銀河戦記/鳴動編 第二部 第十四章 アクティウム宙域会戦 Ⅵ
2021.08.19

第十四章 アクティウム海域会戦





 ウィンディーネ艦隊が前に突出してゆく。
 続いて本隊にも命令を下す。
「本隊も動くぞ。全艦全速前進だ!」
「御意!」
 ついに皇太子派の全軍も進軍を始めた。

 ウィンディーネ艦隊の猛烈な攻撃により、摂政派軍の中央が崩されてゆく。左右に分断され指揮系統も混乱を始めていた。
 やがて中央突破に成功したウィンディーネ艦隊が反転攻撃を開始する。
 分断されて混乱の極みに達した
「ウィンディーネに打電! 敵の右翼に砲撃を集中させよ!」
 通信士が打電する。
「了解! ウィンディーネは敵右翼に集中攻撃せよ!」
 左翼を相手にせず、右翼だけに集中すれば、対する艦数はほぼ互角となる。

 そして迂回していたマーガレット皇女艦隊が到着し、側面攻撃を開始した。
 戦闘機一機は戦艦一隻に相当する。
 ここに至って、艦数で皇太子派軍は俄然優勢となり、右翼の艦隊は壊滅に至った。
「これ以上、無駄な血を流すこともないだろう。投降を呼びかけてくれないか」
「御意!」
 残された左翼も、完全包囲される格好となり、アレックスの投降の呼びかけに応じて白旗を揚げた。
「殿下、皇太子派軍の勝利です」
 誇らしげに勝利宣言を発表するジュリエッタ皇女だった。


 摂政派軍敗北の報が、アルタミラ宮殿に届いた。
「我が軍が敗北しただと?」
 青ざめるロベスピエール公爵だが、玉座にあるロベール皇帝は何のこと? といった表情で首を傾げている。
 皇太子派軍が帝国本星に向けて進撃を開始したのを受けて、公爵は自国のウェセックス公国へと落ち延びていった。
 エリザベス皇女は、事態の収拾を図るために宮殿に留まることを決断し、アレクサンダー皇太子到着の前に、やるべき事を次々と行った。
 まずは摂政派の要人に対して、身の振り方の確認をし、ニューゲート監獄に収監されていた皇太子派の要人達を解放した。
 国民を虐げていた憲兵組織の解散。
 閉鎖されていた皇室議会の開場。
 空港・鉄道などの公共機関の解放。
 報道機関の検閲廃止と自由化など。
 そして何よりの衝撃は、ロベール皇帝の廃嫡を宣言したのである。
 退位ではなく、そもそも即位がなかったとしたのだ。そうでなければ、帝位を奪った者として処断される可能性もあったからである。

 数日後、アレックスが二皇女を引き連れてアルタミラ宮殿に入った。
「アレクサンダー皇太子殿下、マーガレット皇女様、ジュリエッタ皇女様、ご入来!」
 近衛兵が、謁見の間に通じる重い扉を開けながら宣言する。
 招聘された大臣や上級貴族、そして高級官僚の立ち並ぶ謁見の間の真紅のカーペットの上を歩いて玉座に向かう三人。
 アレックスが目の前を通る度に、深々と頭を垂れる大臣達。
 中には、摂政派に属していた者達もいたが、転身してもはや異議を訴える者は一人もいない。
 壇上への数段の階段を上り、玉座の前に立つアレックス。
 かつてロベール皇帝が着座していたが、廃嫡宣言によって空席となっている。
 玉座の脇で深々と頭を下げて、アレックスの着座を促しているエリザベス皇女。

 謁見の間の参列者を嘗め回すように見渡してから、静かに着席した。
「皇太子殿下、万歳!」
 マーガレットが高らかに唱える。
「皇太子殿下、万歳!」
 釣られる様に参列者達も続いて唱えだした。

第十四章 了

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2021.08.19 06:36 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
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