銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅰ
2020.12.20

第六章 カラカス基地攻略戦




 パラキニアに到着した独立遊撃艦隊は、早速宇宙港に入港して損傷箇所の修繕と燃料補給を開始した。
 司令室で報告書に目を通しているアレックス。
「司令。艦隊司令部より入電です」
「こちらへ回してくれ」
「司令室に回線を回します」
 通信士に代わってトライトン准将の姿が映しだされた。
「よう。元気そうだな」
「はい。提督こそ」
「部隊の指揮統制はうまくいっているかね」
「今のところ順調にいっております」
「それは、良かった。早速だが、作戦指令が君の部隊に下された」
「初陣というわけですか」
「シャイニング基地より銀河中心方向、敵陣中にある補給拠点カラカス基地の攻略が、与えられた任務である」
「しかし、いくらなんでも……。いきなりカラカス基地攻略とは、よほど我が部隊に期待をかけていると見えますね」
「それは、皮肉かね。期待どころか、君の部隊を潰そうという魂胆だ。一切の部隊増援はなし、現有勢力の二百隻のみで、事にあたること。だそうだ」
「真意はともかく。部下達の士気統制のためにも、前向きに考えていかないとね」
「君は楽天家になれるな」
「とにかく、命令では仕方ありません。従うまでです」
「勝算はあるのかね」
「それは、これから考えます」
「そうか。作戦遂行に必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ。出来る範囲内で極力用意しよう」
「頼もしいお言葉です。では、早速ですが揚陸戦闘機を五百機ほど調達してください。部隊増援は無理でも、戦闘機ぐらいなら大丈夫でしょう?」
「ほんとに早速だな。ということは作戦の骨格は掴んでいるということか」
「はい。カラカス基地の事は以前から脳裏にあったものですから」
「わかった。早速手配しよう」
「お願いします」
 通信が切れた。
 目の前の装置を操作して、カラカス基地の情報をディスプレイに表示するアレックス。
 今度の指令によって向かうこととなった、連邦の前線補給基地がある惑星カラカスが映しだされる。時折操作パネルをいじって惑星周辺の詳細な情報を取り出している。

 カラカス基地。
 連邦軍最前線機動要塞タルシエンから同盟へ侵攻する際における補給基地である。常時一個艦隊が常駐している。軌道上には強力な粒子ビーム砲を搭載した衛星砲台が十二基周回しており、全方位をカバーし必要に応じて地上から自由にコントロールが可能である。衛星粒子ビーム砲は、通常戦艦搭載のものより約二倍の長射程を誇って、総合火力は一個艦隊に匹敵するといわれ、近づくには相当の覚悟が必要である。
 アレックスは投影ポイントを惑星からかなり離れた場所へ移動させた。そこにはバークレス隕石群があった。その周回軌道は、惑星カラカスのそれとかなり接近したコースで交差するように通っている。六十年に一度の周期で、両者は近づき合うが、今年はその最接近の年にあたっていた。
「うーん。やはりここはジェシカが適任だよな……」
 通信機器を操作して艦橋にいるパトリシアに連絡をとる。
「ウィンザーです」
「済まないが、そこはスザンナに任せて、レイチェルとジェシカと共にこっちに来てくれないか? 作戦会議だ」
「かしこまりました。大尉殿達はよろしいのですか?」
「いや、君ら三人で十分だ。ゴードン達には作戦を煮詰めてからにする」
「わかりました」

 それから数時間後。
 カラカス基地攻略の指令が下ったことが、正式に部隊発表された。
「ちっ。どうせ、チャールズ・ニールセン中将の差し金だろうさ。躍進著しいトライトン少将と、配下の精鋭部隊指揮官であるフランク・ガードナー大佐や、アレックス・ランドール少佐に対する風当たりは、並み大抵なものではない」
「結局、派閥争いに巻き込まれたというところかな」
 艦内のあちらこちらで討論する隊員達。
「我々の指揮官殿は、この難問をどうやって切り抜かれるおつもりなのだろうか」
「一つ返事で引き受けたといわれるから、それなりに考えておられるのではないか」
「いくらなんでも、不可能じゃないかな。相手は守備の一個艦隊と軌道衛星砲が堅固に守っているんだ」
「例えば軌道衛星砲を無力化するとかさ」
「どうやってだよ。近づくだけも困難だというのに」
「そ、それは……」

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2020.12.20 11:20 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅱ
2020.12.19

第十章 反乱





 皇太子即位の儀は、アルデラーン宮殿王室礼拝堂大広間で執り行われることとなった。地球史における英国のプリンス・オブ・ウェールズ叙任式にあたる。
 豪華絢爛たる装飾品、正面には祭壇と大きなパイプオルガン、天井には美しい装飾画がある。
 吹き抜けとなっている二階部分には、大きな円柱がありその間隙に各放送局のTVカメラと報道陣がずらりと並んでいる。
「アレクサンダー王子ご入来!」
 宮廷衛視が発令すると、騒めいていた礼拝堂内が一斉に静かになった。
 パイプオルガンが荘厳な音楽を奏でる中、紫紺の絨毯の敷かれた中央回廊をアレクサンダー王子が進みゆく。
 祭壇には、第一皇女にして摂政を務めるエリザベスが待ち受けている。その脇には侍従が携える【皇位継承の証】である深緑に輝くエメラルドの首飾り。
 一般的な王位(皇位)継承では、王冠を継承者に被せる戴冠式が行われるが、銀河帝国では【皇位継承の証】を首に掛けることで、皇位を継承したことを知らしめることとなっている。
 ちなみに地球古代史における日本国の天皇における、立太子の令がこれに相当する。

 その頃、共和国同盟の各地域にも、皇位継承の儀式の模様が生中継されていた。
 当然、ガデラ・カインズの駐留するタルシエン要塞やゴードン・オニールが守るアルサフリエニ方面の基地でも生中継を視聴していた。
「皇帝の即位式じゃなくて、皇太子なんですね」
 参謀のパティー・クレイダー少佐が呟いた。
「そりゃそうさ。死んだと思われていた皇位継承者が突如として現れたのだ。いきなり皇帝というのも、貴族たちが納得しないだろ。まずは皇太子というところからはじめて、少しずつ浸透させてゆくのだろうさ」
「皇太子とは言っても、すでに皇帝が崩御されているから、実質上の皇帝ですよね」
「まあ、そこの所が継承者問題で荒れている証左なんだろうな」

 儀式が終わって、記者会見の模様も中継された。
 数多くのマイクが立ち並んだ机の前に座り、記者の代表質問に答えるアレクサンダー王子。
「殿下は、共和国同盟を解放なされましたが、銀河帝国皇太子として、その処遇をいかがなされるおつもりでございましょうか?」
 その質問は、ほとんど銀河帝国の政策一丁目一番地とも言うべき質問だろう。
 帝国皇太子にして、共和国同盟の最高指導者たる人物なのだ。

「帝国皇太子及び共和国同盟最高指導者たる身分をもって、共和国同盟を銀河帝国に併合し、帝国貴族にその所領を与えるものとする。貴族の末端にまで公正に分配する」
 その発言を聞いて驚く、共和国同盟の諸提督達だった。

「なんてことを!?これでは、バーナード星系連邦から銀河帝国に植民政権が移っただけじゃないか」
 提督の中でも一番憤慨したのは、ゴードン・オニールだった。
 アレックスとは、士官学校からの親友だっただけに、その心変わりに信じられないという表情であった。
 しかし、TV中継では、はっきりと明確に帝国領とすると発言しているのである。疑う余地がなかった。
 アルサフリエニ方面軍において、アレックスに対する反感が沸き上がっていた。


 それから数日を経て、ゴードン・オニールを首班とするアルサフリエニ共和国の独立宣言がなされた。

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2020.12.19 10:44 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第五章 独立遊撃艦隊 Ⅵ
2020.12.18

第五章 独立遊撃艦隊




 自室に戻ったアレックスは窓から艦隊運行の様子を眺めていた。
 ドアがノックされた。
「入りたまえ」
 パトリシアが、紅茶カップを乗せたトレーとポットをワゴンに乗せて、入ってきた。
「お疲れさま。紅茶はいかがですか」
「ありがとう」
 パトリシアが入れた紅茶を堪能するアレックス。
 彼女が副官として来る前は、レイチェルがやってくれていたものだった。
「どう思うかね、今回の訓練の成果は」
「正確な報告を聞くまでは何とも言えませんが、初陣としてはまあまあの出来じゃないでしょうか」
「君が作ってくれた戦闘訓練のシュミレーションによる綿密な作戦マニュアルのおかげだよ。それに従えば艦隊リモコンコードなしでも十分指揮運営が可能だからな」
「いいえ、隊員が司令官の言葉を信じて、真剣に訓練に従事したからですわ。わたしはほんの少しのお手伝いをさせて頂いただけです」
「謙遜しなくてもいいよ。君の功績には感謝する。今後ともよろしく頼む」
 アレックスは紅茶カップを机に置き、手を差し伸べて握手を求めた。
「はい。わたしでよければ」
 その手を握りかえした。そして、そのまま寄り添って、唇を合わせて抱き合った。
 長い抱擁のあとにアレックスはささやくようにいった。
「君が来てくれたおかげで、僕達の結婚も少しは早まるかもしれないな」
「そうなるように努力しますわ」
「うん」

 アレックスは司令室に、技術部システム管理課プログラマー、レイティ・コズミッ
ク中尉と、技術部開発設計課エンジン担当、フリード・ケイスン中尉を呼び寄せた。
「エンジンの具合はどうだい?」
「はっきりいって、最悪です」
 ハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式のエンジン制御コンピューターのシステムを解析していたレイティが即座に答えた。
「そうか……」
「エンジン制御システムなんですが、開発者が数万回にわたるコンピューターシュミレーションによって最も最良な状態をパターン化してROMにインプットしているようです。実際の艦隊運行においては、その時々の状況から最も近似値となるパターンをROMから選びだしてエンジンを制御しています。ところが搭載エンジンの反応速度にROM読みだしから制御までの反応速度が追い付かないのです。つまり完全に合ったパターンがあればいいのですが、ほとんどが近似値を選びだす必要がありその時間が掛かり過ぎます。それが特に艦隊リモコンコードになると顕著に現れてくるのです。艦隊が要求するエンジン制御命令と自身の最良のエンジン制御命令に大きなギャップが生じますから」
「高性能エンジンゆえの憂鬱というところか。シュミレーションと実戦ではまるで違
うからな。実際の戦闘に参加したことのない技術者の作るものはそんな程度のものということ。で、対策は?」
 レイティに変わってフリードが答えた。
「メインシステムはとりあえずそのままにしておいて、サブシステムとして学習機能を持った回路を並列に接続して同時処理させていきます。といいましても当分は、メインシステムが実際の行動パターンを決定するのですが、メインシステムが決定した行動の裏で、『俺だったらこうするのにな』と自分なりに判断し学習メモリに蓄積していくサブシステムがあるというわけです。つまりすでにあるパターンを利用するのではなくて、艦がその時々にとった行動をパターンとして学習させていきます。最終的にはその学習したパターンによってエンジン制御して行動できるようになります」
「サブシステムの構築にどれくらいの時間が必要だ」
「回路の設計に半年、実際の構築に三ヶ月、都合九ヶ月は必要かと思います」
 フリードの後を受けてレイティが答える。
「システムプログラムの方は、メインプログラム作成に四ヶ月と各種モジュール作成が三ヶ月、試験艦として五番艦の『ノーム』を使用してのデバッグに二ヶ月、そしてフリードが構築した回路にインストールして再調整を行い、実際に稼動するまでに十二ヶ月です」
「気の長い話しだな」
「サラマンダーのエンジンは、共和国同盟最高の性能を誇るハイスペックマシンながら、手のつけようのないじゃじゃ馬でもあります。手懐けるにはそれなりの覚悟と期間がひつようということです」
「ま、ともかく。君達二人には協力してハイドライド型のエンジン制御の改良をやってくれたまえ」
「わかりました」
 エンジン関連は二人に任せるしかない。
「原子レーザー砲の運用についてはどうか?」
 と、もう一つの問題に入った。
「それは問題ないな」
「と、いうと……」
「俺が設計したからだ。製作者が設計通りに作ってさえいればな」
「なるほど……」
「とは言っても、実際に試射してみなければ解らないこともあるし、操作するものが間違ったことをすることもある」
「そうだな。経験を積んで慣れていくしかないな」
「その通り。まあ、ともかく詳細なデータは後日にまとめて報告するよ」
「ああ、頼む」

 こうしてアレックス率いる独立遊撃艦隊の初めての戦闘訓練は無事に終了した。

 第五章 了

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2020.12.18 10:39 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

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