あっと!ヴィーナス!!第三部 第二章 part-4
2020.12.18

あっと! ヴィーナス!!(35)


第二章 part-5

 日本から一瞬にして、イタリアのローマへとやってきた一行だった。
「ここから、Google Map の経路ナビを使うんだな」
「その通り」
 スマホのナビゲーションを起動する弘美。
 マップ上に目的地までの経路が示されている。
「目的地まで、徒歩67分(5.3km)と出ているな。もっと近くに寄れなかったのかよ」
「日本からローマまで飛んだんだ。十分誤差の範囲だと思うぞ」
「まあいいや。観光のつもりでのんびり行くか」
「愛ちゃんが囚われているのに余裕だな」
「奴らの欲しいのは俺自身とファイルーZなんだろ?」
「まあそうだろな」
「だったら、愛ちゃんに手を出すことはないさ」
「本当にそう思うのか?身代金誘拐の多くで殺人となっているぞ」
「それは人間界の話だろ?神にも威厳というものがあるだろう?インディアン嘘つかない、とか良く言ってたじゃないか」
「そ、それはまあそうだが……」

 なんだかんだ言っているうちに、経路ナビの終点にたどり着いた。
 目の前には、蝙蝠が出入りする薄暗い洞窟があった。
「どうやら、この洞窟の中が目的地のようだな」
 慎重に洞窟に入る一行。
「真っ暗だな。おい、光の呪文とかないのか?レミーラとか」
「レミーラとはなんだ?」
「レミーラも知らないのかよ。ドラクエ通ならすぐ分かるぞ」
「ゲームの話をしているのか?」
「他にないだろ?とにかく光だ!」
「ふむ。まあいい!光あれ!!」
 ディアナが訴えると、辺り一面が明るくなった。
「さすが、神だな」
「当たり前だのクラッカーだ!」
「てなもんや三度笠かよ」
「そうそう。『俺がこんなに強いのも~』って、懐からクラッカー出して掲げるのよね」
「それ、古すぎるぞ。神夜映画劇場って、一体何年代のものやってるんだ?」
「さあな。地上の時間のことは、天上界では分らんのでな」
 などと話していると……。
「魔物が現れた!ゾンビが3匹。魔物の先制攻撃!弘美に30Pのダメージを与えた」
「ちょっと待て!いつからドラクエになったんだよ。ってか、なんでヴィーナスのおまえがナレーションやってんだよ」
「暇だったからよ。はい!王者の剣あげるから、軽く倒してよ。剣道の達人でしょ」
「ドラクエの武器かよ。ってか、俺は柔道だぞ!剣道はやってない!!」
「あらそうだったけかしら?」
「しようがねえなあ……」
 といいながらも、王者の剣で一刀両断でゾンビを倒す。
「チャリラリラン♪弘美はレベルが上がった……」
「もういいよ」
「さすが、ゲームをやり込んでいるみたいね。あっさりと倒しちゃったわね」
「うるせえ!勝手に抜かしてろ!!」
 暗闇の洞窟を突き進む弘美達。
 やがて頑丈そうな岩が道を塞いだ。
「行き止まりだぞ。どうやって先に進むんだ?」
「こういう時は、合言葉じゃないの?確か、神夜映画劇場でやってた……盗賊達が大きな岩の前で唱えるのよ」
「それって、アリババと四十人の盗賊か?『開け、ゴマ!』ってやつ」
「ああ、それよ!その言葉『開け、ゴマ!』よ」
 すると、ヴィーナスの声に反応して、岩が軋み音を立てて横にずれて道が開いた。
「おお!」
 あまりの拍子抜けな事に、顔を見合わせる一同だった。

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