あっと!ヴィーナス!! 第三部 第二章 part-2
2020.12.15

あっと! ヴィーナス!!(34)


 part-3

「地図だ!Google Map のようだな。地図の真ん中にマークがあるぜ」
「ローマ郊外のようだな」
「俺のスマホに届いたってことは、俺がその場所に『ファイルーZ』とやらを持って来いということだよな」
「まあ、そうなるだろうね」
「ファイルーZを、そこに名がある弘美が持って来いか……」
「上手くいけば、一石二鳥というやつね」
「経路ナビを立ち上げてっと、行き先は地図のマーク地点、出発地は現在地、そして徒歩で行くと……日本列島北部を縦断して宗谷岬から海を渡って樺太へ、さらに間宮海峡を渡ってロシアに上陸、シベリア鉄道沿いに行くこと、106日と16時間(13,146km)と表示されたぞ!」
 ディアナがスマホをのぞき込む。
「そのようだな」
「これって、24時間ひと時も休まず、飲み食いもせずにひたすら歩き続けた結果の数値だろうな」
「あなたは馬鹿ですか!?誰が徒歩で行く人がいますか?」
「そりゃ海の上は歩けねえが、宗谷海峡や間宮海峡くらいなら、泳いで渡る自信はあるぞ」
「そうじゃなくって!」
「じゃあ飛行機で行くのか?俺、そんな金持ってねえぞ。そういや、パスポートとやらもないし」
「呆れたわ。目の前にいるのが、誰だと思ってるのよ」
「飲んべったらしの女神だろ?そもそもの発端が、その酒癖の悪さだろ?」
「うむ。確かにその通りだ!」
 ディアナがキッパリと肯定した。
「そうじゃなくって!」
「じゃ、なんだよ?」
「私たちは神だ。そこは分かるな」
「一応そういうことになってるようだな」
「神は人間にできないことができる」
「まあ、それは認めよう。で?」
「ローマなど一瞬で移動できる能力を持っているということである」
「……?」
「もう一度言うぞ。ローマなど一飛びだ」
「なるほど、ワープするのだな。本当にできるのか?」
「インディアン嘘つかない!」
「また、それかよ。神夜映画劇場の見すぎだろ」
「天上界には、映画会社や放送局とかないからな。地上デジタル放送は娯楽の一つとなっておる」
「それで、どうやるんだ?ドラクエみたく旅の扉を使うのか?それともドラエモンのどこでもドアか?」
「似たようなものだが……はい、ディアナよろしく頼む」
「なんだ、私がやるのか?」
「時空管理者の方が間違いないからな」
「言ってろ!ゼウス様のお声が掛かってなけりゃ、おまえの手助けなど御免なんだがな」
「痴話喧嘩してないで、行動に移せよ」
「おまえに、そんなこと言われるのが心外だな」
「ま、確かに。行動に移すべきだな」
 手を前に突き出すようにして、
「ゲートオープン!!」
 と唱えると、目の前に扉が現れた。
 観光都市ローマへようこそ!
 という札が掛かっている。
「観光案内かよ。やっぱ、どこでもドアだったな。確か前回は『過去への扉』だったよな」
「まあな。ノックしなくてもいいぞ」
「さあ、出発しましょう!」
 ディアナ、弘美、ヴィーナスの順で扉をくぐる。
 一瞬光に包まれたかと思うと、目の前はローマの街だった。

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