皮膚生検&腎生検
2020.01.02

○月○日 皮膚生検


 膠原病と判れば、検査も投薬も変わる。
 膠原病(自己免疫疾患)に対する特効薬は、免疫抑制剤とステロイド剤である。


 これまでの病院では行われなかった検査も追加される。
 脳波検査、心電図、骨塩定量測定検査など外側から調べる検査。
 さらに、内臓組織を直接採取して調べる生検もある。
 脊髄液、骨髄、腎臓、肝臓、皮膚など。

 ちょっと変わったところでは、膠原病では梅毒血清反応検査が行われる。
 梅毒に掛かっているかどうかではなくて、膠原病になると陽性反応を示すことが知られ
ている(偽梅毒)から、判断の指針とするためである。
 ちなみに梅毒検査する場合、患者の同意書の署名が必要である。

 鼻から頬にかけて、少し隆起して赤い発疹ができていた。
 足の甲にもあった。

 この発疹が、膠原病によるものか、皮膚病(癌含む)によるものかを特定するために、
皮膚組織を採取する皮膚生検が行われることになった。
 皮膚科に行く。
 早速、消毒と麻酔が掛けられて、皮膚を切開して内部組織が採取された。
 そして縫い合わせ専用のシート(絆創膏?で密封すれば終了。

 数日後、抜糸されたのだが、切開創が結構突っ張って痛い。しかも十数年もの間それが
続いたのである。


○月○日 腎生検

 膠原病の中でも全身性エリテマトーデスは、その名の通り全身に病害を及ぼす病気であ
る。
 特に、腎臓を筆頭として内臓の多く、及び血液系がその標的となる。
 何度も腸閉塞を起こしたのも、この病気が原因だったと思われる。しかし、根本原因が
特定されていなかったので、対症療法しかできなかったのである。

 正しい病名が特定されなければ、正しい治療は行われない。

 である。

 内臓が冒されていないか、まずは臓器を採取して検査することになった。

 まずは腎生検である。

 腎臓は、内臓の裏側というか背中側にある。以下説明書きより

①検査をお受けいただく方はうつぶせになっていただきます。
②超音波を腎臓の形態を観察し、針を刺す場所を複数名の医師で決定します。
③皮膚に麻酔注射をした後に、背中から細い針を入れて、少しずつ進めます。
④針が腎臓に達したところで麻酔注射を腎臓の表面に加えます。
⑤ここで再度、複数の医師が針を刺す場所を確認します。
⑥医師から「ではこれから針を刺しますので呼吸をしっかり止めてください」とお声がけ
します。
⑦数秒ですが針が腎臓に入り、腎臓の一部を頂くことになります。
⑧この操作を2回行います。いただく腎臓は鉛筆の芯ほどの太さで、長さは1~2cmくらい
です。
⑨検査終了後、うつぶせのままで10分間くらい圧迫して出血を止めます。
⑩止血後、仰向けになり一日程度ベッド上安静が必要となります。
⑪その後も2~3日は病室で安静を保ち、出血の有無を超音波で確認します。

 と、説明書きを読めば簡単そうに思えるが。
 内臓を切り取ったのだから出血もする。だからといって患部を縫ったりガーゼを当てた
りもできない。
 傷口に負担を掛けないように仰向け厳禁。寝るときは、うつ伏せか横向きで、しかも重
石を付けたベルトで患部を押さえつけるように締め付ける。
 とにかく、寝返りがまともにできないので、腰が痛くてしようがなかった。

あっと!ヴィーナス!!第二部 第一章 part-1
2020.01.01

あっと! ヴィーナス!!第二部


第一章 part-1

 朝食を終えて学校へ行く。
「弘美! おはよう!」
 いつも聞きなれた声が背後から近づいてくる。
「愛ちゃん。おはよう」
「今日は、お兄さんと一緒じゃないのね」
「クラブで今日は早出」
「そっか、野球部だもんね。地区予選もはじまるし」
「一年だから、当分球拾いと用具片付けとかばかりだよ。後はランニングばかりらしい
よ」
「でもすぐにレギュラーになれるよ。中学ではキャプテンだったし」
「そうかな」
「それに女子の間では結構人気があるのよ。妹として鼻が高いでしょ」
「なにそれ?」
「知らないの?」
「知らない」
「呆れた、灯台下暗しね」
 知るわけないだろ。
 そういうこと、妹(弟)に自慢するもんじゃないし。
 それにしても、愛ちゃんとはすっかり仲良しになってしまった。
 もちろん女の子同士としてである。
 幼馴染として、これまでにも多少の付き合いがあったが、やはり異性ということで垣根
が存在して、これほどまでに親密にはなれなかった。男女が一緒に歩いていれば、噂の種
にもなるし……。
「ところでさあ……」
「なに?」
「もうじき夏休みだよね」
 とさも意味ありげに尋ねる。
「そうだね」
「予定あるの?」
「予定?」
「旅行とか、アルバイトとかさあ……」
「別に……ないけどさ」
「そう……」
 とぽつりとつぶやいて考え込むように黙った。
「なによ?」
「うん……ちょっとね」
「だから、なによ?」
「あのね……」
 どうやら切り出しにくい話のようだ。
「うん」
「やっぱり、後で話すわ」
「何よお、気になるなあ」
「とにかく、後で」
 結局口に出しただけで、内容を話さない。
 気になるなあ……。

11
全身性エリテマトーデス
2020.01.01

○月○日 全身性エリテマトーデス

 自己破産の手続きが進む中、大学病院へも行かなければならない。
 膠原病などと診断をくだされると緊張する。
 いったいどんな病気なんだ?
 早速紹介状を持って、埼玉医科大学総合医療センターを受診する。
 何せ大学病院である。
 診療科が無数にあると言っても良い。
 どこを受けたらよいのか判らないが、ともかく総合受付で手続きをする。
 で、リウマチ・膠原病内科という診療科を受診することになった。
 自己免疫疾患を専門に扱っている科であることが後に判明する。
 午前中は問診から始まって、血液検査・尿検査・レントゲン・心電図……と検査が続く。
 午後に入って、検査の結果が集計されて医師の元に戻されて、診察結果が報告される。
「血液検査の結果が出てますが……」
 と一息ついてから、
「このような状態で、今日までよく生きてこられましたね。普通なら、余命3年以内とい
う宣告を出しますよ」
 と驚きの報告が出された。
「よ、余命3年以内!?」
 免疫に関わる白血球などの数値が極端な異常値を示し、止血作用のある血小板などは正
常値最低限の十分の一しかない。大怪我などしたら血が止まらず出血多量で死亡の可能性
大。
 肝臓や腎臓に関するデータも、仰天するほどの数値を示していた。
(AST、ALT、γGTP=肝臓。eGFR=腎臓、など)
 数値だけを見れば、急性肝炎・肝硬変。糸球体腎炎・ネフローゼなどが疑われると……。

「全身性エリテマトーデスが疑われます。入院しての精密検査と治療が必要です」
 はじめて聞かされる病名だった。
 入院治療が必要と聞かされても驚かなかった。これまで何度も入退院を繰り返してきた
のだ。また一回増えるだけである。
 病気の簡単な説明が行われる。
 自己免疫疾患の一つで、自分自身に対する抗体ができて、免疫機能が自分自身を攻撃し
てしまうという難病だそうである。
 明確なる根治治療方法はなく、対症療法しかないらしい。
 クローン病に続く、二つ目の特定疾患を発病したことになる。
 他にも、抗リン脂質抗体症候群も合併していることを説明された。

 とにもかくにも入院は決定。
 入院申込書を貰って、一旦入院のための準備のために自宅に戻る。

 翌日、改めて生活保護の申請のため市役所へ。
 病院に書いて貰った診断書を持って、市役所で入院治療となる事を報告する。
 自己破産の手続きの申請書のコピーを提出して、自宅売却の手続き中のことも報告す
る。
 早急の入院が必要とのことで、急迫保護手続きが取られることになった。

 即座に生活保護による医療券が発行されて、それを保険証代わりに提出すれば治療費
(保険適用分)が全額無料となるものだった。
 というわけで、埼玉医科大学総合医療センターに入院することになったのである。

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