銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 Ⅰ
2021.06.10

第三章 第三皇女




 銀河帝国領内。
 今まさに、第三皇女の艦隊が連邦軍先遣隊による奇襲攻撃を受けていた。
 貴賓席に腰を降ろす皇女ジュリエッタの表情は硬かった。側に仕える二人の侍女は、ただオロオロとするばかりだった。
「何としても姫を後方へお逃がしして差し上げるのだ。艦隊でバリケードを築いて、後方へのルートを確保するのだ」
 貴族と庶民との身分の隔たり。こういう状態においてこそ、その人となりが良く判るものだ。
 庶民を人とも思わずに税金を搾り取るだけの存在と考えたり、高慢で貴族であることを鼻に掛けて、庶民を虐げるだけの者は、いざとなった時には誰も助けてはくれない。庶民達は自分可愛さにさっさと逃げてしまうだろう。
 しかし、ジュリエッタを取り巻く人々には、責任放棄する者はいなかった。命を張ってでもジュリエッタを救うための戦いを繰り広げていた。
 気分を悪くした兵士を見かけたら、やさしくいたわり休息を与えたたり、全体が暗いムードに陥っている時には、レクレーションやパーティーを開いて、士気を高める努力を惜しまなかった。常に兵士一人一人に対して分け隔てなく気配りを忘れなかった。
 ジュリエッタは民衆を愛し、かつまた民衆からも愛されていたのである。
「わたくし一人のために、多くの兵士達が犠牲になるのは、耐え難いことです。わたくし一人が……」
「いけません! 奴らは姫を捕虜にして、自分達の都合の良い交渉を強引に推し進める算段なのです。かつてアレクサンダー第一皇子が、海賊に襲われ行方不明となった時にも、皇子を捕虜にしていることを暗に匂わせて、十四万トンものの食糧の無償援助と、鉱物資源五十万トンを要求してきたのです。その後、皇子は連邦軍の元にはいないことが判明して、交渉はないものとなりましたが……」
 貴賓席に深々と沈み込み、自分には何もできないのか? と苦渋の表情にゆがむジュリエッタ皇女。そうしている間にも、数多くの戦艦と将兵達が消えてゆく。

 その頃、急ぎ救出に向かっていたランドール艦隊は、やっと中立地帯を抜け出たばかりだった。
「銀河帝国領内に入りました」
「前方に火炎を認めます」
 銀河帝国艦隊と連邦軍先遣隊との戦闘が繰り広げられ、まるでネオンの明滅のような光景がスクリーンに投影されていた。
「全艦に戦闘配備だ」
「了解。全艦戦闘配備」
「うーむ……。何とかギリギリにセーフといったところか。第三皇女の旗艦は識別できるか?」
「お待ちください」
 指揮艦席の手すりに肩肘ついてスクリーンを凝視しているアレックス。
「双方の戦況分析はどうか?」
「はい。圧倒的に連邦軍側が優勢です」
「だろうな。連邦軍にはつわものが揃っているからな」
「皇女の艦を特定できました」
「奴らの目的が皇女の誘拐であるならば、旗艦を無傷で拿捕しようとするだろうが、流れ弾が当たって撃沈ということもあり得る。私のサラマンダー艦隊は、旗艦に取り付いている奴らを蹴散らす。スザンナは旗艦艦隊を指揮して、連邦軍の掃討をよろしく頼む」
「判りました。旗艦艦隊は連邦軍の掃討に当たります」
「それでは行くとしますか。全艦突撃開始! 我に続け!」
 アレックスの乗るヘルハウンドを先頭にして、勇猛果敢に敵艦隊の只中に突入していくランドール艦隊。


 連邦軍先遣隊の旗艦艦橋。
「皇女艦の包囲をほぼ完了しました」
「ようし、降伏を勧告してみろ」
「了解」
 戦闘情勢は有利とみて、余裕の表情だったが……。
「未知の重力加速度を検知! ワープアウトしてくる艦隊があります」
「なんだと? 艦が密集している空間へか?」
「間違いありません。重力値からすると、およそ二百隻かと」
「ワープアウトします!」
 戦闘区域のど真ん中にいきなり出現した艦隊。
 二百隻の艦隊は、皇女艦に取り付いている連邦軍艦隊に対して戦闘を開始した。
「包囲網が崩されています」
「何としたことだ。一体どこの艦隊なのだ」
 すさまじい攻撃だった。
 まるで戦闘機のように縦横無尽に駆け回る艦隊に翻弄される連邦軍艦隊。
 さらに連邦軍を震撼させる事態が迫った。
「背後より敵襲です! その数二千隻」
「敵襲だと? 帝国の援軍が到着したのか、しかも背後から」
「そんなはずはありません。本隊が救援に来れるのは、早くても三十分かかるはずです」
「じゃあ、どこの艦隊だ? 今取り付いているこいつらにしてもだ」
 と、言いかけた時、激しい震動と爆音が艦内に響き渡った。
「左舷エンジン部に被弾! 機関出力三十パーセントダウン」
 パネルスクリーンには、敵艦隊の攻撃を受けて、次々と被弾・撃沈されていく味方艦隊の模様が生々しく映し出されていた。高速で接近し攻撃し、一旦離脱して反転攻撃を加え続けていた。
「この戦い方は……。ランドール戦法か?」
 折りしも正面スクリーンに、攻撃を加えて離脱する高速巡洋艦。その舷側に赤い鳥のような図柄の配置された艦体が映し出された。
「こ、これは! サラマンダーじゃないか」
 その名前は連邦軍を震撼させる代名詞となっている。その精霊を見た艦隊は、ことごとく全滅ないし撤退の憂き目に合わされているという。
「そうか! デュプロスに向かった別働隊との連絡が途切れたのもこいつらのせいに違いない」
「ランドールのサラマンダー艦隊は、タルシエン要塞にあるのでは? それが何故、中立地帯を越えたこんな所で……」
「知るもんか。これ以上、被害を増やさないためにも撤退するぞ」
「撤退? 後少しで皇女を拉致できるというのにですか?」
「何を言うか! すでに皇女艦の包囲網すら突き崩されてしまっているじゃないか。逆にこちらの方が捕虜にされかねん情勢が判らないのか。ランドールは撤退する艦隊を追撃したケースは、これまでに一度もない。だから捲土重来のためにも、潔く撤退するのだ」
「判りました。撤退しましょう」
「戦闘中止の信号弾を上げろ! それで奴らの攻撃も止むだろう。その間に体勢を整えて撤退する」
 旗艦から白色信号弾が打ち上げられた。

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2021.06.10 08:21 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 デュプロス星系会戦 Ⅸ
2021.06.09

第二章 デュプロス星系会戦




 ステーションをゆっくりと離れてゆくヘルハウンド。
「これより、一旦カリスの衛星軌道に入る。二度の周回を行いつつ、重力アシストの加速を得て、最大噴射でカリスの重力圏を脱出する」
 ヘルハウンドも外宇宙航行艦であるから、自力ではカリスの強大な重力を振り切ることは困難である。カリスをスパイラル状に加速・周回しながら、少しずつ軌道を遠ざかり、ついでに重力アシストで加速を得て、最適な位置から最大速度に上げて脱出しようというわけである。
「噴射! 機関出力最大、加速度一杯!」
 二度目の周回を終えて、頃合いよしと判断したアレックスは号令を下した。
 艦体を激しい震動が襲った。
「比推力、最大に達しました」
「そのまま維持せよ」
 巨大惑星カリスからゆっくりと遠ざかっていく。
 やがて艦体の震動もおさまりつつあった。
「まもなく惑星カリスの重力圏を離脱します」
「よし、機関出力を三分の二に落とせ」
「機関部はエンジンに異常がないか確認せよ。ダメコン班は艦体の損傷をチェック!」
 たてつづけに命令を出してから、
「ふうっ……」
 と大きなため息をついて、指揮艦席に深く腰を沈めるアレックスだった。
 連邦艦隊との戦闘。カリスからの脱出と息つく暇もなく働き詰めで疲労がたまっていた。
「艦長。ちょっと昼寝をしてくる。後を頼む」
 席を立って自分の部屋へと向かうアレックス。
「判りました。ごゆっくりお休みください」
 最高司令官たるアレックスには、定められた休息時間はない。適時自分の判断で休むことになっている。

 ミストの補給基地が見えてきた。
 その周辺には、旗艦艦隊が展開している。
 指揮艦席に座ったまま、サンドウィッチを頬張っているアレックス。
「サラマンダーより入電」
「繋いでくれ」
 正面スクリーンにスザンナが映し出された。
「ご無事でなによりでした。全艦、補給を終えて待機中です」
「それでは、早速発進させてくれ。私はこのヘルハウンドから指揮を執る」
 スザンナが疑問を投げかける。
「ヘルハウンドからと申されましても、旗艦艦隊二千隻の指揮統制は不可能ですが……」
 旗艦には搭載されている戦術コンピューターには、それぞれキャパシティーがある。各艦からは識別信号を出しており、その信号を戦術コンピューターが受信して処理している。撃沈・大破や航行不能などに陥れば即座に処理される。サラマンダーの戦術コンピューターは十万隻もの処理能力があるが、ヘルハウンドには三百隻の処理能力しかなかった。
「何を言っておるか。旗艦艦隊二千隻は、君が指揮するのだよ。大まかな作戦はこちらから指示するが、後は君の判断で自由に動かしたまえ」
 スザンナの指揮能力を高く評価し、信頼に疑いを抱かないアレックスの叱咤激励の言葉であった。一人前の司令官に育て上げるには、甘えを許さずすべてを任せきりにして、時として渦中に放り込むといった荒療治も辞さない態度で臨む。
 こうしてアレックスに鍛えられて、数多くの有能なる司令官が誕生しているのである。それら司令官達の働きによって、アレックス率いる艦隊は、多大なる戦果を上げてその陣容を強化していった。
 「判りました。旗艦艦隊を発進させます」
 毅然として表情を取り戻すスザンナ。
 師弟関係にも似た厚い信頼で結ばれている二人。
「全艦微速前進。ヘルハウンドに続け」
 艦隊が中立地帯に差し掛かるのは、それから間もなくのことだった。
「国際救難チャンネルに、SOSが入電しています」
「信号はどこから発せられているか?」
「中立地帯を越えた銀河帝国領からです」
「どうやら遅かったようだな。敵さんの方がひと足早く皇女艦隊に襲い掛かったようだ」
 と、しばしの思慮に入るアレックス。
 艦橋オペレーター達は、その去就に注目している。
「サラマンダーに繋いでくれ」
 正面スクリーンにスザンナが映し出される。
「救難信号をキャッチした」
「はい。こちらでも確認しております」
「君ならどうするかね?」
「はい。救難信号が出されている以上、救出に向かうのが船乗りの務めです」
「戦艦が中立地帯に踏み込むのは国際条約違反だぞ」
「しかしながら、国際救助活動においては、特別条項が適用されます。それになによりも、銀河帝国との交渉を進める良い機会になるのではないでしょうか」
「なるほど、それは良い考えだ。それでは行こうか。全艦に伝達! 救助活動のために中立地帯を越えて銀河帝国へ向かう。全艦全速前進せよ」
 こうしてランドール艦隊発足以来、はじめての銀河帝国領への進出が、国際救助活動の名のもとに行われたのである。
 果たして、連邦先遣隊を蹴散らして、無事に第三皇女を救い出すことができるのか?
 その先にある、銀河帝国との交渉の行方もどうなるか判らない。
 すべての乗員の胸の内にある不安と葛藤も推し量るすべもない。

 第二章 了

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2021.06.09 13:50 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章・デュプロス星系会戦 Ⅷ
2021.06.08

第二章 デュプロス星系会戦




「全艦、回頭せよ」
 オペレーターが復唱する。
 ゆっくりと回頭をはじめる連邦艦隊。
 しかし、様子がおかしかった。
 回頭の中途で失速し、その体勢のまま流されている艦が続出していた。
「どうしたというのだ?」
 司令が怒鳴り散らすが、事態が好転するはずもなかった。
 艦体はガタガタと異常震動を続けており、オペレーター達の表情は暗かった。
「機関出力、大幅なパワーダウン」
「出力をもっと上げろ!」
「機関オーバーロード。これ以上出力を上げれば暴走爆発します」
「ええい、かまわん! 目の前にアイツがいるのに、みすみす逃してたまるものか。出力を上げろ、もっと上げるんだ!」
 カリスの強大な重力によって引き寄せられていることが、誰の目にも明らかとなっていた。外宇宙航行艦にとっては、方向転換をも不可能とする強大な重力である。

 その一方で、惑星間航行艦ながら馬力のある荷役馬のミスト艦隊は、カリスの重力をものともせずに、悠然と突き進んでいた。
「後方の敵艦隊が乱れています。どうやら失速しているもよう」
 オペレーターの報告を受けて頷くアレックスだった。
「こちらの思惑通りだ」
 そして総反撃ののろしを上げる。
「よし、今だ! 後方で回頭する連邦艦隊を撃て!」
 それまで前方を向いていた砲門が一斉に後方へと向き直った。徹底防戦に甘んじていた隊員は、鬱憤を晴らすかのように、夢中になって総攻撃に転じたのである。
 その破壊力はすさまじかった。あまつさえ失速して機動レベルを確保できない敵艦隊は迎撃の力もなく、一方的に攻撃を受けるのみであった。
 千隻の艦隊が、百五十隻の艦隊に翻弄されていた。
 やがて別働隊も追いついてきて攻撃に参加した。
 次々と撃破されてゆく敵艦隊。無事に攻撃をかわせたとしても、カリスの強大な重力がそれらを飲み込んでゆく。カリスに近寄りすぎて、その重力から逃れるのは競走馬の連邦艦隊には不可能だった。
 十分後、敵艦隊は全滅した。
 千隻の艦隊に、三百隻で臨んで勝利したのである。
 艦橋に歓喜の大合唱が沸き起こった。
 ミスト艦隊司令のフランドル・キャニスターは、アレックスの作戦大成功を目の当たりにして感心しきりの様子であった。
「これが英雄と呼ばれる男の戦い方か……。カリスの強大な重力を味方にしてしまうとはな。交戦状態に入ったときにはすでに敵は自滅の道を突き進んでいたのだ。その情勢を作り出してしまう作戦の妙というところだな」

 アレックスの乗る旗艦でも拍手の渦であった。
「おめでとうございます提督。ミストは救われました」
 と言いながら、右手を差し出す副司令。握手に応じるアレックス。
「いやいや。当然のことしただけですよ。共和国同盟軍の同士ではないですか」
「共和国同盟ですか……なるほどね」
 事実上として共和国同盟は滅んではいるが、解放戦線を呼称するアレックスたちにとっては、今なお健在なのである。


 衛星ミストの軌道上に浮かぶ軍事宇宙ステーションに近づく小艦隊があった。
 アレックスを迎えるために、スザンナが寄こした高速艦隊である。
 艦隊はステーションの周囲に待機し、指揮艦と思しき艦だけが入港ゲートへと進行していく。
 その指揮艦の艦内では、入港に向けてのステーションとの交信がひっきりなしに続いている。
「艦長。入港許可が出ました」
「よし、入港せよ」
「入港します」
 操舵手が答え、艦に制動が掛けられる。
「ステーションより、誘導すると言ってきておりますが」
「丁重にお断りしろ。我が艦は手動制御で入港する。操舵手いいな」
「了解しました。これより手動による入港体勢に入ります」
 操舵手に緊張した表情は見られないし、気負った態度もなかった。ごく自然に平然と答えている。
「サラマンダー艦隊の操艦技術を見せつけてやれ」
「了解」
 他のオペレーター達も、自分に与えられた端末を黙々と操作しており、余裕のあるところを見せていた。
 艦体の側面には、真っ赤に燃える火の精霊を配色し異彩を放っている。
 暗号名「サラマンダー」を呼称するもう一つの旗艦「ヘルハウンド」が正式称号である。
 そう……。
 アレックス・ランドール提督が、少尉時代に乗艦・指揮し、ミッドウェイ会戦で大戦果を挙げたあの艦である。
 ヘルハウンドはゆっくりと橋梁に近づき、所定の位置から五センチもずれることなくピタリと接岸した。
「見事だ。さすがに提督が直接指揮したことがあるだけのことはあるな」
 ステーションの管制員は感心しきりだった。
 タラップが掛けられ、艦長以下の出迎え陣が勢揃いした。

 ここで改めて確認することにしよう。
 サラマンダー艦隊と言えば、ハイドライド高速戦艦改造II式「サラマンダー」以下の二千隻の旗艦艦隊だと思っている者が多いが、それは正しくない。
 アレックスが初めて独立遊撃艦隊を任され、その旗艦として高速巡洋艦「ヘルハウンド」が与えられた。その暗号名が「サラマンダー」であるから、艦隊としての行動する時の暗号名も「サラマンダー艦隊」というのがそもそもの名称のはじまりなのである。これらの呼称は軍籍簿にも登録されている正式称号であることを忘れてはいけない。
 その後に転属してきたレイチェル・ウィングの骨折りで、高速戦艦五隻を手に入れ、新たに「サラマンダー」と名づけられた艦に、アレックスが乗艦するようになった。しかしながらその時点では、純然として旗艦登録は「ヘルハウンド」のままであった。
 高速戦艦サラマンダーが正式に旗艦登録されたのは、アレックスが中佐となり艦隊数が増強されて以降のことである。しかしながら、ヘルハウンド以下の独立遊撃艦隊はそのまま残され、アレックスの直属のサラマンダー艦隊として、ヘルハウンドも旗艦登録されたまま今日に至っているのである。
 アレックス配下の全艦隊を総称する時は、ランドール艦隊と呼称するのが正しい。


 アレックスがフランドルに案内されながら現れた。
 一斉に敬礼して出迎える艦長達。
「出港準備完了しております」
「うん。ご苦労だった」
 振り返ってフランドルに別れの挨拶をするアレックス。
「おせわになりました」
「何もできませんが、せめて補給基地に立ち寄って補給を受けてください。二千隻すべてへの補給は無理でしょうが、行って帰ってこれる程度の備蓄はあります」
「よろしいのですか?」
「なあに、これくらいの礼はさせてもらわないと、罰が当たりますよ」
「そうですか……。それではご好意に甘えさせていただきます」
「ご武運を祈っています」
「ありがとう」
 握手をして別れ、アレックスはヘルハウンドに乗艦した。
「おめでとうございます。提督のご奮戦振りモニターしておりました」
 艦橋に入るやいなや、女性オペレーター達の熱烈な祝福を受ける。
「そうか……」
 指揮艦席に腰を降ろすアレックス。
 この席に座るのは実に久しぶりのことであった。
 懐かしそうに、機器を撫でている。
「ステーションより、補給基地のベクトル座標データが入電しております」
「よし、データを艦隊に送信し、先に補給しろと伝えろ」
「了解」
「提督。このベクトル座標データからすると、補給基地は中立地帯のすぐそばです」
 航海長が説明した。
 数字の羅列を読んだだけで、およその位置を言い当ててみせるのは、その頭の中に航海図がまるごと入っているからだろう。
「補給基地の位置を五次元天球儀に投影してみろ」
「判りました」
 五次元天球儀は、透明球状体にレーザーを照射して、その内側に航路図を投影できるものである。ワープ中でも常に艦の位置を表示できる。敵艦隊や新築されたばかりの施設などの更新されていないデータは表示されないので、構築物の所有者や国家は、国際宇宙航路図協会への報告を厳重に義務付けられている。
 補給基地を示す青い光点が明滅し、そのすぐそばを銀河帝国領との境界にある中立地帯が、淡いレッドゾーンとして表示されている。
「目と鼻の先だな」
「中立地帯近辺の警備における補給を担っているのでしょう」
「だろうな……」
 と頷いて、オペレーター達を見渡してから、
「出航する。機関出力五分の一、微速前進」
 命令を下した。
「了解。機関出力五分の一、微速前進」
 艦長が命令を復唱する。
「機関出力五分の一」
「微速前進」
 各オペレーター達が復唱しながら機器を操作している。

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2021.06.08 09:11 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 デュプロス星系会戦 Ⅶ
2021.06.07

第二章 デュプロス星系会戦




 連邦軍旗艦。
 ミストを左舷後方に見る位置に、隊列を組んでいるミスト艦隊。
「敵本隊は、ミストの前方、十時の方向」
「取り舵十度! 敵艦隊に向かえ!」
「全艦取り舵十度! 進路変更します」
 ゆっくりと方向転換をはじめる連邦艦隊。
 超巨大惑星の影響だろうか、艦体がミシミシと音を上げていたが、艦橋要員達は軽く考えていた。
 この時、艦の異常を真剣に受け止めて、対処しようとしてる者たちがいた。
 機関部の要員である。
 方向転換と同時に、急激に機関出力がダウンしてしまったのである。
『おい、機関出力が落ちているぞ。すぐさま上げてくれ』
 さっそく艦橋からの催促がかかる。
「了解! 出力を上げます」
 機関出力が上げられ、機動レベルを確保したものの、エンジンは異常音を立てていた。やがて方向転換が完了してエンジンの負担が軽くなって異常音は止まったが、
「これはただ事ではないぞ」
 誰しもが感じていた。
 外の状況や艦橋の様子などがまるで見えない機関部には、ただ上から命令されて出力を上げ下げするしかない。
 機関長のところに数人の機関士が集まってきていた。
「超巨大惑星の影響に間違いありません」
「そうです。カリスの強大な重力に艦が引き込まれていると思われます」
「私もそう思います。上に意見具申なさった方が……」
 だが機関長は意外な発言をした。
「君達は艦内放送を聞いていなかったのか? 上はランドール提督を捕虜にしようとしているのだ。いいか、宿敵サラマンダー艦隊のランドールだぞ。奴を捕らえれば、聖十字栄誉勲章間違いなし、報償は思いのままで一生を楽に暮らしていけるはずだ。例えエンジンが焼け切れたとしても全力で追いかけるのは、判りきったことではないか。言うだけ無駄だよ」
「やっぱり……ですかねえ」
「外がまるで見えない鉄の箱の中で、一生を終えるのはご免ですよ」
「俺達には選択の余地はない。上に指示に従うまでだ。さあ、配置に戻りたまえ」
 諭されておずおずと自分の部署に戻る機関士達だった。

 その頃、機関部要員の気持ちもお構いなしの艦橋では、ランドール捕虜作戦の真っ最中であった。
「ランドールの乗艦を特定しろ。そして攻撃目標から外すのだ」
「了解」
 オペレーターが機器を操作して、ミスト艦隊の各艦をスキャニングしはじめた。
 やがてスクリーン上のミスト艦隊の中に赤い点滅が現れた。
「ランドール提督の乗艦しているものと思われる旗艦を特定しました」
「よし、攻撃目標から外せ」
「了解。戦術コンピューターに入力して、攻撃目標から外します」
「後方から、別働隊が追い着いてきました」
「構うな。今は正面の艦隊に集中しろ」
 司令の脳裏にはランドールしかないという風だった。
 聖十字栄誉勲章が目の前にぶら下がっているのだ。
 二階級特進も夢ではなかった。
 鼻先に吊るされたニンジンを追いかける馬のようなものである。


 戦闘状態に突入して五分が経っていた。
 アレックスはスクリーンを見つめながら、戦況分析の真っ最中というところだった。
「当艦に対する敵艦隊からの攻撃がまったくありません」
「思惑通りだ。これで心置きなく指揮を取れるというものだ」
 呟くように言ったことを聞きつけて、副司令が答える。
「そうか……。判りましたよ、提督が敵艦隊に対して国際通信を行った理由」
「聞こう」
「連邦軍にとって提督は、鬼の首のようなもの。捕虜にした者には、最高の栄誉勲章が与えられると聞きます。それが当艦に攻撃がこない理由です。自分がランドールであることを知らしめれば、決して攻撃してこないだろう。我が艦隊は少数ですから、拿捕して捕虜にするのも簡単だと思う。提督がこの艦隊を指揮するのは初めてです。じっくりと指揮を執るには、落ち着いた環境が必要だった。そういうことですね」
 さすがに副司令官だけのことはあった。
「考え方によっては自己の保身を優先したようにも取れるんだが……」
「大丈夫です。誰もそんな風には考えません。提督は指揮に専念なさってください」
「ありがとう」
 そうこうしているうちにも、味方艦隊は次々と撃沈されていた。
「戦艦ビントウィンド撃沈。巡洋艦ハイネス大破……」
 多少の被害は覚悟の上ではあったが、もたもたしていては全滅するのは時間の問題である。
「急速接近する艦があります」
 目の前のスクリーン一杯に敵艦隊が映し出された。
「斉射しつつ、面舵で交わせ!」
「どうやら接舷して白兵戦で提督を捕虜にしようとしているのでしょう」
 最初の艦はなんとか交わしたものの、次から次と襲ってきていた。
 単独でならともかく、複数の艦で体当たりされては交わしきれない。
「そろそろだな……。これより敵中の懐に飛び込む。全艦全速前進!」
 アレックスが最初から突撃を敢行しなかったのは、味方艦及び敵艦の力量を推し量っていたのだ。
 特に敵司令官の人となりを、その戦い方ぶりから判断していたのである。
 加速して敵艦隊に向かって進撃するミスト艦隊。
 多勢に無勢の時は、まともに正面決戦は自滅を早めるだけである。
 相手の懐深く飛び込んで乱激戦に持ち込み、あわよくば同士討ちに誘い込む。
「ランドール戦法だ!」
 誰かが思わず叫んだ。
 アレックスの得意戦法であり、敵艦隊をことごとく葬ってきた有名な戦法である。
 その戦いを目の当たりにし、しかも自らが参加している。
 兵士達の士気は大いに盛り上がっていく。
「お手並み拝見ですね」
「それは違いますよ。実際に戦うのは配下の将兵達です。指揮官を信じて指令通りに動いてくれるからこそ作戦は成功します。指揮官のすることは、部下を信じさせることだけなのです」
 両艦隊はすれ違いながら互いに攻撃を加えていく。
 後方へ過ぎ去っていった艦は相手にはしない。
 前からくる艦のみを各個撃破していくだけである。
 機関出力最大で防御スクリーンにほとんどのエネルギーを回して、攻撃力よりも防御力に重点を置いていた。
「敵艦を撃破することは考えなくても良い。全速力で敵艦を交わしていくのに全精力を注ぐことに尽力せよ」
 早い話が、戦わずに逃げまくれと言っているに等しかった。
 領土防衛の戦いなのであるから、敵艦隊を殲滅させずして、逃げるなどとは理不尽な指令である。
 逃げている間に占領されてしまう。
 しかし、ランドールが下した指令には、深い熟慮の上に計算され尽されてのものであることは、誰しもが良く知っていた。
 例えばシャイニング基地攻防戦などが有名であり、ハンニバル艦隊来襲の時もカラカス基地を空っぽにした。

 十五分が経過した。
 連邦軍旗艦には苦虫を潰したような表情の司令官がいた。
「ミスト艦隊は、我々の中心部分に入り込んだ模様です」
 両艦隊が全速力で進撃しているので、すれ違いの時間は短かった。
 すでに旗艦同士はすれ違いを終えていた。
「どうして討ち果たせん! 敵は我々の五分の一にも満たないのだぞ」
 理由は判りきっていたが、尋ねずにはおれなかった。
 懐に飛び込まれての乱激戦は同士討ちが避けられない。
 砲術士の腕も鈍るともいうものであった。
「すれ違う前には、正面に向き合っていたはずだ。どうして体当たりしてでも、これを止めんかったのだ」
 これも判っていた。
 ミスト艦隊は小回りのきく惑星航行用の戦艦が主体であるから、旋回して体当たりを避けることは簡単であった。
 司令は、競走馬と荷役馬と比喩したが、競走馬は真っ直ぐ走ることには得意でも、曲がりくねった道を走るのは苦手である。
 これは戦国時代の城下町の街並み設計に取り入れているものだ。城の防衛のために高速で騎馬が駆け抜けられないように、城下町には紆余曲折の道を作るのは常道であった。
 いかに高速を出せる艦艇でも、ちょこまかと動き回る艦艇をしとめるのは至難の伎である。体当たりしようとしても、簡単に交わされてしまう。ただでさえ数度の加速を行って最大限に達しているのである。軌道変更は困難であった。
「ええい。反転しろ! 反転して奴らの背後から攻撃する」
 しかし、その命令が悲劇のはじまりだった。

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2021.06.07 14:00 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 デュプロス星系会戦 Ⅵ
2021.06.06

第二章 デュプロス星系会戦




「全艦、回頭せよ」
 オペレーターが復唱する。
 ゆっくりと回頭をはじめる連邦艦隊。
 しかし、様子がおかしかった。
 回頭の中途で失速し、その体勢のまま流されている艦が続出していた。
「どうしたというのだ?」
 司令が怒鳴り散らすが、事態が好転するはずもなかった。
 艦体はガタガタと異常震動を続けており、オペレーター達の表情は暗かった。
「機関出力、大幅なパワーダウン」
「出力をもっと上げろ!」
「機関オーバーロード。これ以上出力を上げれば暴走爆発します」
「ええい、かまわん! 目の前にアイツがいるのに、みすみす逃してたまるものか。出力を上げろ、もっと上げるんだ!」
 カリスの強大な重力によって引き寄せられていることが、誰の目にも明らかとなっていた。外宇宙航行艦にとっては、方向転換をも不可能とする強大な重力である。

 その一方で、惑星間航行艦ながら馬力のある荷役馬のミスト艦隊は、カリスの重力をものともせずに、悠然と突き進んでいた。
「後方の敵艦隊が乱れています。どうやら失速しているもよう」
 オペレーターの報告を受けて頷くアレックスだった。
「こちらの思惑通りだ」
 そして総反撃ののろしを上げる。
「よし、今だ! 後方で回頭する連邦艦隊を撃て!」
 それまで前方を向いていた砲門が一斉に後方へと向き直った。徹底防戦に甘んじていた隊員は、鬱憤を晴らすかのように、夢中になって総攻撃に転じたのである。
 その破壊力はすさまじかった。あまつさえ失速して機動レベルを確保できない敵艦隊は迎撃の力もなく、一方的に攻撃を受けるのみであった。
 千隻の艦隊が、百五十隻の艦隊に翻弄されていた。
 やがて別働隊も追いついてきて攻撃に参加した。
 次々と撃破されてゆく敵艦隊。無事に攻撃をかわせたとしても、カリスの強大な重力がそれらを飲み込んでゆく。カリスに近寄りすぎて、その重力から逃れるのは競走馬の連邦艦隊には不可能だった。
 十分後、敵艦隊は全滅した。
 千隻の艦隊に、三百隻で臨んで勝利したのである。
 艦橋に歓喜の大合唱が沸き起こった。
 ミスト艦隊司令のフランドル・キャニスターは、アレックスの作戦大成功を目の当たりにして感心しきりの様子であった。
「これが英雄と呼ばれる男の戦い方か……。カリスの強大な重力を味方にしてしまうとはな。交戦状態に入ったときにはすでに敵は自滅の道を突き進んでいたのだ。その情勢を作り出してしまう作戦の妙というところだな」

 アレックスの乗る旗艦でも拍手の渦であった。
「おめでとうございます提督。ミストは救われました」
 と言いながら、右手を差し出す副司令。握手に応じるアレックス。
「いやいや。当然のことしただけですよ。共和国同盟軍の同士ではないですか」
「共和国同盟ですか……なるほどね」
 事実上として共和国同盟は滅んではいるが、解放戦線を呼称するアレックスたちにとっては、今なお健在なのである。


 衛星ミストの軌道上に浮かぶ軍事宇宙ステーションに近づく小艦隊があった。
 アレックスを迎えるために、スザンナが寄こした高速艦隊である。
 艦隊はステーションの周囲に待機し、指揮艦と思しき艦だけが入港ゲートへと進行していく。
 その指揮艦の艦内では、入港に向けてのステーションとの交信がひっきりなしに続いている。
「艦長。入港許可が出ました」
「よし、入港せよ」
「入港します」
 操舵手が答え、艦に制動が掛けられる。
「ステーションより、誘導すると言ってきておりますが」
「丁重にお断りしろ。我が艦は手動制御で入港する。操舵手いいな」
「了解しました。これより手動による入港体勢に入ります」
 操舵手に緊張した表情は見られないし、気負った態度もなかった。ごく自然に平然と答えている。
「サラマンダー艦隊の操艦技術を見せつけてやれ」
「了解」
 他のオペレーター達も、自分に与えられた端末を黙々と操作しており、余裕のあるところを見せていた。
 艦体の側面には、真っ赤に燃える火の精霊を配色し異彩を放っている。
 暗号名「サラマンダー」を呼称するもう一つの旗艦「ヘルハウンド」が正式称号である。
 そう……。
 アレックス・ランドール提督が、少尉時代に乗艦・指揮し、ミッドウェイ会戦で大戦果を挙げたあの艦である。
 ヘルハウンドはゆっくりと橋梁に近づき、所定の位置から五センチもずれることなくピタリと接岸した。
「見事だ。さすがに提督が直接指揮したことがあるだけのことはあるな」
 ステーションの管制員は感心しきりだった。
 タラップが掛けられ、艦長以下の出迎え陣が勢揃いした。

 ここで改めて確認することにしよう。
 サラマンダー艦隊と言えば、ハイドライド高速戦艦改造II式「サラマンダー」以下の二千隻の旗艦艦隊だと思っている者が多いが、それは正しくない。
 アレックスが初めて独立遊撃艦隊を任され、その旗艦として高速巡洋艦「ヘルハウンド」が与えられた。その暗号名が「サラマンダー」であるから、艦隊としての行動する時の暗号名も「サラマンダー艦隊」というのがそもそもの名称のはじまりなのである。これらの呼称は軍籍簿にも登録されている正式称号であることを忘れてはいけない。
 その後に転属してきたレイチェル・ウィングの骨折りで、高速戦艦五隻を手に入れ、新たに「サラマンダー」と名づけられた艦に、アレックスが乗艦するようになった。しかしながらその時点では、純然として旗艦登録は「ヘルハウンド」のままであった。
 高速戦艦サラマンダーが正式に旗艦登録されたのは、アレックスが中佐となり艦隊数が増強されて以降のことである。しかしながら、ヘルハウンド以下の独立遊撃艦隊はそのまま残され、アレックスの直属のサラマンダー艦隊として、ヘルハウンドも旗艦登録されたまま今日に至っているのである。
 アレックス配下の全艦隊を総称する時は、ランドール艦隊と呼称するのが正しい。


 アレックスがフランドルに案内されながら現れた。
 一斉に敬礼して出迎える艦長達。
「出港準備完了しております」
「うん。ご苦労だった」
 振り返ってフランドルに別れの挨拶をするアレックス。
「おせわになりました」
「何もできませんが、せめて補給基地に立ち寄って補給を受けてください。二千隻すべてへの補給は無理でしょうが、行って帰ってこれる程度の備蓄はあります」
「よろしいのですか?」
「なあに、これくらいの礼はさせてもらわないと、罰が当たりますよ」
「そうですか……。それではご好意に甘えさせていただきます」
「ご武運を祈っています」
「ありがとう」
 握手をして別れ、アレックスはヘルハウンドに乗艦した。
「おめでとうございます。提督のご奮戦振りモニターしておりました」
 艦橋に入るやいなや、女性オペレーター達の熱烈な祝福を受ける。
「そうか……」
 指揮艦席に腰を降ろすアレックス。
 この席に座るのは実に久しぶりのことであった。
 懐かしそうに、機器を撫でている。
「ステーションより、補給基地のベクトル座標データが入電しております」
「よし、データを艦隊に送信し、先に補給しろと伝えろ」
「了解」
「提督。このベクトル座標データからすると、補給基地は中立地帯のすぐそばです」
 航海長が説明した。
 数字の羅列を読んだだけで、およその位置を言い当ててみせるのは、その頭の中に航海図がまるごと入っているからだろう。
「補給基地の位置を五次元天球儀に投影してみろ」
「判りました」
 五次元天球儀は、透明球状体にレーザーを照射して、その内側に航路図を投影できるものである。ワープ中でも常に艦の位置を表示できる。敵艦隊や新築されたばかりの施設などの更新されていないデータは表示されないので、構築物の所有者や国家は、国際宇宙航路図協会への報告を厳重に義務付けられている。
 補給基地を示す青い光点が明滅し、そのすぐそばを銀河帝国領との境界にある中立地帯が、淡いレッドゾーンとして表示されている。
「目と鼻の先だな」
「中立地帯近辺の警備における補給を担っているのでしょう」
「だろうな……」
 と頷いて、オペレーター達を見渡してから、
「出航する。機関出力五分の一、微速前進」
 命令を下した。
「了解。機関出力五分の一、微速前進」
 艦長が命令を復唱する。
「機関出力五分の一」
「微速前進」
 各オペレーター達が復唱しながら機器を操作している。

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2021.06.06 14:01 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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