銀河戦記/鳴動編 第一部 第九章 コレット・サブリナ 犯人を捜せ Ⅱ
2021.01.17

第九章・コレット・サブリナ 犯人を探せ




 IDカードを受け取って胸ポケットにしまうコレット。
「ウィンザー大尉にお願いしまして、ミシェール・ライカー少尉のいた部屋とアスレチックジムを、当面の間立ち入り禁止にしていただきました。よろしいですね」
「ああ、構わないだろう。運動嫌いな者も多いと聞くから、喜んでいる人間の方が多いかも知れないしな」
「恐れ入ります。それからウィンザー中尉にお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
 アレックスが頷いているのを確認してから、パトリシアが口を開いた。
「わたしに何を?」
「中尉は、ライカー少尉とは士官学校では、仲が良かったとお聞きしましたが、間違いありませんか?」
「はい。その通りです」
「ミシェールの性格面についてお聞きします」
「どうぞ」
「ミシェールはいつも誰かと一緒にいたというのは事実ですか?」
「はい。ミシェールは決して一人で行動するような性格ではありません。いつも必ず仲良しグループの中の誰かと行動を共にしていました。それが宿房を一人抜け出して自主トレをしていたなんて到底考えられません。寂しがりやでたいがい誰かのそばにいましたね」
「彼氏がいたという話しもありますが」
「そんなことまで証言したんですか? しようがないですねえ……」
「いかがですか? 痴情のもつれから彼氏に殺害されたともとれますからね」
「ミシェールは彼氏のことについては、ちっとも話してくれませんでした。相手の男性が、交際していることをあまり公にはしたくなかったようです。それで黙っていたようです」
「関係はうまくいっていなかったとかは?」
「表情がすぐ顔に現われる性格でしたからね、交際にひびでも入っていればすぐに判ります。今のところ順調だったと思います」
「そうですか。他に特徴的なことはありませんか?」
「スポーツに関してですけど、何かというとすぐ疲れたと休んでいました。ずる休みではなくて、昔から心臓が弱かったんです。ですから、事件直前に食事も取らずに部屋にいたのは、そのせいだと思います」
「心臓が弱かったのですか……。それでよく、入隊検査にパスできましたね」
「ぎりぎりの健康状態でしたが、何とかパスできました」
「とすると、自主トレでアスレチックジムに行ったとは考えられませんね」
「当然です。心臓の持病があるために、必ず誰かと一緒でした。一人きりの時に、発作が起きたらと心配していたからです」
「良く判りました」
 メモ帳に要件を記入しているコレット。普通の乗員なら司令官の目前で無礼な行為なのだろうが、コレットは直属の部下ではないし、捜査特務権があるので許される。
「ところで中佐殿はどうですか、何か心当たりなところはありませんでしたか?」
「うーん。自分としては全然見当がつかないんだ。女性士官すべてに目配りしている余裕はないからね。女性士官の宿舎のある区域は男子禁制になっているしね。ま、自分なりに考えられるとしたら……カラカス基地を落として敵艦を搾取したのだが、それらを使役するために多数の乗員を補充した。その中に敵のスパイが乗り込んでいて、ライカー少尉がそれに気付いたところを口封じされたというのは?」
「それは十分ありえるといえますが、憶測で物事を判断するわけにはいきません。今のところ何の根拠もありませんからね。まあ、一応参考意見として考慮にいれておきます」
 とはいいつつも、コレットはアレックスの意見にはそれほどの感心を抱いていなかった。
 例えれば真犯人が捜査を混乱させるために、わざとそれらしい状況解説をすることはよくあることだ。コレットにとっては、この同盟の英雄でさえ、容疑者として候補に挙げていたのである。
 関係者すべてが容疑者である。
 すべての者を疑ってかかることは、捜査の基本中の基本である。
 その中から、白と断定できたものを消していって、最後に残った者が犯人である。
「一応艦隊規則にある通り、遺体はカラカス基地で降ろされる。捜査期限はカラカス入港までだ。それまでに犯人を挙げてくれたまえ」
「かしこまりました。では、捜査を開始します」
 敬礼して、司令室を退室するコレット。

「さてと、次はどこを捜査をはじめましょうか……って、まずは検屍報告書に目を通してみますか」
 階下に喫茶室があるから、そこで見る事にする。

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2021.01.17 07:08 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅵ
2021.01.16

第十章 反乱




 漆黒の宇宙を進む艦隊。
 サラマンダーを中心に、左翼にマーガレット皇女艦隊、右翼にジュリエッタ皇女艦隊、合わせて一万二千隻。
「まもなく、アルサフリエニに到着します」
 艦橋に緊張が走る。
 いつどこからゴードンのウィンディーネ艦隊が襲い掛かるかも知れないからである。
 すでにゴードンは敵とみなして行動するしかない。

 やがて前方に、多数の艦隊が出現した。
「お出迎えだ」
 アレックスがぼそりと呟いた。
「ウィンディーネ艦隊のようです」
 パトリシアが応える。
「正々堂々と真正面決戦を挑んでくるようだな」
「相手は、持てるすべての七万隻を投入してきたもようです」
「対してこちら側は、旗艦艦隊二千隻と帝国艦隊一万隻か」
「数で圧倒して戦意を喪失させようとしているのでしょう」
「正直ゴードンも、できれば戦いたくないと思っているはずさ。ま、尻尾を巻いて逃げかえれと言っているのだろうな」
「どうなされますか?」
「逃げかえるわけにもいくまい。巡航艦ヘルハウンドを呼んでくれ」
「ヘルハウンド!?」
 その艦は、ミッドウェイ会戦のおり、アレックス指揮の下索敵に出ている最中に、敵の空母艦隊と遭遇し、これを完膚なきまでに叩き潰して撤退に至らせた名艦中の名艦である。
 幾多の戦いを潜り抜けて、今日まで生き残ってきた。
『サラマンダー』という暗号でも呼ばれた通り、今の今でも旗艦登録されている。
 その艦体には、火の精霊サラマンダーの絵が施されている。
「まともに戦っては全滅するしかない。ここは自分の得意戦法しかない」
「まさか、アレをおやりになさるのですか?」
「他にないだろう。マーガレットとジュリエッタを呼んでくれ。作戦を伝える」

 それから数時間後。
 ヘルハウンドに乗艦するアレックスを歓待する艦橋オペレーター達。
「提督!お久しぶりです」
 ヘルハウンドに乗るのは、惑星ミストでの戦闘を終えて帰還する時に乗艦して以来のことである。
「また、おせわになるよ」
 艦長のトーマス・マイズナー少佐に語り掛ける。
「歓迎します」
 といいながら指揮官席を譲るマイズナー。
 少佐なら一個部隊を率いてもよさそうなのであるが、マイズナーはヘルハウンドの艦長という名誉職を辞したくなかったのである。
 何せその艦体には、英雄の象徴である火の精霊『サラマンダー』が描かれているのだから。サラマンダー艦隊という呼称の元祖だった。
 アレックスは、その思いを酌んで艦長職を続けさせている。
 本来の自分の艦長席に戻る。
 この席も最初は、スザンナ・ベンソン准尉が座っていた席でもある。
 スザンナが少佐となり、アレックスの招聘を受けて旗艦部隊司令に叙されて、その後釜に入って以来ずっとこの席を守り続けていた。
「各艦長が出ております」
 正面のパネルスクリーンに、分割されて各艦長の映像が出ていた。
「再び一緒に戦えるのを光栄に思います」
「提督のご指示に従います」
「オニール提督とて敵となれば戦います」
 などと戦いの前の思いを語っていた。
「これより恒例のドッグファイトをやるぞ。みんな気合は十分か?」
 艦橋内に響き渡るようにアレックスが大声を上げる。
「おお!」
「いつでもどうぞ!」
 同様にオペレーター達も、片手を上に挙げて大声で返す。
 闘志は十分だった。
「よろしい!微速前進!」
 巡航艦ヘルハウンドと十二隻の艦艇が密かに艦隊を離れてゆく。
 かつてのミッドウェイ会戦に参加した精鋭部隊である。

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2021.01.16 07:49 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第九章 コレット・サブリナ 犯人を捜せ Ⅰ
2021.01.15

第九章・コレット・サブリナ 犯人を探せ




 司令官室。
 その司令官は、コレットとほぼ同年齢であった。
 戦術用兵士官は、士官学校では一般士官の教義の後に、さらに三年ほどの専攻科目がある。三年先に学校を卒業して軍務についていたコレットの方が軍歴は長いから、通常の軍務にあれば、階級はコレットの方が上のはずだった。
 しかし目の前にいる人物は、一年も経たない間に目覚ましい戦績を上げて中佐にまで昇進していた。
 同盟軍には珍しく深緑色の瞳と褐色の髪が畏敬を誘う。
 その姿は威風堂々として、まったく隙がなかった。今この瞬間、腰のブラスターを引き抜いて突きつけても、その動作よりも早く机の引き出しから、銃を取り出して反撃してくるだろう。そこに銃があればだが……。
 というよりも、目の前の人物が敵意を持っているかどうかを、瞬時に判断できる眼識を持っているように感じた。そう思う感覚は、これまでの彼の戦歴が物語ってくれるだろう。
 両手の指を互い違いに組んで机の上に置き、もの静かに微笑んでいる。
 それが、独立遊撃艦隊司令官、アレックス・ランドール中佐。その人であった。
 そのデスクの側に、副官のパトリシア・ウィンザー中尉が立っている。
 中佐は艦隊の最高責任者ではあるが、コレットの属する情報部特務捜査科は、その権限の及ばない部課であった。いわば行政と司法の分権にあたる。
「コレット・サブリナ中尉であります。この度のアスレチックジムにおける事故捜査を担当することになりました」
「ああ、ウィング大尉から聞いているよ。早速いろいろと捜査をはじめているようだね。それで、事故か殺人かわかったかね」
「まだ、はじめたばかりですから……。結論を出すには、まだ早急すぎます」
「そうか……。ここに検屍報告書のコピーが届いている。渡しておこう。必要なことがあれば何でもいいたまえ、出来る範囲で協力しよう」
「ありがとうございます。つきましては犯罪捜査特務権にあります、乗員名簿の閲覧と居住区の自由通行の許可をお願いします」
 と言って、コレットは検屍報告書を受け取り、自分のIDカードを差し出した。
「ああ、わかっている」
 アレックスは端末に自分のIDカードを差し込んで閲覧コードを開いてから、別のカード挿入口にコレットのIDカードを差し込んで、閲覧コードをコピーし、さらに通行許可を与える暗号コードを入力して、IDカードを返した。それによってコレットのIDカードで乗員名簿の閲覧と通行許可が可能になるのである。
 なお端末に二つのIDカード挿入口があるのは、今のようなコピー用の他、特殊なコード発令の際に必要になっているからだ。例えば艦を自爆させる命令である自爆コード発令には必ず二つのIDが必要である。
「よし、コピー終了した。これで、当艦に搭乗している隊員全員の閲覧が可能だ。それと艦長レベルで、居住ブロックにあるすべての施設に入場できるし、艦橋への通信連絡も可能だ」
「おそれいります」

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2021.01.15 07:38 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

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