銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 Ⅶ
2020.05.30

第七章 反抗作戦始動




 総督軍後方に新たなる艦隊の出現を見て、緊張を高めるオペレーター達。
 敵の援軍なればもはや救いようのない戦況となり、逃げ出すことも不可能となるだろう。
 しかし次なる報告に状況は一変することとなる。
「識別信号に独立遊撃艦隊第一分艦隊旗艦ウィンディーネを確認」
 それはアレックスの片腕の一人、ゴードン・オニール准将であった。
「ウィンディーネ艦隊だ! 援軍がやってきたんだ」
 小躍りするオペレーター達。
 さらに報告は続く。
「独立遊撃艦隊第二分艦隊旗艦ドリアードを確認!」
 もう一人の片腕、ガデラ・カインズ准将。
「さらに続々とやってきます」
「第十七艦隊旗艦戦艦フェニックスもいます」
 アレックスより艦隊司令官を引き継いだオーギュスト・チェスター准将。
「ヘインズ・コビック准将の第五艦隊、ジョーイ・ホスター准将の第十一艦隊」
 アレックス・ランドール配下の旧共和国同盟軍第八師団所属の精鋭艦隊が続々と登場し
つつあった。
 さらに第五師団所属、リデル・マーカー准将の第八艦隊以下、第十四艦隊、第二十一艦
隊も勢揃いした。
 アレックスの配下にあるアル・サフリエニ方面軍が勢揃いしたのである。
 バーナード星系連邦との国境に横たわる銀河渦状腕間隙にある、通行可能領域として存
在するタルシエンの橋。
 現在地からトリスタニア共和国を経て、さらに遠方にあるタルシエンを含む銀河辺境地
域を守るのがアル・サフリエニ方面軍である。
 トリスタニア陥落以降は、共和国同盟解放軍として旗揚げした総勢六十万隻に及ぶ精鋭
艦隊である。
「戦艦フェニックスより入電。フランク・ガードナー少将が出ておられます」
 アレックスの先輩であり、第五師団司令官にしてタルシエン要塞司令官である。
「繋いでくれ」
 正面スクリーンがガードナー少将の映像に切り替わった。
「やあ、少し遅れたようだが、約束通りに引き連れてきてやったぞ」
「恐れ入ります」
「さあて、早速はじめるとするか」
「お願いします」
「それでは、勝利の後にまた会おう」
 映像が途切れて再び戦場の映像に切り替わった。
 パトリシアは思い起こしていた。
 タルシエン要塞を出発する時のことである。
 発着場においてアレックスとガードナー提督が別れの挨拶を交わしていた。


「それでは先輩、行ってきます」
 ガードナー提督に敬礼するアレックス。
「まあ、いいさ。とにかく要塞のことはまかしておけ。援軍が欲しくなったら、連絡あり
しだいどこへでも持っていってやる」
「よろしくお願いします、では」
「ふむ、気をつけてな」


 そうなのだ。
 あの時からアレックスとガードナー提督の間には密約が交わされていたのだった。
 今日のこの日のために……。
 なぜ、そのことをパトリシアにさえ隠していたのか?
 現況を熟慮して、パトリシアは気がついた。
 統合軍は銀河帝国軍との混成軍である。
 しかも本国には不穏な動きを見せる摂政派の影の黒幕であるロベスピエール公爵の存在
がある。
 そして、このサラマンダーにも皇女艦隊との連絡係として乗艦している帝国兵士もいる。
 摂政派の息がかかっていないとは言えないのだ。
 たとえ腹心のパトリシアにとても、内心を明かすことはできなかったのである。
 壁に耳あり障子に目ありである。
 どんなに優秀な作戦も、上手の手から水が漏れて敵に作戦を知られては元も子もなくな
る。
 危険を最小限にするためには、完全無欠でなければならなかったのである。

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