銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 IV
2020.10.17

第九章 共和国と帝国


IV


 共和国同盟軍艦隊統帥総司令本部において、共和国同盟軍と銀河帝国軍双方に対しての
最高司令官たるアレックスは、その一部を帝国軍のために解放して第二皇女艦隊の臨時艦
隊司令本部を設置させた。同胞となったとはいえ別国家の軍隊の司令部が、同じ庁舎に入
居することは本来あり得ないのであるが、アレックスの推し進める連合艦隊構想に基づく
一環として、それぞれの参謀達は反論しなかった。慣例にのっとって別棟舎にすれば無難
かもしれないが、それではことあるごとに最高司令官たるアレックス自らが、いちいち官
舎を移動しなければならなくなる。第二皇女艦隊の参謀達にとっては、皇太子殿下にわざ
わざ足を運ばせることなどできるはずがない。
「トランター駐在帝国大使が、殿下に謁見を願いでておりますが、いかがなさいますか」
「会おう」
「はい、では」
 マーガレット皇女は向き直って従者に伝えた。
「通してよろしい」
「かしこまりました」
 従者が指示を受けて退室し、替わりに銀河帝国大使クジャート・バーミリオンが入場し
てきた。
 デスクの前に立ったかと思うとおもむろに片膝をつき、
「銀河帝国全権大使、クジャート・バーミリオンにございます」
「帝国大使が、いかなる用向きか」
 マーガレット皇女が皇太子であるアレックスに代わって要件を尋ねた。謁見の場合は、
まず重臣がその用向きを皇太子に代わって尋ねるのがしきたりであった。皇太子の判断を
仰がねばならない内容でない限り、重臣がすべて問題を受け答えする。
「は、帝国本星よりの通達事項をお伝えに参りました」
「聞きましょう」
「それではお伝えいたします。銀河帝国皇室議会は、アレクサンダー殿下を銀河帝国皇太
子として、ならびにパトリシア・ウィンザーさまを皇太子妃として、それぞれ正式に承認
いたしました。つきましてはアレクサンダー殿下におかれましては、銀河帝国皇太子とし
て帝国の全権を委譲いたします」
 一同の者が感嘆の声を上げた。
 アレックスとパトリシアは、向き直って見つめあった。
「ご苦労さまでした。下がってよろしい」
「はっ」
 大使はうやうやしく退室した。
「殿下。お聞きになられましたように銀河帝国は、殿下とお妃様を正式に承認いたしまし
た」
 マーガレット皇女が、アレックスに向き直り大使の報告を復唱した。
「それもこれも、マーガレットが尽力をおしまずにやってくれたおかげだ」
「当然のことをしたまででございます。つきましては、銀河帝国へお二人方々、早急にお
戻りになられますことが肝要かと存じます」
「帝国か……いいだろう。明後日に向かうことにしよう」
「かしこまりました。早速、第二艦隊に命じてご帰国の準備をさせます」

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