あっと!ヴィーナス!! 第一章 part-4
2019.10.02


あっと! ヴィーナス!!


第一章 part-4

 やがて母がメジャーを持って戻ってきた。
 そういえばまだ裸のままだった。すっかり動転していて、そこまで気が回らなか
ったのだ。もっとも身体測定だから、結局脱ぐことになったのだろうが……。
 早速、身体測定がはじまる。
「アンダーバストは65、トップが74か……ウエストが55、ヒップが80。う
ん、中学生としては、なかなかいいプロポーションしてるじゃない。5号サイズっ
てところかな。伸長はっと、計りになあ……。ちょっとそこの柱に背をつけるよう
に立ってみて。そうそう、印をつけて……152ね。弘美ちゃんの年齢だと、もう
しばらくは背が伸びるわね」
 というように、ぶつぶつと独り言を口にしながら測定していく。
 母が、以前の服を着れないという意味が今更に理解できた。
 以前の弘美は、全国中学柔道大会柔道でも66kg以下級で戦う筋骨隆々の骨格
をしていたのだ。それが……言わずもがなであろう。はっきりいって今の弘美の体
重も40kgあるかないかだった。
「もうしばらくってどういうこと?」
「ああ、女の子はね。思春期に入るころから、縦方向の身長があまり伸びなくなる
のよ。女性ホルモンのせいでね」
「じゃあ、一生このくらいの身長なの?」
「そうね。伸びても後10センチくらいかな。せいぜい160前後止まりね。その
分横方向へ成長するわ。胸とか骨盤とかが発達するのよ。子供を産むための身体造
りがはじまるの」
「子供を産む?」
「何を驚いてるのよ。女の子なんだから、当然でしょ。ああ、そうだ。生理の手当
の仕方も教えなければいけないわ」
「せ、生理って、女の子が毎月なる、あれ?」
「そういうこと。年頃の女の子なんだから、あって当然でしょ。買い物リストに生
理ショーツとナプキンも追加しなくちゃ」
 測定が終わり、母はいそいそと買い物に出かけるべく、部屋を後にした。
 やがて外から、信一郎兄の車のエンジンが聞こえてきて、それは遠ざかっていっ
た。

 いったいどうなってしまうのだろうか?

 ひとり部屋に残り、将来に一抹の不安に脅える弘美だった。
 それにしても……。
 どうしてこうなってしまったのだろう?
 と改めて考え直してみるが、突然女の子になってしまった原因が判らなかった。


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