銀河戦記/脈動編 第五章・それぞれの新天地 Ⅰ
2022.01.01

第五章・それぞれの新天地 





 ミュータント族の乗る探査艇が、次なる惑星探しに出ていた。
 目の前には、これまでの天体観測で惑星が発見された恒星がある。
 惑星は、ほぼ一年で恒星の周りを公転し、水の存在できるハビタブルゾーン領域に入っていた。
 近づくに連れて、色鮮やかな緑色をした惑星であることが判明した。
 緑色の正体は植物か? 鉱物か?
 不明だった謎が明らかにされようとしている。
「よし、衛星軌道に入れ!」
 減速して惑星の衛星軌道に入る探査艇。
「スペクトル分光で、クロロフィルが検出されました」
「植物があるということか……。自然発生したか、隕石とかで飛来したか? 動物はいないのか?」
「地上には動いているものは見当たりません。海中の方は分かりませんが」
「着陸船を降ろして調査しましょう」
 惑星表面には何があるか分からないので、まずはリモートでの探索が進められる。
 着陸船が地表に降りて大気成分などを観測しながら、独立して動き回る地表探査車が切り離される。
「酸素21%、窒素77%、アルゴン0.8%、二酸化炭素0.04%などとなっています」
「地表温度35度、湿度20%、風速3m、恒星から受ける放射照度800W/m2……」
「素晴らしい! ちょっと暑いようだが、完全な地球型惑星じゃないか」
 一通り調べてみると、現時点では何ら障害となるものは見つからなかった。
「そろそろ本船を降下するとしようか」
 衛星軌道から大気圏に突入して、海岸線に着陸した。
 扉が開いて、小躍りしながら地上に降り立つ乗員達。
 裸になって海に泳ぎだす者もいる。
「あ、あれを見て!」
 一人が海の方を指さしながら叫ぶ。
 そこには、海面を飛び回る黒っぽい物体があった。
「魚だ!」
「ほんとだ! 釣りしようぜ!」
 船に戻って釣り道具を取りに行く者のそばで、冷静に忠告する者もいる。しかも彼は、念のためにとマスクをしていた。
「おいおい、ここに何故魚がいるのかと追及する方が先じゃないのか?」
 しかし彼らには聞こえなかったようだ。
「しようがない奴らだ……。さてと、こっちは仕事を始めるか」
 呟くと、彼の専門である生物学の調査を始めた。
 海岸近くに茂っている植物群を見渡す。
「見たところシダ植物、それも木性シダと呼ばれるものに近いようだが……被子植物はないようだな。差し詰め地球でいうところの石炭紀だな」
 石炭紀に繁栄したシダ植物は、高さ30mにまで成長した『レピドデンドロン』や『カラミテス』である。温暖な気候から昆虫や両生類が栄えた時代である。酸素濃度は35%に達して、節足動物などの大型化を促進した。
「海に魚類がいるにしては、地上には動物はいないのか……」


「おーい、そこの生物学者。来てくれ!」
 釣りをしていた者が大声で呼んでいる。
 なんだろうと近づいてみると、釣り上げた魚を指さして、
「見てくれよ。血が真っ青だぜ」
 その場で調理しようとしたのであろう。
 捌かれた腹から、青い血液が流れ出ていた。
「ああ、これね。血液が青いのは、ヘモシアニンという成分のせいだよ」
「へも……ん?」
「俺たちの血液が赤いのは、ヘモグロビンという成分のせいで、呼吸システムで鉄と酸素が結びついて赤く見えるんだ。こいつらは、銅が酸素と結びついて呼吸を行っているから、血液が青いんだ。節足動物のカブトガニが有名だけど、アサリやロブスターなどの甲殻類や、蛸やイカなどの軟体類がそうだよ」
「で、こいつは食えるのか?」
 釣り人にしてみれば、学説はどうでもいいから食べられるかどうかが重要みたいだ。
「カブトガニは、テトロドトキシン(フグ毒)という猛毒を含んではいるが、国によっては食べられている。調理法次第なんだろうけど、この魚は調査が済むまでは食べない方がいいだろうね」
「そうか、仕方がないな。当分はキャッチアンドリリースするか」
「それよりも仕事をしろよ。与えられた任務があるだろう?」
「へいへい。わかりやした」
 それぞれに与えられた任務に戻っていった。

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銀河戦記/脈動編 第四章・遥か一万年の彼方 Ⅳ
2021.12.25



 首領   =ドミトリー・シェコチヒン
 機関長  =キール・ストゥカリスキー
 操舵手  =ルキヤン・ゴルジェーエフ
 レーダー手=カチェリーナ・ゴリバフ


 宇宙を自動航行する開拓移民船。
 船内では、居住可能な惑星が発見されるまで、冷凍睡眠カプセルで眠るミュータント族がいる。
 総勢200名しかおらず、探査艇も搭載されていないので、移民船の惑星自動探査システムに委ねていた。

 前方に明るく輝く恒星が現れ、次第に欠けてゆく。
 どうやら惑星による掩蔽(日食)が起きているようだ。
 方向転換してその惑星へと進路を変える移民船。
 と同時に、船内では警報が鳴り響いて、冷凍睡眠カプセルが解除されてゆく。
 蓋が開いて、ゆっくりと起きだすミュータント族。

 数時間後。
 船橋に集まるミュータント族。
 機関長のキール・ストゥカリスキーが報告する。
「現在、減速航行中です」
 亜光速で進行中の船が惑星の衛星軌道に乗るための減速が続いていた。
「惑星の分光解析はどうだ?」
 首領と呼ばれるようになっていたドミトリー・シェコチヒンが尋ねる。
「酸素18%、窒素78%、二酸化炭素1%未満、他です」
 レーダー手のカチェリーナ・ゴリバフが答える。
「ふむ。酸素が少なめだが、十分生息可能だな。水はどうか?」
「大気中に平均0.2%ほど含まれてます」
 環境問題でCO2が話題に上るが、実際は水蒸気の方が温室効果が高い。温暖化になると海からの水蒸気が増えて、より一層温暖化を促進するという「水蒸気フィードバック」が起きる。
 だからといって全く水蒸気がなければ、放射冷却で星はどんどん冷えてゆくことになる。

 惑星の縁から別の天体が現れた。
「衛星のようです。惑星の裏側にあったために気づかなかったです」
 惑星より十分の一くらいだろうか、衛星の縁がくっきりと見えている。
「ふむ、みたところ大気はなさそうだな」
「いずれ鉱物資源を採掘できるでしょう」
「いずれか……いつになることやら」
 総勢200名で移民船一隻しかない現状では、現時点では衛星に向かうことは不可能である。
 生きるためには、まずは惑星に降り立ち開拓を始めなければならない。
 開拓が進み、人口も増えて、新たなる宇宙船を研究開発し建造して、再び宇宙へ出られるには千年以上はかかるだろう。

 惑星に近づくにつれて、さらに詳細が分かってくる。
「大陸と海の比率は、8対2です」
「生物は?」
「微生物はともかく、肉眼視できる生物は見当たりません」
「各種動植物の凍結受精卵や種が船内に保存されていますから、これから楽園を作ることもできますよ」
「そうか……やはり、一から始めないといけないのか……食料の備蓄と、穀物類の種の量はどうなっている?」
「食料に関しては心配の必要はありません。そもそも移民船としての役割を終えたとして、災害時の備蓄庫として利用されてましたからね」
「それを、そっくり頂いたというわけか」
 操舵手のルキヤン・ゴルジェーエフが報告する。
「衛星軌道に乗りました」
「よし、着陸態勢に入れ!」

 数時間後、惑星への着陸が開始された。
「水流ジェットノズル噴射!」
 大気圏に突入して、摩擦熱で移民船が灼熱に晒されるが、噴射される水が蒸気となって気化熱に転換される。
 巨大な飛行機雲をなびかせて、大気中を滑空する移民船。
 高度がどんどん下がり、海面近くまで降りた。
「海岸線が見えます!」
「よし、接岸せよ」
 凄まじい水飛沫を上げながら海面に降り立ち、慣性で滑りながら海岸線へと突き進む。
「全員、何かに掴まれ!」
 激しい震動が艦内を襲い、あちらこちらで倒れたり壁に打ち付けられたりしている。

 着岸して停止する移民船。
 船内では乗員が次々と起き上がり、窓やスクリーンに映る外界を眺めている。
「着いたぞ!」
 口々に歓声を上げ始めた。

 数時間後、移民船から次々と地上に降り立つ一同だった。
「ここが、俺たちの新世界だ!」
 新しい惑星での暮らしが始まった。
 当面の間は移民船を住居として、開拓が始まった。
 惑星都市の名前は、サンクト・ピーテルブールフと命名された。


 そして5000年後。
 総人口が一億人を越えて、再び宇宙へと舞い上がるのだった。
銀河戦記/脈動編 第四章・遥か一万年の彼方 Ⅲ
2021.12.18

第四章・遥か一万年の彼方





 移民局では大騒動が起きていた。
「局長、大変です! ミュータント族に移民船が乗っ取られて宇宙へ逃げられました!」
「なんだと!」
「我々が移民に動くのは当分先のことだと、移民船の管理を疎かにしていたのが徒(あだ)になりました」
「手薄なところをやられたということか……」
「しかしどうやって銃火器類を手に入れたのでしょうか?」
「まあ、闇取引とかやってた奴らだからな。何とでもなるだろうさ」

「移民船がなくなったのは参りましたね。船の設計図とかも、移民船のコンピューターに記録されていましたから。我々が宇宙に出るには、一から設計をやり直さなくてはなりません」
「どうせ百年やそこらで、宇宙に行けるような人口じゃないからな。人口を増やしつつ、地道にペンシルロケットからでも研究していけばいいさ」
「ペンシルロケットですか……V2じゃないんですね」
「宇宙開発予算がないのだよ。今は惑星開拓の方が優先だからな」
「しかたありませんね……」
「ミュータント族だって、新たなる星を見つけられるかさえも未知数だしな。奴らが襲い掛かってくるのは、はるか未来のことだろう」
「そのミュータント族は、総勢二百名ほどが移民船に乗り込んだと思われます」
「たったそれだけの人数で、新たなる惑星を求めて旅立ったということなのか?」
「それだけで、国家を起こすことができるのかな?」
「クローニングでもやってどんどん人口増やしていけば何とかなるんじゃないですか?」
「それで国家を形成できてどうするかな……。宇宙船で乗り込んできて我々の国家と戦争でもやるか?」
「全員虐げられた恨みを持っていますからね。あり得るんじゃないですか?」
「今後、ミュータント族との戦いに備えて、軍事面を増強させた方がいいのでは?」
「設計図はないが、戦艦などの開発設計を始めるとしよう。何とかなるだろう」


 惑星アルデノンは、一万年前の新石器時代。
 部落というものが形成されたばかりの発展途上国でしかなかった。
 まずは生きていくだけで精一杯で、戦艦開発のこと、ミュータント族のこと、そして宇宙のことも次第に忘れられていった。
 最初の移民達は次々とこの世を去り、アルデノン生まれ育ちの住民にとって代わっていく。
 アレックス・ランドールも既にこの世にいない。

 500年後、大気組成のうち酸素11%、二酸化炭素9%となる。

 村や町が増え人々の数が増えるに連れて、人々の間に葛藤も増えてゆく。
・コーカソイド(白人種/アーリア、セム、ハム)
・モンゴロイド(黄色人種/漢民族、チベット、ポリネシアなど)
・ネグロイド(黒人種/メラノ・アフリカ、エチオピア、ネグリノ)
 などの肌色・民族による違い。
 キリスト教・イスラム教などの宗教対立も起こっていた。

 多種多様の民族がそれぞれコミュニティを作り、やがて独立国家を形成しはじめた。


 農耕を営む者の中から、小作と農場主という主従関係が生まれ、さらに荘園主へと発展して財を蓄える者が出て、やがて豪族を名乗る身分となってゆく。豪族たちは、領地を巡って奪い合いの戦争を繰り広げ、さらに豪族を取りまとめて王と成す者も現れた。
 王宮を作り上げ、自分に媚びへつらう者達を貴族として囲い込んだ。
 幾度とない戦争・略奪を繰り返しながらも、世界は次第にまとまっていった。

 かつての地球人類が一万年掛けて辿った歴史を、再び繰り返すこととなったのだ。

 ちなみに地球人口が、一万年前の新石器時代500万人程度から、一億人を越えたのは西暦元年頃、そして十億人となったのが西暦1800年代である。その後爆発的な人口増加が始まる。

 5000年後、大気組成のうち酸素19%、二酸化炭素1%
 ここに至って、初めて宇宙服なしで外を自由に歩けるようになった。
 総人口が一億人を超えて、有人宇宙船が宇宙に飛び立つ。
 これをもって宇宙世紀元年と呼ぶようになった。

 宇宙船が飛べば、次には宇宙ステーションである。
 宇宙船で資材を運び、ステーションを組み立ててゆく。
 静止軌道上に、地上に繋がる軌道エレベーターが造られ、ステーションはさらに発展してゆく。
 天文台、造船所、宇宙港など再び宇宙へ飛び出す準備が着々と進んでいく。

 探索隊が結成されて、惑星探査へと飛び出した。

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