あっと!ヴィーナス!! 第三部 第二章 part-1.5
2020.12.14
あっと! ヴィーナス!!(37)
part-2
そんなこんなで、ヴィーナスと弘美は、天界にある運命管理局へとやってきた。
「探せ!愛ちゃんをどこへ連れ去ったのか、虱潰(しらみつぶ)しに探すのだ!」
管理局の部下に命令を下すヴィーナス。
その部下の心境は、
「また酒飲みすぎてドジ踏んだのかよ」
と内心思っているだろう。
早速、天空の女神ディアナが陣中見舞い?にやってきた。
「またもや、双葉愛が誘拐されたようだな」
「前にもやったように、時間を戻して誘拐犯を尾行できないのか?」
弘美が尋ねた。
「無理だな。またもやアポロンが絡んでいるようだからな。前回使った手が二度も通用する相手じゃない」
「アポロン?石になって地中海じゃなかったのか?」
「いや。海から拾い上げられて、とある美術館に飾られていたはずが……。つい先日、何者かによって持ち去られている。そして石化を解かれてしまったようね」
「第二報が届きました!」
「身代金要求か?」
「いえ、それが『ファイルーZ』を要求しています」
「ファイルーZだと!?」
顔を見合わせるヴィーナスとディアナだった。
「やはり、アポロンが絡んでいるようだな」
「そして共謀者もいるな」
「アポロンの石化を解いた誰かだな」
見知らぬ天空の運命管理局とやらに連れてこられて、一人宙に浮いているような立場となっていた弘美。
「おまえらなあ!俺にも、教えろよ。分かりやすく、易しく解説してくれ!ファイルーZとはなんぞや?」
「じつはだな……斯斯然然(かくかくしかじか)だ!」
「なるほど、そうだったのか……ってか、全く分らんぞ!!内容を端折(はしょ)るな」
「アポロンはともかく、共謀者が誰かだな」
「第三報で、ファイルーZの受け渡し場所そ指定してくれば、おのずとわかるだろう」
「しかし、データだけメールで送れと言われたら、対処のしようがないぞ。ボットウイルスに侵されたPCから多国間に渡った遠隔メール発信されたらな」
イライラしながらも、次の第三報が来るのを待ち受けている神々だった。
「来ました!第三報です!!」
メールを表示するディスプレイに、被りつく女神。
画面には、次のような文面が表示されていた。
「受け渡し場所を、そこにいる娘のスマホに送る」
「なに?」
と、弘美に視線を移すと、
♪ チャリラリラン ♫
弘美の持っているスマホに着信した。
「お!メールが来たぞ」
「見せろ!」
スマホを奪い取るような勢いで、メール文に注目する女神。
文面は以下のようになっていた。
『ファイルーZを持って、添付ファイルに示した地図の場所に来い』
「添付ファイルがあるぜ」
「待て!開くなよ。ウイルスが仕込んであるかもしれん」
「だからと言って、開かなきゃ愛ちゃんの場所が分らんぞ」
「まあ、待つんだ。そのメールを管理局のパソコンに、そのまま転送するんだ」
「どうやるんだ?」
「ちょっと貸せ!」
と、スマホを取り上げるなり、ピピピッと操作してメールを管理局へと転送した。
「メール届きました」
「よし、ウイルスが潜んでいないか解析しろ!」
「かしこまりました」
解析が行われてゆく。
「ウイルスはありませんでした」
「ご苦労だった」
と、弘美に向き直って、
「添付ファイルを開いて良いぞ」
「なんだよもう……」
とぼやきながらも、添付ファイルを開く。
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あっと!ヴィーナス!!第三部 第一章 part-1
2020.12.14
あっと! ヴィーナス!!(34)
第一章 part-1
ここは栄進中学3年A組の教室。
ホームルームの時間、愛と美の女神ヴィーナスこと『女神奇麗』教諭が壇上に立っていた。
この物語のヒロインたる相川弘美は、ヴィーナスに激しい怒りの視線を送っていた。
「おい!なんで、お前がいるんだ!!」
「私は教師だぞ」
「俺を女にしたんだから、もう用はないだろが」
「その言葉使いよ。身体は女の子になったけど、心は男の子のままじゃない」
「それがどうした。これが俺の性分だ」
「それがいけないのよ。まるで『男の娘』の言葉」
「しようがねえだろ。心は男なんだから」
「だからよ。あなたが女の子の心を持つまで、私が調教するわ」
「調教だと!?まさか、ボンテージ姿で鞭を手に『女王様とお呼び!』とか言って、ハイヒールを舐めさせたりする奴か?」
「何を言っているのか!?」
「世間の常識だろ?」
「とにかく!あなたが身も心も女の子になるまでが私の役目よ。男の娘じゃ、世間を渡ってけないわよ」
「なんとかなるさ。ほっとけ!アル中のくせに女神面するな」
「言ったわね!」
などと、矢継ぎ早に繰り出される会話は、すべて以心伝心で行われているので、周囲の生徒達には伝わっていない。
キンコーンカーンコン!
となるチャイムの音。
「放課後教務室に来い!教諭命令だぞ!!」
「へいへい」
放課後となる。
幼馴染の双葉愛が話しかけてくる。
「帰りましょうか」
家がすぐ近くなので、登下校はいつも一緒だった。
「あ、いや。女神先生に呼ばれてるんだ。先に帰ってていいよ」
「何の用かしらね?」
「時間が掛かるかもしれないから」
「分かった。先に帰るね」
「ああ、気を付けてな」
名残惜しそうに別れて、一人帰路に着く愛だった。
ちなみに天界での出来事は、ヴィーナスによって愛の記憶から消去されている。
女神の執務室へとやってきた。
「何だよ。呼びつけやがって」
「とりあえず、これを渡しておく」
と、手渡されたのは封書だった。
「何だよ、これは?」
「ゼウス様からの手紙だ。さしずめ、ラブレターというところだろな」
聞くなり、ビリビリと封書を破る弘美だった。
「あ、こら!せめて中身ぐらい読めよ」
「知るかよ!!」
と、ごみ箱に投げ捨てる。
「何が不満だよ。ゼウス様のお目にかなうだけでも栄誉なことだぞ。クレオパトラや楊貴妃のようになりたくないのか?」
「言ってろよ。結局、みんな悲劇の女王になってるじゃないか」
「そうだったけな……(とぼける)」
その時、ヴィーナスのスマホに着信があった。
「おまえ、神のくせにスマホ持ってるのかよ」
「神だって、最新情報を集める必要があるからな」
スマホに出る女神。
「なんですってえ!!」
突然、大声を出す。
「な、なんだよ。ビックリするじゃないか」
「落ち着いて聞けよ」
「落ち着いているよ。動揺しているのはおまえだよ」
「双葉愛ちゃんが誘拐された!」
耳を疑って、しばし声が出ない弘美。
「聞こえているか?」
我に返る弘美。
「誘拐されたのか?またアポロンか?」
「アポロンは石になってるはずよ。今度は別の奴たと思う」
「誰なんだ?手がかりとかないのかよ」
「何もないが……おそらく、ゼウス様と関りがありそうね」
「また神がらみかよ」
「運命管理局に犯行声明文がメールで届いた」
「声明文?誰からだよ」
「まだ名乗っていない。犯行声明は一度だけでなく二度三度来るもの。一度目は犯行宣言、二度目に身代金要求、三度目に現金受け渡し方法という具合だよ」
「身代金誘拐なのか?」
「例えばだよ。まだわからん」
「愛ちゃんの家に行く!念のために確認だ」
教務室を出て、押っとり刀で双葉愛の自宅へと急行する。
「愛ちゃんですか?まだ帰っていませんけど……弘美ちゃんは知らないの?」
玄関に出た母親が、怪訝そうに答える。
母親を心配させて、失敗したと思う弘美。
「いえ、何でもありません。勘違いでした」
その受け答えが、母親を納得させるかは分からないが、そう答えるしかない。
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