銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅳ
2021.03.06

第十一章 帝国反乱




 艦橋に戻ってきたゴードン。
 軍医が額の傷の手当てをしている。
「そうか……。そういうことだったのか」
 副官のシェリー・バウマン大尉からウィンディーネ Ⅱ世号の成り立ちを聞いたゴードン。
 シェリーだって、拘禁を解かれて説明を受けたばかりなのだから。
「ご指示を」
 シェリーが促した。
 すでに出航準備は完了しているので、ゴードンの指令待ちとなっていた。
 軽く息を整えてから下令する。
「出航する。微速前進!」
 すかさずシェリーが復唱する。
「出航! 微速前進せよ」
 オペレーターが応える。
「微速前進!」
 ゆっくりと船台を離れて動き出すウィンディーネ。
「要塞ゲートオープン!」
「ゲート通過中!」
「前方オールグリーンです」
 タルシエン要塞をゆっくりと離れてゆく。
 その進路を囲い込むように、ウィンディーネ艦隊の艦艇が浮かんでいた。
「入電しました」
「繋げ!」
 正面スクリーンに、ゴードン配下の将兵達が映りだされた。
「閣下! どこへどもお供します」
 敬礼しながら意思表示する。
「また、一緒にやらせてください」
「解放されると信じていました」
 ゴードンのウィンディーネ艦隊への復帰を、口々に喜んでいた。
 共和国同盟に弓引くこととなっても、ゴードンにつき従った信頼厚き部下達だった。
 ランドール戦で、愛着のある指揮艦を大破させられて、乗り換えることになった者もいるが、それはせんないこと、提督には恨みを持ってはいない。
「ディープス・ロイド大佐は? 艦隊を預かっていたと聞いているが」
「はい。大佐殿は、タルシエン要塞の駐留艦隊の副司令官に戻りました」
「そうか……」
 アレックスの意向次第では、ウィンディーネ艦隊が彼の指揮下に入る可能性もあった。
 それにしても不可解だ。
 銀河帝国アルビエール侯国へ向かうことは決まっていることなのに、ウィンディーネ艦隊を帝国へ先着させなかったのは何故か?
 ロイド大佐がいたのだからできたはずである。
 ゴードンが釈放されるのを待っていたのか?
 しばし感傷に浸るゴードンだった。
「艦隊の足並み、揃いました」
「よし! 全艦ワープ準備だ」
 ハッカーによって改竄(かいざん)されたタルシエン要塞のシステムの改修はまだ終わっていないので、ワープゲートの使用は不可能だった。よって、自力でワープするしかない。
「これより、リモコンコードを送信する。各艦は同調させよ」
 七万隻の艦隊が理路整然とワープ行動を起こすには、艦制システムに依存するしかない。
 スクリーン上に示された艦影が、赤から青へと次々と変化していく。
 すべての艦が青の表示に変わった時、
「全艦リモコンコード同調完了しました」
 オペレーターが報告する。
「全艦ワープせよ!」
 ゴードンの下令のもと、七万隻の艦隊がタルシエン要塞からワープした。

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2021.03.06 06:46 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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