銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ X
2019.07.21



 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 X

 カメラが作動して、目の前の様子が映し出された。
 ジープの荷台に設置された機銃を一斉掃射している隊長が映っている。
「やるなあ。あの隊長」
「感心している場合かよ。まだ動かせないのかよ。モビルスーツがすぐそこまで迫って
いるんだぞ」
「うるせえよ。まだだよ。そっちの武器の方こそ使えねえのかよ」
「今、確認してるさ。何だこりゃ?」
「どうした?」
「残弾数が0だよ。試運転中だったから、弾薬を積んでいないんだよ」
「使えねえなあ……」
 目前までモビルスーツが迫っていた。
 観念した時、もう一台の新型が体当たりして、モビルスーツを吹き飛ばした。
「すげえ馬力だ」
「これが新型の威力か」
「おっと、やっと動かせるぞ」
「気をつけろよ。こいつパワーがありすぎるからな」
「まかせろって」
 しかし足を前に振り上げた時、バランスを崩して倒れてしまう。
「何をやってる。言ったそばからこれだ。早く体勢を立て直せ」
「判ってるよ」
 その時、座席の後の方からあくびのような声がした。
「なんだ? 今の声は」
「知るかよ。おまえの後ろから聞こえたようだぞ」
 アイクが振り向いて見ると、女の子が眠たそうに目をこすっていた。
「あれ? ここはどこ?」
 とぼけた表情で、キョロキョロと見回していたが、
「ありゃりゃ、アイクとジャンじゃない。こんなところで何してるの?」
 自分の置かれている状況に、まだ気がついていない。
「サリー。おめえこそ、何してたんだよ」
「何してたと言われても……」
 サリーと呼ばれた女の子は、左手人差し指をこめかみに当て、首を傾げながら、
「グラウンド十週し終えて、モビルスーツ内に忘れ物したこと思い出して、コクピット
に入ったはいいけど、そのまま寝ちゃったみたい。
 と言って、ぺろりと舌を出した。
「コクピットに戻ってだと? おまえの乗っているの新型だぞ。どこをどう間違えれば、
自分の練習機と新型を間違えるんだよ」
「へえ? これ新型なの?」
「聞いてねえし……」
 呆れた表情のアイクとジャン。
 機器が鳴り出した。
「無線よ。出てみて」
「うるさいなあ……」
 無線機のスイッチを入れると、スクリーンに現れたのは、特殊部隊のテントで首根っ
こ掴まえられた、あの屈強な兵士だった。
「あー! おまえは、あん時の!」
「おまえら、そこで何をしている。ギルバートはどうした?」
「こいつに乗る予定だった奴は死んじまったぜ」
「おまえらがやったのか?」
「冗談じゃねえ。警備兵に撃たれたんだよ。そいつの代わりに乗ってやってるんだ」
「ちょっと待てよ……」
 ジャンが何事かを考えていたが、思い出したように、
「死んだ奴がギルバートってことは、おっさん……ハイネか?」
「そうだ!」
 憮然として答えるハイネ。

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