銀河戦記/鳴動編 第一部 第十八章 監察官の陰謀 Ⅲ
2021.04.05

第十八章 監察官の陰謀




「今日の作戦会議はこれまで。解散する」
 一同が立ち上がってぞろぞろと退室をはじめる。
 その時だった。
「お待ちください!」
 旗艦サラマンダーに同乗している、統合本部より派遣されてきている監察官が異議を唱えた。
「シャイニング基地を放棄などもっての外です。監察官として指令の撤回を進言します」
 共和国同盟軍の正規の艦隊には、統合本部直属の監察官を同乗させなければならないという規則があった。提督が命令を遂行しているか、独断専行や反乱といった同盟に不利益な行動を犯していないかなどを監視のために派遣されているのであった。
「それでは、監察官殿には何か妙案でもあると言うのですか?」
「あるわけないだろう。私は作戦参謀ではない! 統合本部よりの命令が正しく実行されているかを監視するために派遣されているのだ」
「で、統合本部よりの命令とはどういうものかをお伺いしたい」
「何をふざけたことを言っているのだ!」
「確認のためです。第十七艦隊に与えられた命令とは?」
「無論。シャイニング基地の死守することだろう」
「それでは死守すればよろしいのでしょう? そのための一時的な撤退です」
「だめだ、だめだ! 例え一時的にもシャイニング基地を放棄することは認めないぞ」
「あなたは第十七艦隊だけで敵の三個艦隊を撃滅できるとお考えですか?」
「私にとっては、そんなことはどうでも良い。命令を遵守させること、それが私に与えられた任務だ。それ以外には考えることなど必要ない!」
「つまり敵の三個艦隊と正々堂々と戦い、討ち死にしろと仰るのですか?」
「死守できないならそうなるというだけだ」
「つまりあなたも監察官として同乗し、華々しく散るというわけですな」
「仕方あるまい。最後まで提督を観察する。それが私の任務だ」
「涙ですね。あなたにとっては、殉職することが名誉ですか?」
「そうだ。軍人として生きる者として命令を遵守することが最上の誇りだ。そして命令を守らせることもな」
「私には詭弁としか思えませんね。無駄死にほど馬鹿馬鹿しい行為はないと思っています。あなた自身はそれで満足でしょう。しかしその命令に就き従い死んで行く将兵達のことを考えたことがありますか? 彼らには家族があるし恋人もいる。その人々の悲しみを考えたことがありますか?」
「殉職すれば名誉の戦死として特進が与えられるし、家族には遺族恩給が出る」
「死んで昇進して浮かばれると思いますか? 家族には恩給が増えるよりも生きて無事に帰ってきてくれることのほうがどんなに嬉しいか知らないのですか?」
「話にならないな。君は軍人としての気質に欠けているようだ」
「死ねと言われて喜んで死出の旅に立つのが軍人気質ですか。そんなの糞食らえです」
「提督、お下品ですよ」
 じっと提督と監察官との言い合いに耳を傾けていた一同であるが、さすがに言葉が乱暴になってきたアレックスをレイチェルが諌める。
「ああ、悪いな。つい興奮してしまったよ」
「ふんっ! 一日の猶予を与える。それまでに撤退命令を撤回するんだ。いいな」
「一日あれば敵艦隊はすぐそこまで迫ってきますよ。そんな余裕はありません」
「とにかく一日間だ!」
 そういうとすたすたと艦橋を立ち去って行った。
 早速一同がアレックスの元に駆け寄ってくる。
「何なんですか、あいつは? そんなにわたし達を殺したいのですか?」
「自己陶酔の境地ですよね。あれは、何言っても無駄ですよ」
「それでどうなさるおつもりですか?」
「聞くまでもないだろう。監察官が何と言おうとも撤退する。それだけだ」
「監察官は統合本部に連絡しますよ。提督は命令違反を犯したとのことで軍法会議必至です」
「それは当然のことだ。しかし部下達の命には代えられない。私一人が罰せられれば済むことだ」
「しかし、提督……」
「これは命令だ。それとも君達も司令官に対して命令違反を犯すつもりか?」
「いえ。そんなことはありませんが」
「なら、答えは一つだろう」
「ですが……」
「作戦会議を解散する。ご苦労だった」
 そういい残してアレックスは会議室を退室していった。
 一同はアレックスの考えに感嘆しながらも、その行く末を心配していた。
「このままだと、例え作戦が成功してシャイニング基地を防衛しても、提督は確実に軍法会議だよ」
「一旦撤退した後で、再び奪還してみせると言っているのに、どこがいけないのよ」
「そうだよ。結果よければすべて良しじゃないのか?」
「ニールセンの野郎の陰謀だよ。あいつにとって結果じゃなくて、提督が命令に逆らうことが狙いなんだよ。これ幸いと軍法会議に掛け、提督を抹殺しようとしているんだ」
「間違いないわね」
「第十七艦隊を救うために、一人軍法会議になる覚悟をしている提督だというのに、俺達には何もできない」
「一体どうすりゃいいんだよ。敵艦隊はすぐそこまで迫っているというのに……」
 頭を抱えていくら考えても答えを見出せない一同であった。

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2021.04.05 08:34 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第十八章 監察官の陰謀 Ⅱ
2021.04.04

第十八章 監察官の陰謀




「あの……発言してよろしいでしょうか?」
 パトリシアの副官として傍聴していたフランソワが発言の許可を打診した。彼女には発言権は本来ないのであるが……。
「かまわない。言いたまえ」
「では……」
 フランソワが前に進み出て、自分が考えていた作戦を披露した。
「三個艦隊とまともに戦ってはこちらに勝ち目はありません。この際、シャイニング基地は、参謀長のおっしゃられた通りに放棄して撤退しましょう」
「馬鹿な。基地を放棄しては指令無視になる。この基地を取られれば、同盟侵攻の拠点とされて、戦争に負けてしまうんだぞ。だからこそ、敵に渡さない作戦を練るため、我々が頭を悩ましているんじゃないか」
「最後まで聞いてください。ただ放棄するのではなく、ついでに置き土産を敵にプレゼントします」
「置き土産?」
「はい。この基地の管制システムに細工しておくのです。わざと敵に占領させておいて、遠隔操作で基地をコントロールするのです。地上ミサイル制御、対空管制システム、すべてをこちらで操作。そして敵を混乱させて撃滅に至らせます」
「ちょっとまて。それは提督が、士官学校時代の模擬戦闘で使った作戦ではないか」
「その通りです。レイティ・コズミック大尉ならシステムの細工は簡単でしょう」
「そううまくいくものだろうか」
 誰ともなく呟きの声が漏れる。
「フランソワ、君は本気でその作戦が成功すると考えているのか」
「もちろんです。敵が提督の士官学校時代の作戦まで、知りうるはずがありませんから。我々の策略に気付く可能性は低いといえます」
「そうか……」
 アレックスは微笑みながら一同を見回していた。
 その時インターフォンが鳴った。
「レイティ・コズミック大尉から至急の連絡です」
「回線をこちらにまわしてくれ」
「はい」
 スクリーンにレイティの姿が現れた。
「提督。基地の管制システムの改良プログラム、ヴァージョン2のインストール完了しました」
「ヴァージョン2?」
「はい。基本プログラムは前回のものを改良したものを使用していますので」
「で、敵に見破られる懸念は?」
「それは有り得ないでしょう。よほど同盟のシステムに熟知したものか、天才ハッカーでもない限りは」
「なら、大丈夫だな。ご苦労だった。引き続き万全を期してのバグつぶしをやってくれ」
「わかりました」
 レイティの姿がスクリーンから消えた。
「提督……今のお話しは?」
 一同がアレックスに注目した。
「提督も意地が悪い。すでに計画をご自分で練っておられながら、私達にも作戦を出させるなんて」
 フランソワが抗議の声を上げている。部下の意見を聞きだそうとする、アレックスの常用的言葉の言い回しなどのことをまだ知らないからである。
「決めていたわけではない。私の作戦はいわゆる最後の保険というやつさ。皆の意見を聞いたうえで、そっちの方がよければそれでよし。といって一秒を争う作戦においては、皆の意見を聞いてからでは間に合わなくなるので、先行投資させてもらっただけさ。レイティといえど、基地全体の管制システムを改良する時間が必要だからだからな。第一私がすべて考えて実行するのであれば参謀はいらないし、一人の人間の考えることには限界がある。常にディスカッションして良いところを取り上げ、悪いところを訂正しなおす。誰だって完璧な人間ではないんだ。納得のいかない作戦なら、いくらでも訂正意見をのべてくれたまえ」
「どうやら、提督はご自身の作戦をお持ちのようですね。聞かせていただきませんか」
「そうですよ。我々の意見は出尽くしたようですし、フランソワの述べた作戦をお考えだったようですが……」
「先のパトリシアの作戦は、敵に占領させないように行動しなければならないから無理がでてくる。ならばいっそのこと占領させてしまって、後から十分作戦を練ってから奪還を計ったほうがいい。敵は基地を確保しようとするだろうから、援軍が到着するまで待たねばならず、動くことができない。つまりは我々が引き返してくるにも、交代で休息をとることができる時間的余裕があるというわけだ。弾薬や燃料の補給だってできる。そして敵はちゃんといるべきところで待っていてくれる」
「そうか、そこでフランソワの考えた作戦をもってあたれば」
「そういうことだ」
「決まりです。その作戦でいきましょう」
「そうだ。提督、俺も賛成しますよ」
「提督。どうやらみんなの総意が一致したようですね」
「よし、フランソワ。君が詳細を煮詰めて、至急作戦立案としてまとめてくれたまえ」
「わ、わたしがですか?」
「その通り」
「は、はい」
 肩をぽんと叩くものがいた。振り返ってみるとパトリシアであった。
「作戦立案、よろしくね」
「お姉さま……」
「大丈夫、あなたならできるわよ」

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2021.04.04 07:39 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅷ
2021.04.03

第十一章 帝国反乱




 大演習は終わった。
 すでに展望ルームには、皇帝の姿はない。
 幼い皇帝に長時間同じ場所に立たせておくのは無理だろう。
 ぐずって泣いて周りの者を困らせたのであろう。皇帝をあやしながら侯爵とエリザベス皇女と共に帰ったと思われる。
 残っているのは将軍達だけのようである。
「大演習を終了する。これより反省会を開くので、各艦隊の指揮官及び参謀はステーション作戦会議室に集合せよ」
 本部から連絡が届く。

 数時間後作戦室に集合する面々。
 議長は、当然ロベスピエール公爵子飼いのアルバード・ギンガム大将である。
「反乱軍は、アルビエール侯国に集結している」
 摂政派においては、反乱を起こしたのは前回に続いて皇太子派ということになっている。
 前回はともかく今回はどうみても摂政派の謀反であることは確か。
 しかし国政においては、帝都を押さえている摂政派に分がある。
「帝国を放ったらかしにして、共和国同盟にばかり加担して国政を疎かにしている」
 アレクサンダー王子に、皇帝になる資格はないと吹聴しまくっていた。
 盗人にも三分の理があるということだろう。
 摂政派にとって、アレックス(アレクサンダー)が皇位継承継承権を有する王子であることまでは認めているようだが、皇太子としては認めない。


 話題は中立を保っているサセックス侯国の話しとなった。
「サセックス侯国は、今まで通り中立を保っている」
「まあ、バーナード星系連邦の侵略を阻止するためには致し方ないでしょう」
「連邦? 今はあっちも謀反が起きて分裂しているのだろ? こちらに攻め入る余裕はまだないと思うのだが」
「さすれば、サセックスをこちら側に引き込むこともできるじゃないか」
「使者を送ってみたらどうだ?」
「そうだな。手をこまねいていたら、反乱軍に先を越されてしまうぞ」
「だが、これまでの経緯をみても、エルバート侯が首を縦に振るとは思えないが?」
 頭を抱える一同だったが、
「人質を取って、言うことを聞かせるしかないだろう」
 と進言したのは、フランシス・ドレーク提督であった。
 海賊上がりのドレーク提督にとっては、人質作戦を実行するのも容易いだろう。
「ならば貴官が陣頭指揮を執ればどうだ?」
「いいですとも。ご命令なさればいつでもよろしいですぞ」
 と議長のギンガム大将を見る。
「それは良いのだが……一応公爵に伺ってからでないと結論は出せない」
 国家間の案件であるがゆえに、公爵の了解を取る必要がある。
 最高権力者であるはずの皇帝ロベール三世でも、摂政エリザベスでもない公爵の名を出すことからして、真の実力者は誰かを示していた。


「ところで、ジュビロ・カービンはどうしておるか?」
「例の同盟分断作戦を上程した奴か? 闇の帝王とか名乗っていたようだが」
「議会進行中のスクリーンに突然現れたのにはビックリしましたよね。ハッキングの能力は認めますけど」
「しかし彼の進言通りに途中までは上手く運んでましたよ」
「共和国同盟内に反乱を起こさせたのは、素晴らしい手腕でした」
「いっそ参謀に取り入れたらどうでしょうか?」
「いや、それはよした方がいい。ああいう奴は、自分の都合で簡単に裏切る」
 ということで、話題を変える一同だった。

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2021.04.03 10:38 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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