銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅱ
2020.12.21

第六章 カラカス基地攻略戦




 アレックスと女性参謀達との一回目の作戦会議から数日後。
 改めてゴードン達を交えての作戦会議が執り行われた。
 作戦室のパネルスクリーンに惑星周辺概図が映されている。
 副官のパトリシアが議事進行を務めている。
「惑星を占拠するには空母からの艦載機によって制空権を確保したのち、軌道上から戦艦のビーム砲で惑星地上の軍事施設を破壊します。そして揚陸部隊を地上に降ろして占拠にいたる。というのが本筋ではありますが、そこで問題になるのが、惑星を守る守備艦隊約七千隻と軌道上にある十二基の粒子ビーム砲です。粒子ビーム砲は無人で、地上の管制塔からコントロールされます」
「うーむ。守備艦隊はともかく、粒子ビーム砲がやっかいだな。戦艦に搭載されているのとは桁違いの出力があるからな」
「仮に守備艦隊を撃滅しても、あの粒子ビーム砲を叩かない限り、味方の戦艦を接近させることができない」
「そこで今回の作戦には、あえて守備艦隊を相手にしないで、粒子ビーム砲の制御装置のある地上基地を直接攻撃します」
「まさか、どうやって!?」
「それには、あれを利用させてもらう」
 とアレックスは、パネルスクリーンの一角を指差した。
 そこには一条の軌跡を描いて移動するバークレス隕石群が映っていた。
「拡大投影しろ」
 スクリーン一面に隕石群が拡大される。
「揚陸戦闘機による攻略部隊を組織して、この隕石群に隠れて惑星に近づいて潜入、敵基地に接近攻撃を加える。どうだ、いい作戦だろ」
「戦艦の援護なしに揚陸戦闘機だけで地上攻撃を敢行するなど自殺行為です」
「まあ、くわしい説明をするから聞き給え。ウィンザー少尉、よろしくたのむ」
「はい」
 パトリシアが進み出る。
「丁度、バークレス隕石群の軌道上をこの惑星が最接近する時間が、宇宙時間0331から0346時にかけてです。
 まず艦隊から、空母を主体とする遊撃部隊を組織し隕石群の到来する方向のX地点に展開させます。そこで揚陸戦闘機を全機発進させたのち、母艦はY地点へ移動して待機します。揚陸戦闘機は隕石群に隠れるようにしながら、目標に接近を試みます。作戦の当日はバークレス隕石群を母体とするナビア流星群の極大日にあたり、夜側から流星群にまぎれて大気圏に突入すれば惑星の対空レーダーに探知されることなく、無事に地上に降下できることと思います。一方本隊は、遊撃部隊の行動を悟られないため、この方面よりわざと敵レーダーに捕捉されるような相対位置を取りながら接近します。
 揚陸戦闘機は、大気圏内に突入後、軌道粒子ビーム砲の制御装置のある中央コントロール塔を制圧します。続いて軌道粒子ビーム砲を使って守備艦隊を叩きます」
 アレックスが発案した作戦案に一同は驚くばかりで、ため息を付くしかなかった。
 初めて聞かされたパトリアとレイチェル、そしてジェシカとて作戦が成功するかどうか疑問だった。
 しかし、それを納得させるだけの信頼がアレックスにはあった。そうでなければ、今ここにこうして独立遊撃艦隊の一員として作戦遂行に参加しているはずもなかったのである。
「成功すれば、奴等驚くだろうな。いきなり背後から襲われることになるのだから」
「私の希望としては、敵艦隊を撃滅させるよりは、降参させたいものだ。こっちの損害も少なくて済むし」
「まあ、挟み撃ちになれば敵も動揺してあっさり降伏するのではないでしょうか」
「そうあってほしいね」
「私としては、机上の空論でないことに賭けるしかありませんね」
「空論? これは作戦だよ。情報参謀のレイチェルが集めたカラカス基地詳細図面を元に、航空参謀のジェシカが原案を出してパトリシアがまとめたものだ」
「はん。どうして艦載機だけで行動するのかと思ったら、やはりジェシカの作戦立案
か。参謀が優秀だと司令官は楽でいいですねえ」
「まあね。俺は実行するかしないかを決断するだけだからな」
「ですが、作戦の骨子を考えられたのは司令自身ですよ。私達三人を呼び寄せるなり、『あのバークレス隕石群を利用した、揚陸戦闘機による惑星攻略を考えてくれ』ですもの。しかも揚陸戦闘機の手配まで完了してあったんですよ」

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

ファンタジー・SF小説ランキング



11
2020.12.21 13:10 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅰ
2020.12.20

第六章 カラカス基地攻略戦




 パラキニアに到着した独立遊撃艦隊は、早速宇宙港に入港して損傷箇所の修繕と燃料補給を開始した。
 司令室で報告書に目を通しているアレックス。
「司令。艦隊司令部より入電です」
「こちらへ回してくれ」
「司令室に回線を回します」
 通信士に代わってトライトン准将の姿が映しだされた。
「よう。元気そうだな」
「はい。提督こそ」
「部隊の指揮統制はうまくいっているかね」
「今のところ順調にいっております」
「それは、良かった。早速だが、作戦指令が君の部隊に下された」
「初陣というわけですか」
「シャイニング基地より銀河中心方向、敵陣中にある補給拠点カラカス基地の攻略が、与えられた任務である」
「しかし、いくらなんでも……。いきなりカラカス基地攻略とは、よほど我が部隊に期待をかけていると見えますね」
「それは、皮肉かね。期待どころか、君の部隊を潰そうという魂胆だ。一切の部隊増援はなし、現有勢力の二百隻のみで、事にあたること。だそうだ」
「真意はともかく。部下達の士気統制のためにも、前向きに考えていかないとね」
「君は楽天家になれるな」
「とにかく、命令では仕方ありません。従うまでです」
「勝算はあるのかね」
「それは、これから考えます」
「そうか。作戦遂行に必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ。出来る範囲内で極力用意しよう」
「頼もしいお言葉です。では、早速ですが揚陸戦闘機を五百機ほど調達してください。部隊増援は無理でも、戦闘機ぐらいなら大丈夫でしょう?」
「ほんとに早速だな。ということは作戦の骨格は掴んでいるということか」
「はい。カラカス基地の事は以前から脳裏にあったものですから」
「わかった。早速手配しよう」
「お願いします」
 通信が切れた。
 目の前の装置を操作して、カラカス基地の情報をディスプレイに表示するアレックス。
 今度の指令によって向かうこととなった、連邦の前線補給基地がある惑星カラカスが映しだされる。時折操作パネルをいじって惑星周辺の詳細な情報を取り出している。

 カラカス基地。
 連邦軍最前線機動要塞タルシエンから同盟へ侵攻する際における補給基地である。常時一個艦隊が常駐している。軌道上には強力な粒子ビーム砲を搭載した衛星砲台が十二基周回しており、全方位をカバーし必要に応じて地上から自由にコントロールが可能である。衛星粒子ビーム砲は、通常戦艦搭載のものより約二倍の長射程を誇って、総合火力は一個艦隊に匹敵するといわれ、近づくには相当の覚悟が必要である。
 アレックスは投影ポイントを惑星からかなり離れた場所へ移動させた。そこにはバークレス隕石群があった。その周回軌道は、惑星カラカスのそれとかなり接近したコースで交差するように通っている。六十年に一度の周期で、両者は近づき合うが、今年はその最接近の年にあたっていた。
「うーん。やはりここはジェシカが適任だよな……」
 通信機器を操作して艦橋にいるパトリシアに連絡をとる。
「ウィンザーです」
「済まないが、そこはスザンナに任せて、レイチェルとジェシカと共にこっちに来てくれないか? 作戦会議だ」
「かしこまりました。大尉殿達はよろしいのですか?」
「いや、君ら三人で十分だ。ゴードン達には作戦を煮詰めてからにする」
「わかりました」

 それから数時間後。
 カラカス基地攻略の指令が下ったことが、正式に部隊発表された。
「ちっ。どうせ、チャールズ・ニールセン中将の差し金だろうさ。躍進著しいトライトン少将と、配下の精鋭部隊指揮官であるフランク・ガードナー大佐や、アレックス・ランドール少佐に対する風当たりは、並み大抵なものではない」
「結局、派閥争いに巻き込まれたというところかな」
 艦内のあちらこちらで討論する隊員達。
「我々の指揮官殿は、この難問をどうやって切り抜かれるおつもりなのだろうか」
「一つ返事で引き受けたといわれるから、それなりに考えておられるのではないか」
「いくらなんでも、不可能じゃないかな。相手は守備の一個艦隊と軌道衛星砲が堅固に守っているんだ」
「例えば軌道衛星砲を無力化するとかさ」
「どうやってだよ。近づくだけも困難だというのに」
「そ、それは……」

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

ファンタジー・SF小説ランキング



11
2020.12.20 11:20 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第五章 独立遊撃艦隊 Ⅵ
2020.12.18

第五章 独立遊撃艦隊




 自室に戻ったアレックスは窓から艦隊運行の様子を眺めていた。
 ドアがノックされた。
「入りたまえ」
 パトリシアが、紅茶カップを乗せたトレーとポットをワゴンに乗せて、入ってきた。
「お疲れさま。紅茶はいかがですか」
「ありがとう」
 パトリシアが入れた紅茶を堪能するアレックス。
 彼女が副官として来る前は、レイチェルがやってくれていたものだった。
「どう思うかね、今回の訓練の成果は」
「正確な報告を聞くまでは何とも言えませんが、初陣としてはまあまあの出来じゃないでしょうか」
「君が作ってくれた戦闘訓練のシュミレーションによる綿密な作戦マニュアルのおかげだよ。それに従えば艦隊リモコンコードなしでも十分指揮運営が可能だからな」
「いいえ、隊員が司令官の言葉を信じて、真剣に訓練に従事したからですわ。わたしはほんの少しのお手伝いをさせて頂いただけです」
「謙遜しなくてもいいよ。君の功績には感謝する。今後ともよろしく頼む」
 アレックスは紅茶カップを机に置き、手を差し伸べて握手を求めた。
「はい。わたしでよければ」
 その手を握りかえした。そして、そのまま寄り添って、唇を合わせて抱き合った。
 長い抱擁のあとにアレックスはささやくようにいった。
「君が来てくれたおかげで、僕達の結婚も少しは早まるかもしれないな」
「そうなるように努力しますわ」
「うん」

 アレックスは司令室に、技術部システム管理課プログラマー、レイティ・コズミッ
ク中尉と、技術部開発設計課エンジン担当、フリード・ケイスン中尉を呼び寄せた。
「エンジンの具合はどうだい?」
「はっきりいって、最悪です」
 ハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式のエンジン制御コンピューターのシステムを解析していたレイティが即座に答えた。
「そうか……」
「エンジン制御システムなんですが、開発者が数万回にわたるコンピューターシュミレーションによって最も最良な状態をパターン化してROMにインプットしているようです。実際の艦隊運行においては、その時々の状況から最も近似値となるパターンをROMから選びだしてエンジンを制御しています。ところが搭載エンジンの反応速度にROM読みだしから制御までの反応速度が追い付かないのです。つまり完全に合ったパターンがあればいいのですが、ほとんどが近似値を選びだす必要がありその時間が掛かり過ぎます。それが特に艦隊リモコンコードになると顕著に現れてくるのです。艦隊が要求するエンジン制御命令と自身の最良のエンジン制御命令に大きなギャップが生じますから」
「高性能エンジンゆえの憂鬱というところか。シュミレーションと実戦ではまるで違
うからな。実際の戦闘に参加したことのない技術者の作るものはそんな程度のものということ。で、対策は?」
 レイティに変わってフリードが答えた。
「メインシステムはとりあえずそのままにしておいて、サブシステムとして学習機能を持った回路を並列に接続して同時処理させていきます。といいましても当分は、メインシステムが実際の行動パターンを決定するのですが、メインシステムが決定した行動の裏で、『俺だったらこうするのにな』と自分なりに判断し学習メモリに蓄積していくサブシステムがあるというわけです。つまりすでにあるパターンを利用するのではなくて、艦がその時々にとった行動をパターンとして学習させていきます。最終的にはその学習したパターンによってエンジン制御して行動できるようになります」
「サブシステムの構築にどれくらいの時間が必要だ」
「回路の設計に半年、実際の構築に三ヶ月、都合九ヶ月は必要かと思います」
 フリードの後を受けてレイティが答える。
「システムプログラムの方は、メインプログラム作成に四ヶ月と各種モジュール作成が三ヶ月、試験艦として五番艦の『ノーム』を使用してのデバッグに二ヶ月、そしてフリードが構築した回路にインストールして再調整を行い、実際に稼動するまでに十二ヶ月です」
「気の長い話しだな」
「サラマンダーのエンジンは、共和国同盟最高の性能を誇るハイスペックマシンながら、手のつけようのないじゃじゃ馬でもあります。手懐けるにはそれなりの覚悟と期間がひつようということです」
「ま、ともかく。君達二人には協力してハイドライド型のエンジン制御の改良をやってくれたまえ」
「わかりました」
 エンジン関連は二人に任せるしかない。
「原子レーザー砲の運用についてはどうか?」
 と、もう一つの問題に入った。
「それは問題ないな」
「と、いうと……」
「俺が設計したからだ。製作者が設計通りに作ってさえいればな」
「なるほど……」
「とは言っても、実際に試射してみなければ解らないこともあるし、操作するものが間違ったことをすることもある」
「そうだな。経験を積んで慣れていくしかないな」
「その通り。まあ、ともかく詳細なデータは後日にまとめて報告するよ」
「ああ、頼む」

 こうしてアレックス率いる独立遊撃艦隊の初めての戦闘訓練は無事に終了した。

 第五章 了

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

ファンタジー・SF小説ランキング



11
2020.12.18 10:39 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第五章 独立遊撃艦隊 Ⅴ
2020.12.18

第五章 独立遊撃艦隊




「司令。全艦、戦闘準備が整いました」
 パトリシアが復唱してアレックスに伝える。
「よし、全艦、最大戦闘速度で、戦闘想定宙域に突入せよ。艦載機は母艦に追従」
 ついに戦闘訓練が開始された。
 艦橋オペレーターが復唱しながら指令を全艦に伝達する。
「了解。全艦、最大戦闘速度で、戦闘想定宙域に突入せよ」
「艦載機、母艦に追従せよ」
「全艦、粒子ビーム砲準備」
 次々と矢継ぎ早に指令を出し続けるアレックス。
「これより原子レーザー砲の試射を行う。準旗艦の各艦は発射体制に入れ!」
 旗艦サラマンダー以下の準旗艦、ウィンディーネ、ドリアード、シルフィー、ノームのハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式の五隻のみ、原子レーザー砲が装備されている。
 その火力性能は未知数であり、後々の実戦のために把握しておく必要がある。
 現在、原子レーザー砲の調整担当として、フリード・ケースンが科学技術部主任として乗艦している。
 天才科学者であるフリードにとって、設計図を見ただけでおおよその性能を見極めてしまう。が、製作者が設計者の意図通りに工作するとは限らない。
 例えば、砲の材質を粗末なものに落として、浮いた材料費を自分の懐にしまい込み、挙句に砲を撃った途端に自壊してしまった、ということもよくある話だ。
 軍部の腐敗体質というものは、どこの国・時代問わずに発生する。
 現場においては常に、自分に与えられた武器の最大性能を引き出すための努力を惜しんではいけない。
 原子レーザー砲の全責任者であるフリードがてきぱきと、機関部員に指令を出している。
「原子レーザー砲への回路接続。レーザー発振制御超電導コイルに電力供給開始」
「BEC回路に燃料ペレット注入開始します」
 着々と発射準備が進んでいく。

 艦隊の目前に、戦闘想定宙域が現れた。
 パラキニア星系の最外郭軌道上を浮遊するゲーリンガム小惑星群であった。それらの小惑星を敵艦隊に見立てて、戦闘訓練を実施する予定であった。
 アレックスの元へ、
「原子レーザー砲、発射準備完了」
 というフリードからの報告が入る。
 すかさず砲撃開始の指令を出すアレックス。
「全艦、宙域に突入と同時に想定目標に対し粒子ビーム砲を百二十秒間一斉掃射。艦載機は直後に突撃開始せよ」
「全艦、粒子ビーム砲、発射!」
 全艦が一斉に粒子ビーム砲を発射する。
 続いて原子レーザー砲の番である。
「サラマンダー及び準旗艦。原子レーザー砲発射!」
 小惑星がレーザービームを受けて粉々に砕け散って宇宙空間にその残骸が漂う。
「ほうっ」
 という驚きの声が漏れる。
 通常の光子ビームではありえないような破壊力をまざまざと見せつけていた。

「各艦の粒子ビーム砲、残存エネルギー有効率以下に降下。再充填開始します。次の発射まで三分ないし七分を要します」
「艦載機、突撃開始!」
 小惑星群に突入、飛散した残骸に対して攻撃体制に入ったジミー・カーグ率いる艦載機の編隊。
「全機へ、これより攻撃を開始する。アタックフォーメーション・TZに展開せよ」
「了解。TZに展開」
 艦載機が突撃を開始する。艦載機は小惑星から飛び散った残骸を、敵戦闘機と見立てて片っ端から攻撃撃破しつつ、小惑星に接近してミサイルを打ち込んでいく。
「ようし、全艦、想定目標にたいして突撃開始。往来撃戦用意。高射砲は射程に入りしだい攻撃開始」

 およそ十分が経過した。
「よし、そろそろいいだろう。艦載機を収容しろ。五分後に戦線離脱する」
「了解」
「全機撤収準備。母艦に戻れ」
 艦載機発進デッキに一機また一機と艦載機が着艦してくる。
 最後にジミー・カーグの隊長機が着艦した。
「艦載機、全機帰還しました」
「よし。艦尾発射管より光子魚雷を連続発射、弾幕を張りつつ戦闘宙域を離脱する。全艦全速前進!」

「全艦、戦闘宙域より離脱しました」
「戦闘体勢解除だ。巡航速度に戻してパラキニアに向かえ」
「はっ。戦闘体勢解除します」
「巡航速度でパラキニアに向かいます」
「パトリシア。一時間後に各編隊長を作戦分析室に集合させてくれ。今回の作戦報告と今後の検討をする」
「了解しました」
「それまで、自室にいる。スザンナ、後をたのむ」
「はい」
 アレックスは自室に引きこもり、スザンナが代わって指揮官席に座った。艦長は通常自艦の運営しか任されていないが、旗艦の艦長に限っては戦闘以外の巡航時のみ艦隊を動かすことができるのだ。その間の旗艦の操艦は副長に替わっている。
「旗艦艦長スザンナ・ベンソン中尉だ。司令官の指令により、これより私が運航の指揮をとる」
 スザンナは指揮官席から伝達した。
「巡航速度を維持。進路そのまま」

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

ファンタジー・SF小説ランキング



11
2020.12.18 08:16 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第五章 独立遊撃艦隊 Ⅳ
2020.12.17

第五章 独立遊撃艦隊




 サラマンダー艦橋の指揮官席に陣取るアレックスと、そのすぐ側に立つパトリシア。
「全艦。出航準備完了しました」
「よし、行くとするか」
「行きましょう」
 目の前の指揮パネルに手を伸ばすアレックスだが、その動きを止めしばし考え込んでいた。そして、意を決したように、背後に待機しているパトリシアを呼んだ。
「ウィンザー少尉」
「はい」
「君が、出航の指揮をとりたまえ」
「え……? は、はい。わかりました」
 一瞬躊躇するパトリシアであるが、上官の命令は絶対である。
 立ち上がったアレックスの代わりに指揮官席に腰を降ろし、深呼吸してから指揮パネルを操作した。するとスピーカーから戦術コンピューターからの音声が返って来た。
『戦術コンピューター。貴官の姓名・階級・所属・認識番号をどうぞ』
「パトリシア・ウィンザー少尉。独立遊撃艦隊副官。認識番号 A2B3-47201」
『パトリシア・ウィンザー少尉を確認。指揮官コードを入力してください』
 アレックスから伝えられた副官に与えられる指揮官コードを入力するパトリシア。
『指揮官コードを確認。パトリシア・ウィンザー少尉を指揮官として認めます。ご命令をどうぞ』
 艦艇を動かすには、オペレーターに指示して発動する場合と、自動運転で各艦の制御コンピューターにまかせる場合とがあるが、どちらにしても実際に艦を動かすのは、制御コンピューターである。そして各艦の制御コンピューターを統制運用するのが、旗艦にある戦術コンピューターなのである。指揮官コードを入力しなければ各艦の制御コンピューターは作動しないようになっている。つまり指揮官不在では艦は動かないということである。
「パトリシア・ウィンザー少尉である。少佐の命令により、部隊の指揮をとる。これより全艦に対し、本作戦に使用する艦隊リモコン・コードを発信する。確認せよ」
 発言と同時に指揮パネルを操作するパトリシア。
 艦隊リモコン・コードは、艦隊を組んで整然と航行する際に艦と艦の異常接近を回避したり、往来撃戦で敵味方入り乱れて戦う時に同士討ちを避けるためや、誘導ミサイルの敵味方識別信号としても入力されるものだ。特に、全艦一斉にワープするには、ワープタイミングを旗艦に同調させなければ、ワープアウト時に艦同士の衝突が避けられない。いくらドッグファイトを公言していても、まったく使用しないというわけにはいかないのだ。
 正面のパネルスクリーンには各艦の位置を示す赤い光点が点滅している。それが次々と青い点灯に変わって、各艦が艦隊リモコン・コードを確認したことを現していた。
「指揮官。全艦、艦隊リモコン・コードを確認。発進準備完了しました」
「よろしい……」
 パトリシアは背後の副指揮官席に着席したアレックスに視線を送り、静かに頷いたのを確認して、改めて部隊に指令を発令した。
「では、これより、訓練航海に出発します。全艦、手動モードで微速前進」
 すぐさまパトリシアの指令を全艦に伝達するオペレーター。
「全艦、手動モードにおいて微速前進せよ」
 その指令は各艦において反復伝達されていた。
「手動モード!」
「微速前進」

 一方ゴードンも、副司令官として自分に与えられた全部隊の三分の一相当の配下の艦隊に対して、準旗艦「ウィンディーネ」上から指令を伝達していた。
「サラマンダー艦隊の初陣だな……君がまとめあげた艦隊のね」
 と傍らのレイチェルに話し掛けるゴードン。
「さっきから緊張しっぱなしです」
「まあ、子供を送り出す。母親の気分というところかな」
「はい」
「よし。全艦手動モードにて微速前進」
 くしくも彼が口にしたサラマンダー艦隊という呼称は、やがて連邦を恐れさす代名詞として使われることになるとは、この時点で誰が予知できただろうか。

 もう一人の副司令官ガデラ・カインズ大尉は、準旗艦「ドリアード」上にいた。
 彼は、再編成前の旧第六部隊からの引き継ぎであった。本来自分が司令になるはずだった部隊に、新参者の十歳年下の司令官がやってきたことで、アレックスに対する心象はあまりよくなかった。全艦ワープを実行する時以外、艦隊リモコンコードを使わない作戦に一番最初に反対したのも彼である。しかし、軍規には逆らうことのできない根っからの軍人気質で、たとえ年下であれ上官であるアレックスがひとたび命令を下せば素直に従っていた。

 高速軽空母「セイレーン」に坐乗するジェシカ・フランドルは、アレックスの部隊の航空参謀兼空母攻撃部隊長として艦載機運用の全責任を任されていた。
 艦載機発進デッキの映像がモニターに映しだされる。モニターを背に戦闘員達に指示を出しているジミーの姿があった。
「班長、航空参謀がお呼びです」
 オペレーターの声に気付いて振り替えるジミー。
「ああ、これはこれは航空参謀殿。艦載機の発進準備は万端整っております」
「どうです、戦闘員の士気は」
「上々です。皆張り切っております」
「そうですか。戦闘員には新兵も多くいます。十分訓練を重ねて、安心して実戦に臨めるようにお願いします」
「まかせておいてください」
「よろしくたのみますよ」
「はっ」
 ジミーが敬礼したところで、モニターは切り替わり、パトリシアの映像に変わった。
「丁度よかった。こっちの準備は整ったわ。いつでも出られますと司令に伝えて」
「わかりました」
「ああ、パトリシア」
「はい」
「士官学校と違って実弾による戦闘訓練よ。あなたには初めての経験になるわね。頑張りなさい」
「はい。先輩」
 ジェシカは軽くウィンクを送ると通信を切った。
 一方のパトリシアは、通信が終了しても、しばし映像の消えたパネルを見つめていた。感慨深げといった表情だ。
 そんなパトリシアを見つめるアレックスも、はじめての戦闘訓練に参加する心境を察知して、やさしい表情をしていた。

「戦闘訓練座標に到着しました」
 航海長のアイリーン・アッカーソンが進言する。
「ようし。いってみるか、パトリシア交代だ」
「はい」
 モニターから目を離し、アレックスの方に向き直って明るい表情で答えた。
 通常航行ならともかく、訓練とはいえ戦闘指令となると、パトリシアにはまだ無理である。
 席を外してアレックスに譲るパトリシア。
「ごくろうだった。上出来だったよ」
 ねぎらいの言葉を交わして指揮官席に座るアレックス。
「アレックス・ランドールである。全艦に発令。これより戦闘訓練を開始する。第一級戦闘配備だ。艦載機全機発進準備せよ!」
 艦内の照明が一斉に警告灯に替わり、けたたましくベルが鳴り響いた。
 艦内を右往左往しながら戦闘配備の指令にたいして行動を開始する隊員。居住区からも待機要員の隊員が飛び出し受け持ちの戦闘装備に向かって駆け出している。

 空母セイレーンでもジェシカからの指令直下、全戦闘員がそれぞれの戦闘機に搭乗して発進準備に入っていた。
「艦載機全機発進」
 艦載機発進デッキでは、戦闘機がつぎつぎと発進を開始し、艦隊の周辺に展開をはじめる。
 旗艦サラマンダーの艦長スザンナ中尉の元には戦闘配備状況の報告が次々に伝えられてくる。
「第一砲塔、戦闘準備完了しました」
「高射機関砲。戦闘準備よし」
「艦首ミサイル発射管準備よし」
「機関部、総員の配置を完了しました。戦闘速度三十七宇宙ノットまで可能。原子レーザービーム砲の出力ゲインは八十五パーセントで、発射タイミングは零・七秒間隔。連続掃射限界は三分、再充填所要時間は七分です」
 スザンナ艦長が立ち上がって報告した。
「司令。旗艦サラマンダー、戦闘準備完了しました」
「よし! そのまま待機せよ」
「はっ」
 なおも続々と各艦より戦闘準備完了の報告が続いている。
「さすがに、スザンナだな。戦闘準備完了までたった二分四十五秒だ。規律の行き届いた良い艦だ。旗艦にふさわしい」
「こちら、ジェシカ・フランドル。艦載機の展開を完了しました。いつでも出撃可能です」
 すべての艦艇からの戦闘配備の報告を受けて、
「全艦、戦闘準備完了しました!」
 スザンナ・ベンソンが声高らかに進言する。

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

ファンタジー・SF小説ランキング



11
2020.12.17 16:44 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

- CafeLog -