銀河戦記/鳴動編 第一部 第十九章 シャイニング基地攻防戦 V
2021.04.14

第十九章 シャイニング基地攻防戦




「ゴードンを呼んでくれ」
「はい」
 スクリーンにゴードンが映しだされる。
「なんでしょうか」
「君の部隊を基地の周辺に展開させて哨戒作戦に入ってくれ」
「了解! 哨戒作戦に入ります」
「たのむ」
 スクリーンからゴードンの映像が消えて、降下作戦にはいった第八占領機甲部隊「メビウス」のモビールアーマー隊の姿が映りだされていた。
「提督、本星より入電。トライトン少将が出ておられます」
「こっちのモニターに繋いでくれ」
 指揮制御桿のモニターに切り替わった。
「今、報告を聞いた。ご苦労であった。捕虜の方は輸送船団を向かわせて、本国へ送還すればよいとして、問題は捕獲した艦船の処理だろう」
「はい、その通りです」
「敵艦船を搾取した場合は、当該司令官の所轄に入ることになっているが……しかし、六万隻とはな。艦船はともかく乗員の確保がままならないだろう」
「船があっても乗組員がいないことには動かせません」
「乗組員のことはこっちで何とか手配しよう。それよりも、君は軍法会議に諮られることになった」
「軍法会議?」
「一時的にとはいえ命令を無視してシャイニング基地を放棄したことによる軍規違反問題に対してだ」
「そうですか……」
「ともかく至急本星に赴きたまえ」
「わかりました」
 やはりというべきか、来るべき時が来たという状況であった。
「提督!」
 艦橋の士官達がアレックスのまわりに集まってきた。
「今の話しは本当ですか?」
「軍法会議だとか……」
「そういうことだ」
「そんなのないですよ。シャイニング基地を立派に守り通したじゃないですか」
「安心しろ。軍法会議にかけられるのは、私だけだ。君達は、命令に従って作戦を実行したのであって、咎められる筋合いは一つもないからね」
「そんな……」
「この作戦を考えたときから、こうなることは想像はしていたさ」
「でも……」
「艦隊の行動に対して責任を取るのは司令官として当然だ。軍に限らず一般の会社だって、社員が問題を起こせば社長といった重役が連帯責任を取るものだ。そうだろ?」
「そりゃそうですが」
「オーギュスト・チェスター大佐」
「はっ」
「私がトランターに行っている間、副司令官として後のことを頼む」
「判りました。おまかせ下さい」

 アレックスが軍法会議にかけられるということは、またたくまに第十七艦隊全員の知るところとなった。それぞれの艦の至る所でその噂話しがささやかれていた。
 ここサラマンダーの食堂でもその話題で持ちきりだった。
「冗談じゃないわ。なんで提督が軍法会議にかけられなきゃならないのよ」
「シャイニング基地を放棄して、一時的にせよ敵に占領されたことに対してだろうな」
「提督は、あたし達の命を守るために軍法会議覚悟で、あの作戦を実行したのでしょう?」
「そうよ。今度はあたし達が提督をお救いする番じゃないかしら」
「どうするの?」
「軍司令部に嘆願書を送るのよ。それでも聞き入れなければ、第十七艦隊全員離反し
て抗議行動を起こしましょう。あたし達にはそうする義務があるわ」
「だいたい敵の三個艦隊が迫っているというのに、たった一個艦隊で防衛しろというのが無理な命令だったんだよ」
「提督は、他の提督達から煙たがれていたからな。史上最年少の提督ということで何かにつけて因縁つけられる。無茶な作戦を押し付けたかと思うと、その作戦を難無く成功させたらさせたで、今度は任務放棄の廉で責任をとらせようとする。おそらく軍法会議を持ち出したのは、絶対防衛圏守備艦隊司令長官のチャールズ・ニールセン中将に決まっているさ」
「どうやら軍部の大半は、提督を潰しにかかっているんじゃないか。ほら提督は、銀河帝国からの流浪者だっていうじゃないか。それもあるんじゃないかな」
「何いってんのよ!」
「そうよ。人種や身分の違いで人を差別するき?」
「そんなに怒るなよ」
「怒るわよ」
「同盟憲章にだってちゃんとうたわれている条文を忘れたの?」
「それくらい。知っているさ、憲章の第八条だろ」
「なら言わないでよ」
「しかし軍部の連中はそうは思っていない。ランドール提督は、ともかくシャイニング基地の防衛を果たしたうえに、敵一個艦隊の搾取に成功して大将を捕虜にした。功績点はすでに少将の昇進点に達しているという。規定通り少将になれば、すべての准将が年下であるランドール提督の下で従わなければならなくなる。ガードナー提督を除けば二十歳以上離れているんだ、耐えられるか?」
「息子におしりぺんぺんされる父親ってところね。少将や中将連中も気がきではないでしょうね。下から猛烈なる追い上げを掛けられていれば」
「提督の罪ってどれくらいになるのかしら」
「う……ん。一度も戦わずに撤退したのだから、いわゆる敵前逃亡ということになるんだろ、やっぱりさ。……となると最悪で銃殺になるかな」
「銃殺ですって!」
「これが連邦軍のヤマモト長官の艦隊だったらまず間違いないところなんだがね。ほら、あのナグモ長官が自決したのだってその責任をとったんだよね」
「冗談じゃないわよ」
「提督の味方といえば、トライトン少将とガードナー准将くらいでしょう?」
「ここは一つ、より多くの味方を引き寄せるべきよね」
 リンダが何か妙案を思いついたらしく、身を乗り出すようにして言い出した。
「より多くの味方?」
「共和国同盟の一般国民よ」
「そうか、提督は国民の英雄だからな」
「それでね……」

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2021.04.14 07:46 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第十九章 シャイニング基地攻防戦 Ⅳ
2021.04.13

第十九章 シャイニング基地攻防戦




 宇宙空間ではすでに戦闘は終了していた。
 撃破された艦船の残骸や破片やらが軌道上を取り囲むように浮遊していた。
 基地からの対軌道迎撃ミサイルと、自艦の索敵レーダーの圏外からの魚雷攻撃、そして勇躍飛来してきたサラマンダー艦隊の猛攻に成す術もなかった。
「残存の敵艦隊、四散して逃げていきます」
「追う必要はない。それよりも救助の方を優先させろ。敵味方に関係なく一人でも多くを救助するのだ」
「わかりました。救護班を出動させます」
「たのむ」
「上手くいきましたね」
「ああ……。これがフレージャーならこうも巧くいかなかっただろう。かつてのハンニバル艦隊騒動でカラカス基地を潔く撤退したのは、カラカス基地の管制システムをチェックし完全掌握する以前に、我々が引き返してきたのを知ったからだ。フレージャーは慎重過ぎるほどの軍人のようだ。管制システムにウィルスが忍ばせてある可能性を危惧してのことだと思う」
「確かに、これまで何度となく戦ってきましたが、大した戦果をあげられずに、双方痛み分けで終わっていました」
「それにしても軌道上には二個艦隊が展開して、これと戦うのは骨かと思いましたが、地上ミサイルのおかげてあっさり片付きました」
「シャイニング基地の防御システムの絶対防衛ゾーンの内側に展開していたからな。目標ロックオンせずとも、撃てば必ずどれかに命中するさ」
「目隠ししてでも当たりますね」
「さて、はじめるとするか……。レイティ、基地の無線封鎖を解除だ」
「はい、無線封鎖を解除します」
「通信士。地上の基地の敵に降伏を勧告してくれ」
「了解」

 基地管制塔。
「通信が回復しました。というよりも敵が通信回路を開いたのでしょうが……」
「敵より降伏勧告です」
「なめやがって。降伏するくらいなら、地上に降ろした艦隊で出撃して」
「お止めください。基地は敵の手の内にあるのです。発進と同時に、地上基地から対空砲火を浴びせかけられて損害を広げるだけです。このシャイニング基地は五個艦隊に匹敵するくらいの強力な防空設備があるんです。防衛艦隊が一個艦隊しか配備されていないのはそのためなのです。先程の防空ミサイルだって、せいぜい十分の一くらいしか使用されていません。不可能ですよ」
「五個艦隊じゃないだろ、迎撃システムと言ったってせいぜい基地周辺だけが相手だろう」
「お忘れですか? 艦隊は垂直離陸ができません。成層圏を突破して宇宙に出るには、大気圏を滑空加速しながら高度を上げていかなければなりません。最短距離でも惑星を半周しなければ宇宙に出られないんです。つまり半周すれば、理論上惑星上のどの地点からも攻撃が可能です。もちろん弾道ミサイルなら無制限ですしね」
 その時、上空からまばゆいばかりの光が射したかと思うと、基地周辺の土地が一瞬に蒸発した。
「あれは?」
「軌道上からの対地レーザー攻撃です。敵艦隊が艦砲射撃してきました」
「降伏しなければ一斉攻撃するぞという威嚇か」
「お考えください。我々は宇宙に出なければ攻撃できないのに対し、敵は軌道上からいつでも艦砲射撃や軌道爆雷攻撃などとあらゆる攻撃が可能です。その上こちらは、給水設備などを止められてしまっては、持久戦に持ち込むことも出来ません」
「降伏しろというのか」
「ここは敵勢力下にあります。救援を頼むこともできません」
「ちきしょう。いっぱい食わされたというわけか……。ランドールめ! 姑息な手段ばかりとりよってからに」
「長官、ご裁量を」
「わ、わかった。降伏しよう」
 うなだれる司令長官。

「提督。敵将より降伏勧告を受諾するとの返信がありました」
 艦橋内に沸き起こる歓声。旗艦艦橋は参謀以外全員女性士官のために、それが一斉にかん高い歓声をあげた結果として、アレックスの聴覚神経は一時的な混乱状態に陥った。
「静かに!」
 たまらず制止した。
「通信士、本部に連絡。敵艦隊を撃破し、任務を完了する」
「かしこまりました」
「カインズ中佐!」
「はっ」
「メビウス隊に、占領作戦行動開始を発令。降下部隊の指揮を取れ。直ちにだ」
「了解しました」
 カインズは自分の指揮パネルを操作しながら配下の部隊に命令を下していた。
 パトリシアが寄ってきた。
「おめでとうございます」
「なんとかうまくいったな。相手が違うとはいえ、同じような作戦が二度通用するとは」
「フランソワも言っていましたように、敵もまさか士官学校時代の作戦記録まで調べはしないでしょうから」
「そうだな……」

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2021.04.13 09:26 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第十九章 シャイニング基地攻防戦 Ⅲ
2021.04.12

第十九章 シャイニング基地攻防戦




「ゴードンを呼んでくれ」
「はい」
 スクリーンにゴードンが映しだされる。
「なんでしょうか」
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「了解! 哨戒作戦に入ります」
「たのむ」
 スクリーンからゴードンの映像が消えて、降下作戦にはいった第八占領機甲部隊「メビウス」のモビールアーマー隊の姿が映りだされていた。
「提督、本星より入電。トライトン少将が出ておられます」
「こっちのモニターに繋いでくれ」
 指揮制御桿のモニターに切り替わった。
「今、報告を聞いた。ご苦労であった。捕虜の方は輸送船団を向かわせて、本国へ送還すればよいとして、問題は捕獲した艦船の処理だろう」
「はい、その通りです」
「敵艦船を搾取した場合は、当該司令官の所轄に入ることになっているが……しかし、六万隻とはな。艦船はともかく乗員の確保がままならないだろう」
「船があっても乗組員がいないことには動かせません」
「乗組員のことはこっちで何とか手配しよう。それよりも、君は軍法会議に諮られることになった」
「軍法会議?」
「一時的にとはいえ命令を無視してシャイニング基地を放棄したことによる軍規違反問題に対してだ」
「そうですか……」
「ともかく至急本星に赴きたまえ」
「わかりました」
 やはりというべきか、来るべき時が来たという状況であった。
「提督!」
 艦橋の士官達がアレックスのまわりに集まってきた。
「今の話しは本当ですか?」
「軍法会議だとか……」
「そういうことだ」
「そんなのないですよ。シャイニング基地を立派に守り通したじゃないですか」
「安心しろ。軍法会議にかけられるのは、私だけだ。君達は、命令に従って作戦を実行したのであって、咎められる筋合いは一つもないからね」
「そんな……」
「この作戦を考えたときから、こうなることは想像はしていたさ」
「でも……」
「艦隊の行動に対して責任を取るのは司令官として当然だ。軍に限らず一般の会社だって、社員が問題を起こせば社長といった重役が連帯責任を取るものだ。そうだろ?」
「そりゃそうですが」
「オーギュスト・チェスター大佐」
「はっ」
「私がトランターに行っている間、副司令官として後のことを頼む」
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 アレックスが軍法会議にかけられるということは、またたくまに第十七艦隊全員の知るところとなった。それぞれの艦の至る所でその噂話しがささやかれていた。
 ここサラマンダーの食堂でもその話題で持ちきりだった。
「冗談じゃないわ。なんで提督が軍法会議にかけられなきゃならないのよ」
「シャイニング基地を放棄して、一時的にせよ敵に占領されたことに対してだろうな」
「提督は、あたし達の命を守るために軍法会議覚悟で、あの作戦を実行したのでしょう?」
「そうよ。今度はあたし達が提督をお救いする番じゃないかしら」
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「だいたい敵の三個艦隊が迫っているというのに、たった一個艦隊で防衛しろというのが無理な命令だったんだよ」
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「どうやら軍部の大半は、提督を潰しにかかっているんじゃないか。ほら提督は、銀河帝国からの流浪者だっていうじゃないか。それもあるんじゃないかな」
「何いってんのよ!」
「そうよ。人種や身分の違いで人を差別するき?」
「そんなに怒るなよ」
「怒るわよ」
「同盟憲章にだってちゃんとうたわれている条文を忘れたの?」
「それくらい。知っているさ、憲章の第八条だろ」
「なら言わないでよ」
「しかし軍部の連中はそうは思っていない。ランドール提督は、ともかくシャイニング基地の防衛を果たしたうえに、敵一個艦隊の搾取に成功して大将を捕虜にした。功績点はすでに少将の昇進点に達しているという。規定通り少将になれば、すべての准将が年下であるランドール提督の下で従わなければならなくなる。ガードナー提督を除けば二十歳以上離れているんだ、耐えられるか?」
「息子におしりぺんぺんされる父親ってところね。少将や中将連中も気がきではないでしょうね。下から猛烈なる追い上げを掛けられていれば」
「提督の罪ってどれくらいになるのかしら」
「う……ん。一度も戦わずに撤退したのだから、いわゆる敵前逃亡ということになるんだろ、やっぱりさ。……となると最悪で銃殺になるかな」
「銃殺ですって!」
「これが連邦軍のヤマモト長官の艦隊だったらまず間違いないところなんだがね。ほら、あのナグモ長官が自決したのだってその責任をとったんだよね」
「冗談じゃないわよ」
「提督の味方といえば、トライトン少将とガードナー准将くらいでしょう?」
「ここは一つ、より多くの味方を引き寄せるべきよね」
 リンダが何か妙案を思いついたらしく、身を乗り出すようにして言い出した。
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2021.04.12 12:30 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

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