銀河戦記/脈動編 第四章・遥か一万年の彼方 Ⅱ
2021.12.11

第四章・遥か一万年の彼方





 惑星の開発は続けられているものの、人口12万人という過疎状態では、何ともしがたいものだった。

「人口12万人なんて、ペストなどの疫病が流行れば、あっという間に滅亡しますわ。我々の体内・体外には、太古の昔から潜在する病原体が生き続けているのですから。この星にも有害な未知の原生物がいるかも知れませんし」
 例えば、帯状疱疹という病気は、幼少の頃に水痘が発症して一旦治ったと思っても、体内の奥深くの神経叢に潜り込んで生存していて、老齢などによって免疫力が下がった時に、復活増殖して引き起こすことがよく知られている。

 生物学者の意見を取り入れて都市計画案が練られる。
 一万人ごとのコロニーを作って、それぞれ分かれて生活することが提案された。コロニー間をチューブトンネルで繋いで、鉄道や道路によって人々が移動できるようにして、感染症が流行したコロニーは閉鎖して、それ以上の感染が広がるのを防ぐ。災害時も同様である。
 評議会などの政府・行政機関が集中した中央コロニーから、放射状・同心円にコロニーが築かれていった。コロニー名として、原子の電子配置に因んで、Kから始まる名前が振り当てられ、N10コロニーと言えば中央から4番目の同心円帯の北から時計周りで10番目に位置することになる。

 各個のコロニーには自治権を与えられていた。

 人口自然増に任せておいては、いつまでたっても人口は増えず、開拓も進まず他の惑星に進出することも叶わない。
 とあるコロニーでは、人口殖産の方策として、試験管ベビーはもちろんのこと、クローニングも盛んに行われていた。
 コロニーN20では、人口が増えて同心円から外れて円外に向かって、数珠繋ぎ状にコロニーを増設しはじめた。増設順にN20a・b……という名前が付けられた。
 クローニングは、人口増には役に立つが、反面として奇形や遺伝子異常などの障碍者も多数輩出こととなった。しかし人口増が当面の課題として引き続き行われた。


 奇形児や障碍者は、疎外され迫害されてゆくのが世の常だ。
 ミュータントとして蔑まれ、学校では虐められ、就職活動すらもままならぬ。

 そういった奇形や障碍者達が集まってコミュニティを作り始めた。
 その中で、頭角を現してきた人物がいた。
 ドミトリー・シェコチヒンという名の男は、虐げられた人々をまとめ上げて反社会的組織の一大勢力を作り上げた。
 恐喝や強盗を始めとして、麻薬などの非合法取引まで、一般の市民のやらないことを行っていた。

 N0中央コロニーの倉庫。
 ドミトリー他の仲間が何やら不審な行動をしている。
 積み上げられた荷物の一つを、バールでこじ開ける一味。
 軋み音を立てて、蓋が開いたその中に入っていたのは……。
 バズーカ砲、ブラスターガンなどの武器がぎっしりと入っていた。
「これだけのものを、よく集められたな」
 武器の一つを取り上げて、倉庫の窓に照準を合わせてみる。
「苦労しましたよ。裏取引でほとんどの金を使っちゃいましたよ」
「どうせ、この星の金なんぞ。もう必要がなくなるからな」
「そうですね」
 一同頷いて同意する。
「よっしゃ、行動は夜になってからだ」
「おお!」
 手を挙げて歓声を上げる一同。


 夜になった。
 N0コロニーに隣接する宇宙港。
 中央には、12万人の移民たちを運んできた大型輸送船が停泊している。
 連絡通路を進むエアカー。
 ドミトリー達が乗り込んでいる。
 武器を携帯して物騒な井出達である。
「通用ゲートが見えてきた」
「ぶっ飛ばしてやるぜ!」
 仲間の一人が、エアカーから身体を乗り出して、バズーカ砲を構えた。
「落ちるなよ。拾えねえからな」
「そんなドジ踏まねえよ」
 言いつつ、トリガーを引いた。
 鋭い発射音と共にゲートに飛び込み、爆音を上げてゲートを破壊した。
 何事かと集まってくる警備員たち。
「おっしゃあ! 飛び込めえ!」
 全速力でゲートに突っ込むエアカー。
 進路を邪魔する者は、機関銃が掃射してなぎ倒してゆく。
 目指すは、大型輸送船だ。

 軍艦ではないし、開拓に必要な機械類はすべて降ろされて、ただの倉庫と化していた輸送船には、まともな警備体制は敷かれていなかった。
 まずは人口増産優先として、移民活動は凍結されて、船はせいぜい動態保存されているだけだった。
「入り口はどっちだ?」
「あそこにある」
「高くて届かねえよ」
 と迷っていると、
「どけどけえ! 邪魔だ!」
 仲間の一人が、荷物積み降ろし用のハイリフト車を、かっぱらって持って来た。
「おお、いいもん見つけたじゃないか」
「みんな乗れや」
 言われてリフトに乗る一同たち。
 リフトが上昇して、乗船口。
「開けろよ!」
「今開ける」
 乗船口が開けられて、一同が乗り込んでゆく。
「おい、出港準備が整うまで、二名はここで見張っていろ!」
「へえ! 近づいてくる奴は、みんなぶち飛ばしてやりますよ」
 バズーカ砲を掲げ挙げて叫ぶ。


 操縦室。
 機器を操作している仲間がいる。
「どうだ。動かせるか?」
 ドミトリーが尋ねる。
「へへ。こんなの朝飯前ですよ。自動航行システムを立ち上げて、探査方面を入力するだけです」
 もともと自動航行で居住惑星を探すためのプログラムが仕込まれている移民船である。プログラムを起動させれば、後は自動運転できる。
「そうか……。頼んだぞ」

 数時間後。
「起動成功しました! いつでも発進できます」
「よし、見張りのものを中に入れて出航させよう」
「了解!」
 乗船口が閉められ、エンジンが始動しゆっくりと浮上してゆく。
 そして宇宙空間へと飛び立った。

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銀河戦記/脈動編 第四章・遥か一万年の彼方 Ⅰ
2021.12.04

第四章・遥か一万年の彼方





 漆黒の宇宙を漂う一隻の大型輸送船があった。
 その船体には大きな損傷があった。
 船内では赤色灯が点滅し、警報が鳴り続けている。

 冷凍睡眠カプセルで眠る人々。
 やがてゆっくりとカプセルが開き、人々が起き上がってゆく。
 何が起こったのかとしばらく首を傾げていたが、事態を把握して急ぎまだ眠っている人々を総員起こしに回った。
 総指揮官であるアレックス・ランドールも目覚めて、集まってきた者達にテキパキと指示を出し始めた。
「他の船は?」
「周囲に他の船が一隻も見当たりません」
「通信は?」
「先ほどから連絡を取っておりますが、全く応答はありません」
「現在位置を調べてくれ。フライトレコーダーもな」
 天文班が星図の照らし合わせを行ったところ、どうやらマゼラン銀河へとやってきていることは確認できたが、位置は当初予定の場所から外れて、銀河の反対側の端に到着したようだった。

 運行記録を調べていた班から報告が上がってくる。
「どうやら自動運行中に超重力波に遭遇してしまったようです」
「それでコース設定が変わってしまったのか?」
「でもそれだけでは、予定の反対側に飛んできたのが理解できません」
「他の要因が重なったというわけか……」
 一同が考えあぐねていると、
「大変です!」
 青くなって報告する者がいた。
「どうした?」
「原子時計を調べて分かったことなのですが、どうやら一万年過去の世界へ飛ばされたみたいです」
「一万年前の過去?」
「間違いありません」
「我々の祖先の住んでいた地球では、新石器時代というところか?」
「そうなりますね。通信不通なのは当然でした」

「もしかしたら……コース設定が変わっただけでなく、次元の狭間に飛び込んでしまったのかもな」
「ワームホールですか?」
「一瞬にして時間と空間を飛び越えてしまったんだ」
 明確な理由は分からないが、時空跳躍が起こったことは疑いのない事実のようであった。
「これからどうなされますか?」
「本隊に連絡することも、合流することも叶わない以上、この一隻の船の人員だけで生き抜いていくしかないだろう」
 一同も理解はできた。
 天の川銀河に戻れたとしても、そこは新石器時代の世界である。
 過去に戻ることによるパラドックスも厄介になる。
 このマゼラン銀河で生きていくしかないようだ。
 せめてもの救いは、最高指導者たるアレックス・ランドールが共に乗船していたということだろう。
 その時、警報が鳴り響いた。
「前方に惑星を発見!」
「スクリーン拡大投影しろ」
 眼前には、大気と水を湛えた惑星が映し出されていた。
「なるほど……。惑星が近づいたから、全員の冬眠が溶けたのか?」
「コース自動設定で惑星に近づいています」
 移民船は自動航行で進んでいるが、途中に居住可能な惑星が発見された場合には、冬眠カプセルが解除され惑星に向かうコースに変更される設定になっていた。
 もし惑星が見つかっていなければ、そのままアンドロメダ銀河に向かって永遠の旅を続けていたであろう。

「分光装置で大気組成を調べろ。それと大気の温度もな」
「了解!」
 レーダー手がスペクトル分光装置を使って大気組成を調べる。
「酸素9%、窒素74%、二酸化炭素11%、ヘリウム0.91%です。気温52度で、二酸化炭素濃度による温室効果だと思われます」
「酸素と二酸化炭素は、植物緑化すればなんとかなるだろう。核融合の燃料がたくさんあるのは都合がよいな。大陸と海の分布はどうだ?」
「陸が60%、海と湖沼が合わせて40%です」
「まずまずだな。船を衛星軌道に乗せてくれ」
「了解しました」
 まずは衛星軌道から大気や地上を詳細に調べる。
 無人機を降下させて、空気中や地表そして海中に有害な微生物がいないかの確認もする。
 着陸に最も適した場所を探し出す。

「着陸体勢、すべてオールグリーンです」
「よし、降下しろ」
 ニュー・トランターと違って、シアン化水素のような有毒・可燃性ガスはないので直接降りることができる。
 開けた海辺の近くに降り立つ輸送船。
「海の成分はどうだ?」
「二酸化炭素が溶けて酸性に偏っていますね。雨にも溶けて大地からカルシウムなどの金属類を溶かし出しています。ナトリウム、マグネシウムなども豊富です」

「これだけの好環境だというのに、生命が見当たらないのは不思議だな」
「生命誕生のプロセスは、ほとんど奇跡の神がかりですよ。天の川銀河の中の数ある好条件の星々にも生命は発生しませんでした。天文学者フレッド・ホイル博士によると、最初の生命が偶然生まれる確率は、10の4万累乗分の1、だそうです」
「可能性はほとんど0に近いな」
「『がらくた置き場の上を竜巻が通過し、その中の物質からボーイング747が組み立てられる』のと同じくらいだとも言ってましたね」
 フレッド・ホイルは、生命の起源は宇宙空間で進化し、彗星などによってもたらされたとするパンスペルミア仮説の提唱者である。

「ともかくだ。この星での最初の生命は我々ということだな」
「そういうことですね」
「総人口十二万か……地球の新石器時代には500万人の人口があったとされるが……」
「西暦元年で3億人です。自然増を待っていては、1億人になるには、それこそ1万年かかりそうです」
「これだけの人員では、まともな惑星開発もできません」
「まずは、この惑星に留まって、食糧の確保から人口増加が先決ではないでしょうか?」
「そうだな。せめて一億人くらいに増えないと、他の惑星に向かうことはできないな」
「ともかくこの星を一から開拓することから始めましょう」
「そうだな。まず最初はこの星の名前を決めようか」
 喧々諤々(けんけんがくがく)の討論の結果、アレックスの生まれ故郷のアルビエール侯国に因んで『アルビオン』と命名された。

 人々が輸送船から降り立ち始め、当面の間は輸送船を本拠地として、開発が始まる。
 致死量の二酸化炭素があるので、野外での労働には宇宙服が必要だが、酸素を生み出す植物を育てるには好都合でもある。
 陸地では大規模な植林が行われ、海には、シアノバクテリアなどの藍藻類などを放出した。
 大規模農場が造成されて、人々の食糧となす畑作りに耕運機が動き回り、小麦やトウモロコシなどが植えられてゆく。

 こうしてアルビオンでの人々の生活が始まった。

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銀河戦記/脈動編 第三章・第三勢力 Ⅳ
2021.11.27

第三章・第三勢力





 司令   =ウォーレス・トゥイガー少佐(英♂)
 副長   =ジェレミー・ジョンソン准尉(英♂)
 艦長   =マイケル・ヤンセンス大尉(蘭♂)
 航海長  =ラインホルト・シュレッター中尉(独♂)
 操舵手  =ジャクソン・フロックハート中尉(英♂)
 通信士  =モニカ・ルディーン少尉(瑞♀)
 レーダー手=フローラ・ジャコメッリ少尉(伊♀)
 軍医   =ドミニクス・ビューレン(蘭♂)


 基地で亡くなっていた遺体を収容して、サラマンダーに戻ってきた。
「調査を終了。基地に帰還する」
 ゆっくりと衛星を離れるサラマンダー。
 その瞬間だった。
 激しく震動する艦内。
「な、なんだ!」
「後方に未確認艦! 第二衛星の陰に隠れていたようです」
 レーダー手のフローラ・ジャコメッリ少尉が確認して報告した。
「そいつらが基地を襲った奴らか?」
 副長が興奮して叫ぶ。
「戦闘配備! 艦首を敵艦に回せ!」
 トゥイガー少佐が、すかさず戦闘態勢を下す。
「警告もなく攻撃を仕掛けてくるなんて、例の好戦的な国家勢力の艦でしょう」
「たぶんな。交渉も不可能だし、やるしかない。原子レーザー砲用意!」
「原子レーザー砲への回路接続。レーザー発振制御超電導コイルに電力供給開始」
「BEC回路に燃料ペレット注入開始します」
*BEC=ボーズ・アインシュタイン凝縮
「原子レーザー砲、エネルギーゲイン95%」
「敵艦との軸線、右へ五度転回して下さい」
 砲手が姿勢変更依頼を出す。
「了解。右五度転回します」
 と、操舵手のジャクソン・フロックハート中尉。
 原子レーザー砲などの艦首エネルギー砲は、正面軸線上の敵艦しか撃破できないために、照準は艦体の方を動かすしかない。
「敵艦との距離230デリミタ」
「モニカ、念のため全周波で交信を試みてみろ」
「了解!」
 通信機器を操作するモニカ・ルディーン少尉。
「返答がありません。通信システムが違うのかも……」

「それにしても、奴らは我々がここにいることをどうして知ったのでしょうかね」
「そりゃ、我々が未知の周波数の電波を探って、滅亡都市を発見したように、交信電波を逆探知したんだよ。通信の内容は分からなくても、電波が来ていることは探知できるからな」
「ああ、なるほどね」

「原子レーザー砲、発射準備完了しました!」
「よし、撃て!」
 サラマンダーから一条の軌跡が走り、敵艦に襲い掛かる。
 まばゆい輝きとともに一瞬にして蒸発する敵艦。
「え? あっけなく轟沈してしまいましたよ」
 驚く副長だった。
「防御シールドがなかったのか、それとも艦体の素材が弱かったのか……」
「適度に損傷を加えて、敵を捕虜にすることもできない。どんな姿形しているか見たかったのに」
「索敵が目的だったとしても、この広大な宇宙でたった一隻で行動していたのも理解できません」
「仕方がない。残骸を漁って敵に繋がる、船の破片とか肉片とかを拾っておくか」

 基地に戻ってきたサラマンダー以下の艦艇。
 早速、司令官のメレディス中佐に報告するトゥイガー少佐。
「敵の残骸を科学部で鑑定しております」
「ご苦労だった。下がってよし」
 敬礼して退室するトゥイガー少佐。
 通路に出ると、ジョンソン准尉が待っていた。
「敵艦隊が現れたことで、惑星開拓の方も暗雲が立ち込めましたね。生物兵器を使う物騒な奴もいますし」
「そうだな。その辺のところは、評議会の方で議論しているらしい」
「その辺のところは上に任せて、私たちは酒でも飲んで疲れを癒しましょう」
 ということで、連れ立ってパブリック・パブへと向かうのだった。


 評議会議場。
 これまでの事件から、敵対する国家勢力の存在を鑑みて、今後の惑星開拓の方針を議論することとなった。
「先の調査で、好戦的な種族のDNA鑑定の報告が上がってきており、我々の遺伝子にかなり近いことが判明した。おそらく我々よりはるか以前に移住してきた者の子孫だと思われる。滅亡都市の住民共々な」
「何とかして、どちらかの国と友好的な関係を築いて、他方の国との交戦を有利にできれば良いのだが」
「好戦的な勢力でも、相手勢力をダシにすれば、友好国となりうるかも知れない」
「ともかく、我々が惑星探索と移民を続ける限り、両勢力との接触は避けられない」

 基本的方針が定められた。

・発見した惑星が無主地の場合は自国領として開拓する。
・既に居住の地となっていた場合は、外交官を送って通商条約などの交渉を行う。
・上記において、交渉に応じず有無を言わさずの戦闘となった場合は、これと戦い勝利占領して自国領とする。

 他、細々とした内容が決められた。

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