銀河戦記/脈動編 最終章・和解の地にて Ⅱ
2022.10.15

最終章・和解の地にて





 開拓移民船。

 それは、ここに集ったすべての人々の寄る辺となっていた船。

「遥か一万年前に、天の川銀河からこの地へと渡ってきた船です」
 族長トゥイストーが、横たわる船を指さしながら皆に伝えた。
「それは真か?」
 ドミトリーが驚きの声を上げた。
 一万年前のある日、かつてのミュータント族が、アルデノン共和国にただ一隻あった開拓移民船を略奪して、宇宙へと飛び出した船でもあるからである。
「調べてみます」
 技術主任のジェフリー・カニンガム中尉が、船に駆け寄って船体を調べ始めた。
 こびり付いている植物の蔦を掻いて地肌を露出させて、船体に刻まれているはずの機体番号を読み取ろうとしていた。
 それは多少擦れてはいたが、何とか読み取れたようだ。
「この開拓移民船は、ランドール提督が乗船していた船に間違いありません」
 その声は、感動に震えていた。
「そうか……」
 トゥイガー、ケルヒェンシュタイナー、ドミトリー、それぞれ何か言いたげだが言葉が出ないという表情をしている。

「中へ案内しましょう」
 トゥイストーが搭乗口を開けて、船内へと導いた。
 移民船の中には、一行にとって馴染みのある見慣れた機器が並んでいる。
 たどり着いた場所は、船を操作する制御盤の並んだ船橋であった。
「まあ、適当な椅子に座ってくだされ」
 言われたとおりに、それぞれ着席する。
「まずは、私どもについて話しましょうか。植人種となったいきさつをね」
 そう言うと、訥々(とつとつ)と話し始めた。

 かつて、アルデノン共和国の移民船を分捕り、宇宙へと脱出したミュータント族がたどり着いたのが、生存に可能な水と空気のある環境を備えた居住惑星、後にサンクト・ピーテルブールフと命名されることとなる惑星でした。
 首領ドミトリー・シェコチヒンの指導のもと、開発と人口殖産が進められ、やがて再び宇宙へと進出することが可能となりました。
 新造の移民船が多方面の宇宙へと進出してゆき、記念となるべきこの移民船も駆り出されることとなったのです。
 そして、この地を訪れることとなったのですが……。
「冬虫夏草の巣窟だったということですね?」
 生物学者のコレット・ゴベールが口を挟んだ。
「その通り」
「ちょっと質問よろしいですか?」
 今度は言語学者のクリスティン・ラザフォードが質問する。
「何かね?」
「その冬虫夏草にしろ海の魚にしろ、生命の誕生には神がかりな確率だと思うのですが」
「移民船は、航行中に定期的にゴミを排出するからね。一万年前に、惑星アルビオンにたどり着く途中で排出したゴミがこの惑星に落下して、そこに付着していた生物から新たな生命が発生したと考えられる」
「それは十分考えられますね」
 コレットが頷く。

 何もしらない人々は、開拓精神に燃えながら植林や耕作を始めたのだが、一人また一人と病に臥していきました。
 冬虫夏草に体内を寄生されてしまったのです。
「宇宙に脱出することはできなかったのですか?」
「最初は風邪のような病気だと軽く考えていましたからね。気が付いた時には、誰も動けなくなっていました。船を動かせる者が全員倒れてしまったのです」
「それでは仕方がありませんね」
 話は続く。
 最後に一人だけ生き残ったのは生物学者でしたが、甲斐もなく発症の前兆を見せていました。
 絶望した彼は、自殺装置を作って実行したものの、シダ植物は必至の抵抗を見せて遺伝子の一部を預けて同体化してしまったのです。
 目を覚ました彼は、動物体と植物体が共生する植人種となったことに気が付きました。
「なるほど、元々は我々と同族だったというわけか……。実に興味津々な出来事だったのだな」
 ドミトリーが納得したように感心している。
 ミュータント族と植人種の関係が明らかにされたが、他の人々もそれぞれ繋がりがあることも明らかにされた。


 ランドール提督の乗っていた開拓移民船がすべての民族を繋いでいた。



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11
銀河戦記/脈動編 最終章・和解の地にて Ⅰ
2022.10.08

最終章・和解の地にて





 惑星アグルイス地上に墜落したアルビオン軍旗艦ヴァッペン・フォン・ハンブルグ。
 艦内では、艦の修復や気密性のチェックが行われていた。
「しようがないとはいえ、とんでもない所に降りてしまったな」
 司令官のヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐が恨めしそうに呟く。
「いつまで持ちますかね。救助隊が来る前に食料が尽きて死ぬか、損傷が広がって胞子が侵入して死ぬか、どちらになるか」
「救助信号は打ち上げているんだ、必ず救援に来てくれるさ。友軍かもしくは……」
「イオリス共和国ですか?」
「そうだ。彼らなら助けてくれるかも知れない」
 これまでの対談などから、平和的な国家であることは承知していた。
「そんなことより、奴らがさらに集まってきていますよ」
 指さすモニターには、ぞろぞろと集まってくる植人種達が映っていた。
 その中から一人が前に進み出た。
「何か言いたそうな顔していますね」
「外部マイクスピーカーのスイッチを入れてくれ」
 オペレーターが機器を操作すると、外の植人種の声が届いてきた。
『自分は、族長のトゥイストーである。そなたらの所属を教えてくれ』
「私は、アルビオン共和国軍大佐ヴィルマー・ケルヒェンシュタイナーだ」
『そうか、アルビオンか……』
 と言って上を仰ぐトゥイストー。
『どうやら別の来訪者がやってきたようだ』
 その声に、
「モニターを上空に切り替えてくれ」
 指示を出すケルヒェンシュタイナー。
 画面が切り替わり、上空の映像に切り替わった。
 上空の一点から黒い影が舞い降りてくる。
 どうやらイオリスの上陸用舟艇のようだ。
「助けに来たのでしょうか?」
「それは有り難いが、まずいことになるぞ」
「胞子のことを知らせなくてはいけませんね」
「そうだな。連絡を入れてくれ」
「分かりました。共倒れになっては助けて貰えません」
 通信士が通信を繋ぐ。
 モニターにトゥイガー少佐が映し出される。
『トゥイガー少佐です。救難信号を受け取りました。これから助けます』
「ちょっと待ってください。ここの惑星の大気には、人を死に至らしめる物質が漂っているのです」
 副官のゲーアノート・ノメンゼン中尉が警告する。
『ご警告ありがとうございます。しかし心配は無用です、我々には十分な対策が用意してありますから』
 トゥイガー少佐は、惑星降下前に大気組成の下調べを充分に行っており、この惑星が開発前のイオリスの大気に似通っていることを確認していた。
 冬虫夏草の殺人胞子が蔓延していることも承知していた。
 しかしながら、イオリスの科学部は胞子に対する特効薬の開発を終えていた。
 発症状況に応じて四段階の対処法がある。
1、感染初期における胞子の発芽を抑制する薬。
2、発芽後の根の成長を抑制する薬。
3、根を張り始めた後には、人体無害の除草剤の開発。
4、最後の手段は、中性子線照射機による体内根茎の滅却。
  (三大肥料であるリン・窒素・カリウムなどの放射性同位体を注射して、植物が取り込んだ箇所を中性子照射で限局的に核反応を起こして組織を破壊する)

 上陸用舟艇は、ハンブルグの隣に降り立った。
 同様にして食人種がそちらにも集まってくる。

「イオリス艇より入電しました」
「繋いでくれ」
「繋ぎます」
 モニターにトゥイガー少佐が出る。
『とりあえず状況確認のために降りてきました。本格的な救出活動はこれからです』
「申し訳ない」
『ところで、取り囲んでいる生命体はご存じですか?』
「ああ、我々は植人種と呼んでいるが、動物体と植物体が相利共生している生命体のようだ」
『なるほど、そうみたいですね』
「おっと、彼らからお呼びが掛ったよ。宇宙服を着て着いてきてくれだそうだ」
『分かりました。二十分後に外で落ち合いましょう』
「了解した」


 二十分後、生物学者のコレット・ゴベール、言語学者のクリスティン・ラザフォード,
技術主任のジェフリー・カニンガム中尉を同行させて地上に降り立ったトゥイガー少佐だった。
 一方のヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐の方も、副官のゲーアノート・ノメンゼン中尉と通信士のヴィルヘルミーネ・ショイブレ少尉を連れてきていた。
 ミュータント族の方も呼ばれてきていた。族長ドミトリー・シェコチヒンと瞬間移動のエヴゲニー・ドラガノフ、遠隔視のニーナ・ペトリーシェヴァである。
 そして一同の前に立つのは、この惑星アグルイスの主ともいうべき族長トゥイストーである。
「惑星アグルイスへようこそ。皆さんにお見せしたいものがあります。着いてきてください」
 と言うと、先に立って歩きだした。
 植人種の族長トゥイストーに導かれて、奥深い森へと進んでゆく。

 森を抜けて開けた場所に出ると、眩いばかりに輝く大海原と砂浜が広がっていた。
「あれをご覧ください」
 とトゥイストーが指さした先には、緑色の植物に覆われた小高い山のようになっている物体があった。
 その所々から黒光りする金属製の地肌が覗いて見えていた。
「あれは?」
 誰ともなく質問する。
「我々の祖先がこの地にやってきた乗り物。開拓移民船です」

 開拓移民船!

 その言葉を聞いて、一様に驚く一行だった。

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銀河戦記/脈動編 第十二章・追撃戦 V
2022.10.01

第十二章・追撃戦





 軽巡洋艦スヴェトラーナ艦橋。
 正面スクリーンに、サラマンダーが円盤部を切り離している姿が映されていた。
「あれは、どうしたことでしょうか? サラマンダーが分離しようとしています」
「内部に火災でも発生して、爆発炎上する前に切り離したのか? そういえば、円盤部は居住区とか言っていたな」
「円盤部を攻撃しますか?」
「いや、非戦闘員は攻撃しないと約束したからな。本体を先に攻撃しなけりゃ隙を与えるだけだ」
「しかし、ちょこまかと動き回って中々止めを刺すことができません。すでにグロムイコとオサトチフは限界です」
 予知能力(プレコグニション)を持っているヴァレンチナ・グロムイコ、そして遠隔念動力(テレキネシス)でワープしているチムール・オサトチフのことを言っているのでろう。量子乱数自動制御に対抗して、予知能力で次の行動を読み、遠隔念動力で艦をワープさせていたのである。しかし精神力をかなり消耗するようだ。
「私がテレパスなので回避行動を読み取れないようにしているのだろう。今度は、後方に回って攻撃しよう。済まないが、二人とも頼むよ。これで最後にする」
「了解しました」
 疲れ切って息苦しい声ながらも応えるグロムイコとオサトチフ。

 予知能力での敵艦の予想位置に対して、背後を取れる位置に能力ジャンプする。
 ジャンプアウトした空域には、予想通りにサラマンダーが艦尾を見せていた。
「よし! 背後を取ったぞ!」
「ちょっと待ってください。あれを見てください!」
 と副官がスクリーンを指さした先には、サラマンダーの三連装レールガンの砲口がこちらを狙っている姿があった。
「なんだあれは?」
 次の瞬間、レールガンが火を噴いた。
 と同時に、激しく振動する艦体。
「どこをやられたか?」
「機関部です! 直撃!」
「機関部に火災発生!」
「機関停止しました。電源喪失! 全砲塔使用不能です!」
 そして照明と全機器がブラックアウトした。
「補助電源に切り替えろ」
 照明が再び点いたが、乗員の表情は暗かった。
 機関部をやられては、ただ漂流するだけで敵艦の餌食となるだけだった。
「随伴の艦隊は?」
「攻撃を受けています」
 サラマンダーは、行動不能となったスヴェトラーナへの攻撃を一時停止して、随伴艦を攻撃していた。
 能力ジャンプのできない通常の戦列艦には、サラマンダーの相手にはならなかった。
 伝家の宝刀であるランドール戦法で縦横無尽に動き回って翻弄していた。
 ものの数十分でそれらを完全に無力化に成功したのであった。
「友軍、全艦行動不能に陥りました」
「行動不能? 撃沈は?」
「一隻もありません。すべて機関部直撃で起動停止にされたもよう」
「命は奪わない……か」
 ゆっくりとスヴェトラーナに艦首を向けるサラマンダー。
 そして停止した。
「原子レーザー砲がこちらを狙っています」
「止めを刺すつもりか?」
「サラマンダーより入電」
「繋げ」
「繋ぎます」
 通信用スクリーンに映し出されるトゥイガー少佐。
「隠し玉を持っていたとはな。恐れ入ったよ」
『奥の手は、最後の最後まで取っておくものですよ』

「で、どうすればいいか」
『まずは全艦に投降の指示を出してください』
「分かった、降伏しよう」
 副官に目で合図して、全艦に連絡を入れさせた。
『惑星アグルイスの衛星軌道に乗れますか? このままではどこへ流されるか分かりませんからね』
「大丈夫だ。それくらいはできる」
『護送艦を呼んでおります。到着次第、移乗してもらいます』
「それで君たちの本星に連行するのか?」
『いえ、最も近いあなた方の星に送りますよ。我々には捕虜を収容できるだけの余裕がありませんから』
「それで、アルビオンを救助するために、惑星に降下するのだな」
『そういうことです』
「そうか……頑張りな」



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