銀河戦記/鳴動編 第二部後半 トップメニュー
2021.07.04

銀河戦記/鳴動編 第二部後半

第十四章 アクティウム海域会戦 
第十五章 タルシエン要塞陥落 
第十六章 交渉 
第十七章 決闘 
終章 最終回

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銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 Ⅰ
2021.07.03

第七章 反抗作戦始動




 その頃。
 対戦相手の総督軍艦隊も着々と銀河帝国へと進撃していた。
 旗艦ザンジバルの艦橋の指揮官席に着座する、戦略陸軍マック・カーサー大将。
 共和国同盟総督となったのを機に大将に昇進していた。
「奴は本気で百五十万隻で我々と戦うつもりなのか?」
「そのようです」
「信じられんな。狂気としか思えんが」
「ランドール提督のこと、また何がしかの奇策を用意しているのでしょう」
「奴が戦ってきたのは、せいぜい一個艦隊程度の戦術級の戦いだ。これだけの大艦隊を率いた国家の存亡を掛けた戦略級の戦いなどできるわけがない」
「なるほど未経験ならば勝てる算段も難しいというわけですか」
「この戦いは艦隊同士の正面決戦になる。戦略級では数が勝負なのだ」
「なるほど、納得しました」
 丁度その時、給仕係が食事を運んできた。
「お食事の時間です」
 ワゴンに乗せられた料理に手をつけるカーサー提督。
 それを口に運びながら、
「また、これかね。たまには肉汁たっぷりのステーキを食いたいものだ」
 携帯食料に不満をぶつけ、苛立ちを見せている。
「贅沢言わないでくださいよ。ここは戦場なんですよ」

 バーナード星系連邦は、長期化した戦争により、慢性的な食糧不足に陥っていた。
 働き手が軍人として徴兵されているがために、農地を耕す労力が足りないからである。
 足りない食料は、銀河帝国からの輸入にたよっていたが、十分に充足できるものではなかった。
 庶民の不満は、厳しい軍事政策によって抑制されていた。
「欲しがりません、勝つまでは」
 日頃からの教育によって、贅沢を禁じられ、いや贅沢という言葉さえ知らないのである。
 慎ましやかに生活することこそが、美徳であるとも教え込まれている。
 とは言うものの、それは一般庶民や下級士官の話である。
 将軍などの高級士官ともなると、肉汁したたるステーキが毎日食卓に上る。
 しかし戦場では贅沢もできない。
 戦艦には食料を積み込める限度というものがあり、狭い艦内では下級士官の目が常にあるからである。
 戦時食料配給に沿って、将軍といえども下級士官と同じ食事を余儀なくされていた。
 カーサー提督は話題を変えた。
「それよりも、本国との連絡はまだ取れないのか?」
「だめです。完全に沈黙しています」
「本国とのワープゲートも閉鎖状態です」
「やはり、クーデターが起きたというのは本当らしいな」
「そのようですね」
「我々が銀河帝国への侵攻を決行したのを見計らって、クーデター決起するとはな」
「タルシエン要塞が反乱軍に乗っ取られ、本国側のワープゲートをクーデター軍に押さえられては、鎮圧部隊を差し向けることも叶いません」
「連邦でも屈強の艦隊をこちら側に残していったのも、クーデターをやり易くするための方策だったのだ」
「精鋭艦隊はメイスン提督の直属の配下ではありませんからね」


 サラマンダー艦橋。
 オペレーター達の表情が強張っている。
 総督軍二百五十万隻との戦闘がまもなく始まるからである。
 それを示すかのようにオペレーターが報告する。
「まもなく会敵します」
 それに応えるように、正面スクリーンが切り替わった。
 戦闘想定宙域のベクトル座標が表示され、やがて前方に多数の艦艇を表した。
「総督軍艦隊です」
「重力加速度計による計測によると、その数およそ二百五十万隻に相当します」
「情報通りですね」
 パトリシアが語りかける。
「総督軍が停止しました」
「なるほど……。まずは様子をみようというところか」
「慎重になっているんですね」
「こちらも停止しよう。様子をみる」
 圧倒的に艦艇の数が少ないというのに、アレックスは落ち着いていた。
 二百五十万隻対百五十万隻。
 数だけでみるならアレックス達の敗北は間違いのないところであった。
 しかしながら勝てない戦いには参加しないというのが、これまでのアレックスの方針のはずである。
 果たしてどんな秘策を用意しているのであろうか。
「総督軍に関する新しい情報は入ってないか? 特にトランターについてだが」
「いえ。通信妨害が激しくトランターに関しては何ら情報は届いていません」
「だろうな……」
 現在位置とトランターの間には、敵艦隊が無数に存在するのだ。戦闘態勢状態で、ただでさえ通信が交錯しているのに、正常な通信ができるはずがなかった。
「何かあるのですか?」
 パトリシアが怪訝そうに質問した。
「いや、何でもない。ちょっとしたことさ」
 と、微笑みながらはぐらかすアレックスだった。

 そんなアレックス達の心境とは裏腹に、追従する従軍報道機関の連中は、気楽に報道合戦を繰り広げていた。
『ご覧ください。まるで天の川のように煌めく無数の光点は、すべて敵艦隊です。スペクタル大パノラマを彩る雄大なる眺めです』
『こんな時に不謹慎かと思われますが、銀河帝国の存亡を掛けた決戦を前にして、静寂と闇に包まれ静か過ぎるほどです』
『あ、今敵艦隊に動きが見られました。一部の艦隊が前進をはじめたようです。どうやら先鋒を繰り出して、まずは様子を窺おうということでしょう』

 そんな情勢を手元のモニターで眺めながら苦笑するアレックス。
「マリアンヌを呼んでくれ」
 モニターに第六皇女マリアンヌが映し出された。
『お呼びですか、殿下』
「ああ、敵の先鋒艦隊に対して迎撃に出てくれないか』
『喜んで』
「よろしく頼む」

 第六皇女艦隊旗艦「マジェスティック」の艦橋。
 マリアンヌが乗員たちを鼓舞していた。
「殿下のご命令が下りました。みなさんのご健闘を祈ります」
 いつもなら甘えん坊の末っ子のマリアンヌであるが、ここ戦場においては面目躍如であった。
 皇女としての誇りである。
 変わって皇女従属の艦隊司令官のJ・G・クレース少将が訓示を述べる。
「先陣は武人の誉れ。殿下の期待に応えて、この先鋒戦を勝利するのだ」
「おおー!」
 一斉に喊声を上げる兵士達。
「全艦微速前進!」
「微速前進。ようそろー!」
 本隊を離れてゆっくりと前進をはじめる第六皇女艦隊。
 その中心にマジェスティックを配して勇壮たる進軍である。

『帝国軍が動き出しました。総督軍に対して、皇太子殿下もこれに応えて、ほぼ同数の部隊を繰り出されたようです。ついに決戦の火蓋が切られます』
『皇太子殿下の期待に応えるのは、旗艦マジェスティック率いる第六皇女艦隊です』

 進軍する第六皇女艦隊を、サラマンダーの艦橋から見つめるアレックス。
 彼の本来の戦法は自らが先頭に立って突撃するのが本位であるが、それはあくまで一個
艦隊同士の戦術級の戦い方である。
 百万隻を超える大艦隊を率いた戦略級の戦法には、また戦略級の戦い方が必要だった。
「大丈夫ですかね」
 パトリシアが心配そうに尋ねる。
 皇女の中でマリアンヌの戦闘経験は多いとは言えない。
「なあに、控えにいる艦隊司令官はネルソン提督の下で歴戦を重ねたクレース提督だ。心配することはない」

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2021.07.03 07:48 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 Ⅲ
2021.07.02

第六章 皇室議会




 正面パネルスクリーンには、勇壮と進軍する統合軍艦隊が映し出されていた。
「しばし後を頼む」
 席を立つアレックス。
「どちらへ?」
「ティータイムだ」
 統合軍の進撃が順調に進んでいるのを見届けて、ちょっと休憩したくなったのであろう。
 第一艦橋を出てすぐの所に、自動販売機コーナーがある。
 立ち寄って販売機にIDカードを挿しいれてドリンクを購入するアレックス。
 湯気の立ち上がるカップを取り出して、そばのベンチに座って口にする。
「うん。自動販売機にしては、結構いける味だな」
 一服している間にも、艦橋要員のオペレーターが立ち寄っていくが、アレックスが任務中なのを知っているので、軽く挨拶をするだけで話しかける者はいない。


 ドリンクを飲み終わり、やおら立ち上がって艦橋とは反対方向へと歩きはじめる。
 向かった先は、通信統制室の一角にある通信ルーム。
 その中の一室に入り、端末の前に着座して、機器を操作している。
「特秘通信回線を開いてくれ」
 端末に向かって話すと、
『IDカードヲ、ソウニュウシテクダサイ』
 と喋り、言われたとおりにIDカードを差し入れると、
『モウマクパターンヲ、ショウゴウシマス』
 レーザー光線が目に当てられて、網膜パターンのスキャンが行われた。
『アレックス・ランドールテイトクト、カクニンシマシタ。トクヒカイセンヲ、ヒラキマス』
 と同時に背後の扉が自動的に閉じられ鍵が掛けられた。
 アレックスは通信相手の暗号コードを入力して短い電文を送信した。

 静かな湖から白鳥は飛び立つ

 たったそれだけであった。
 何かを指示する暗号文なのであろうが、これだけでは知らない人間には通じない。
 おそらく受け取った誰かだけが、その真意を理解することができるのであろう。
 ややあってから、
『ジュシンヲ、カクニンシマシタ。リョウカイシタ』
 という通信が二度返ってきた。
 暗号文が二箇所の相手に伝えられ確認されたことを意味していた。
 通信端末の回線を切るアレックス。
 回線を切ると自動的に扉が開く。
「よし。これでいい」
 立ち上がり、通信ルームを退室する。


 艦橋に戻ると一騒動が起きていた。
 整然と並んでいた艦隊が乱れていた。
「どうしたんだ?」
「はい。地方の委任統治領の領主が参戦したいと割り込んできたのです」
「委任統治領?」
「いわゆる周辺地域をパトロールしていた警備艦隊を引き連れてきました」
「警備艦隊ねえ……」
 警備艦隊は、各地で起こった暴動や反乱などを鎮圧するのが主な任務である。
 つまり艦隊戦の経験がまったくないということである。
 これからやろうというのは、総督軍との艦隊決戦である。
 艦隊戦闘の経験のない艦隊など役に立つどころか足手まといになるだけである。
「ここで名を売っておこうという腹積もりなのではないかと」
「おそらくな」
「どうしますか、追い返します?」
「そう無碍にもできないだろう。何か役に立つこともあるだろうさ」
「索敵にでも出しますか?」
「いや。索敵を甘く考えてはだめだ。勝利の行方を左右する重大な任務に素人を投入するのは危険だ」
「では、後方支援部隊に協力させて、解放した惑星の戦後処理にでも当たらせますか?」
「そうだな……」
 厄介なことになったが、相手は委任統治領の領主でり、土地持ちの上級貴族である。
 今後の銀河帝国における政策にも関わる問題であり、彼らを抜きにしては将来は保証できない。


 変わって首都星アルデランのアルタミラ宮殿。
 皇室議会が召集されていた。
 議場の正面には、パネルスクリーンに銀河帝国統合軍艦隊の勇姿が投影されていた。
「第一皇子殿下が出撃されて十八時間になるが、何か変わったことはないか?」
「特に変わったことは……」
「中立地帯を越えるのは、いつ頃になるか?」
「およそ三日後になるかと」
「しかし、けしからんな。報道機関がこぞって皇太子殿下などと呼称している。我々は、皇太子継承をまだ認めていないぞ」
「そうは言っても、民衆の間ではすでにアレクサンダー第一皇子を皇太子として受け入れているようだ」
「戦争に報道機関を従軍させるとは、何を考えているんだ」
「民衆に対する人気取りに決まっているだろう」
「そうかな。自分には自信の程が窺えるのだが……」
「それにしても、総勢百五十万隻で敵艦隊二百五十万隻と本気で戦うつもりだろうか」
「そうでなきゃ。出撃しないだろう。何せ共和国同盟の英雄だからな。連戦連勝、向かうところ敵なしの無敗の智将。圧倒的に敵が有利な戦をもひっくり返して勝ち続けたという実績もある」
「不意打ちとか待ち伏せ、姑息で卑怯な戦いをするともいうが」
「まさか、一対一で向き合って『やあやあ、我こそは源氏の頭領、源の何がしである……』とか言うのが正論だと言わないだろうな」
 次々と、ぼやきにも似た発言を続ける議員達だった。
 アレックスの悪口ばかりだったが、一人が話題を変えた。
「委任統治領の領主達が、独自に判断して警備艦隊を引き連れて参戦しているようだが」
「摂政派の領主達も参加しているというじゃないか。止められなかったのか?」
「謀反だな。領地没収だな」
「できるのか?」

「今からでも遅くないだろ。呼び戻せないか」
「どうやって?」
「何とでも言えるだろう。公爵殿の意向だと言えば引き返すさ」
「馬鹿言え! 銀河帝国の存亡を掛けて出撃している第一皇子の下に馳せ参じているんだぞ。『帰れ』などと命令できるわけがないじゃないか」
 一同が口を噤んだ。
 摂政エリザベス皇女より、銀河帝国元帥号及び宇宙艦隊司令長官を拝命したアレックス。
 その地位は本来、皇太子殿下にのみに与えられるものである。
 すでにアレックスは絶大なる権限を有し、銀河帝国艦隊を自由に動かすことのできる地位にあるのだ。
 たとえ地方の警備艦隊といえども、アレックスがひとたび命令を下せば従わねばならない規則になっている。
「こうなる前に、戒厳令を布いておくべきだったか」
「誰が予測できたというのだ」
「もし、この戦いでアレクサンダー皇子が勝てば、民衆に対する人気は絶大なものになる」
「そうだな。いくら公爵といえども世論には逆らえまい」
 議論は堂々巡りで進展しない。
 誰かが発言した。
「こうしたらどうだろう。今この時点で論じ合っても詮無いこと、結果が出てからでも遅くないのではないか」
「それもそうだ」
 意見は一致した。
 皇太子擁立問題は、第一皇子の総督軍との決戦を見届けてからということになった。
「それでは、そういうことで閉会とする」

 第六章 了

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2021.07.02 16:10 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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