銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅵ
2020.12.25

第六章 カラカス基地攻略戦




 カラカス地上基地、管制塔。
 夜空をたくさんの流星が流れていく。
「今夜は、やけに多くの星が流れるな」
「六十年に一度のバークレス隕石群への最接近が間近ですからね。惑星の重力に引かれて無数の隕石のかけらが大気圏に突入してきますから当然でしょう」
「それにしても敵艦隊の動きも気になるところだな」
「軌道上の粒子ビーム砲がある限り接近することは出来ないでしょう」

 真っ赤に燃えて消えいく流星群が軌跡を引いて流れる、その中からアレックス達の乗った揚陸戦闘機群がすっと姿を現しはじめていた。
 大気圏突入によって灼熱状態の機体が、通常航行へ移行する頃には冷えて平常に戻りつつあった。
「突入完了。大気圏航行主翼を展開させます」
 翼の必要のない宇宙空間から大気圏に突入後、飛行翼を展開してそのまま滑空することのできる戦闘機、それが揚陸戦闘機である。大気圏航行のための揚力を出す飛行翼の展開と収納が可能となっている。
「こちらブラック・パイソン。各編隊応答せよ」
「こちらハリソン編隊。全機無事に大気圏突入成功した」
「ジミー・カーグだ。こっちも全機追従している」
 両編隊長から無線がはいった。
「地形マップに機影を投射。対地速度マッハ四・六。約五分後に目標に到達します」
「ジュリー、このままのコースを維持せよ」
「了解。コース維持します」
「こちらブラック・パイソン。各編隊へ。ブラック・パイソンに相対速度を合わせ、敵のレーダーにかからないように地面すれすれに超低空を飛行せよ。これより、敵管制基地攻撃にかかるが、攻撃目標から中央コントロール塔への直接攻撃は避ける。対空施設や格納庫、滑走路上戦闘機への攻撃が主体だ」
「ブラック・パイソン。こちら、ハリソン編隊。作戦指令を了解。ハリソンより、パーソン小隊、ジャック小隊へ。両小隊は司令機ブラック・パイソンの両翼に展開して護衛せよ。ミサイル一発たりとも近づけるんじゃないぞ」
「パーソン小隊、了解した。こちらは、左翼を守る。ジャック小隊は、右翼を頼む」
「ジャック小隊、了解しました。ブラック・パイソンの右翼を警護します」
「カーグ編隊長より、全機へ。当初の作戦通り、ミサイル一斉発射後、基地滑走路への強行着陸を敢行する。ミサイル発射装置の安全装置を確認」
 ジュリーが前方を指差しながら報告した。
「敵基地が見えてきました」
「上空に敵戦闘機はいないか?」
「見当たりません」
「すっかり安心しきっているか……。よし」
 アレックスは、無線機を握りしめた。
「ブラック・パイソンより各編隊へ。攻撃開始だ。全機浮上してミサイル一斉発射」
 アレックスの命令と同時に、全機が浮上し、発射体制に入ると同時に一斉にミサイルを発射した。さらにミサイルを発射して軽くなった機体は、加速して敵基地へ突入を開始する。
「ジミー、滑走路に強行着陸しろ」
「了解。カーグ編隊、全機滑走路に着陸しろ」
 次々と滑走路に強行着陸する戦闘機。
 その間にもハリソン編隊が管制塔周辺に対し攻撃を行って、守備隊の接近を阻んでいた。
「ジュリー。管制塔まえに強襲着陸だ」
「了解!」

 敵基地中央コントロール塔管制室では突然の敵襲に騒然となっていた。管制塔の前ではアレックス達と管制官員とが銃撃戦を繰り広げていた。かつて士官学校での模擬戦闘で、戦闘訓練は経験済みの隊員達だ。要領を得て、確実に塔を昇り詰めていく。
「このままでは持ちこたえられんぞ。守備隊はいったいどうしているのか」
「敵戦闘機により通路が分断されており、かつ間断なる攻撃で接近できないでいます」
「せめて軌道上の艦隊とは連絡が取れないのか」
「だめです。敵のジャミングで無線はもちろんのことレーダーすら役に立ちません」
「ううっ。一体守備艦隊は何をしていたのだ」
「これだけの戦闘機が来襲してきたところをみると、すでに味方守備艦隊は全滅しているのでは」
「まさか……」
「そうでなければどうして……」
 言い終わらないうちに肩口を銃弾で打ち抜かれて床に倒れる管制員。
「スキニー!」
 仲間の名前を叫んで駆け寄ろうとしたが、なだれ込むように侵入してきたアレックス達に遮られる。
「動くな!そこまでだ。おとなしく降参しろ」
 管制員に銃口を向けて包囲するアレックス達。
「貴様たちは?」
「同盟軍だよ。基地は完全に掌握した。無駄な足掻きはやめることだ」
 肩をがっくりと落とす管制員。

 管制員を縛り上げて壁際に座らせる隊員達。
「意外と速かったですね」
「ああ、レイチェルが手に入れた基地の詳細図があったからな。階段の場所からゲートを開ける操作盤の位置、迷子にならずに一直線でここまでこれたからな。そして、守備隊を管制塔に近づけさせないため、連絡通路を確実に破壊できたのも、正確な見取り図があったから。さらには基地周辺の地形図まで、攻略に必要なすべての図面を集めてくれた」
「さすが情報参謀ですね。レイチェル少尉のおかげで作戦が立てられたわけですからね」
「ああ、彼女の情報収集能力は一個艦隊に匹敵するくらいだ」
 もっともその功績は、彼女の背後にいるジュビロ・カービンによるものだろうが。

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2020.12.25 16:48 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

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