攻撃体勢に入れ」
 簡単に説明すると、ライフル射撃手がスコープをのぞいて目標を撃ち抜くということだ。
 フランソワも言ったとおり、自分の目と感が頼りということ。
「艦長、これを」
 と、副長が差し出したのは双眼鏡だった。
「ありがとう」
 受け取って、敵の艦影を確認するフランソワ。
「敵艦との推定相対距離、5.7ゲイン」
「距離設定5.7ゲイン」
 発射管室に距離指定が出される。
「合わせました!」
 即座に返ってくる。
「艦首発射管開け!」
 艦首の発射管が開かれてゆく。
 水中・水上にあっては魚雷、空中ではミサイルを発射できる。
「艦首発射管開きました」
「艦首ミサイル発射!」
「発射!」
 艦首から発射されるミサイル。
 噴煙を上げて一直線に敵艦に向かって突き進んでゆく。
 その奇跡を双眼鏡で見つめるフランソワ。
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス V
2020.02.23

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス




 その頃、ミネルバが発進した造船所では、新造なったミネルバ級二番艦の【サーフェイ
ス】の出航式が執り行われていた。
「機関始動開始!」
「超伝導回路に液体ヘリウム注入!」
「浮上システムに異常は見当たりません」
 機関部より次々と報告がなされるサーフェイス艦橋。
 新艦長となったゼナフィス・リンゼー少佐が、造船所長官に挨拶をしていた。
「建造を急がせてしまって済みませんでした」
「なあに、いいさ。君もミネルバ討伐隊の司令官として責任重大だからね」
「これまで煮え湯を味合わせてくれたお礼は、倍にして返しますよ」
「まあ確かに、ミネルバを含むメビウス部隊によって、占領政策にもかなりの支障をきた
している。君達の活躍に期待しているよ」
「ご期待に沿うようにいたします」
 オペレーターが報告をしてくる。
「サーフェイス、出航準備完了しました」
「私は降りるとしよう」
「お手数をおかけしました」
「うん、しっかりな」
「それでは、行って参ります」
 下船する造船所所長に敬礼をしつつ見送るリンゼー少佐だった。

 やがて勇壮と造船所を出発してゆくサーフェイス。
「今度こそ互角の戦いができるぞ」
「砲弾一発で撃沈は辛かったですね」
「ああ、宇宙戦艦では、大気圏戦闘に特化したミネルバは倒せない」
「そのミネルバを早く探し出して雪辱を晴らしましょう」
「そうだな。が、どこをうろついているかだ」
「いずれ情報部から連絡があるでしょうが、パルチザンによて撹乱されていて、正しい情
報がなかなか集まらないらしいです」
「致し方ないな。こちらで独自に探し回るしかないということか」
「運まかせですね。うまく遭遇できれば良いのですけど」
「まあ、何とかなるだろう。何せ相手は、最新鋭の巨大戦艦だ。そうそう雲隠れできるも
のでもない」
「水中潜航を続けていたら?」
「何らかの作戦命令があれば、水中から出てくるだろう」
「そうですね」
「とにかく、いついつまでに掃討しろと期限は切られていないんだ。先は長いさ、のんび
りやろうじゃないか」
「はい、判りました」
「今頃、ランドール提督は何をしているのだろうな」
「噂では、援軍を求めるために銀河帝国へ向かったらしいです」
「銀河帝国か……。この戦いのキーパーソンだな」
「ランドール提督が、銀河帝国を味方に付けて戦いを挑んできたら、ひとたまりもないで
しょうね」
「例え有象無象の連中でも、作戦巧者の手に掛かれば百万馬力さ」
「司令!」
 オペレーターが突如として叫んだ。
「なんだ?」
「たった今、ラグーンのミサイルサイトが破壊されたとの報告がありました」
「たぶんミネルバでしょう」
「ラグーンか……とっくに現場を立ち去っているだろうが、方向性は掴めるだろう。よし!
急行しろ!!」
「全速前進!ラグーンへ」
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス Ⅳ
2020.02.16

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス


IV


 ミサイルサイトの進入口の左右に取り付く新型機。
「準備はいいか?」
 サブリナがナイジェルに合図する。
「いいぞ、OKだ」
 避難のため、扉のサイドに張り付くナイジェル機。
 ブラスター砲を扉に向けて構えるサブリナ機。
「撃て!」
 一条の光跡が走り、扉を破壊する。
 濛々たる煙幕が立ち上がる。
 扉が破壊されると同時に、内部から反撃の一斉射撃がはじまる。
 敵防衛隊の戦闘機を撃破して、安全を確保したミネルバが地上に降下し、モビルスーツ
隊が降ろされてゆく。
 ハイネとオーガスが、それらを引き連れて、サブリナの元に合流する。
 全機が揃ったところで、突撃の合図を待つ。
「ジャン、一発お見舞いしてやれ」
 ナイジェルが指示を出す。
「はいよ」
 ナイジェル・ジャン機の携帯している武器は、スーパー・バズーカ砲(無反動砲)であ
る。
 片膝ついてバズーカを肩に担いで射撃姿勢を取る。
「発射!」
 バズーカが火を噴いて、破壊された扉の奥のトンネル内へと突き進む。
 轟音と共に、行き場を失った爆風・爆炎がトンネルの外へも噴出する。
 隧道という閉鎖空間では、ビーム砲よりも炸裂する弾丸を飛ばすバズーカ砲の方が有利
である。
 内部からの反撃は止んでいた。
「突入せよ!」
 サブリナの号令と共に、全機がトンネル内へと突入した。
「周囲に気をつけろよ」
 どこに敵が潜んでいる判らない、細心の注意を払うのは当然だろう。
 狭い坑道を突き進んでゆくと、広い空間に出る。
 砂丘の地下の固い岩盤の中に構築されていた。
 徹甲弾さえも貫き通すことができないために、モビルスーツによる内部からの破壊作戦
が敢行されたのである。
 敵も黙って侵入を許すわけがない。
 再び銃弾の雨あられとなった。
 敵モビルスーツも出現する。
「おいでなすったぞ。散開!」
「くらえ!」
 アイクがブラスター砲を撃ち放ったのを合図に、一斉に敵に撃ちまくる。
 敵味方入り乱れて、ビーム砲が軌跡を描く。
 弾がなくなれば、脚に装着していたビームサーベルを抜いて切りかかる。

 広い空間とは言ったが、モビルスーツが動き回れば、さすがに狭く感じる。
 閉鎖空間で、銃撃戦を繰り広げれば、当然爆煙が構内に充満して、視界が遮られる。
「赤外線センサーを使用しろ!」
 センサーに映る敵影に向かって撃ちまくり、ビームサーベルを振り下ろす。
「右だ!」
 サブリナのナビに従って、右に向き直って、切りかかってくる敵のビームサーベルを受
け止め、脚で蹴飛ばして倒し、サーベルを敵機体に突き刺す。

 かくの如く暴れまわり、ついにはミサイルサイトを攻略したのであった。
 侵入口から捕虜となった兵士達が、頭に手を置いて出てくる。
 中ではサブリナが、呼び寄せた工兵隊に指示を出していた。
「ミサイルは一つ残らず爆破するんだ」
 次々と爆弾が設置されてゆく。
「隊長!爆弾の設置完了しました!」
「よし!総員撤収しろ」

 ミネルバの艦橋。
「全員退去完了しました」
「よろしい。爆破準備<カウント!」
 起爆装置はミネルバから行う。
「十秒前、9、8……、2、1、爆破!」
 基地全体から凄まじい爆炎が上がる。
 ミサイル発射口の蓋が吹き飛び、侵入口からも爆煙が湧き出す。
 さらに連鎖反応は続いて、砂の山となって大きく隆起した。
「誘爆が続いています」
 やがて鎮火した後には、すり鉢状の陥没ができた。
「もったいない気もします」
 副長が残念がる。
「持ち運べませんし、海底秘密基地ならともかく、場所を敵に知られている以上、利用価
値はありません」
「なるほど……」

 ミサイル基地の完全破壊を確認して、
「本部に連絡。作戦完了、次の指示を乞う」
 通信を終えて、現場を立ち去るミネルバだった。
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