冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 56
2019.09.09


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 56


ナレ2「さらに野山をかき分けること数日」
リリア「水が流れる音が聞こえます」
ナタリー「ほんとだ。どっちから?」
勇者「俺には聞こえねえが」
ナタリー「あんたは邪心しかないから聞こえないのよ」
勇者「女の囁き声なら1キロ先でも聞こえるぞ」
ナタリー「だろうね」
コンラッド「あっちの方から聞こえます(指さす)行ってみましょう」
ナレ1「水音のする方へと急ぐ一行」
ナレ2「水音は次第に大きくなり、やがて雄大な瀑布が現われた」
リリア「これがムース滝ですか?」
コンラッド「そうです」
ナレ1「激しく下り落ちる水流のなんたる荘厳なものだうか。遠く離れていても水
飛沫がかかり衣服を濡らしていく」
ナレ2「足元を流れる水は、清く澄んでいた」
リリア「この水は飲めるでしょうか?」
コンラッド「飲めると思います」
リリア「飲んでみます」
ナレ1「川辺にひざまずいて、両手で水を掬って飲むリリア」
リリア「おいしい!!」
ナレ1「道なき道を長時間歩いてきたので、渇きを覚えていた喉越しの水は美味し
いと感じるには十分だった」
ナレ2「他の者も一緒に飲み始める。ついでに水筒にも補給する」
勇者「しかし、コンラッドさんよお。ここを知ってたんだろ?なんで道が分からな
かった」
コンラッド「何せほとんど人が通らず獣道しかないので、月日が経てば草木が伸び
て道も消え失せてしまいますから」
ナタリー「なるほどね、迷いの森と同じというわけね」
勇者「GPSナビとかないのかよ。今時のスマホには大概付いてるだろ?」
ナタリー「どこの世界の話よ。ここにそんなもんあるわけないでしょ」
ナレ1「その時、コンラッドの荷物袋に入っていた『導きの羅針盤』が反応した」
コンラッド「これはどうしたことか?」
ナレ1「羅針盤の針がムース滝を刺したまま動かない」
リリア「それは何ですか?(不思議そうに覗き込む)」
コンラッド「大神官様が最高導師様から頂いたもので、それを自分に下さったので
す。何でも導師様が近くにいると反応するということらしいです」
ナタリー「じゃあ、あの滝の中にいるということ?」
コンラッド「滝の中というより、その裏側じゃないですか?」
ナタリー「ああ、よくある話しね。滝の裏側に洞窟があるということね。ちょっと
待って透視してみるから」
ナレ1「目を瞑り、呪文を唱えるナタリー」
ナタリー「見えたわ。確かに滝の中腹に洞窟があるわ」
リリア「「だとしても、どうやって洞窟へ行きますか?足場がありませんよ」
勇者「瞬間移動の魔法とかないのか?」
ナタリー「あたし一人だけなら移動できるけどね。全員は無理よ」
勇者「なら、おまえ一人で行って見てこい!」
ナタリー「あのねえ、あんた一人をあそこまで吹っ飛ばすことだってできるのよ」
勇者「あ、肩に枯れ草が付いてる(機嫌取りする)」
リリア「回り道して滝の上側に行って、そこからロープを垂らして洞窟に降りると
いうのは?」
コンラッド「そこまで行くのにさらに日数がかかると思いますし、より凶暴なモン
スターに出くわす可能性もあります」
勇者「滝の上部は見えてるのに、何日もかかるのかよ」
ナタリー「馬鹿ねえ。冬山登山家なんかは、目の前数十メートル先に頂上が見えて
いても、気象や体調を考慮して、登頂を断念することもあるんだから」
勇者「だとしたら滝の側壁断崖を伝ってロッククライミングで渡るしかないじゃな
いか」
リリア「ロッククライミング……って何?」
勇者「ハーケンとかカラビナを使って岩盤に杭を打って、それにザイルを伝わせて
崖を登ったり横断したりするんだよ」
リリア「……??(首を傾げ理解できない表情)」
勇者「はあ……花売り娘には分からないか」
ナタリー「花売り娘はあんたでしょうが」


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