銀河戦記/鳴動編 第二部 第十七章 決闘 Ⅱ
2021.08.30

第十七章 決闘





 双方の転回が終了して向き合った。
 一旦停止して、体制を整える両艦。
「戦闘配備せよ」
 艦内に警報が鳴り響き、それぞれの配備場所へと急ぐ。
「総員配置に着きました」
「よし! 機関出力最大、全速前進!」
 アレックスの下令を復唱するオペレーター。
「機関出力最大!」
「全速前進」
 やがて前方視界を映すスクリーンに敵艦のシルバーウィンドが現れる。
「射程まで三十二秒です」
「安全装置解除」
 さらに接近する両艦。
「射程内に入りました!」
「撃て!」
 戦闘が始まるが、当然相手も撃ってくる。
 粒子ビーム砲が炸裂するが、バリアーがそれを防ぐが、僅かにビームが貫通して艦に損傷を与えた。
「損傷軽微です。戦闘には支障はありません」
 ダメコン班から連絡が入る。
「防壁が弱いな……。原子レーザー砲への回路を遮断して、バリアーに回せ!」
「原子レーザー砲を使用しないのですか?」
「使用しない。防御を優先する」
 サラマンダー型の主砲である原子レーザー砲は、今回のような接近戦には使用不能である。あくまで艦隊戦のように向かい合って撃ち合うためのものだ。
 使えないものに貴重な電力やエネルギーを消耗させるのは無駄だ。
「まもなくすれ違いに入ります」
「面舵衝突回避。左舷に攻撃がくるぞ。左舷砲塔は防御態勢を取りつつ攻撃開始!」

 側面攻撃が始まる。

 シルバーウィンド側でも、側面攻撃に対処していた。
「側面攻撃きます!」
「衝撃に備えよ。反撃開始!」
 そもそもが通常の宇宙戦艦は、舷側は攻撃力も防御力も高くない。
 戦列艦ヴィル・デ・パリスのように側面攻撃に特化した戦艦でなければだが。
 艦内のあちらこちらで火の手が上がる。
「火災発生! 消火班を急行させます」
「さすがランドール戦法というところだな。近接戦闘には一日の長ありだ」
「原子レーザー砲を撃ってこないので助かってます」
「この戦闘では使えないからな」
「まもなくすれ違いを終えます」
「ダメコン班は今のうちにダメージ箇所を復旧させよ」
 すれ違いを終えて離れてゆく両艦。
「第一次攻撃終了。引き続き第二次攻撃態勢に移る。コースターンだ」


 双方Uターンして、第二次攻撃に入る。
「今度は右舷で戦う! 取り舵で回り込め」
 相手側も呼応して右舷での戦いになる。
「撃て!」
 両艦の間に炸裂するエネルギー、激しい撃ち合いが続く。
 その一発がサラマンダー後部エンジンに直撃し、激しい火炎を噴き出す。
「メインエンジンに被弾! 機動レベル七十パーセントダウン!」
「速力が半減します」
「補助エンジンを始動!」
 メインエンジンをやられて、艦橋要員も気が気ではない。
 しかし、アレックスは冷静に次の指令を下す。
「円盤部を切り離して、私は戦闘艦橋へ移動する」
「自分も艦長として艦の指揮を執ります!」
「いいだろう。着いてこい」
 艦長席を離れてアレックスに従うスザンナ。
「円盤部の指揮は、ハワード・フリーマン少佐に任せる」
「了解! 円盤部の指揮を執ります」
 艦橋の後方にある転送装置に向かうアレックスとスザンナ。
「パトリシアは、ここで勝利祈願していてくれ」
 この戦いに作戦参謀は必要がない。
 無駄な犠牲とならないように置いておくことにするのだった。
 転送装置は、円盤部にある第一艦橋から前方の戦闘艦橋へと転送するものだ。
「円盤部切り離し準備!」
 円盤部を任されたフリードマン少佐が指揮を取り始めた。

 転送装置によって、戦闘艦橋へと送られた二人。
 アレックスは指揮官席に、スザンナは艦長席にと着席する。
 戦闘艦橋には通信統制管制室もなければ、艦隊を動かす戦術コンピューターも接続されていない。
 すべてはオペレーター達の力量にかかっている。

「こちら第一艦橋。フリードマン少佐。切り離し準備しました! これより分離作業に入ります」
 着々と切り離し作業が進む。
 ゆっくりと次第に切り離される前方部と後円部。
 いわば前方後円墳から前方部だけで行動するのだ。
「切り離し完了」
「分かった。こちらはUターンする」
 慣性で進む円盤部から離れて、敵艦へと向かう前方部。
「これより円盤部は惰性にまかせて後方に下がります」
「よろしく頼む」
 後方へと下がってゆく円盤部。
 それを見届けて、
「機関全速前進!」
 スピードを上げた。

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2021.08.30 07:21 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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