銀河戦記/鳴動編 第一部 第七章 不時遭遇海戦 Ⅰ
2020.12.31

第七章 不時遭遇会戦




 ディープス・ロイド少佐と配下の二百隻の艦船を加えて、アレックスの独立遊撃艦隊はさらに陣容を高めた。
 アレックスは新生部隊の今後を検討するために、司令室において三名の少佐及び大尉、そして各参謀らを交えて協議を計ることとした。
「カラカス基地という要衝を得たことで、当面の我々の課題はこれを死守することである……と、統帥本部の命令ではあるのだが……。そこで今後を鑑みて、我々が直面する問題点と解決方法などについてみんなと協議したい。活発なる意見交換を期待する」
 と言い終えて席についた。
「正直なところ、当基地を守り抜くには艦数が極端に不足しているのは明白なる事実でしょうね」
 ゴードンが最初の口火を切った。
「不足なんて比ではありませんよ。たった七百隻でどうしろというのですか」
「レナード・エステル大尉の言うとおりです。守備にたかだか七百隻。軌道衛星砲を有効に活用するためには、最低一個艦隊は必要です。敵迎撃ミサイルによる衛星砲の破壊を守り、艦隊の接近を許さないためにも」
「衛星砲には攻撃力はあっても、防御力はないに等しいからな」
「衛星砲の攻撃力と守備艦隊の防衛力があってこそ、相乗効果をもたらして堅固な要塞としての機能を果たすことができるのです」
 カール・マルセド大尉の発言に頷く一同。
「レナードとカールの言い分はわかるが、ないものねだりしても詮無いこと。出来る限りを尽くし、やるだけのことをやるだけじゃないのか」
「そうはいいますがね……」
「いっそのこと燃料採掘プラントを破壊して、軌道衛星砲を引き揚げてシャイニング基地に戻るというのは?」
「それはいいかも知れない。元々我々は第十七艦隊に所属しているわけだし、シャイニング基地に軌道衛星砲を取り付ければ守備力は増強されます」
「それは無理だよ。軍部が許すはずがない。チャールズの野郎は、無茶苦茶な作戦指令を与えて、我が部隊をあわよくば殲滅させようと考えているんだ。そんなことしたら敵前逃亡罪だぞ。奴に格好の題材を与えるだけじゃないか」

 しばらく一同の会話に耳を傾けていたアレックスであったが、弱気な意見ばかりにたまりかねて、喝をいれるべく発言した。
「君達は戦う気があるのかね。聞いていれば先程から、艦の絶対数が足りないとか、援軍を要請できないのかとか、弱気な発言ばかりじゃないか。もっと前向きな意見はでてこないのか」
「そうはいいましても……」
「それでは司令には、よい試案がおありなのですね」
「もちろんだ。私は、君達がまるで足りないと愚痴をこぼしているたった七百隻をもって、敵艦隊を撃滅する作戦を考えている。たとえそれが一個艦隊だろうが三個艦隊だろうが、相手にとって不足はない作戦をね」
 一同から感嘆の吐息が漏れた。
「司令の作戦を聞かせていただけませんか」
「話してもいい。だが、君達はそれでいいのかね。作戦会議と称してこれだけの人数が集まりながら、最初から諦めてかかって何ら建設的な意見を述べないまま、結局司令である私の作戦に従うだけとは、悲しいとは思わないか。それで作戦が実行され勝利を得てもすべての戦果は私一人の功績になってもいいのだな。功績をあげ昇進したいという武人の心構えがまるでない。情けないことではあるが、私は君達の任を解き、新たなる参謀を選ぶことにする。それでいいんだな」
「ま、待ってください」
「待ってどうする」
「もう一度、考えなおさせてください」
「いいだろう。だがな、今この瞬間にも敵艦隊がこの基地に押し寄せているかも知れないのだ。一秒の遅れが命取りになることを、君達は理解していないのか。基地を防衛するということは、基地周辺に待機して迎え撃つことばかり考えているようだが、何も敵が接近するまで待っている必要はないではないか。極論をいえば、こちらから出向いていって敵艦隊が要塞を出撃するその瞬間を叩く、発進口に向けてミサイルをぶち込むということも、作戦の一つと考えられないか。誰しもが不可能だと考えられる作戦を可能にする手段を講じられないか、尋常ならざる作戦でもどこかに突破口はあるものだ。先程私は敵艦隊を撃滅する作戦を考えていると言ったが、そのためには第一に、敵艦隊がいつ・どこから・どれくらいの兵力で出撃してくるか、という情報の収集。第二に、進撃ルートの割り出しと攻略ポイントの策定。第三として、最終防衛ラインの設置。そして、すべてを看破された場合のための、カラカス基地からの安全なる撤退マニュアルが必要だ。これらの何一つ欠けても作戦は成り立たない」
 いっきにまくしたてるように論じていたアレックスだが、一息つくように声の調子を落としながら話しを続けた。
「私の考えを理解できない者或は賛同できない者は、直ちにこの場を退出したまえ。そうしたからといって誰も非難はできないはずだ。そもそも我々に課せられている任務自体、常識を逸脱しているくらいだからな。五分待とう、その間に結論を出し給え。退出するもしないも、君達の自由だ」
 そういって、アレックスは立ち上がり窓際に歩み寄った。
 一分立ち、二分立ち、そして五分が過ぎ去った。
 誰も動かなかった。
 ゆっくりと振り向き、再び席に戻るアレックス。
「どうやら私の考えを理解してくれたようだな。さて……カラカス基地の防衛にかかる作戦は、ひとまず宿題としておこう。まずはその前にやらねばならない、キャブリック星雲での戦闘訓練のことを先に片付けよう」
 一同を見回しながら言葉を続けるアレックス。
「ともかく新しく配属されてきた隊員達の訓練が必要となるだろう。特に搾取した敵艦船に搭乗する隊員はなおさらだ。ということで……訓練航海のことは私は口を出さないでおこうと思う。作戦立案からすべて、君達にまかせることにする。作戦が決まったら一応報告したまえ。それではこれで私は失礼する」
 というと、参謀達を残して会議室を退室してしまった。

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2020.12.31 15:25 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
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