銀河戦記/鳴動編 第一部 第六章 カラカス基地攻略戦 Ⅸ
2020.12.29

第六章 カラカス基地攻略戦




 ともかくも、連邦軍前線補給基地奪取作戦は被害を最小限に食い止めて、無事に成功して終了した。
 その功績を認められてアレックスは中佐に昇進し、ゴードン、カインズは少佐に、また多くの士官達もそれぞれ昇進を認められた。一年経てば自動的に昇進の権利を有していたが、それが三ヶ月に短縮したのだ。
 またカラカス防衛の重要さが指摘されて、第十七艦隊から増援としてディープス・ロイド少佐率いる部隊が合流してアレックスの配下に収まった。
 アレックス率いる独立遊撃部隊は、搾取した改造艦艇三百隻とロイド少佐の二百隻の艦艇を合わせて七百隻からなる部隊となり、軌道ビーム砲に守られた惑星カラカスという前線補給基地を得たのである。

 もちろん報道部がそのニュースを逃すはずがなかった。
 早速報道特別番組が組まれて作戦の詳細を事細やかに伝えたのである。
「またもやランドール、電撃作戦によって大勝利をもたらす」
「僅か二百隻で、敵一個艦隊を翻弄してこれを敗走させ、敵基地の奪取に成功する」
「三ヶ月で昇進、たった一度の戦闘で中佐となる」
 といった見出しが報道各誌やTVを賑わしていた。
 それによってアレックスの率いる部隊への転属・配属希望が殺到した。それによって搾取した艦艇の必要乗員はすぐに埋まることとなった。

 ゴードンとカインズがアレックスに呼ばれて司令官室に入ると、前面の司令官席に座るアレックスと側に立つパトリシア、そして見知らぬ女性士官三名が待機していた。
 アレックスの前に並んで立つゴードンとカインズ。
 目の前の机の上には少佐の任官状と階級章が並べられていた。
「今回の作戦において、カラカス基地の奪取と敵艦船の捕獲に成功したのは、君達をはじめ配下の将兵達の功労であることは言うまでもない。その功績によって、多くの将兵が昇進を認められることとなった。ゴードン・オニール並びにガデラ・カインズ。両名は少佐に昇進、それぞれ二百隻を率いる部隊司令官に任命する」
「はっ! ありがとうございます」
 ほとんど同時に最敬礼をほどこす二人。
「それからと……」
 と女性士官の方に目を移しながら言葉を繋ぐアレックス。
「こちらにいるのは、シェリー・バウマン少尉とパティー・クレイダー少尉だ。君達の副官として着任することになった」
「副官ですか?」
「シェリー・バウマン少尉」
「はい」
 先に名前を呼ばれて一歩前に進み出て起立姿勢をとる女性士官。
「高等士官学校パテントン校舎卒業。旗艦リュンクスに配属、特務科情報処理担当。ゴードン・オニール少佐の副官として着任する」
「シェリー・バウマンです。よろしくお願いします」
「しかし、自分にはウィンザー中尉という副官がいますが」
「うーん。ウィンザー中尉は情報参謀として、やはり私のそばにいたほうが良いと判断した。済まないが納得してくれ」
「わかりました。納得はしたくありませんが……命令ですから」
 ゴードンとて、アレックスの判断は十分に理解できた。情報参謀が別の艦艇にいたら、重要な情報の伝達に支障が生じることは判りきっている。通信は傍受される危険があるし、いちいち艦と艦を行き来するわけにもいかない。

「パティー・クレイダー少尉」
「はい」
 続いて、一歩進んでシェリーの横に並ぶ女性士官。
「高等士官学校ジャストール校舎卒業。旗艦リュンクスに配属、飛行科航空作戦担当。ガデラ・カインズ少佐の副官として着任する」
「パティー・クレイダーです。よろしくお願いします」
「両名とも旗艦リュンクス勤務からこの独立遊撃部隊への転属申請が受理されてここに来た。最前線に志願するくらいだから、やる気は十分、副官として才能を発揮してくれるだろう。ま、よろしくやってくれ」
「わかりました」
 だが女性士官はもう一人残っている。
 インターフォンが鳴った。
「中佐殿。ディープス・ロイド少佐がお見えです」
「通してくれ」
 ドアが開いて、統帥本部からの転属命令によってアレックスの配下となったディープス・ロイド少佐が入室してきた。
「ディープス・ロイド少佐。本日付けをもって、アレックス・ランドール中佐の部隊に配属を命じられました」
 踵を合わせて敬礼して申告する少佐。
「よく、いらしてくださいました。歓迎します」
「はい」
「バネッサ・コールドマン少尉」
「はい」
 一歩進んで直立するバネッサ。
「高等士官学校スベリニアン校舎卒業。独立遊撃部隊準旗艦シルフィーネ配属、戦術科戦術作戦担当。ディープス・ロイド少佐の副官として着任する」
「バネッサ・コールドマンです。よろしくお願いします」
「彼女は、私の後輩で卒業と同時に我が部隊に配属されている」
 バネッサは、士官学校入学当初からアレックスに目を掛けられ戦術理論を直接叩きこまれた唯一の人物である。アレックス流の戦術をもっとも熟知しているので、転属してきたばかりのロイド少佐に進言できる的確な人選といえた。
「ロイド少佐には、旗艦部隊三百隻を統率していただきます。高速戦艦シルフィーネを準旗艦として坐乗してください」
「シルフィーネですか、あのハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式の」
「そうです。たった五隻しかないタイプだから、旗艦が一目で判って便利ですからね」
「しかし確かシルフィーネには、レナード・エステル大尉が搭乗していたのではないですか」
「レナードには、副指揮官として、ゴードン少佐の下に置くことにしました。彼は、首席主任大尉ということで、少佐への昇進に係る査問委員会による監査と試験を控えている身です。ゴードンには教育官として指揮統制のありかたを教育してもらっています。ですから、遠慮することは何もありません。十二分に采配をふるってください」
「わかりました」
「シルフィーネのことは、このバネッサが良く知っています。判らないことがあれば何でも遠慮なく聞いてください」

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2020.12.29 08:41 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
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