銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XV
2019.08.25


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 XV

 上空にミネルバが到着した。
「新型モビルスーツ発見! 人影も見えます」
「大至急降下して、訓練生を救出して下さい」
 航海長が警告する。
「一帯は流砂地帯が広がっています。砂の上を歩くときは、十分注意して下さい」
「流砂ですか……。砂上モービルを出して下さい。ミネルバは念のためにホバリング状
態で着陸する」
 砂の上に着陸したミネルバから、救助隊を乗せた砂上モービルが繰り出して、三人の
共助に向かった。
 現場に到着した救助隊は、早速三人の容態を確認して、ミネルバに無線で報告する。
「三人とも、まだ生きています」
『ただちに収容して下さい」
 その場で、脱水症状を回復するための点滴が施されて、担架に乗せられて砂上モービ
ルで、ミネルバへと搬送された。そして集中治療室に運ばれて、本格的な治療がはじめ
られた。
 様子を見にきたフランソワに、医師は現状を説明した。
「三人とも命に別状はありませんが、女の子の方は心臓がかなり弱っており、回復まで
には相当の期間がかかりそうです」
「命に別状がないことは幸いです。十分な治療をしてやって下さい」
 訓練生の容態を確認して一安心したフランソワは、艦橋に戻って新型モビルスーツの
回収を命じた。
 ミネルバを新型の上空に移動させて、大型クレーンを使って引き上げる作業が行われ
る。
 燃料切れでなければ、パイロットを搭乗させれば、簡単に済むことなのであるが。
 回収作業の責任者として、ナイジェル中尉とオーガス曹長が当たっていた。
 二人は、この新型の搭乗予定者になっていたからだ。
 ちなみにすでに回収されていたもう一機の方は、サブリナ中尉とハイネ上級曹長が搭
乗することになっている。
「新型の回収、終わりました」
「よろしい。本部に暗号打電! 『新型モビルスーツとカサンドラ訓練生の収容を完了。
次なる指令を乞う』以上だ」
 作戦任務終了の後は、戦闘で消耗した燃料・弾薬の補給が予定されていたが、直前ま
で補給地点は知らされていなかった。
「本部より返信。『通信文を了解。次なる補給地点として、明晩19:00にムサラハン鉱
山跡地に向かえ』以上です」
「航海長! ムサラハン鉱山跡地へ向かってください。補給予定時間は19:00です。そ
の頃に丁度到着するように、多少の寄り道も構いません」
 ここは敵勢力圏である。真っ直ぐ目的地に向かえば、敵に悟られて、待ち伏せされて
補給艦が襲われる可能性がある。多少遠回りしても、寄り道しながら、最終的に予定時
間に補給地へ向かうわけだ。

 砂漠の上空を進むミネルバ。
 その後を追うように、砂の中に潜むように動くものがあった。
 それは砂の中を突き進むことのできる潜砂艦であった。
 艦橋から潜望鏡が砂上に頭を出している。
「こんな砂漠を飛んでいるなんて珍しいな」
「艦艇データにありません」
「おそらく新造戦艦なのだろう。そっちの方面で検索してみろ」
「あ、ありました。旧共和国同盟所属の新造戦艦ミネルバのようです」
 正面スクリーンにミネルバの艦艇データがテロップで流れ出した。
「ミネルバということは、我々のご同輩というわけか」
「はい。メビウス部隊の旗艦という位置づけになっているようです」
「旗艦か……。なんぼのものか、少し遊んでやるとするか」
「またですか? 前回も遊びすぎて、撃沈させてしまったではありませんか」
「なあに証拠さえ残さなければ大丈夫だ」
「また、そんな事言って……」
「ようし。戦闘配備だ」
「しようがないですねえ。戦闘配備! トラスター発射管、一番から八番まで発射準
備」
「一番発射用意。目標、上空を飛行する戦艦」
「目標セットオン。照準合いました」
「一番、発射!」
 発射管から飛び出していくミサイル。


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