銀河戦記/脈動編 第一章・謎の宇宙生物との闘い Ⅳ
2021.10.09

第一章・謎の宇宙生物
UMO(Unidentified Mysterious organism/未確認生物)





 捜索隊のメンバーもアメーバー退治に駆り出されていた。アメーバーに遭遇した経験があるので当然の人選と言えるだろう。

 探知機操作担当、ウォーレス・トゥイガー大尉。
 冷線ガン担当、ジェレミー・ジョンソン曹長。
 集塵&保冷容器担当、レーダー手・フェリシア・ヨハンソン。
 凍結破砕用棍棒担当、機関長ヨーシフ・ペカルスキー。

 という四名一組の班で行動する。捜索隊の他のメンバーも別の班で行動している。

 ピッピッピッピッ……。
 規則的な断続音を立てる探知機を操作しながらアメーバーを探し回る。
 ピピピーー!
 探知音が不規則な連続音に変わり、計器の針が大きく振れた。
「近いぞ! 奴が近くにいるぞ!」
 探知機担当のトゥイガー大尉が叫ぶ。
「天井の換気口の中だ!」
 やがて換気口の隙間から姿を現すアメーバー。
 冷線ガンを撃とうするジョンソン曹長を制止する。
「待て! 完全に降り切ってからだ。欠片でも残すと、それから再生増殖するらしいからな」
 アメーバーは換気口からぶら下がっていたが、ゆっくりと床に落ちた。
「今だ! 撃て!」
 曹長が冷線ガンを撃つと、アメーバーは即座に凍り付いてゆく。
 完全に凍り付いたのを確認してから、
「今度は俺だな。どりゃー!」
 棍棒を持ったペカルスキーが、殴りかかって粉々に粉砕した。
「次は私ね」
 集塵機を持ったフェリシアが、バキューム装置を起動させて集めてゆく。

 それから手順通りに、凍結させ破砕して吸引収集して保存容器に収めた。
「この容器はどうするんでしたっけ?」
 フェリシアが尋ねる。
「ミーティングを聞いていなかったのかよ?」
「ちょっとトイレ行っていたので」
「一部を除いてロケットに積載して恒星に打ち込むんだよ」
「一部は?」
「生物学者のコレットに回して弱点とかを研究する材料にするんだ」
「どうでしょう。こいつら、その研究室から逃げ出したんですよね。二の舞になりませんかね」
「いくら何でも、コレットも同じ轍は踏まないだろうさ」
 心配だが、上の決めたことには逆らえないし、仲間のことも信じたい。
「ところでこいつ『ちょっとヤバイみたいだから、ここは避けよう』とか考えないのかな」
 ジョンソンが頭を傾げて言った。
「まさか、エネルギー体に引き寄せられる走性しかないさ。誘蛾灯に引き寄せられる蛾と同じだよ。死のトラップなどお構いなしさ」
 トゥイガー大尉が生物学的な答えを言う。

 数時間後、生物学者コレットの研究室に、アメーバーの入った保存容器が届けられた。
「今度は逃がさないでくださいよ」
 フェリシアに念押しされて受け取った保存容器を、新しく納入された例の培養器に収めて検査を始めるコレット。

活動性
 宇宙を彷徨っている時は休眠状態であること。
 皮膜か粘膜で覆われて凍結を防いでいたこと。
 エネルギー体を感知すると目覚めて近づく走性がある。
 エネルギーを吸収する活動期となると、皮膜を溶かして動き回る。すなわち動体状態では凍結が可能となる。
 一定量のエネルギーを吸収すると、分裂増幅するらしい。
生体構造
 ケイ素(Si)を主体とする身体の構造を持っており、有機基を持つ三次元酸化物ナノ構造をしているようだ。
 塩素のある気体中では塩素呼吸をすることが確認された。これは炭素ユニット(構造体)の地球生命が、酸素呼吸するのと同様である。

 突然、部屋が激しく揺れだした。
「余震?」
 また培養器が壊れないように、庇い続ける。

 天井から異音が聞こえてきた。
「なに? まさかアイツが?」
 身構えるコレット。
 だが換気口から落ちてきたアメーバーは動きが鈍く、やがて溶けて液体状になってしまった。
「どういうこと?」
 疑問に思っていると、何やら異臭が漂ってきた。
「こ、これは?」
 シアン化水素特有の臭気だった。
 換気口から漂ってくるようだ。
 今の余震で換気口のどこかに損傷が起きて、外気のシアン化水素が侵入してきたのか?
 シアン化水素は、呼吸だけでなく皮膚からも吸収されるので、大急ぎで破損個所を修復しなければならない。
 部屋を出て、近くの端末で管理センターに連絡する。
「分かった。今すぐ応急修理班を向かわせる」
 コレットは一つの結論にたどり着こうとしていた。
 それを確かめるために、もう一度研究室に戻ることにした。
 宇宙服を着こんで、慎重に部屋に入る。
 シアン化水素が充満しているようだった。
 液状化したアメーバーに近寄って調べると、完全に溶けて死滅していた。
「どうやらアメーバーは、シアン化水素によって生命活動を阻害され溶けて死滅するようね」

 アメーバーがシアン化水素で死滅する報告を受けて、地上施設そして宇宙基地でも、全員が宇宙服着用した後、館内にシアン化水素を充満させて、どこかにか潜んでいるかも知れないアメーバーの駆除がはじまった。
 すべての基地でアメーバーの死滅が確認され平常体制に戻った。

 再び開拓移民船団が編成されて、マゼラン銀河の各地へと散らばった。それらの船にはアメーバーに出会った場合に対処するためのシアン化水素を貯蔵したタンクを備えていた。

 かつての天の川銀河探索時代にも、惑星開拓において風土病などの原生生物との闘いがあったという。

第一章 了

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11
銀河戦記/脈動編 第一章・謎の宇宙生物との闘い Ⅲ
2021.10.02

第一章・謎の宇宙生物
UMO(Unidentified Mysterious organism/未確認生物)




 アメーバーを退治し、犠牲となった者と補充要員を交代して、平常に戻ったラグランジュ基地。
 活躍した隊員たちは、休息のためにニュー・トランターに降りた。
 生物学者のコレット・ゴベールも、自分の所属する細菌研究所に戻ってレポートを書いていた。
「あのアメーバーはどこから漂流してきたのか? 生物であるならば、生息地がどこかにあるのかも知れない。凍結破砕したからといって、死滅したのではなく、あくまで休眠状態にしただけだろう。プラナリアなどの単細胞生物の中には、幾つにも切断しても切片からそれぞれ再生を始めて新しい個体となるものがある。平温に戻せば復活してまた動き出す可能性大だ……」
 と、ここまで書いて一息つくためにコーヒーを淹れる。
 ふと机の脇においたショルダーバックに目が留まる。
 バッグを開けて、筒のようなものを取り出した。
 熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま、という保冷容器だった。
 部屋の片隅に保育器を大型にしたような培養器設備があり、マニュピレーターやレーザーメス、そして顕微鏡などが付いており、温度管理もできるようだった。
 培養器の中の温度を極限まで下げると、保冷容器を投入して密閉した。
 マニュピレーターを使って、保冷容器の蓋を外して、中の物の一部を取り出し、顕微鏡用のプレパラートに置いて観察を始めた。
「これが宇宙生物……」
 じっと食い入るように観察しているコレット。
 密かにアメーバーを採取して持ち込んでいたのである。
 生物学者として、未知の生物に出会えば探求したくなるのは本能というものである。
『コレット、これより報告会をやるから第一会議室に来てくれ』
 ヴィジホンが、隊長からの指示を伝えてきた。
「分かりました。今いきます」
 アメーバーの生体研究を一時中断して、部屋を出るコレットだった。

 第一会議室。
 今回の探索艇遭難事件の概要が報告されてゆく。
 アメーバー発見から消息不明となるまでの捜索艇のボイスレコーダーとフライトレコーダーの解析結果。
 犠牲者リストの発表。
 アメーバーのこれまで判明した正体と退治法など。
 一通りの報告の後、隊長が生物学者であるコレットに尋ねた。
「コレット君、宇宙生物に関する所感を聞かせてくれ」
 指名されて立ち上がり意見を述べるコレット。
「その生命活動の根源はエネルギーを吸収することであり、かつまた物質に変換する能力を持っております。エネルギーに対する走行性を持ち、おそらく無性生殖で分裂増殖するものと思われます。
 宇宙空間にある時は、皮膜もしくは粘膜で覆われていて、凍結を防いでいたようです。活動時はこの膜が溶けていたために、凍結したのです。
 生物兵器として活用する以外は何ら有用性は見当たらないので、発見次第害虫よろしく駆除する対象でしょう……」
 発言の途中だったが、室内の机や椅子などがカタカタと振動を始めた。
「なんだ?」
 振動はさらに大きく振れ始める。
「地震か!」


 コレットのいた研究室も激しい地震に見舞われていた。
 棚が倒れて薬品瓶が倒れる、椅子があちらこちらへと動き回る。
 天井の照明が落ちて、培養器のガラスを破壊して、中の冷気が漏れ出す。
 粉々になっていたアメーバーの破片が、次第に寄り添ってゆき一個体に戻ってゆく。

 
 地震は止まる気配は見せずに激しくなるばかりだった。
「これは大きいぞ!」
 やがて次第に治まっていった。
「終わったか……」
 誰ともなく呟く。
「会議は一時中止だ。各自地震による被害を調査に向かってくれ。特に気密性のチェックを最優先だ。大気中のシアン化水素が侵入してきたらヤバイからな」
 解散して各自の個室に戻って気密性などのチェックを始める隊員たち。

 コレットが自分の研究室に戻ると、その惨状に驚く。
「こ、これは!」
 培養器に駆け寄るが、もぬけの殻だった。
「脱走した?」
 辺りを警戒するコレット。
 ここには冷線ガンはない。
 取りに行っている余裕もない。
 逃げ出したいが、アメーバーがどこへ消えたのか逃げ出したかを確認する必要がある。
 慎重にアメーバーの痕跡を探る。
「カタツムリのように粘液出しながら進めばすぐ分かるのに」
 くまなく探したが、この部屋にはいないことが分かった。
 どうやら換気扇から他の場所へ移動したらしい。
 放っておくわけにはいかない。
 コレットは警報装置を作動させた。
 館内に警報音が鳴り響く。
「どうした? 何があった?」
 端末に管理センターから状況を尋ねるビデオ音声が流れる。
「例の宇宙生物に侵入されました。全館に警告を流してください」
「宇宙生物だと? どういうことだ! 状況説明しろ!」
 嘘を付くわけにはいかないので、正直に説明するコレット。
「分かった。処分は後回しだ。第一会議室に関係者を招集させるから、おまえも来い!」
「分かりました」

 第一会議室には、冷線ガンを携帯したメンバーが集まっていた。
「例の宇宙生物が侵入したので、これから退治するのだが、知っての通りに今現在分かっているのは、凍結粉砕して保冷容器に収めることだけだ」
「ちょっと質問いいですか?」
 隊員の一人が手を挙げた。
「宇宙生物が侵入した経緯は何ですか? ラグランジュ基地ではすべて凍結して封印しましたよね?」
 激しく追及し憤る表情の隊員。
 隠してみようとしてもいずれ知られると、
「私が持ち込みました」
 正直に手を挙げるコレット。
「まあ、待て! 彼女を責めるべきではない」
「どういうことですか?」
「考えてもみろ。奴は宇宙を漂っていたのだ。他の個体がいないとは断言できないはずだ。ならば、奴の生態を調べる必要があるだろう? 弱点も突き詰めなければならない。彼女の行動は、押して図るべきだ」
「しかし……」
 納得していない隊員だったが、隊長のいうことも一理あることは理解できる。
「奴を発見するものが必要だ。誰か探知機を作ってくれないか?」
「それなら簡単ですよ。奴はエネルギーを喰らうので帯電しています。荷電検知器か磁気検知器でOKだと思います。三時間もあれば作れますよ」
「よし、各班に一つずつ作成してくれ」
「分かりました」
 こうして幾つかの班に分かれて、検知器と冷線ガンそして保存容器を持って、アメーバー退治を開始した。

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銀河戦記/脈動編 第一章・謎の宇宙生物との闘い Ⅱ
2021.09.17

第一章・謎の宇宙生物
UMO(Unidentified Mysterious organism/未確認生物)





 仲間の一人を救えなかったという悲痛な思いを抱きながらも、捜索隊が惑星のラグランジュ点にある基地に戻ってきた。
 船着き場に艇を係留させて下船する一行。
 基地入り口の消毒シャワーを浴びてから宇宙服を脱ぎ、基地に入場する。
「あんまり慌てていたので、検体を一つでも移送できなかったのが名残惜しいです」
 医者が嘆くと、生物学者も同意した。
「わたしもです。あのアメーバーの一部分でも採取できていれば」
「言うなよ。逃げ出すだけで精一杯だった。アレ一体だけとは限らないのだからな。気が付いたら無数のアメーバーに取り囲まれていました、なんて考えたら心砕けるぞ」
「そうですね。生物かどうかもまだはっきりしていませんが、もし生きているのなら生殖とか種族維持とか調べたかったですけど」
「何にせよ。今頃あいつは恒星でくたばっているか、無限増殖をはじめているかのどっちかだ」
「くたばっていてほしいですね」
「ともかくボスに報告するか」
 基地指揮官のオフィスに向かう。
「やあ、お帰り。ご苦労様」
 暖かく出迎える指揮官。
 指揮官に詳細を報告する隊長ウォーレス・トゥイガー大尉。
「そうか……、亡くなられた隊員のご家族には私から連絡しておこう。ご苦労だった。もう休んで良いぞ。報告書は明日にでも提出してくれ」
「かしこまりました」
 指揮官室を出た一行は、それぞれの自室に戻った。


 自室に戻りシャワーを浴びてからベッドに入るトゥイガー大尉。
 その時だった。
 照明が点滅を始めたのである。
「なんだ……まさかな」
 ふと過(よぎ)った予感は、現実となる。
 照明が消え、回っていた換気扇の音が止まった。
「おいおいおい、本当のまさかかよ」
 青ざめて飛び起きて通路に出ようとしたが扉が開かない。
「電力喪失かよ。こりゃ本物なんじゃないか?」
 緊急用の開閉装置を手で回して扉を開けて通路に出た。
 非常事態を察した部下たちも飛び出していた。
 通路は停電用の非常灯が点いている。
 生物学者のコレットが駆け寄ってくる。
「隊長! これは?」
「おまえのところもか?」
「はい。電力が通じていません!」
「まさかあいつがもう一匹いて侵入されたのか?」
「アレが生物であるならば、増殖していたとしても不思議ではありませんが」
「一匹だけとは限らないか……」
「本当にアレに侵入されたとしたら、どうやって排除しますか?」
「そうだな。ブラスターは相手に加勢するようなもんだしな。何とか弱点を突き詰めないと大変なことになるぞ。おまえ生物学者だろ? 何とかならんか」
「そんなこと言われても、UMO(Unidentified Mysterious organism/未確認生物)なんですから知るわけないですよ。標本採集して色々と生体実験とかしてみなきゃ……」
「だろうな……。ともかくボスのところへ行って対策を考えよう」
 基地指揮官のいる部屋へと歩き出す二人。
「他の仲間の方々は何してんだ? この非常時に」
「たぶん停電時の扉の開け方を知らないのでは」
「しようがない奴らだ」
 放っておいて先に進む。
「非常灯が!」
 バッテリー内臓の非常灯が消えた。
「電池切れか」
「大丈夫です。ちゃんと用意してきました」
 というと手提げ鞄から懐中電灯を取り出した。
 アメーバー相手には役に立たないが、暗闇から突然襲われることはないだろう。
 懐中電灯で照らしながら、慎重に進んでいく二人。
「ボスの部屋だ」
 指揮官の部屋の前にたどり着いた。
「トゥイガー大尉、入りますよ」
 返事はなかった。
 嫌な予感がして、扉を手でこじ開けて中に入る隊長。
「ボス! いますか?」
 返答はなく、何かが蠢くような音がした。
 コレットが懐中電灯で部屋の中を照らす。
 そこにいたのは……。
「あ、あいつだ!」
 まぎれもなく探索艇を侵食したアメーバーだった。
 そして床に干乾びて倒れている指揮官。
「どうやって入り込んだんだ?」
「こっちに向かってきます!」
「俺たちの生命エネルギーを喰らう気だ。逃げるぞ!」
「どちらへ?」
「操船室だ!」
「まさか?」
「その、まさかさ。あいつを放っておくわけにはいかない。まだ動くうちに恒星に落下させる」
 だが操船室に向かう通路にアメーバーが待ち受けていた。
「ちくしょう! 先回りされたか?」
「別のヤツかも」
「こうなったら機関室へ行って直接エンジンを操作して軌道を変えよう」
 機関室へ行き先を変更する。
「しかし、他の隊員に出会いませんね」
「扉を開けるのに苦労しているか、それとも……」
 二の句を飲み込む隊長だった。
 無言で機関室へと向かう二人。
 懐中電灯で照らしながら進んでいく先を塞ぐ怪しげな影。
 その足元に転がるのは人だった。
 照らされて見るその表情は恐怖に引き攣ったまま硬直している。
「あいつだ!」
 ここにもアメーバーが侵略していた。
「これでは機関室には行けないな」
「それどころか、前と後ろを挟まれました」
「一体何匹いるんだよ」
 立ち止まった場所は、超伝導発電機室だった。
「ここへ逃げ込もう」
 扉をこじ開けて中へと入る。
 電力が通じていれば、カードキーなしでは開かないが、停電時には手で開けられるようになっている。
 発電室に逃げ込んだ。

 そこには発電機室担当の耐熱スーツを着込んだ職員がいた。
 ここは超伝導を発動させるために、絶対零度に近いヘリウムによって、機械が冷やされているので、洩れる冷気によって部屋全体が極寒状態である。
「何だおまえは? 何か用か?」
 外で起きている事変に気づいていないようだった。
「怪物が船の中に侵入したんだ!」
「怪物だと?」
「気づいていないのか?」
 事情を説明する隊長。
「俺たちは、こんな格好だからこの区域からほとんど出入りしないからな。外のことなど分からん」
「ちょっと指令室に連絡してみるよ」
 コントロールルームに入って連絡を入れる職員。
「だめだ、繋がらないよ。やられたのかな?」

「しかし寒い!」
 超伝導を発動させるために、発電機がヘリウムによって極超低温に冷却されている。それが部屋全体を冷やしている。
「そこのロッカーに耐熱スーツが入っているぞ」

 壁の側にあるロッカーから耐熱服を取り出して着込んだ。
「入ってくるのか?」
 待ち構える。
 やがてドアの隙間から侵入してきた。
 今まさに襲われると思った時、アメーバーの動きが鈍くなり、そして停止した。
「止まった?」
 動く気配がなかった。
 ふと、後ろにある発電機を見る。
「まさか、こいつのせいで動きが鈍ったのか?」
 相手はエネルギーを吸収する化け物だ。
 極超低温の環境では動けないのか?
 吸収するどころか、自身内部のエネルギーを奪われて停止してしまったのか?
「死んだのか? いや報告では宇宙を漂っていたとある。あくまで冬眠状態になっていると言った方がいいかもしれない」
 完全凍結させて、粉々に粉砕したら死ぬのだろうか?
 このまま放っておけば、凍結が溶けたらまた動き出すに違いない。
「ともかく動き出さないように、完全凍結させておくか……」
 超伝導発電機に繋がっている液体ヘリウム注入用のチューブを外して、アメーバーに向かって放射した。
 バリバリに凍ってゆくアメーバー。
「これでも喰らえ!」
 そばにあった椅子で、粉々に砕いてしまう職員。
「よし、塵一つ残さないように集めろ!」
 かき集めて保冷ボックスに入れ、液体ヘリウムの容器に沈めた。
「奴の弱点は冷気だな。凍らせて動きを止めた時に、破砕して保冷容器に密封して閉じ込めてしまおう」
「液体ヘリウム漏出の際に使う絶対零度冷却ガンを使用しましょう」
「そうだな。全員に冷却ガンを持たせよう」
 アメーバーに対する退治法が分かったので一安心する一同。

「あいつが何匹いるか分かりませんが、どうやって退治しますか?」
「エネルギーを求めて徘徊する奴だ。基地内のすべての動力源をカットして、一カ所だけ動かしていれば誘蛾灯のごとく集まってくるだろう。そこを一網打尽に凍結させて捕獲する」
 作戦が決まれば実行するのみである。
 綿密な計画が練られて、アメーバー退治が行われた。

 数時間後、ついにアメーバーの駆除に成功した。

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