銀河戦記/脈動編 第十一章・共同戦線 Ⅱ
2022.08.13

第十一章・共同戦線




軽巡洋艦スヴェトラーナ
 精神感応(テレパス)=族長ドミトリー・シェコチヒン
 念動力(サイコキネシス)=ローベルト・ポルーニン
 遠隔念動力(テレキネシス)=チムール・オサトチフ
 瞬間移動(テレポート)=エヴゲニー・ドラガノフ
 精神治癒(サイコセラピー)=アンナ・ネムツォヴァ

高速戦艦サラマンダー
 指揮官 =ウォーレス・トゥイガー少佐
 副官  =ジェレミー・ジョンソン准尉
 航海長  =ラインホルト・シュレッター中尉
 言語学者=クリスティン・ラザフォード
 ミュー族=エカテリーナ・メニシコヴァ


 数時間後、全参謀が揃って会議が始められた。
 トゥイガー少佐が開口一番、事情を知らない者にとっては突拍子もない発言をする。
「ここにおられるのが、ミュータント族の長であるドミトリー・シェコチヒンだ。そのなんだ……色々とあったが、これからミュー族と共闘して、アルビオン軍を蹴散らしてクラスノダールを取り戻す」
「共闘ですって?」
 これまで三度も戦ってきた相手と共闘するなどと、思いもよらない事態であった。
「彼は、テレパスで君達が何を感じて何を思っているかは、手に取るように分かるらしい。ゆえに嘘偽りは一切通じない」
 旗艦艦橋勤務の者とダグラス・ニックス大尉以外は、信じられないという表情をしていた。
「私を信じて、彼のことも信じて欲しい」
 得体のしれない連中はともかくも、信頼する上官から信じてくれと言われれば、信じるしかないだろう。
「分かりました。少佐殿を信じます、なのでそちらの方も信じることにします」
 一同、頷いて反対する者はいなかった。
 少佐に絶大なる信頼を抱いているようだった。
「ありがとう」

 賛同も得られたことで、シェコチヒンを交えての作戦会議が行われた。
 テレパスのシェコチヒンにしてみれば、以心伝心で作戦を伝えることができるのであるが、一般人のサラマンダーの人々には声を出し、図面を指し示しながらでないと意思が通らない。


 会議を終えて、軽巡洋艦に戻ったシェコチヒン。
「お疲れさまでした」
『ああ、疲れたな。アンナ、頼むよ。いや、ドラガノフを先に癒してくれ』
「分かりました」
 精神治癒能力のあるアンナ・ネムツォヴァが、椅子に座ったドラガノフに背後から近寄って、彼の耳元から目隠しするように両手で覆う。
「目を閉じてください」
「分かった」
 ドラガノフが言われた通りにすると、静かに瞑想するアンナ。
 彼女の精神治癒は、三日三晩不眠不休で働いて精神クタクタに疲れた脳を、すっきり爽やか気分にさせることができる。但し、肉体的疲労は癒すことはできない。

 治療が終わって、一同に作戦を伝えるシェコチヒン。
 テレパスの彼にとっては、一同に集まって会議などする必要はない。
 能力者のいない随伴艦の乗員達には、精神波増幅装置によって伝えることができる。

 数時間後、併進する軽巡洋艦スヴェトラーナと高速戦艦サラマンダー。
 それを取り囲むように、両国の艦隊が展開して突き進む。

 サラマンダー艦橋。
「まさか、戦い合った国家と共闘することになるとは、思いもしませんでしたよ」
 副官ジョンソン准尉が、感慨深げに言った。
「かと思うと、紳士的な国家と思っていた奴が、簡単に寝返ったからな」
「通常人には、相手の腹の中までは探ることはできませんからね」
「ともかく、今回の共闘作戦の指揮官は自分が執る。彼らはサボート役に回ることになっている」
「しかし、このサラマンダーはさんざんやられて、原子レーザー砲しか使えませんよ」
「まあ、やりようはいくらでもあるさ」
 アルビオン軍艦隊は、側方に砲を並べた戦列艦で射程も短い。
 原子レーザー砲で遠距離射撃だけでも、艦隊を粉砕できるだろう。
「まもなくクラスノダールに到着します」
 航海長ラインホルト・シュレッター中尉が報告する。
「戦闘配備せよ! 族長にも連絡を入れてくれ」
 トゥイガー少佐が下令すると、ジョンソン准尉が復唱する。
「全艦、戦闘配備! ミュー族に打電」
 オペレーターが全艦に打電する。
「総員配置に着け!」

 一方のミュー族の方も戦闘態勢に入っていた。



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銀河戦記/脈動編 第十一章・共同戦線 Ⅰ
2022.08.06

第十一章・共同戦線




軽巡洋艦スヴェトラーナ
 精神感応(テレパス)=族長ドミトリー・シェコチヒン
 念動力(サイコキネシス)=ローベルト・ポルーニン
 遠隔念動力(テレキネシス)=チムール・オサトチフ
 瞬間移動(テレポート)=エヴゲニー・ドラガノフ

高速戦艦サラマンダー
 指揮官 =ウォーレス・トゥイガー少佐
 言語学者=クリスティン・ラザフォード¥
 ミュー族=エカテリーナ・メニシコヴァ

 貴賓室に移動して懇談を続けるシェコチヒンとトゥイガー少佐。
『我々は、一万年の時を越えて繋がっている家族であるな』
 と感慨深げに言葉を発するシェコチヒン。
「その通りです」
 トゥイガー少佐も相槌を打つ。
『あなた方の軍の最高司令官が、我々の開拓移民時の総裁だったとはね。意外というべきか、ちょっとした歴史の悪戯だ』


 インターフォンに秘書官から連絡が入った。
『エカテリーナ・メニシコヴァが来ました』
 トゥイガー少佐が応答する。
「通してくれ」
 扉が開いて、車椅子に乗ったエカテリーナ・メニシコヴァとクリスティン・ラザフォードが入室してくる。
『おお、カチェーシャじゃないか。無事だったのだな』
「はい。この艦の人々に助けて頂きました」
『捕虜ではないようだな』
「客人として遇して頂いています」
『そうか、良かったな』
「この艦の人々は悪い人ではありません」
『分かっている』


『ともかくアルビオン共和国が信用ならぬことは、身をもって実感していただけだろう』
「一万年隔絶されている間に先祖返りして文化を失って、元々は同じ国家だったのに、両国は敵対国家となってしまったようですね」

 移民したての頃は、まだみんな仲良く開拓に勤しんでいた。ところが開拓地を広げるうちに同一民族だけが集まったコロニーが出来始めた。だが如何せん人口が極端に少ないので、人口殖産のために人工授精からクローンまで、ありとあらゆる方法で人口を増やそうと努力したコロニーがあった。それが祟って障碍者を多数出して、やがて遺伝子まで異常をきたすようになって、常態的に障碍者が出るようになった。
 障碍者は迫害され、ますます隔絶感が広まっていき、反乱を起こして唯一の開拓移民船を略奪して、宇宙へと飛び出した。
 遺伝子異常の者同士の交配が続いている事が、稀に超能力を持つ者を生む出す要素となった。

『さてここで提案だ』
「提案ですか?」
『アルビオンは我々の宿敵、そして君達も奴らのやりようを知ったはずだ。ここは共闘して、クラスノダールの奪還をしようじゃないか』
「共闘ですか? それで奪還なった時の惑星の処遇はいかに?」
『知っての通り、クラスノダールは地表には居住できない。地下都市を築きたくても我々では技術力が足りない。せいぜい洞窟内に基地を建設する程度だ。君達に全権を与えても良い』
「それでよろしいのですか? 私達は、どちらかと言えば侵略者ですよ」
『私はテレパスだ、君たちの国家や民族の素性は潜在意識まで含めて読み取った。アルビオンとどちらと共闘を結ぶかと言えば、答えは一つだ』
「なるほど、信じていただけるというわけですか」
『うむ。アルビオンより遥かにな』
「分かりました。我々も、あなた方を信じましょう」

 数時間後、本隊と合流したサラマンダー。
「申し訳ありませんでした」
 クラスノダール駐留艦隊を指揮していたダグラス・ニックス大尉は平謝りする。
「構わんさ。命令を守り、艦隊に大した損傷も受けていないしな」
「再度奪還すると聞きましたが?」
「ああ、参謀達を集めて会議を行う。手配してくれ」
「かしこまりました」

 数時間後、会議室に集まった参謀達。
 シェコチヒンを交えて、事の次第を参謀達に説明するトゥイガー少佐。
「その方が、テレパスというのは本当ですか?」
 信じ難いといった表情で尋ねる一人の参謀。
「ためしてみるか? そうだな……、君の秘密を聞いてみるがよい。例えばお尻にいまだに青あざがあるとかなんとかな」
「子供じゃあるまいし、ありませんよ」
 憤慨する質問者。
「例えばだよ」
 その受け答えに感ずることがあったのか、
『いいだろう。君の秘密は、臍の上あたりに一本毛が生えている、だろう?』
 と彼の秘密を暴露してみせるシェコチヒンだった。
「あ、当たっている……」
 驚く質問者だったが、もっと深読みされれば誰にも知られたくない本当の秘密も知られるという事を心配するのだった。



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11
銀河戦記/脈動編 第十章・漁夫の利 Ⅵ
2022.07.30

第十章・漁夫の利





 精神感応(テレパス)=族長ドミトリー・シェコチヒン
 念動力(サイコキネシス)=ローベルト・ポルーニン
 遠隔念動力(テレキネシス)=チムール・オサトチフ
 瞬間移動(テレポート)=エヴゲニー・ドラガノフ

 サラマンダー指揮官=ウォーレス・トゥイガー少佐


「敵艦が降伏しました」
「エンジン停止を確認しました」
「うむ、敵艦の艦橋に乗り移るぞ。ドラガノフ頼む」
 シェコチヒンが、立ち上がって精神増幅装置に繋がるヘッドギアを外して立ち上がった。
 どうやら、エヴゲニー・ドラガノフのテレポート能力で、直接敵艦に乗り込もうということらしい。
「了解」
 ドラガノフも同様に、精神増幅装置のヘッドギアを外して立ち上がって、シェコチヒンの側に寄る。
「いいですか?」
「あ、ちょっと待て。オサトチフ、俺達の周りにバリアーを張っておいてくれ」
 遠隔念動力を持つ、チムール・オサトチフにサイコフィールドを自身に要請した。
「分かりました」
 オサトチフが念ずると、二人の身体がオーラに包まれた。
「よし、いつでもいいぞ」
「では」
 と言うと、ドラガノフはシェコチヒンの肩に触る。
 次の瞬間、二人の姿が消えた。


 そして彼らが再び姿を現わしたのは、敵艦であるサラマンダー艦橋の中だった。
 突然として出現した二人に、驚きを現わす艦橋要員だった。
 SP要員が銃を構えるが、トゥイガー少佐がそれを制した。
 仮に発砲してもバリアーで跳ね返されるだけだったろう。
 前に歩み出て尋ねる。
「私は、このサラマンダーの指揮官、ウォーレス・トゥイガー少佐です。あなた方は?」
 と、冷静に出自を尋ねる。
『私は、ミュータント族と呼ばれる者だ。族長ドミトリー・シェコチヒン』
 それは言葉ではなかった。
 思念波(テレパシー)として、人々の脳裏に直接語り掛けられていた。
 ゆえに言語という概念を通り越して、通訳なしに意思疎通が可能であったのだ。
『この艦は、我々の支配下に入ったことを宣言する。以降は、我々の指示に従う事。反抗しなければ、命の保障をしよう』
「了解している」
 素直に返答しているトゥイガー少佐。
『正直に言おう。この艦のエネルギー砲やエンジンなどに興味がある。よって、それらの担当部署の配属要員は、我らに協力することを望む』
 それを聞いてトゥイガー少佐は意見具申を述べた。
「ということは、戦闘要員以外は解放されるのでしょうか?」
『そうだな。解放してもよいぞ』
「ありがとうございます。この艦は、円盤部が居住区となっており、切り離しができます。非戦闘員だけを乗せて退避させたいと思います」
『その円盤部を切り離して、戦闘に支障は出ないのか?』
「支障はありません。戦闘においては、円盤部がない方が、戦闘力は倍増します」
『それなら構わない……』
 と答えたところで、何やら考え事をしているような表情をするシェコチヒン。
『今、連絡があった。クラスノダールにいた君たちの艦隊が、銀河人の攻撃を受け、基地を放棄して撤退をはじめたそうだ』
「銀河人というと、アルデラン共和国がですか?」
『そうだ。せっかく基地を奪取したのにあっさりとな』
「いえ、そういう指示を出していましたから」
『うむ……どうだろう。クラスノダールの奪還を我々と一緒にやらないか?』
 意外な提案を出したシェコチヒンの言葉に驚愕する艦橋要員。
「共闘しようというのですか? これまでにも三度交戦してきた相手と?」
『精神交流していいか?』
「交流ですか?」
『君の脳裏の深層意識にダイブして、君達の国家や民族の歴史などの情報を直接引き出す』
「できるのですか?」
『私はテレパスだ。容易いことだが、君と接触するのを許可して欲しい』
 接触と言われて何をされるのかと疑心暗鬼なトゥイガー少佐だったが、場にいるものすべてを納得させるだけの風格を滲ませていた。
「いいでしょう。どうぞ」
『分かった』
 シェコチヒンはトゥイガーのすぐ傍に歩み寄ると、その両手を取って額同士を接触させた。
『じっとしていてくれ。今から、君の深層意識に侵入する。邪念が入らないように目を閉じていてくれ』
 何をされるのかと硬直するトゥイガーだったが、言われた通りに目を閉じた。
 周囲の者も息を飲んで見守っている。

 静かな時間が過ぎ去った。
 ゆっくりとトゥイガーから離れるシェコチヒン。
『もういいぞ、終了した』
 緊張を解くトゥイガー。
「何か分かりましたか?」
『ああ、君達のすべてを理解した。どうやら信用していいようだな。君達の国家が永年の戦争から銀河統一に至るすべてを読ませて貰ったよ』
「恐れ入ります」
 深層意識へのダイブによって、トゥイガー達の国家についての情報、さらには天の川銀河における銀河連邦国家の片鱗さえも読み解いたのだった。



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