銀河戦記/鳴動編 第二部 第十五章 タルシエン要塞陥落 Ⅲ
2021.08.22

第十五章 タルシエン要塞陥落の時





 要塞砲の発射によって、その軌跡上の無人戦闘機はすべて蒸発した。
 タルシエン要塞中央制御室。
「要塞砲、発射完了しました」
「うむ。様子を見る」
「どうでしょうか……射程内に敵さんが入っていればいいのですが」
「期待しようじゃないか」
 タルシエンの橋に消えたエネルギーの渦は沈黙していた。

 次の瞬間だった。
「タルシエンの橋に高エネルギー反応!」
「こ、これは?」
 スクリーンにエネルギー波が迫り、そして真っ白になったかと思うと、激しい衝撃が要塞を襲いブラックアウトした。立っていた者はほとんどが床に倒れている。
 管内の電源が落ち真っ暗になった。
「な、なんだ! 何が起こった?」
「主電源がショートして落ちたようです!」
「補助電源に切り替えろ! 主電源は直ちに修理にかかれ!」

「損害を調べて報告せよ!」
 やがて電源が回復して、損害報告も上がってくる。
「要塞砲が破壊されました!」
「モニターに映してみよ」
 要塞の外部TVカメラが要塞砲の様子を映し出した。
 要塞砲の反射エネルギーによって、射出口がほぼ完全に破壊されていた。
「これは酷いな。もはや使用不能だろう」
「エネルギーの逆流を防ぐために、粒子加速装置を閉鎖した方がよろしいかと」
「そうだな。そうしてくれ」

「敵の秘密兵器でしょうか? とても戦艦搭載の砲ではありえません!」
「制空権を取られた上に、要塞砲なしでは勝ち目はないか……」

「なんだあれは?」
 タルシエンの橋からゆっくりと出現したものがある。
「真っ白ですね」
「まるで氷のようですが……」
「いや、氷ですよ。本物の氷の壁です!」
「分かりました! あの氷の壁で要塞砲のエネルギーを反射させたのではないでしょうか」
「できるのか?」
「間違いありません」
「で、あれを壊せるか?」
「要塞砲を反射させたくらいですから、熱エネルギー攻撃は無理でしょうが、ミサイルのような物理攻撃なら壊せるでしょう」
「氷の壁に対してミサイル攻撃を敢行する。各レーザー砲は無人戦闘機撃墜に専念せよ」
「残存艦隊及びカーグ少佐達に、無人機は無視して氷の壁の向こう側の敵へ攻撃開始せよ」
「了解! ホスター准将に連絡」
「了解! カーグ編隊へ連絡」

 無人機による要塞への攻撃はさほどのことでもなかった。攻撃して反撃される方が痛い目に会うことになる。そのようにして外に出ていた第十一艦隊は半数に激減していた。
「氷の向こう側にどれだけの艦艇が潜んでいるかだな」

 やがて姿を現したのは、
「敵勢力、重戦艦を主体とした八十万隻のもよう」
 その兵力に驚くガードナー。
「まいったな……」
 外に出ている味方艦艇では戦力不足だった。

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2021.08.22 08:52 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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