銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 II
2019.05.18


第三章 第三皇女(土曜劇場)


                 II

 連邦軍先遣隊の旗艦艦橋。
「皇女艦の包囲をほぼ完了しました」
「ようし、降伏を勧告してみろ」
「了解」
 戦闘情勢は有利とみて、余裕の表情だったが……。
「未知の重力加速度を検知! ワープアウトしてくる艦隊があります」
「なんだと? 艦が密集している空間へか?」
「間違いありません。重力値からすると、およそ二百隻かと」
「ワープアウトします!」
 戦闘区域のど真ん中にいきなり出現した艦隊。
 二百隻の艦隊は、皇女艦に取り付いている連邦軍艦隊に対して戦闘を開始した。
「包囲網が崩されています」
「何としたことだ。一体どこの艦隊なのだ」
 すさまじい攻撃だった。
 まるで戦闘機のように縦横無尽に駆け回る艦隊に翻弄される連邦軍艦隊。
 さらに連邦軍を震撼させる事態が迫った。
「背後より敵襲です! その数二千隻」
「敵襲だと? 帝国の援軍が到着したのか、しかも背後から」
「そんなはずはありません。本隊が救援に来れるのは、早くても三十分かかるはずで
す」
「じゃあ、どこの艦隊だ? 今取り付いているこいつらにしてもだ」
 と、言いかけた時、激しい震動と爆音が艦内に響き渡った。
「左舷エンジン部に被弾! 機関出力三十パーセントダウン」
 パネルスクリーンには、敵艦隊の攻撃を受けて、次々と被弾・撃沈されていく味方艦
隊の模様が生々しく映し出されていた。高速で接近し攻撃し、一旦離脱して反転攻撃を
加え続けていた。
「この戦い方は……。ランドール戦法か?」
 折りしも正面スクリーンに、攻撃を加えて離脱する高速巡洋艦。その舷側に赤い鳥の
ような図柄の配置された艦体が映し出された。
「こ、これは! サラマンダーじゃないか」
 その名前は連邦軍を震撼させる代名詞となっている。その精霊を見た艦隊は、ことご
とく全滅ないし撤退の憂き目に合わされているという。
「そうか! デュプロスに向かった別働隊との連絡が途切れたのもこいつらのせいに違
いない」
「ランドールのサラマンダー艦隊は、タルシエン要塞にあるのでは? それが何故、中
立地帯を越えたこんな所で……」
「知るもんか。これ以上、被害を増やさないためにも撤退するぞ」
「撤退? 後少しで皇女を拉致できるというのにですか?」
「何を言うか! すでに皇女艦の包囲網すら突き崩されてしまっているじゃないか。逆
にこちらの方が捕虜にされかねん情勢が判らないのか。ランドールは撤退する艦隊を追
撃したケースは、これまでに一度もない。だから捲土重来のためにも、潔く撤退するの
だ」
「判りました。撤退しましょう」
「戦闘中止の信号弾を上げろ! それで奴らの攻撃も止むだろう。その間に体勢を整え
て撤退する」
 旗艦から白色信号弾が打ち上げられた。

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